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第2章 司のあわただしい二週間
第67話 お家
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ソックスも招き、コロナとあわせて羊と犬と狐のもふもふパラダイスを堪能。横たわった自分の上に黒い狐を乗っけ、コロナとアルフリートさんにサンドイッチ。寝た気がしていなかったし、このまま寛いでいたら寝てしまいそうだったのでソックスに一声かけて豹に変身。
上から下りてもらって腹見せごろりん。おいでーと誘うとえ? 本当にいいの? と周りをきょろきょろ。いいからいいからとおずおずやってきた黒いもふもふをホールドして寝返り。ソックスを僕とアルフリートさんでサンドイッチ。
「ソックス、この姿でも大丈夫そう?」
『やっぱりそっちの方がいい』
「遊びは皆でやらないと。モグラたたきソックスも参加してもらおうと思ってね。今日は午後からその練習」
この姿に慣れてもらって、安全な僕の部屋で潜影訓練。それができたらダンジョン。大型肉食獣の姿に恐怖心があったら訓練どころじゃない。同じ人物だと頭で分かっていても怖がる子は結構いる。この様子だと大丈夫だろう。コンディションを尋ねる。同調しても魔力に乱れは見当たらない。
昼前までゆっくり皆と話しをて、もふもふして、二匹にもキスをして、食べたい物とか、好きな物とか、昨日何をしただとか、そんな他愛のない時間を過ごした。コロナはちょっと不満そうだったけど、我慢してくれている。ちゃんと体力使って思いっきり遊ばないとコロナの健康に悪いし、遊べるときに遊んで鍛えておかないとね。
心地の良い毛皮ともふっていい気になった僕は、アルフリートさんにもその調子で喉を鳴らしながら長々とご機嫌に全身を擦りつけて遊び、その結果べたべたし過ぎだと注意された。キスもやりすぎはノーと却下されたから、もふ接触を増やして好意を高める作戦だったが、やりすぎだったらしい。しょんぼりしながら対応策を考える。
「やっぱりずっとべたべたされると、困りますか?」
「そうだな」
「じゃあスキンシップは量より質って事でいいですか・・・?」
「まぁ、そういう事になるのか?」
僕も前に進みたいが、勇気が出ない。3か月経った頃にはどーんと余裕を持って受け入れられるようになっているのが目標である。アルフリートさんは僕の様子を窺っているのがありありと分かる。そして、そんなアルフリートさんに喜びを感じている自分を自覚していた。なので、この状況でどれだけ僕がコミュニケーションに慣れて、そんでもってどうやったら僕に好意を持ってくれるかの一挙両得の方策が無いか考えた。
二人で家の事を分担。ラベンダーにオレンジ。精油を金のタッセルの付いたアロマストーンに数滴、リビングの壁に掛ける。鼻は良いだろうから控えめ。選んだ理由はアルフリートさんの好みが大きい。
カンパしてくれたし、ちゃんと還元していくつもりでいる。まぁ万人に快適至極はあり得ないし、凝り始めたらきりが無いのでほどほどに。住環境は本人が気付かなくてもストレスが溜まっている部分、改善する余地がかなりあると思う。快適な我が家が余裕を作るをモットーに色々と。一番重要なのはそこに住む人間同士の関係だが、同じ人間でも家具パイプ椅子で打ち放し+騒音有空調無しに入れられた場合と、広々清潔ゆったり快適空間+いい香りなら絶対後者の方が話をする気にもなるだろう。
家事のお手伝いはリビング換気とお掃除をお願いした。面倒なら風の生活魔術で埃外に出すだけで良いですよーと言ったらラグを外に出して綺麗にしてくれていた。キャットウォークもハンディワイパーでやってくれたし、綺麗好きなのかもしれない。清掃用の機能付き魔道具はこの家の色々な所にあるが、人の手が不要になるって事は無い。
▽
募金箱を部屋に片付けた時、ぽよんと頭にひんやりとした感触。
「ただいま」
「おかえり」
ぽよん、ぽよん、ラクリマをヘディング。肩甲骨でキャッチ。左腕にころころ、傾けて右腕。
右の手の甲に来たらふっと手を振り上げると、水球がまっすぐ上に飛ぶ。微妙に形を変えて落ちてきたのを胸で一回ぽよんと弾いて、インステップで右左。やや強めに蹴り上げ太ももに乗せて角度を変えてその上でころころ。
つるんと太ももから脛を伝ってまた足を振り上げて上へ。頭でぽよん・・・ぽよん・・・。落下速度が遅くなってペースが落ちる。
「ねぇラクリマ」
「なんだ」
「ラクリマはアルフリートさんと付き合うの賛成?」
