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攻城編
死霊魔術師、襲来する
しおりを挟む67-①
「フム……少し狙いがずれておるか? 調整は完璧だと思ったんじゃが」
「な……何すんねんコラァ!!」
武光が鎖の先から聞こえてくる声の主に向かって怒鳴りつけると、木々をかき分けながら大小二体の魔物が現れた。
小さい方の魔物は、成人男性の胸くらいの身長と異様に大きな頭という、所謂グレイタイプの宇宙人をしわくちゃにしたような魔物だった。
そして、小さな魔物の背後に控えている大きな魔物だが、2m以上はあろうかという巨体は、頭のてっぺんからつま先まで、全身を鋼鉄の鎧に包まれ、背中に剣、槍、鉞、金棒、鎌、長巻と……多数の武器を背負ったその姿は、まるで武蔵坊弁慶だった。ホッケーマスクのような仮面の下で、血走った双眸がギラリと光る。
「お前ら……何者や!?」
小さい方がニヤリと笑った。
「儂の名は……センノウ、魔王軍一の《死霊魔術師》よ!! そして此奴は儂の最新作にして最高傑作……ムカクじゃ!!」
死霊魔術師と聞いて、武光は身構えた。
……そう言えばナジミから聞いた事がある。この世界の魔物の中には、死体の中に悪霊を入り込ませて、《屍傀儡》を生み出し、自分の意のままに操るという、とんでもない罰当たりがいると。
「喜べ人間よ……お主、ムカクの記念すべき最初の犠牲者にしてやろう」
「い……いらんわボケ!! 何で魔王軍随一の死霊魔術師とやらが、城やなくて、こんな所で一人でうろついてんねん、アホか!!」
「ぐむむ……」
武光の言葉に対し、センノウが一瞬、苦虫を噛み潰したような渋面を作ったのを武光は見逃さなかった。
「ははーん、さてはお前……ハブられたな?」
「な、何を抜かす!!」
センノウは否定したが、武光の言った事は事実だった。
種族によってまちまちだが、魔物といえど、大なり小なり仲間の死を悼むという感情は存在する。人間の屍だけでなく、時には自分達の仲間の屍をも道具として弄り、操る死霊魔術師は、魔物からも忌み嫌われる存在なのだ。
「わはははは、城に入るの拒否されてやんの!!」
「う、うるさいっ!! 儂のムカクが人間共の軍勢を蹴散らし、蹂躙する様を見れば、奴らも儂の死霊魔術を認めざるを得んじゃろうて!! 貴様こそ……戦はとうに始まっておるのに、こんな所で何をしておるのじゃ!?」
「うっ……それは……」
センノウの言葉に対し、武光が一瞬、苦虫を噛み潰したような渋面を作ったのをセンノウは見逃さなかった。
「ほほう、さては貴様……臆して逃げ出したな?」
「あああアホか!! そっ、そんなわけあるかー!!」
〔武光、隠せてない!! 全く動揺を隠せていないぞ!?〕
「まぁ、そんな事はどうでも良い……貴様はここでムカクの餌食になるのだからな。行けぃムカクよ、あの者を葬り去るのじゃ!!」
「くっ、出来るもんならやってみ──」
武光がイットー・リョーダンを正眼に構えたその時だった。
「たぁぁぁーーーけぇぇぇーーーみぃぃぃーーーつぅぅぅーーーー!!」
野生のイノシシ……もとい、ミトが 現れた!
「うらぁぁぁっ!!」
「おげぇっ!?」
ミトの助走をつけたドロップキックが炸裂した。
「この……馬鹿ぁぁぁぁぁっ!!」
「おえええええ!?」
ミトは、仰向けに転倒した武光に馬乗りになり、胸ぐらを掴んで頭を激しく揺さぶった。
「痛でででで!! ちょっ……待てって!!」
「うるさーーーーーい!!」
「こ、こんにゃろっ!!」
「あんっ!?」
武光は馬乗りになられた状態から、ミトの両脇に自分の両足をねじ込んで、TKシザースでミトをごろんとひっくり返し、体勢を入れ替えた。
「うがぁーーーーー!!」
「ちょっ、やめろや!! 暴れんな!! オイお前ら何、ぼーっとつっ立ってんねん、取り押えるの手伝えや!!」
「う、うむ…………って、何でじゃ!! ……ムカク!? 手伝わんでも良い!!」
ここに来てようやくミトは二体の魔物の存在に気付いた。
「ハッ!? 魔物が何故ここに……まぁ良いわ。貴方達、自分の不運を呪いなさい。私は今、とっても虫の居所が悪いの!! ……覚悟しなさい!!」
「いや、そんな体勢で凄まれてものう……」
「ハッ!?」
センノウに言われて、ミトは気付いた。
自分が今、大股開きで、しかも股ぐらの下から顔を出した状態で転がされているという、マ◯スルリベンジャーばりのとんでもなく恥ずかしい体勢にされているという事に。
「わーっ!? ちょっ、武光離しなさい!!」
「……もう暴れへんか?」
「暴れない、暴れないから!!」
「……逃げた事も怒らへん?」
「ど、ドサクサに紛れて……こ、コラ足を開こうとするなっ!! わ……分かったわよっ、ふ……不問に付しますっ!!」
それを聞いた武光は拘束を解くと、素早く前回り受け身をしながらミトと距離を取った。
「よっしゃ……行くで!!」
「後で覚えておきなさいよ……!!」
武光とミトは剣を構えると、センノウ達目掛けて突進した。
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