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第2章 司のあわただしい二週間
第14話 初めてのギルド
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▽
「取り乱しました。忘れてください」
席に戻ったレイムさんが無心にサンドイッチを口に運ぶ。そうか、かっこいいもの好きか。無邪気な姿を見れて親近感。
「はは、コロナは遊ぶのが好きなんでまた遊んであげてください」
コロナも機嫌よくレイムさんに撫でられ、背中に乗せたりして遊んでいた。
『こんどは外であそぼう!』
「コロナが今度は外で遊ぼうって言ってますよー」
「はい、是非!」
この調子ならコロナとキャッチボールが出来るようになるかな? レイムさんから睡蓮を一本と水をもらう。食器類も収納しお片付け。名残惜しいがお昼休みは終了だ。
「良い場所でした・・研究室も興味深いし、あの空間は他にない魅力があります」
「また連れてこられるよう頑張ります。おそらくトトからも話があるでしょう」
「はい、今度来た時はゆっくり遊びましょう」
コロナとラクリマもあの場所は気に入っている。また来たいな。だからラクリマ、いつまでも水に漬かってないで戻ってきてください。
▽
レイムさんにはアルフリートさんと約束しているのでと言って建物の外で別れる。部屋に帰る途中にアルフリートさんから精神音が届く。この音は涼しげで好きだ。
話がありますと伝えて部屋に招く。
部屋に着いたので変装モードを呼び出す。変装と言ってもいつもの実験スタイル。
簪一本でまとめたオールバック、スタンドカラーの黒シャツ。細身のデニムと白のスニーカー。
それに白衣と、魔道具のマルチカラーネックレスを手首に巻いて完成。
ピアスは念の為外してポケットに。髪色は操作していじる。
髪色は身体操作で変える事ができる。僕は薄紫から濃い目の紫までしかできないけど。
髪色髪型を変えるだけで印象は大きく変わるからこれで大丈夫だろう。
コロナは僕の部屋だと分かるのか犬の姿で落ち着いて床に伸びている。
寝る、遊ぶ、食べるがコロナの基本。
これからギルドに行くし、ちょっとコロナに協力してもらおう。
『コロナー』
『なぁにー?』
首だけこっちに向けて返事をしてきた。
『あの獲物以外に何か獲ってきてない?』
ギルドに行くなら何か納めてコロナが獲ってきましたアピールをしておきたい。
『あるよー、どんなのがいい?』
『じゃあ、なるべく傷が無いのとか無い?』
『それならこれー。光ぶつけたらしんじゃった』
べちょり、一メートルくらいの大きさの迷彩模様のアメーバがラグの上に広がる。
うへぇ、密林アメーバですね。斬撃打撃は魔石直撃以外無効、焼けない美味しくない弱点は光の夜影の沼。コロナにとってはブレス一発の余波で死んでる雑魚。
こんなんでも解毒剤の材料になる。ありがたくもらっておきます。
『ありがとうコロナ。何か欲しいものある?』
『あるよ! こっちにきてからつかさと飛んでないからいっしょに飛ぼう!』
上体を起こし尻尾をぶんぶんと振る。
『そうだね、僕も外に行きたいな』
ダンジョンとか、ダンジョンとか。最近はめまぐるしくてゆっくりしたい気持ちもあるがそっちが優勢。世界をただ巡るのもいいかもしれない。
オラクルを普及させたいが、まずは千波とトムが来てくれた時に困らないぐらいには情報が欲しい。トムは来てくれると祈るばかり。千波だけとか制御できるか分からない。
「司、いるか?」
「開いてるので入ってきてください」
がちゃりと扉が開く。不機嫌そうだ。
「誰が来るか分からん。万が一も・・・・」
「アルフリートさんが来るから開けていただけなので。普段は閉めてるから大丈夫です」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてどうしたんだろう。
「ああ、少し驚いただけだ。外に行く為に変装しているのだな?」
扉が閉められる。早くダンジョン行きたいなー、最悪ここから放逐されたらアルフリートさんとは一回もダンジョン行けず仕舞になるのか。・・すごく嫌だな。
「アルフリートさん。ダンジョン行きましょう、行きたいです、連れて行ってください」
ぴくりと耳が動いてる? アルフリートさんも行きたいのかな? そうであってほしい。
「司、一つ教えておこう。そう軽々しくヒーラーがダンジョンに誘う物ではない」
眉皺が寄って睨まれているように感じる。それはヒーラー如きが盾様を誘ってはいけないという事ですか? そんなにこの世界のヒーラーは地位が低いのか・・・。
床にへたり込み膝を抱える。
