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第2章 司のあわただしい二週間
第38話 欠けたら満ちる
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与えられる体液に恍惚とする。瞳を閉じるとより一層味も触感もよくわかる。
表面も裏側もぐちゃぐちゃになって、うっすら目を開けたときに透明な唾液がお互いの舌を伝っていた映像に言葉にならない羞恥を覚えた。
さっきみたいにこっちのペースを考えてくれない息苦しさから、興奮から息が上がって呼吸が乱される苦しさに変わる。
表面に僅かな脂肪が付いているだけの胸を、自分とは違う硬く節ばった指が這う。小さな胸の尖りを舌で舐め転がされ、もう片方は指が悪戯に摘まんで擦る。
赤い舌が這った痕がてらてら光る。目が合う、にっこりと笑みながら見せつける為ににゆっくり頂を舐めて、吸い上げ、甘く噛まれるとびくっと体が跳ねた。
「ぁっ、もっ・・・やめっ、んっ・・」
「最後までしなければいいのだろう? 私が昨日どんな気持ちで居たか分からないのだろうな」
「あ、謝ったじゃないですか! ああぁっ! ひっ!」
痛みになる寸前の強さで捏ねられ、慰撫するみたいに口で包む。
みぞおちの魂核に音を立ててキスされると、きゅんと満たされた気持ちが湧きあがって、抵抗する気が薄れてしまう。
舌先が胸元から這い上がって首筋に。顎をかぷりと噛んで、また口づけが与えられる。
他人の魔力がこんな風に感じられるなんて初めて知った。バニラみたいに甘くって、コーヒーの苦味とナツメグみたいなスパイス、お菓子を食べてるみたい。
舌を伸ばして相手の体液を強請る様はまるで雛鳥だ。
自分の物か相手の物か分からない唾液が口の端から零れ落ちるのを勿体ないと感じてしまう。
雛と親鳥との違いは、この僕の上にのしかかっている人は僕を求めてくれているという事か。
自由になっていた両手で抱き着くと、充足が深いところに満ちていく。
しかし、膝を割られながら片足をぐいっと胸近くまで持ち上げられた時はっと正気に返ってしまった。
「明かり! 明かり消してください!」
「見られて困る様な物でもあるのか?」
「恥ずかしいんです。身体強化で見ようとしないで下さいよ!」
しぶしぶといった体で腕が枕元に伸び、壁の照明が絞られる。真っ暗ではないが妥協範囲か。
「どうせ見えるのに無駄な抵抗を・・・」
「いや、だって恥ずかしいものは恥ずかしいんですって」
白衣の裾で隠すと邪魔な白衣は剥ぎ取られ、まとめてネックレスもベッドの下に放られる。ポルノ俳優や漫画の性器とは違って小陰唇だって大きいし、玉だって無い。陰茎は射精も出来て機能的には問題無いが立派とは言い難い物で、やっぱり見せたい物じゃない。上から下まで誰得だ。
転生して初めて自分に付いている女性器を見た時は特に興奮など無く、正直生々しくてグロいなという感想だった。僕が女性に生まれていたとしても、自分に付いている男性器には興奮しなかっただろう・・・。自分の物だと思うだけで興奮要素ゼロだ。
だからこそよく指を入れたり舐めたりできるなぁと!
