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第2章 司のあわただしい二週間
第36話 仲直り
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「何だお前はさっきから。人の理性を試しているのか?」
「ふぇ?」
もふもふの尻尾に埋もれ脳内麻薬で幸福に溺れていた所、大きな手が僕を攫ってソファに釘付けにした。冷たい目で睥睨され薄っすら闘気が漏れる様に、訳が分からずじたばたあがいて足の爪で腕を引っ掻くが傷も付かない。
「ああ、そうだろうな、そんな気は無いのだろうな。しかし私にも我慢の限界という物がある」
熱くぬめった舌が首と顔を舐めていく。鳥形態のぼくの頭など一口で丸のみにしてしまえる牙の生えた大きな口に本能的な恐怖を催す。
ちらりと見えた白い犬歯が光を弾いて、舌が羽毛を逆撫でしながら体を這う。
手に体重を掛けられたら呼吸も出来なくなるだろうから、気は遣われているのだろう。
偶に仲間内でやるグルーミングじゃない。指の間の唾液でべちょりと濡れた胸元の一部を熱心に舐められて、かちっと音が鳴った時全身に寒気が走った。
露出した魂核に牙を添えられる恐怖は、先ほどの恐怖とは比べ物にならない物だった。
「ひぅっ!」
嘴で鼻筋を全力でがつがつつつく。牙は離れたが恐怖に身を縮こませる。魂核を他人に外されるかもしれない嫌悪感は筆舌に尽くしがたいもので、この世界だとOTL(ゲーム)の倍くらいの痛みがあったから尚の事。
やっと離れて行った顔に息を吐くと、ばくばく鼓動が駆けている事に気づく。何をしたわけでもないのに乱れている息をはぁはぁと吐いて整えて、アルフリートさんの様子を窺ったら自分の人差し指を舐めて濡らしていた。
「えーと、放してもらえませんか?」
「断る」
足の間の、掻き分けて探さないと見つからない、自分じゃある事すら忘れているその場所に濡れた指がずずずっと我が物顔で入って来る。
ぞっと湧きあがる恐れと期待。既知と未知が綯いまじって、ただ分からないままに涙が浮かぶ。
恥ずかしい、おかしい、こんなのだめだ。
僕はコロナが帰って来るのを待っている。持ち直したからちゃんと謝って仲直りがしたい。いつ帰って来るか分からないのにこんな事をしてはだめだ。獣姦は性的倒錯だろう。
言いたい事が一杯あるのに、舐められ、粘り気の増していく音に耳を塞ぎたくても塞げない体。
ゆっくりと出し入れされて、奥の行き止まりで円を描くみたいに優しく捏ねられ続けながら、舌が慎ましく勃起したペニスと穴をいっしょくたに舐める。まるでクリトリスだなとからかわれ、怒りと羞恥に血が上る。
鳥の姿をしてるけど、気嚢も無ければ総排泄腔でも無い。涙も出るし作りは人間に近いが、鳥に人サイズの男性器が付いてても不気味なだけだろう! 不満が頭の中で爆発するが上がるのは喘ぎと泣き言ばかりだ。
この前の亀頭球もちょっと違ったし、僕の豹には排卵促すトゲもないしまだまだ違いはあるんだろう・・って要らない事を思い出すな僕!
「あっ、あぁ・・、うく、んんっ・・」
「しかし狭いな。流石にこの姿では交合は無理か」
「あ、あたりまえでしょう!」
「戻れるか?」
「この状況で戻るかばか!! あ、あぁああ!」
ずちゅりと勢いよく指が出て行って体が跳ねる。たった指一本でぐちゃぐちゃにされて涙が止まらない。
「仕方ない。戻りたい気にさせるまでだ」
薄暗く低い声が愉悦を交えて僕を嘲る。どうしたらこの状況を切り抜けられるか見当が付かない。
「お前はそういえば男に転生したら別れるのかと気にしていたな?」
「・・・」
返事をする気になれずぷいっと横を向いて視線を逸らす。
十分に濡れていた指が膣口を過ぎてさらに下、小さな窪みに添えられる、まさか!