「そうですよね、ヒーラー如きが体張ってる盾様をダンジョンに誘うなんて烏滸がましいですよね?」
目覚めないでトラウマ。ダンジョンにもまともに行けずひたすら野良った挙句、せっかく誘ってくれた友人とも仲違いして結局仲直りできなかった記憶。他にやり方があった、言わなければ良かったの後悔はいつまでも残る。
「いや、いつも体を張っているのはヒーラーの方だと思うが・・。私を誘う分には問題ない。誰彼構わずというのはいただけないというだけだ」
「じゃあ、行きましょうよ。このままだと一回も行かず僕が放逐されておしまいに・・」
「そんなことあるわけないだろう」
脇の下に手を入れられ持ち上げられる。軽々と扱われると安心感がある。宙に浮いた足が頼りなさげに揺れた。
「長官が最善を尽くしてくれている、今日の夜にでも話があるだろう。鬱々と考え込んでも何もならん。いざとなったらお前ひとり抱えて逃げることくらい出来る」
「別に抱えてもらわなくても自分ひとり適当に飛んで逃げ」
「それはだめだ」
チキンエスケープは得意なのに。
「いや、瞬発力はアレですけど機動力はありますから」
「そういう意味ではないのだがな・・まぁいい、ギルドに行くぞ」
「アルフリートさん変装できます?」
「私も必要か? 下手な変装はしない方がいい。完全な人の姿であっても私の顔を知る人間はそれなりにいる」
僕は知りませんよー。
「一緒に居たら確実にばれる確率が上がるので別行動でいいですか? 面倒ならいっそ先に飛んで」
「だめだ」
さっきから一刀両断率がひどい。僕が何をしたというのか。
「じゃあ妥協案で僕がアルフリートさんの後を付いていくというのは」
「逆だ。ふらふら付いてこられたら困る。先に行け」
「はい、わかりました」
浮遊してアルフリートさんの腕を外そうとしたが、力は入ってないはずなのに外れない。
「あ、浮いてるので外してもらって大丈夫ですよ」
ふわりと距離を取る。こっちに来てから浮遊移動してないから、この姿で使えばよりばれにくいだろう。
念のためギルドの位置を確認。徒歩圏で路面浮遊車に乗るか乗らないか迷うが自信が無かったので歩く事にする。
コロナにお外いくよーと声をかけギルドに向かった。
▽
コロナを連れてお散歩気分で街を歩く。
街の大きさは徒歩でも端から端まで4、50分くらい。路面浮遊車は円環状に走っていて転移門専用駅もある、
神殿もギルドも大通り沿いなので迷わないで行ける。
この前よりゆっくり周囲を見渡す。石造りの店舗のショーウィンドウでは魔道具が使ってあるのか、自分が写ると衣装が変わって見えたり、本物にしか見えない立体映像がポージングしながら商品をアピールしている。
角などの特徴がある人、僕みたいに何も無い人、様々な人が街を行き交う。浮遊移動してる魔術師っぽい人ももちろんいる。だから僕も安心して使っていられる。
獣の姿を取っている人はゲームより多い。当たり前か、プレイヤーは大体人の姿に耳と尻尾が生えた姿でいる事がほとんどだったから。
ここに来てまだ3日しか経っていないのに色んなことがありすぎた。
周りに迷惑をかけてしまって、ゆっくり出来ない原因が僕にあるので仕方は無いけれど。
考え事をしながら歩いているといつの間にか着いていた。
後ろを振り返るとアルフリートさんはナンパなのか数人に囲まれていた。トトさんが人気だって言ってたのは本当だったのか。
まあかっこいいしもふもふだし優しいので気持ちは分かる。僕が行っても解決できる訳でもないので先にギルドの中で待とう。
▽
冒険者組合、錬金術師組合、鍛冶組合と組合(ギルド)は色々あるけれど、ギルドとただ単に言うときは大体ここ。
冒険者組合会館は両翼が張り出した重厚な洋館だった。煉瓦造りがクラシカル。
両開きの大きな玄関を開くと吹き抜けの構造のロビーで、正面に受付、左右には椅子と机が適宜置かれている。
何にせよ受付か。さっぱり分からないし。
「いらっしゃいませ。ご依頼ですか?」
正面受付の受付職員に初めてで従魔の登録をしたいと申し出、トトさんからの手紙も渡す。
手元は見えないけど手紙を確認してる? 暫く待っていると二階に案内された。
奥にあった木製の幅の広い階段の手摺は飴色で、手触りが良かった。年季を感じる。
長い廊下を歩いた先の部屋に通される。中央にテーブルとそれを囲む茶色のソファの置かれた応接室。
職員さんはいなくなり手持無沙汰だ。コロナはすでにソファーをくんくんしながら部屋を確認している。
座ってコロナを構っているとすぐにガチャッと騒がしい音を立てて扉が開いた。
▽
「よお! 話題の使徒様ってのはあんたか!」
にかっとわらう女の人。刈り込んだ髪はこげ茶だが瞳が赤い。このノリは最近どこかであったような・・って距離近!