「んぁ・・はっあ、あっ・・ああっ、んっ」
「まるで子犬の鳴き声だな」
「しゃべるなぁっ! ふあぁ!」
ぶちゅ、ぶちゅと抜き差しされる指は二本に増やされ、体内を弄ぶ。太ももの柔らかい部分に吸いつかれるとチクリとした痛みが走る。
内壁を擦り、奥を撫で上げじっくり高められると、激しくない分自分が指を締め付けているのが良く分かって辛い。
出ていく指のざらりとして、節張って、その上勃った性器の裏筋をねっとり熱い舌が舐め上げる。
羞恥から足を閉じようとしても太ももは肘で押さえられているから隠すこともできない。
頭を振りながら銀髪を押さえると、立ち耳と硬めの髪の感触がした。
募っていく性感をどうにかしようと、ぐしゃぐしゃと髪をかき乱しもがくが、ぱくりと銜えられて舌全体で刺激されると熱くて、恥ずかしくてどうしていいか分からなくなって自然と涙が零れる。
指がまた増やされたみたいだったが、圧迫感も一瞬だった。ひっ、ひっうと速くなる呼吸に合わせて下から響く音がどんどん酷くなる。
「ほら、見ていてやるからイけ」
「あっ、ああっ、ああっああッ・・!」
真っ白に光が弾けて、気持ちよく締め付けてくる手の中に精を放った。
「っは・・は・・・はぁ、んっ」
口の中の唾液を呑み込む。脱力感に身を任せるとベッドに沈みそうになる感覚、このまま落ちちゃいそう。だめだ、アルフリートさんはまだいってない。手とかでした方がいいのかな、ちゃんと協力しないと・・・。
唇の横にリップ音を立ててキスが落ちる。額、頬、耳と顔中に降る。息が整うのを待ってくれているのかな。
重ねた唇からさっきとは違う、多分自分の味がしてしょんぼり。やっぱり自分の物だと思うと興奮しない。
膝裏に手を添え左脚を胸につくぐらいに押し上げられる。
ああ、また舐められるのかな・・・。
最後まではしない。その言葉の意味を僕はリアルの基準で考えていた。だから繁殖形態のまったく違うこの世界でのその言葉の意味にまで、考えが及んでいなかった。
「ああぁあああぁぁ?!」
「ぐ、はっ・・やはり全部は無理か・・・」
脱力しきっていた体に突然熱塊が打ち込まれる。処女膜とかは無いからか痛みは無いけど、何で、何でって、訳が分からない衝撃で精液が溢れ、体がガクガクと震える。
「あ、あっ、何で、まだしないって!」
「済まない、あまり、くっ、持たないな」
熟れた果実を潰すみたいな品の無い音が頭を犯す。熱くて、重くて、他人の欲望を受け入れるの事の実感が熱と音を伴って無理やりにねじ込まれる。
「いやぁ! いれないって! なんでぇっ!」
ばたばたと暴れて腰を足で叩くと、大人しくしていろとぎちりと両腕がまた僕の両手を標本にされた蝶みたいにベッドに縫い留める。
「そうやって、拒絶してみせて煽るのがお前のやり方なんだろう?
今迄散々に煽ってくれた責任を取ってもらおう。そんな気じゃなかったは止める理由にならん!」
眉間に皺を寄せ、オレンジに光る瞳は恨みを僕にぶつけてきた。
嫌がる声とは裏腹に、丁寧にほぐされた体は太い肉棒を従順に受け入れきゅんきゅんと締め付けて中に居るの存在を僕に突き付ける。出て行かないでって引き留めて、その度にお腹の底が熱くなって、言葉が千切れる。
ただ荒波に飲まれた小枝みたいにもみくちゃになっていく。拒絶すればするほど勢いと聞くに堪えない音は増して、容赦なく突き上げる動きにアルフリートさんの苛立ちを感じた。
だって、ゴムとか使ってないし、内側から湧きあがる快感も痛みもごちゃまぜでどうしようも無くて、沸騰した頭で切れ切れに懇願する。
「あぅ! いやあっ! だめ、だめぇ!」
「はぁ・・何がダメだ!」
「あ、っぁ、あかちゃんできちゃうっ! ぬいてぇ!」
「・・・! 最後までしないと言ったのはお前だろう!」
「あっ、あぁっんんんんっっ!」
ぐぷぷと出て行った熱塊を無意識に締め付け絡みつく膣内、ばちばち電流が背骨を伝う。
でも足りない、なんか足りないのだ、裏側を細く尖った爪でカリカリカリカリ引っかかれる違和感。
「違う! はぅっ、ちがうったらっ! ん、んっ・・」
目を瞑るった瞼の裏でチカチカ光が飛び散り、胸が跳ねる。求めている物が与えられなくて切なくて助けてほしい。
両手が腰を鷲掴みにして、宙に浮いた腰が膝に乗せられる。涙で霞んだ視界の向こうにオレンジがかった黄色の光。
「あっ、は、キスっ、キスして!」
キスというよりはもっと荒々しくて、ただ受け入れろと無言の暴力に晒されている気になる。
それを求めていたのだと思ったけど、これであってるけど、まだ違う。
厚みのあるしっかりした体に抱き着いてすり寄ると、ああ、ここにあったのかと分かった。
「好き、すきっ、だから・・」
本能の導くままアルフリートさんのシャツの前合わせをにぎって力一杯開く。ぶちんと跳ね飛ぶボタン。
見つけた胸の上に白く輝く銀色。アルフリートさんの魂。
僕もこれにキスしたかった。
「んっ、はぁっ、んん・・ぷっ・・」
キスだけでは止まらなくて、舌を出して舐める。動きが止まったから舐めやすい。
抱き着いてちゅっちゅと愛撫する。これに触れる喜びが湧きだし、疼くままに胸を合わせようとした所で強引な手が肩を掴んでそれを阻んだ。
「・・・この悪魔め。自分から最後まではしないと言っておいてこれか?」
歯を食いしばって先ほどよりもよほど大きな憤怒。なんで? 何を怒っているんだろう?