「まぁ、いいだろう。私は気にしないという事を教えておこうと思ってな」
下を向いたら、べちょべちょになった穴と男根と言うのも憚られる物を舐めながら僕を観察している瞳と目が合った。先ほどまでに指で甚振られていた膣を、今度は舌が柔らかく、でも僕の都合などお構いなしに押し入って這いまわる。
内側を一杯に満たす弾力のある舌を無意識に締め付けて、柔らかく湿った肉同士の交わりから与えられる悦楽に思考は混濁し、僕は射精したことすら言われるまで気づけ無かった。
その隙にぐぷぷと少し入っては出て行く事を繰り返し、時折潤いを足しながら指が徐々に後ろの穴に埋まっていく。
「はっ、ぐっ、ん、んんっ・・」
「声を我慢するな。余計に啼かせたくなる。戻る気になったか?」
いつの間にか押さえつけていた手は無くなっていた。しかし繰り返し与えられる熱に抵抗する気力はほとんど削がれ、ふるふると首を振って抵抗の意を示すのが精一杯だ。
さっきから違う音がすると探ると、ぬちぬちと聞こえる音はアルフリートさんが自分の物を取り出して扱いている音のようだった。
「そんなに嫌なのか?」
「ん・・そこでしゃべらないでください・・、ぬいて、抜いてもらえませんか?」
伝わる熱い息すら辛い。こちらを窺う人は隙あらば僕を舐めようとする。
指が抜かれひぐぅっとみっともない声が上がる。後ろを弄られる感触は異物感が強くて、出て行ってくれてほっとした。
「こ、こういうことはお互いにもうちょっとよく知りあってからにしませんか?」
それに、僕はコロナ達を待っているのだ。いつ帰って来てきてくれるか分からないのにこういう事をするべきでは無いと思う。
「よく知り合うとはどういう事だ?」
「デートしたり、一緒に他愛もない話をしたり・・あと、ほら、アルフリートさんの勘違いかもしれませんから、少し時間を置いて・・・」
「は?」
「ひっ! ごめんなさい!」
鼻筋に皺を寄せて噛みしめた口元からギリっと音が漏れ聞こえる。
ふーっと長い息を吐いて絞り出すように言葉が紡がれた。
「・・・お前と話せば話すほど、世界の違いから来る価値観の違いを感じる。帰りたいと思ってしまっても無理は無いと思ってしまう。お前が本当に嫌がる事はしたくない。帰る気になればいつでも帰れる、その言葉に怯えているのは私だ。本当に嫌なのであれば一生・・」
「いや、そこまで言ってませんから」
そこまで思いつめられるのも困るから食い気味に言葉を遮る。
「ではどれだけ待てば信じられる?」
「・・・半年」
「長すぎる。それくらいなら一生何もない気でいた方がいい。この暮らしならせいぜい我慢出来て数か月」
「分かりました、三か月で・・」
「確認だが、最後までしなければいいのだな? キスまでするなというのはダンジョン探索をするなら無理だ」
「そうですね、僕の心の準備もそれくらいあれば・・・」
「別に抱かれるのが嫌なら抱いてもいいぞ? どうした、呆気にとられた顔をして」
「は、むりむりむりいいぃぃ!!! 抱くより抱かれる方がいいです!」
翼でバッテンを作って全力拒否。無理、絶対無理。一気に萎えた。
「分かった、三か月後が楽しみだ」
やっと笑ってくれてほっとした。その後やっぱり鳥の姿のまま指と舌でイかされて、胸にアルフリートさんの精液をぶっかけられた。白濁を塗りこまれた魂核を綺麗だなと褒められて、あれ、早まった? と思ったがラクリマから帰ると念話が届いてそれどころじゃ無くなり、急いで体を綺麗にして部屋の換気をして皆を出迎えた。
▽
パジャマに着替え玄関前でコロナとソックス達を待つ。
僕が駆け寄る前にコロナが全速力でこちらに駆け寄って飛びついて来た。
大型犬の突進は身体強化しないととてもじゃないが受け止めきれない。
『ただいまー』
「おかえり、コロナ」
『やっぱりぼくがさきじゃないとね! いっぱいとってきたよ。ごはんにしようよ!』
ぶんぶんと振られる尻尾。しゃがんでごめんねってしがみつく。
『ぼくこそごめん。でもつかさがわるいんだからね?』
「うん・・ソックスもラクリマも、ごめんなさい」
「ここは外だ、話なら家の中でしろ」
ラクリマからの適切なつっこみ。いつでも夕焼け空のこの階層はしんみりとした気分にさせる。
「おかえり、コロナ、ソックス、ラクリマ。みんなの今日あった事の話を聞かせて」
▽
リビングのラグの上で円になってお話合い。コロナを胡坐をかいた膝の上でブラッシング。
みんなの話を聞いて、僕が話す順が嫌でもやってくる。
「どうせお前の事だから下らない事でも考えていたんだろう。大方無理やりに連れて来たんじゃないだろうか辺りか」
