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攻城編
斬られ役、傀儡と戦う(前編)
しおりを挟む68-①
「……うおっ!? ……わぁっ!? ……危なっ!?」
武光はムカクの執拗な攻撃を、何とか躱し続けていた。
武光とミトは、センノウ目掛けて突進したのだが、その前にムカクが立ちはだかった。手には鎖鎌ならぬ、鎖斧とでも呼ぶべき武器が握られている。
右手に握られた手斧の柄尻からは長い鎖が伸び、鎖の先端にはグレープフルーツ程の大きさの凶悪なトゲ付き鉄球が繋がっている。
“ぶぅん!!”
「うぉあっ!?」
武光目掛けて、一直線にトゲ付き鉄球が飛んできた。
武光は慌てて横に跳び退き、何とか躱したが、武光の背後にあった木は鉄球の直撃を受けて、メリメリと音を立てへし折れた。
折れた木を見て、武光はゾッとした。あんなものを喰らったら只では済まない……と言うか死ぬ!! 絶対死ぬ!!
「くっ、何で俺ばっかり……少しはあっちにも攻撃しろやコラァ!!」
「こ……こらっ!! なんて事言うのよ!? ……くっ!!」
ムカクはミトの方に向き直り、右手の斧を振り下ろした。だが、どういうわけか、繰り出された攻撃には鋭さがまるで無く、その軌道は、やる気があるのか疑わしい程ブレにブレていた。当然ながらミトも易々と回避する。
そして武光はそんなムカクの隙を突いて一気に間合いを詰めて側面から斬り掛かろうとしたが……
“ブンッッッ!!”
「ぬぉわっ!?」
ムカクが振り返りざまに放った斧による水平斬りが武光の鼻先数cmを横切った。その一撃は、アホみたいに鋭く、その軌道は全くと言って良い程、ブレが無かった。
「な……何でやねん!?」
武光は思わず叫んだが……奇しくも、後方で戦いを見ていたセンノウも、武光と同じ事を考えていた。
ムカクの動きがおかしい。あの仮面の女に攻撃するのを明らかに躊躇っている。男の方には容赦無く攻撃を加えているのだが……
様子のおかしいムカクを見てセンノウは呟いた。
「やはり屍にしておくべきだったか……」
ムカクは、従来の人間や魔物の屍を使った屍傀儡とは根本的に違う。そもそもムカクは『屍』ではない。
ボゥ・インレで人間共とコウカツ軍が激突した際に、戦場で拾ってきた人間に死霊魔術を施し完成させた新機軸の傀儡なのだ。
従来の屍傀儡は恐れを知らない恐怖の兵士ではあるものの、素体に人間や魔物の屍を使っている為、所々肉体は朽ちてしまっており、運動能力は低く、耐久性も高くない。
しかしムカクは生きた人間を素体に使う事で、従来の屍傀儡とは比べ物にならない程の運動能力と耐久性を得た。
それも、ムカクの素体に使用したのは並の人間ではない……死霊魔術に耐え得る頑強な肉体と強い生命力を持った人間だ。センノウは初めてその素体を見た時に、とても人間だとは思えず、戦いで角を失った鬼かと思った程だ。
そしてセンノウは、拾った素体の自我を死霊魔術によって厳重に封印し、全身を分厚い鋼鉄の鎧で覆い、いかなる状況にも対応出来るように、多数の武器を背負わせた。
センノウが最新の技術を駆使して生み出した傀儡……角の無い鬼、《無角》はこうして誕生したのだ。
センノウの眼前では、ムカクが男を追い詰めていた。女がムカクの注意を逸らそうと、攻撃を加えているが、ムカクの分厚い鎧に阻まれて、ダメージを与える事が出来ない。
ムカクが、逃げ場の無くなった男にトドメの一撃を見舞おうと手斧を頭上に振り上げたその時だった。
「火術……炎龍!!」
猛烈な炎の奔流がムカクを呑み込んだ。
「な……何奴じゃ!?」
センノウが炎の奔流の流れてきた先を見ると、そこには眼鏡をかけた背の高い男と黒い髪の女がいた。
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