「ふぇ? 何を、ああぁぁ!?」
勢いよく熱が出ていく。ぐるっと背中を押して尻だけ高く上げた状態でうつ伏せにされ、また硬い物が溶けた僕の中を踏み荒らしてじゅぷじゅぷと入って来る。かんざしが落ちて、結い上げた髪が中途半端にベッドに散らばった。
「あっ、ああっ・・ふかぁっ、ああぁ!」
「くそっ、この淫売がっ・・・」
慣れたからかさっきより深い所まで熱が入り込む。足りないって、欲求不満をこの欲で埋め尽くして欲しくて腰を押し付けて奥を強請る。
後はもう揺さぶられるままシーツにしがみついて泣きじゃくるしかなかった。
「中、なかだめっ! 出して! やだぁ! あぁぁ!」
「中に射精(だ)すぞっ!」
「んんっ・・あああぁぁッ!」
首筋からぷつりとした痛み。熱く滾った欲をどぷどぷ胎内に注ぎ込まれ、零すなと言われた所で意識が途絶えた。
▽
起きた時髪は解かれていたが、僕もベッドも綺麗にされていた。後ろから抱きかかえられ、苛立ちを隠さず事の次第を追求する。
項はうっすら出血していて、ヒールで速攻治した。治せるって知ってるから舐めてご機嫌を取ろうたってそうはいかない。
ピロートークというより事実確認だ。色気も何も無い。
「で、なんで最後までやったんですか?」
「していないだろう?」
「は? 挿れたじゃないですか!」
「・・・・司、お前の言う最後とはなんだ?」
「え、最後って、そりゃ、挿れる事ですよね・・?」
「最後とは核合わせの事だろう?」
怒りも露に振り向いて批難したら、真剣な顔で予想外すぎる答えが返って来た。
この世界に於いて生殖の条件は中出しでは無く核合わせです。そしてやってる最中はとっても核合わせがしたくなります。そうです、繁殖も、それを司る核合わせも本能なのです・・・何がセックスと繁殖が離れてるだ? あはは、笑うしかない。
「魂核の相性によっては結魂できない事もあると聞く。それは合わせてみないとはっきりとは分からない。お前が待てと言ったから待つつもりだった」
「・・・・」
結魂できない組み合わせがあるのか。それなら半年恋人として情を重ねておいて、結魂するつもりだったのにできませんでしたは悲しすぎるな。・・・アルフリートさん、もしかしてもう結魂とか考えてるのか? 気が早い、正気に戻れ。
向こうも僕の発言でお互いの認識の違いに気がついたらしかったが、後悔も無いし、謝らないぞと言われ、謝ってほしい、でも間違いだったと認められるのも嫌だと思って結局飲み込んだ。
「もしも、確認の一回で子供出来ちゃったらどうするんです?」
「まず一回で孕むことは無い」
体を重ねてよく分かった。これ、今日みたいなセックスしてたら三か月耐えられない。あの頭が馬鹿になった状態はもう嫌だ。少しずつ、ゆっくり慣れていくための時間だったのに。
こちとら膣への中出しは妊娠の可能性の世界の住人だったのです。だめだ、思い出すと羞恥で焼け死んでしまう。直視したくない、僕だってこれでも男なんだ。僕も諸々の言葉は忘れるから、そっちも綺麗さっぱり忘れてくれないかな。
膝を抱え、はぁ、と深い溜息を吐いて白いシーツを眺める。後ろから回る腕は好きだけど複雑。まだ何か中に入ってる感じがして不快。
「よし決めました」
「何がだ?」
「三か月挿入禁止です。勿論核合わせも」
その後初めての喧嘩をした。当初の予定通り僕の世界では最後ってそういう意味だったんです! で押し切った。
最後までしなければいいんだな? と同じ科白をもっと凄味の有る顔で吐かれた。後悔は先に立たないが、後を絶った事も無い。
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