「・・・お前は人の世界で生きていきたいのだろう。なら必要なものは人だ。お前がこの世界で生きたいという思いを私は尊重しているだけだ」
「ふふ・・たとえ人になんと思われようとも、苦しくても充実感があって、それで幸せだって思える核があれば色んなものが解決するって分かるんだ。頭では。きっとどの世界でも。空っぽに他人の価値観詰め込んで、あっちこっちではかってばっかり。今ここにいる自分を許すってたったそれだけなんだけどね」
自分を許せない人が誰を許せるというのだろう。混線した感情はくぉんと音を立てる。分離しようも無い混ざった汚らしいそれは全て自分だ。中途半端な理性と知性、未熟で捩れた精神は完全な発狂も乖離も許さない。破滅の決定打になりうる酒や薬物の依存は避けて。その絶妙な配合に失笑が漏れる。新しい世界は新たな苦しみを生んだ。この苦しみは新しい充実、生の実感に繋がるものか今は分からない。
「私は今のお前が好きだぞ」
「僕もラクリマが好きだよ」
頭上に落ちてくるきらきらした水。両の手を上へ。ぱちゃりと音を立てたそれを抱きしめた。
枕元のチェストの上にガラスの水盤を置く。レイムさんからもらった泉の聖地で生まれた睡蓮をそこに。聖地の水を入れたが水盤を満たすには足りなかった。ラクリマをその上に掲げるとつぅーと細く花を避けて水が流れ、手首から伝った水が袖を濡らした。
「綺麗だね」
「ああ」
「綺麗なうちに食べちゃわないと」
「この世界の見たことの無い花という花を食べる気か?」
「それもいいかもね?」
ずっと咲いてる生花なんてありはしない。食べる日が少しでも遠いと良いと思う同じ分量で、はやく食べちゃいたいなと思った。
▽
お昼を済ませ、コロナとアルフリートさんは外に出て行った。僕は暗いマイルームでソックスとベッドの上でごろごろ。ちゃんと制御訓練はしてる。拒絶感が出ないくらいにお互いの魔力を同調させている。ソックスはまだ魔力操作が上手くない。こっちだよ、こんな感じだよと細く小さく流して、言葉で言いながら部位に手を添え、体中を巡る魔力を少しずつ認識させる。
「今頭の上、右肩、右脚、足の先、また昇って付け根、下がってお腹、そうそう、上手上手。僕の手の温度をイメージして。それがあると意識すると自分のそこ部分が温かい、目を閉じててもあるって分かるでしょう?」
さすが野生で生きてきただけある。人間よりずっと勘が良い。ザーカさんにも教えてもらってたのかな? コロナはこれは数回やればすっかり覚えてしまって、上達速度は人と比べ物にならないほど速かった。あの時はさすが龍だなと思ったものである。
まぁ・・オド操作学習は速かったが、体外放出量が自分のやりやすい域やテンポをはみ出ると途端に操作精度が落ちた。イメージだと管の大きさが違いすぎるのだ。人間が水道管くらいなら、あっちは直径がマンホールくらいありそう。コップ一杯水下さいってのにそんなモノで適量出すのは難しい。
犬の姿をしているがあれは龍で別の生き物。人の世界のルールやコツを教える事はできても、教育までは出来なかった。こちらの世界でもきっとまた飛び出して友達を作るだろう。僕ができるのは優しくて素直でかわいいあの龍とひと時遊んだりする事くらいだ。
繰り返し、手を離し言葉だけにする。ラクリマの通訳を頼りつつ教える。魔力も離し、言葉だけで自分の魔力が動いている事を認識できるようにはなった。僕の手が無くともイメージしている部位が温かくなるイメージを刷り込み、操作を教え、僕に同調する事を覚えてもらう。まだ覚束ないが、まあいずれ慣れる。
「んじゃ、いくよー。せーの、どぼんっ」
豹に変身して胸に抱え込み一緒に影にダイブ。一瞬のぐわんと、断続的な揺れ。同意があって同調状態ならソックスくらい魔力量でサイズなら引きずり込める。
「怖くない?」
胸元の狐から返事は無く、灰色は茫洋としていた。どこまでも広がっているように思えるこの暗い影は恐ろしいものじゃないと、この熱から伝わってほしいと願う。
息を継ぐように陸に。最初は数分、戻って魔力を離して、休憩してまた同調して潜る。吐き気、眩暈の様子は無いか、怯えていないか、拒絶感を抱かれてしまったら失敗。怖がらせず、できるようになるまで手を引くのがお仕事。
今度は時間を長く。慣れてきたら同調の量を下げる。すこしずつソックスに割合を増やし、夕方にはソックスは自分でも浅い部分に潜れるようになっていた。
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