僕より高い背丈。握手だと思い差し出された手を立ち上がって握り返すと引き寄せられ、片方の手がむんずと腰を掴む。
「うーん、ちゃんと食ってんのか?」
わしわししないで下さい。服越しとはいえ。いい気分はしない。
「ふーむ、どれどれ」
顔を両手でつかまれ顔を左右に動かされる。
「やっぱ使徒様だな!」
「使徒様ってのはやめてください。司でお願いします・・」
テンション高くて付いていけない。まだこの人が誰かも知らないのにこれは無い。
「大変失礼なのですが、どちら様でしょうか?」
「忘れてた。俺はここのギルド長のユリーカだ。よろしくな! ちなみに昨日会ったザカールの父親だ」
ああ、やっぱりご親族でしたか・・。
▽
彼是しているとアルフリートさんが漸くやって来てくれた。
「遅くなった、すまない」
「お、昨日ぶりだな!」
何故かザーカさんまでいる。いや、いいんですけど。
ザーカさんの足元に狐が隠れている。臆病な黒狐だ、珍しい。
狐を見つけたコロナが早速ソファーから降りて挨拶に行った。
あ、部屋の隅に逃げた。
コロナの尻尾が切なそうに垂れる。
アルフリートさんと隣り合って、ユリーカさんとザーカさんの向かいに座る。
「変わるもんだなー、街で見てもわかんないと思うぜ」
「騒ぎは起こしたくないので。ユリーカさんってザーカさんのお父さんなんですか?」
「そうだぜ、俺は親父の前生の時の子供だ」
生んだ時の性別基準なのか。なるほど。
従魔と契約精霊の登録手続きはさくさく進んだ。それぞれの魔力の登録を済ませれば後はサインと認証タグへの認可の追記だけだった。本当にトトさんの紹介状の威力がすごい。
ついでにザーカさんには調書を取られたが、アルフリートさんの助言もあったしまずい事は言ってないと思う。
魔力測定器が魔石を吐き出す。ユリーカさんから指先程度の青い石と白い石を受け取る。
「それが従魔と契約精霊用の魔石だ。観測用魔力を感知すれば登録番号を自動で返すようになってる。出来るだけ携帯させる事。精霊は気まぐれなもんだし、付けられるときにつけてくれりゃいい。個人番号もついでに発行しておいたから後で確認しておいてくれ」
「わかりました、ありがとうございます」
コロナの魔石は収納用魔道具の首輪に下げておこう。ラクリマは馬具のどっかにくっつければいいか。
「おし、終わったな。従魔と精霊の事も聞きたいんだって? おーい、ソックス、でてこーい」
名前靴下ですか。真っ黒ボディに白いソックスってまんまです。
ダダダっと駆け寄りザーカさんの膝の上に飛び込む。さっきから思ってたけどめちゃくちゃかわいい。触ろうとすると逃げられるだろうからまずは距離を取ろう。コロナもさっきから大人しくソファの上で伏せているが視線は釘づけだ。
「おい、司」
「ラクリマどうしたの?」
登録の時に呼んだラクリマが不機嫌そうに話しかけてきた。
「さっきからその狐がうるさい。垂れ流しをやめさせろ」
「え? 何か言ってるの?」
「ああ、こわい、強くなりたい、こわいとそればかりだ」
「ラクリマと言ったか、何を言っているか詳しく教えてくれないか?」
ザーカさんが真剣な目でラクリマを見ていた。
「取り乱しました。忘れてください」
席に戻ったレイムさんが無心にサンドイッチを口に運ぶ。そうか、かっこいいもの好きか。無邪気な姿を見れて親近感。
「はは、コロナは遊ぶのが好きなんでまた遊んであげてください」
コロナも機嫌よくレイムさんに撫でられ、背中に乗せたりして遊んでいた。
『こんどは外であそぼう!』
「コロナが今度は外で遊ぼうって言ってますよー」
「はい、是非!」
この調子ならコロナとキャッチボールが出来るようになるかな? レイムさんから睡蓮を一本と水をもらう。食器類も収納しお片付け。名残惜しいがお昼休みは終了だ。
「良い場所でした・・研究室も興味深いし、あの空間は他にない魅力があります」
「また連れてこられるよう頑張ります。おそらくトトからも話があるでしょう」
「はい、今度来た時はゆっくり遊びましょう」
