斬られ役、異世界を征く!!

通 行人(とおり ゆきひと)

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巨竜編

斬られ役、留まらせる

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 75-①

「ちょっと待ちなさい、『二人っきり』ってどういう事なの!?」

 武光の言葉に対し、ミトは激しく抗議した。

「どうもこうもあるかい、言葉の通りや。怪獣退治は俺とあのクソ骸骨だけで行く……お前らは留守番や!!」
「ふざけないで、私も行くわ!!」
「ええい、聞き分けのない……!!」

 “トンッ”

「痛っ……何するのよっ!!」

 “ドゴォ!!”

「おげぇっ!?」

 武光は、ミトの背後に立って、首筋に手刀を叩き込んだが、即座にカウンターのボディーブローを食らい悶絶した。

「ぐおお……あかん……やっぱ時代劇みたいにはいかんか……」
「とにかく……私達も行きますから!!」
「そうですよ武光様!!」
「アカン言うてるやろが!!」
「どうしてよ!!」

 食ってかかるミトに対し、武光はくっっっそ真面目な表情を作って言った。

「それはお前……アレや、お前らには……《祈りの儀式》をやってもらわなあかんからや」
「祈りの……儀式!?」
「そや……俺のおった世界で、黒き破壊神と戦った極彩色の守護神の加護を得る為の儀式や。守護神の加護が得られれば、俺の力は……八百億倍に増幅される!!」
「な、何ですってー!?」

 もちろん嘘八百億である。

「で……でもそれならば私達じゃなくても……この砦にも私なんかよりも遥かに高名な神官様が何人かいらっしゃるみたいですし、その方達に頼みましょう」 

 ナジミの提案に対し、武光は深刻な表情で首を横に振った。

「いや……この儀式は、清浄なる魂を持つ巨乳の巫女と、高貴なる血を持つしとやかなる乙女やないとでけへんねん」

 それを聞いたナジミは胸に手を当て、武光の目を真っ直ぐに見つめた。

「つまり……私達にしか出来ない事なんですね、武光様?(姫様のおしとやかさに不安が残りますが……)」
「お……おう」

 ミトは真剣な表情で武光に聞いた。

「……あの竜を討伐し、貴方が生還する為に必要な事なのね?(ナジミさんの胸が足りないのは、私の頑張りで補うしかないわね……)」
「せ……せやな」

「「分かりました……やります!!」」

 素直と言うか単純と言うか……見事にハモりながら言った二人を見て、ツッコミそうになるのをぐっとこらえながら武光は続けた。

「……この儀式は戦いが終わるまで、何があっても途切れる事無く二人でただひたすらに守護神を讃える舞いを踊り、守護神を讃える歌を歌い続けなあかん荒行あらぎょうや……やれるか?」

 武光の問いに、ナジミとミトは互いに顔を見合わせた後、力強く頷いた。

「「やります!!」」

「……分かった、儀式の際の舞と守護神を讃える歌を教えるから、二人共、ちょっとこっちに来なさい」

 広場の片隅かたすみで、武光はナジミとミトにテキトーな舞と守護神の歌を教え、自主練習をするように言うと、リョエンの所まで来た。

「えっと、先生……」

 良く言えばとても素直な、悪く言えばだまされやすい女子二人と違って、流石に頭脳明晰ずのうめいせきなリョエンを騙すのは難しいかと思われたが……リョエンは黙って頷いた。

「分かっています。危険過ぎますからね」
「はい、ナジミにもしもの事があったら、俺元の世界に帰られへんようになるし……それにアイツ逃げる時に、何で今やねんってタイミングで『あっ!?』とか言ってすっ転びそうやし。それに何より……俺はアスタトを出る時にナジミと一緒に暮らしてた少年に『アイツを守る』って約束したんです」
「そうですか……分かりました」
「あと、ミトは、制止も聞かずに『私に任せなさい!!』って敵に突っ込んでピンチになりそうやし」
「う……容易に想像がつきますね……」
「それに、何のかんの言ってアイツは姫様やし……妹みたいなもんなんで。悪いんですけど……先生、上手い事あの二人をここに留まらせてもらえませんか?」
「分かりまし……いや、そういう訳にも行かないようです」
「えっ?」
「私も、妹を守らなければならなくなりました」
「あ……あれはっ!?」
「あー、いましたよー!! よかったー、間に合いましたー!!」

 キサンを先頭に、リヴァル戦士団が広場に入ってきた。
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