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勇者編
勇者達、黒竜王に挑む(前編)
しおりを挟む126-①
「行くぞ……我が宿敵よ!!」
小柄な老人から全高3m近い巨躯を誇る黒竜へと変貌を遂げたゼンリュウは、三対六枚の翼をバサリと震わせると、リヴァル目掛けて突進した。
「なっ!? 速い!?」
あまりの速度に、リヴァルの目にはゼンリュウの姿が消えたように見えた。
「遅い!!」
リヴァル本人ですら何故そうしたかは分からない、身体が本能的に危機を感じ、咄嗟に獅子王鋼牙の刀身を背中に回した次の瞬間、ゼンリュウの尻尾による一撃によって、リヴァルは前方に大きく吹っ飛ばされた。
リヴァルは肝を冷やした。
(何て速さと重さだ。獅子王鋼牙で防いでいなければ、間違いなく背骨がへし折られて死んでいた)
「くっ……光術・退魔光弾!!」
リヴァルは吹っ飛ばされつつも、何とか空中で体勢を立て直し、左の掌から退魔光弾を放った。
退魔光弾の直撃を受けたゼンリュウが爆炎と煙に包まれる。だが……!!
「ぬるい!!」
ゼンリュウが煙の中から飛び出してきた。その身には、カスリ傷一つ付いていない。ゼンリュウの超高速の体当たりによって、リヴァルは軍議の間の石壁に叩き付けられた。
「が……はっ!?」
壁に勢い良く叩き付けられ、床にうつ伏せに倒れ込んだリヴァルを見下ろしながら、ゼンリュウが吐き捨てる。
「弱い……弱過ぎる!! 貴様……本当に我が宿敵、勇者アルトなのか? 貴様には失望した……弱い貴様などに用は無い……死ね!!」
ゼンリュウは、リヴァルを引き裂こうと、鋭い爪が並んだ両腕を振り下ろした。研ぎ澄まされた鎌のような鋭い爪がリヴァルに迫る。
「……そうはさせん!!」
風竜将・リュウヨクを倒したヴァンプが援護に駆けつけた。
ヴァンプはリヴァルとゼンリュウの間に割って入り、振り下ろされたゼンリュウの両腕を、手首を掴んで受け止めた。
「……ぬぉあああああ!!」
「ぬぅ!? 勇者の仲間か……」
無謀にも、自分に力比べを挑んできた人間をゼンリュウは見下ろした。
「何と……驚くべき剛力だ……人間にしてはな!!」
「……ぐぬううっ!?」
ゼンリュウはヴァンプの身体を持ち上げると勢い良く振り回し、ぶん投げた。ヴァンプは空中で身を翻すと、両手両足を床に着いて何とか着地したが、ゼンリュウが眼前まで迫っていた。
「くたばれぇぇぇっ!!」
「そうは行きませんよー!! 火術・《蒼火炎弾》!!」
今度は、リュウビを倒したキサンが援護に駆けつけた。
キサンはゼンリュウの顔面に、並の火術士が放つそれよりも遥かに高温の、蒼い火炎弾を叩き込んだ。直撃を受けたゼンリュウの顔面が煙に包まれる。
「ふっふっふー、どうですー? 私の火術の味はーーー!!」
「ふむ……もう少し塩っ気が欲しいな」
そう言って、ゼンリュウは口の周りをペロリとなめた。
「ゲェーッ!? き、効いてないんですかー!? って言うか塩っ気ーーー!?」
「あと、まろやかさも足りん。どれ、儂が手本を見せてやろう……ゴアッ!!」
「ひぇぇぇー!?」
間一髪、ゼンリュウが口から吐き出した火炎弾を、キサンは横に跳躍して回避した。床に着弾した火炎弾は、床に敷き詰められた石材を一瞬で融解させ、穴を開けた。
「あわわ……石材を一瞬で融解させちゃうなんて……これ、めちゃくちゃヤバイ奴じゃないですかー!!」
体勢を立て直して一箇所に集まったリヴァル達を、ゼンリュウは睨め付けた。
「ヤバイ奴だと……? 貴様ら……誰を相手にしていると思っておる……我こそは黒き竜の王……災厄のゼンリュウぞ!!」
黒竜王ゼンリュウの圧倒的な戦闘力と、凄まじい威圧感を前に、リヴァル達は息を飲んだ。
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