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巨竜編
討伐隊、駆ける
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センノウの放った怨霊の塊が、まめ太の胸部に吸い込まれたかと思うと、まめ太が苦しみ始めた。まめ太の蒼い巨躯が、まるで白い紙にインクをぶち撒けたかのように黒く染まってゆく。
【大丈夫かーーー!? おおーーーい!!】
武光の呼びかけにも、まめ太は応えない。まめ太の体が完全に黒く染まり、透き通った水晶のような頭部の角や、背中の鰭が赤黒い焔を纏う。
【まめ太ーーー!! 大丈夫か……って、ぎゃーーー!?】
間一髪、まめ太に踏み潰されそうになるのを武光は猛ダッシュで避けた。
【まめ太ーーー!! しっかりしろーーー!! まめ太ーーー!!】
必死に呼びかける武光を、センノウが嘲笑う。
「無駄じゃ無駄じゃ、あの竜はもはや儂の操り人形よ!! 行けい、まめ太よ……まめ太? ……まぁ良い、人間共を皆殺しにするのじゃ!!」
まめ太が空気を切り裂くような、凄まじい咆哮を上げた。
「くっそーーーあの野郎……もっぺんキャメルクラッチぶちかましたる!! 行くぞッ、イットー!!」
〔ああ!!〕
「邪魔はさせぬ……!!」
「おわーーー!?」
〔おわーーー!?〕
センノウのもとへ向かおうとした武光の足下にロイが火炎弾を撃ち込んだ。
「くくく……さぁ来い巨竜よ……私に死力を尽くさせろ!!」
死神は屍山血河を構えると、地面に向けて風術をぶっ放し、再度飛翔した。
「よっしゃ……今のうちじゃーーー!! センノウを……って、ひーーーっ!!」
またしても、武光の足下に空中から火炎弾が撃ち込まれた。
「邪魔はさせぬと言った!!」
高速で飛翔し、まめ太と闘いながらだと言うのに、ロイは武光がセンノウに接近する隙をまるで与えない。
やはりコイツは只者ではない、討伐隊の六人は息を呑んだ。
「ぐぬぬ……あかん、全然近付かれへん!!」
ロイに足止めを食らっている間に、自分が狙われると分かっているセンノウは武光達からどんどん離れてゆく。
怨霊玉の生成で魔力を消耗したのか、転移の術は使えないようだが、このまま奴に逃げられてしまっては、暴走するまめ太を止める術はない。
「武光殿、皆で力を合わせましょう!! あの死霊魔術師を逃してはなりません!!」
「応っ!! 行くぞぉぉぉぉぉーーー!!」
武光達は、センノウ目掛けて走り出した。ロイがすかさず空中から、武光達目掛けて火炎弾を放つ。
「水術……《噴水障壁》!!」
リョエンの水術によって地面から噴出した水の壁がロイの放った火炎弾を打ち消した。
「皆さん……今の内に!!」
「すんません……先生!!」
センノウとの距離、残り50m
「小賢しい!!」
まめ太の尻尾による横殴りの一撃を回避しつつ、ロイは武光達を切り裂こうと、屍山血河を振るって真空の刃を放った。
「地術……ランドウォール!!」
キサンの地術によって隆起した地面が、壁となって真空の刃を防ぐ。
「はいはーい、残念でしたー。みなさん……後は任せましたよー」
術を使う為の精神力を使い果たしたキサンはその場にペタンと座り込んだ。
センノウとの距離、残り30m
「おのれ……膾に刻んでくれる!!」
ロイが、先頭を走る武光目掛け、屍山血河を大上段に振りかぶりながら急降下してきた。
「そうは……」
「……させん!!」
リヴァルとヴァンプが剣と大剣を交差させて、振り下ろされた屍山血河を受け止め、ダントがロイに背後からしがみつく。
「離せ雑魚共が!!」
「くっ……なんて力だ!? 武光殿!!」
「……長くは抑えられん、行け!!」
「よっしゃっ!!」
センノウとの距離、残り10m
「くっ……貴様ら、邪魔をするなあああああっ!!」
ロイに必死にしがみつきながら、ダントが叫ぶ。
「唐観さーーーん!! センノウは北北東に向かって逃げています!! あと8mですよーーー!!」
「チッ!!」
ロイは、リヴァルとヴァンプに武器を押さえつけられ、ダントにしがみつかれて、背後を見る事が出来ないながらも、ダントの叫んだ方角に左手で火球を放った。地面に着弾した火球が大爆発を起こす。
「フン、監査武官よ……正確さが仇になったな……これであの異界人は塵に──」
「センノウーーー!! 覚悟しろコラぁぁぁぁぁ!!」
「何だと!?」
センノウが逃げていた方角は、北北東ではなく……北北西だった。
「貴様ぁぁぁっ!!」
ロイに肩越しに睨みつけられたダントは萎縮しながらも、少し硬ばった笑みを浮かべた。
「監査武官にあるまじき行為ですが……上官に嘘をつかせて頂きました」
センノウとの距離、残り1m!!
「うおおおおおっ!!」
〔喰らえええええっ!!〕
“すん”
イットー・リョーダンの一撃がセンノウを斬り裂いた!!
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