コロナとラクリマもあの場所は気に入っている。また来たいな。だからラクリマ、いつまでも水に漬かってないで戻ってきてください。
▽
レイムさんにはアルフリートさんと約束しているのでと言って建物の外で別れる。部屋に帰る途中にアルフリートさんから精神音が届く。この音は涼しげで好きだ。
話がありますと伝えて部屋に招く。
部屋に着いたので変装モードを呼び出す。変装と言ってもいつもの実験スタイル。
簪一本でまとめたオールバック、スタンドカラーの黒シャツ。細身のデニムと白のスニーカー。
それに白衣と、魔道具のマルチカラーネックレスを手首に巻いて完成。
ピアスは念の為外してポケットに。髪色は操作していじる。
髪色は身体操作で変える事ができる。僕は薄紫から濃い目の紫までしかできないけど。
髪色髪型を変えるだけで印象は大きく変わるからこれで大丈夫だろう。
コロナは僕の部屋だと分かるのか犬の姿で落ち着いて床に伸びている。
寝る、遊ぶ、食べるがコロナの基本。
これからギルドに行くし、ちょっとコロナに協力してもらおう。
『コロナー』
『なぁにー?』
首だけこっちに向けて返事をしてきた。
『あの獲物以外に何か獲ってきてない?』
ギルドに行くなら何か納めてコロナが獲ってきましたアピールをしておきたい。
『あるよー、どんなのがいい?』
『じゃあ、なるべく傷が無いのとか無い?』
『それならこれー。光ぶつけたらしんじゃった』
べちょり、一メートルくらいの大きさの迷彩模様のアメーバがラグの上に広がる。
うへぇ、密林アメーバですね。斬撃打撃は魔石直撃以外無効、焼けない美味しくない弱点は光の夜影の沼。コロナにとってはブレス一発の余波で死んでる雑魚。
こんなんでも解毒剤の材料になる。ありがたくもらっておきます。
『ありがとうコロナ。何か欲しいものある?』
『あるよ! こっちにきてからつかさと飛んでないからいっしょに飛ぼう!』
上体を起こし尻尾をぶんぶんと振る。
『そうだね、僕も外に行きたいな』
ダンジョンとか、ダンジョンとか。最近はめまぐるしくてゆっくりしたい気持ちもあるがそっちが優勢。世界をただ巡るのもいいかもしれない。
オラクルを普及させたいが、まずは千波とトムが来てくれた時に困らないぐらいには情報が欲しい。トムは来てくれると祈るばかり。千波だけとか制御できるか分からない。
「司、いるか?」
「開いてるので入ってきてください」
がちゃりと扉が開く。不機嫌そうだ。
「誰が来るか分からん。万が一も・・・・」
「アルフリートさんが来るから開けていただけなので。普段は閉めてるから大丈夫です」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてどうしたんだろう。
「ああ、少し驚いただけだ。外に行く為に変装しているのだな?」
扉が閉められる。早くダンジョン行きたいなー、最悪ここから放逐されたらアルフリートさんとは一回もダンジョン行けず仕舞になるのか。・・すごく嫌だな。
「アルフリートさん。ダンジョン行きましょう、行きたいです、連れて行ってください」
ぴくりと耳が動いてる? アルフリートさんも行きたいのかな? そうであってほしい。
「司、一つ教えておこう。そう軽々しくヒーラーがダンジョンに誘う物ではない」
眉皺が寄って睨まれているように感じる。それはヒーラー如きが盾様を誘ってはいけないという事ですか? そんなにこの世界のヒーラーは地位が低いのか・・・。
床にへたり込み膝を抱える。
「そうですよね、ヒーラー如きが体張ってる盾様をダンジョンに誘うなんて烏滸がましいですよね?」
目覚めないでトラウマ。ダンジョンにもまともに行けずひたすら野良った挙句、せっかく誘ってくれた友人とも仲違いして結局仲直りできなかった記憶。他にやり方があった、言わなければ良かったの後悔はいつまでも残る。
「いや、いつも体を張っているのはヒーラーの方だと思うが・・。私を誘う分には問題ない。誰彼構わずというのはいただけないというだけだ」
「じゃあ、行きましょうよ。このままだと一回も行かず僕が放逐されておしまいに・・」
「そんなことあるわけないだろう」