「ぐ・・だってさ、コロナ友達いっぱいいたんでしょ? 会いたくないの? こっちに来て寂しくない?」
『さびしいこともあるけど、つかさともだちすくないでしょ? ぼくがいかなきゃつかさはとってもさびしかったでしょ?』
胸が痛い。幼いドラゴンにすら心配される交友関係の薄さ。
『それに、ぼくだってあのせかいがなくなるのはいやだから』
「コロナ・・・ごめん、ごめんね・・・ソックスが友達になってくれれば罪滅ぼしになるだろうって、勝手に思ってた。
ソックスも、もちろん同情がたくさんあったけど、ソックスを通してザーカさんに恩を売りたかった。僕の行動の意味を隠してた、ごめん。訳が分からなくて不安だったよね」
僕だったら根拠のない親切は不安になる。何も返せない事を重荷に感じていっそ何もなければいいと思う。
『つかさってときどきほんとばかだよね』
「うん、バカなんだ。嫌気が差したら離れてね。本当は嫌いで、拒絶するのも面倒で、嫌々一緒に居るって後々言われるのが一番辛いから」
『おこるよ?』
「いいよ、コロナが僕を嫌ってもきっと僕は気づけない。だから好きにするといい」
『つかさ、ぼくの石だして。よぶやつ』
「あ、うん。これの事?」
ラクリマの精霊石とコロナの召喚魔石のピアスは念のため外しっぱなしにして、白衣のポケットに入れている。そこからコロナ用の運営配布のチート召喚魔石を掌に載せて取り出した。
「これがどうかしたの?」
『えいやっ』
パキリ。
「コロナアァァッァ!?」
透明なチート召喚魔石は中央からぱっきりと3つにコロナの牙によって砕かれた。
刻まれていた魔術式は崩壊し、内包していた魔力が解けて霧散し召喚石としての意味を失った。
『ふふーん、これでぼくがいてほしくなくてもどっかにやったりできないね。すきなときによびつけることもできないね。だからぼくがすきにできるよ。ごめんなさいはこれでおしまい』
ま、まさか一人泣く為に西の平原に送還したの根に持ってたの?
『ぼくはぼく。つかさはつかさ。ひとりになりたいときはラクリマみたいにぼくにも言って。まあ言うこときくかはそのとききめるよ』
「コロナ僕の言う事はあんまり聞いてくれないよね・・・」
『だってともだちでしょ?』
「ラクリマのいう事は聞くのに」
『だってラクリマだし』
そうでした。
『でも、ソックスは別。ぼくをソックスより上にしてくれないとだめ!』
「うん、コロナが一番だよ。ソックス、それでいい?」
こくんと頷く黒狐の灰色の瞳は、ここを飛び出して行った時よりずっとまっすぐで理知の色を覗わせた。きっとこっちが本分なんだろう。
「司。私に対しては無いのか?」
水球がずずいっと眼前に迫る。
「何が?」
「私に世界を渡った事に対しての謝罪や感謝は無いのか」
「え、ラクリマ友達いたの?! 精霊だと柘榴さんと喧嘩してる所くらいしか知らないんだけど」
「この、たわけが!」
「いたったたた! ごめんなさい! 言っていい事と悪い事がありましたぁっ!」
キューブアイスが機関銃の様に乱射される。飛び散る氷をぼりぼりいつの間にか膝の上からどいていたコロナが食べている。
その後正座でラクリマへの感謝の言葉を言わされることになった。
「ラクリマにはいつも感謝してる。貯水タンクはいつも綺麗な水を入れてくれてるし、僕の知らない所で色々してくれているのも分かってる。暗躍するのは正直よくないと思うけど、言っても無駄だろうし言うだけ言う」
「半分は批難になっているぞ」
「ラクリマがなんだかんだ一番付き合い長いし、僕の事理解してくれてる。ありがとう、水を使うたびに心ではラクリマに感謝してるよ」
「まるでインフラだな」
「僕にとって世界で一番重要なインフラであることは間違いない」
「少しは飾れ」
夜ごはんは二人が獲って来た鮭を料理する事になった。コロナは内臓取って下処理してキノコと野菜を入れてアルミホイルで包んでオーブンでバター焼き。ソックスはアルミホイルで包み焼きは変わらないけどハーブと果物でバター無し。
コロナがソックスに一切れ分けたのは見逃した。同じもの食べると確実にソックスが太る。
お返しだったのかコロナがソックスの鮭にかぶりついた。一口だけど上げた分より多くないか、あれ。
「これもこれでおいしいね」って感想を言っていたが、コロナは僕がいないときどんな物食べてるんだろう。
こうしてコロナと僕はちょっとだけ理解しあえて、許し合って、失って、得た。
これからもよろしくね。コロナ。
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