脇の下に手を入れられ持ち上げられる。軽々と扱われると安心感がある。宙に浮いた足が頼りなさげに揺れた。
「長官が最善を尽くしてくれている、今日の夜にでも話があるだろう。鬱々と考え込んでも何もならん。いざとなったらお前ひとり抱えて逃げることくらい出来る」
「別に抱えてもらわなくても自分ひとり適当に飛んで逃げ」
「それはだめだ」
チキンエスケープは得意なのに。
「いや、瞬発力はアレですけど機動力はありますから」
「そういう意味ではないのだがな・・まぁいい、ギルドに行くぞ」
「アルフリートさん変装できます?」
「私も必要か? 下手な変装はしない方がいい。完全な人の姿であっても私の顔を知る人間はそれなりにいる」
僕は知りませんよー。
「一緒に居たら確実にばれる確率が上がるので別行動でいいですか? 面倒ならいっそ先に飛んで」
「だめだ」
さっきから一刀両断率がひどい。僕が何をしたというのか。
「じゃあ妥協案で僕がアルフリートさんの後を付いていくというのは」
「逆だ。ふらふら付いてこられたら困る。先に行け」
「はい、わかりました」
浮遊してアルフリートさんの腕を外そうとしたが、力は入ってないはずなのに外れない。
「あ、浮いてるので外してもらって大丈夫ですよ」
ふわりと距離を取る。こっちに来てから浮遊移動してないから、この姿で使えばよりばれにくいだろう。
念のためギルドの位置を確認。徒歩圏で路面浮遊車に乗るか乗らないか迷うが自信が無かったので歩く事にする。
コロナにお外いくよーと声をかけギルドに向かった。
▽
コロナを連れてお散歩気分で街を歩く。
街の大きさは徒歩でも端から端まで4、50分くらい。路面浮遊車は円環状に走っていて転移門専用駅もある、
神殿もギルドも大通り沿いなので迷わないで行ける。
この前よりゆっくり周囲を見渡す。石造りの店舗のショーウィンドウでは魔道具が使ってあるのか、自分が写ると衣装が変わって見えたり、本物にしか見えない立体映像がポージングしながら商品をアピールしている。
角などの特徴がある人、僕みたいに何も無い人、様々な人が街を行き交う。浮遊移動してる魔術師っぽい人ももちろんいる。だから僕も安心して使っていられる。
獣の姿を取っている人はゲームより多い。当たり前か、プレイヤーは大体人の姿に耳と尻尾が生えた姿でいる事がほとんどだったから。
ここに来てまだ3日しか経っていないのに色んなことがありすぎた。
周りに迷惑をかけてしまって、ゆっくり出来ない原因が僕にあるので仕方は無いけれど。
考え事をしながら歩いているといつの間にか着いていた。
後ろを振り返るとアルフリートさんはナンパなのか数人に囲まれていた。トトさんが人気だって言ってたのは本当だったのか。
まあかっこいいしもふもふだし優しいので気持ちは分かる。僕が行っても解決できる訳でもないので先にギルドの中で待とう。
▽
冒険者組合、錬金術師組合、鍛冶組合と組合(ギルド)は色々あるけれど、ギルドとただ単に言うときは大体ここ。
冒険者組合会館は両翼が張り出した重厚な洋館だった。煉瓦造りがクラシカル。
両開きの大きな玄関を開くと吹き抜けの構造のロビーで、正面に受付、左右には椅子と机が適宜置かれている。
何にせよ受付か。さっぱり分からないし。
「いらっしゃいませ。ご依頼ですか?」
正面受付の受付職員に初めてで従魔の登録をしたいと申し出、トトさんからの手紙も渡す。
手元は見えないけど手紙を確認してる? 暫く待っていると二階に案内された。
奥にあった木製の幅の広い階段の手摺は飴色で、手触りが良かった。年季を感じる。
長い廊下を歩いた先の部屋に通される。中央にテーブルとそれを囲む茶色のソファの置かれた応接室。
職員さんはいなくなり手持無沙汰だ。コロナはすでにソファーをくんくんしながら部屋を確認している。
座ってコロナを構っているとすぐにガチャッと騒がしい音を立てて扉が開いた。
▽
「よお! 話題の使徒様ってのはあんたか!」
にかっとわらう女の人。刈り込んだ髪はこげ茶だが瞳が赤い。このノリは最近どこかであったような・・って距離近!
僕より高い背丈。握手だと思い差し出された手を立ち上がって握り返すと引き寄せられ、片方の手がむんずと腰を掴む。
「うーん、ちゃんと食ってんのか?」
わしわししないで下さい。服越しとはいえ。いい気分はしない。
「ふーむ、どれどれ」
顔を両手でつかまれ顔を左右に動かされる。
「やっぱ使徒様だな!」
「使徒様ってのはやめてください。司でお願いします・・」
テンション高くて付いていけない。まだこの人が誰かも知らないのにこれは無い。
「大変失礼なのですが、どちら様でしょうか?」
「忘れてた。俺はここのギルド長のユリーカだ。よろしくな! ちなみに昨日会ったザカールの父親だ」
ああ、やっぱりご親族でしたか・・。
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彼是しているとアルフリートさんが漸くやって来てくれた。
「遅くなった、すまない」
「お、昨日ぶりだな!」
何故かザーカさんまでいる。いや、いいんですけど。
ザーカさんの足元に狐が隠れている。臆病な黒狐だ、珍しい。
狐を見つけたコロナが早速ソファーから降りて挨拶に行った。
あ、部屋の隅に逃げた。
コロナの尻尾が切なそうに垂れる。
アルフリートさんと隣り合って、ユリーカさんとザーカさんの向かいに座る。
「変わるもんだなー、街で見てもわかんないと思うぜ」
「騒ぎは起こしたくないので。ユリーカさんってザーカさんのお父さんなんですか?」
「そうだぜ、俺は親父の前生の時の子供だ」
生んだ時の性別基準なのか。なるほど。
従魔と契約精霊の登録手続きはさくさく進んだ。それぞれの魔力の登録を済ませれば後はサインと認証タグへの認可の追記だけだった。本当にトトさんの紹介状の威力がすごい。
ついでにザーカさんには調書を取られたが、アルフリートさんの助言もあったしまずい事は言ってないと思う。
魔力測定器が魔石を吐き出す。ユリーカさんから指先程度の青い石と白い石を受け取る。
「それが従魔と契約精霊用の魔石だ。観測用魔力を感知すれば登録番号を自動で返すようになってる。出来るだけ携帯させる事。精霊は気まぐれなもんだし、付けられるときにつけてくれりゃいい。個人番号もついでに発行しておいたから後で確認しておいてくれ」
「わかりました、ありがとうございます」
コロナの魔石は収納用魔道具の首輪に下げておこう。ラクリマは馬具のどっかにくっつければいいか。
「おし、終わったな。従魔と精霊の事も聞きたいんだって? おーい、ソックス、でてこーい」
名前靴下ですか。真っ黒ボディに白いソックスってまんまです。
ダダダっと駆け寄りザーカさんの膝の上に飛び込む。さっきから思ってたけどめちゃくちゃかわいい。触ろうとすると逃げられるだろうからまずは距離を取ろう。コロナもさっきから大人しくソファの上で伏せているが視線は釘づけだ。
「おい、司」
「ラクリマどうしたの?」
登録の時に呼んだラクリマが不機嫌そうに話しかけてきた。
「さっきからその狐がうるさい。垂れ流しをやめさせろ」
「え? 何か言ってるの?」
「ああ、こわい、強くなりたい、こわいとそればかりだ」
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ザーカさんが真剣な目でラクリマを見ていた。
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