7 / 26
Chapter 1 不気味な館
第六話 絵画の在処
しおりを挟む
こうしてジョージとアーサーは、噂の絵画を探すことになった。
まずは聞き込みから始めようということになり、その日は解散して、翌日以降に各々調査を開始した。
ジョージは数少ない友人や、知り合いの画家に話を聞いて回った。
友人からはこれといった情報は得られず、むしろ、大学を中退しているのにそんなことをして何になるんだ、と非難されてしまった。
知り合いの画家も、そんな噂話を気にしている暇があったら、一枚でも多くのスケッチを描いた方が君のためになる、とアドバイスされてしまった。
(……これは、初手から詰んだな)
ジョージは一人うなだれた。
〇●〇
それから数日後、ジョージとアーサーは行きつけのパブで状況報告した。
アーサーを先頭に扉を開けると、ぼんやりとした明かりが店内を照らしていた。日がもう落ちていたため、店内は混み始めている。
エールの強い香りがアーサーの鼻腔をくすぐった。
ギシギシとなる床を踏みつけながら、ジョージはパブの建てつけの悪さに内心ヒヤヒヤしていた。
アーサーはカウンターに行き、オレンジジュースとエールをそれぞれ注文した。その後ろでジョージは財布を取り出した。
二人は会計を済ませると、空いている席を見つけて腰を掛けた。
ジョージはコップに口をつけ、咳払いをしたあとこう言った。
「アーサー、何か収穫はあったかい?」
「まぁな、そっちはどうだ?」
アーサーの返事を聞いて、ジョージは緑色の目をキラキラと輝かせた。
「なんだって!? 俺の収穫はゼロだっていうのに……」
「そんな気はしたぜ」
「……俺ってそんなに情報集め下手かな?」
アーサーはエールを一口含むとこう言った。
「まぁ、上手ではないんじゃないか」
それを聞いたジョージは、がっくりと肩を落とした。
「気にすんな、ジョージ。お前には絵の才能があるだろう?」
「……ありがとう、アーサー」
アーサーは、自身の収穫について話し始めた。
それは、彼の仕事仲間から酒の席で聞いた話だった。
高級住宅地にある廃墟で盗賊が何人も失踪している、という噂が貧民街で広がっているんだそうだ。
絵画の噂とどこか似ているな、と考えたアーサーはその仕事仲間からその廃墟の場所を教えてもらったのだそうだ。その際にひと悶着あったらしいが、それはまた別の話。
「もしかして」
ジョージは何か確信を得たような目で、アーサーの青色の瞳を見つめた。
「あぁ、おそらくそこに噂の絵画があるんじゃないかと思う」
そういうと、アーサーはエールを飲み干し、ジョッキをドンッとテーブルに置いた。
「ジョージ」
「何だい?」
「もしその廃墟に忍び込むんだとしたら、かなり危険が伴うぞ」
それでもやるのか? というように、アーサーはジョージを見た。
「何かあったら、アーサーが何とかしてくれるんだろう?」
ジョージはフフッと息を漏らした。
「……とんでもない奴を主人にしちゃったらしいな、俺は」
アーサーはエールを追加で頼もうとした。
ジョージはそれを制止すると、飲みかけのオレンジジュースを勢いよく飲み干した。しかし勢い余って口の端から少しこぼれてしまった。ジョージは右手でそれを拭った。
「俺もエール一つ頼む」
「お前……飲めるのか?」
アーサーは眉をひそめてそう言った。
「大丈夫さ」
「ならいいんだが」
「さぁ、忍び込む日取りを決めよう」
ジョージは椅子に座りなおすと、アーサーの方を向き直った。
まずは聞き込みから始めようということになり、その日は解散して、翌日以降に各々調査を開始した。
ジョージは数少ない友人や、知り合いの画家に話を聞いて回った。
友人からはこれといった情報は得られず、むしろ、大学を中退しているのにそんなことをして何になるんだ、と非難されてしまった。
知り合いの画家も、そんな噂話を気にしている暇があったら、一枚でも多くのスケッチを描いた方が君のためになる、とアドバイスされてしまった。
(……これは、初手から詰んだな)
ジョージは一人うなだれた。
〇●〇
それから数日後、ジョージとアーサーは行きつけのパブで状況報告した。
アーサーを先頭に扉を開けると、ぼんやりとした明かりが店内を照らしていた。日がもう落ちていたため、店内は混み始めている。
エールの強い香りがアーサーの鼻腔をくすぐった。
ギシギシとなる床を踏みつけながら、ジョージはパブの建てつけの悪さに内心ヒヤヒヤしていた。
アーサーはカウンターに行き、オレンジジュースとエールをそれぞれ注文した。その後ろでジョージは財布を取り出した。
二人は会計を済ませると、空いている席を見つけて腰を掛けた。
ジョージはコップに口をつけ、咳払いをしたあとこう言った。
「アーサー、何か収穫はあったかい?」
「まぁな、そっちはどうだ?」
アーサーの返事を聞いて、ジョージは緑色の目をキラキラと輝かせた。
「なんだって!? 俺の収穫はゼロだっていうのに……」
「そんな気はしたぜ」
「……俺ってそんなに情報集め下手かな?」
アーサーはエールを一口含むとこう言った。
「まぁ、上手ではないんじゃないか」
それを聞いたジョージは、がっくりと肩を落とした。
「気にすんな、ジョージ。お前には絵の才能があるだろう?」
「……ありがとう、アーサー」
アーサーは、自身の収穫について話し始めた。
それは、彼の仕事仲間から酒の席で聞いた話だった。
高級住宅地にある廃墟で盗賊が何人も失踪している、という噂が貧民街で広がっているんだそうだ。
絵画の噂とどこか似ているな、と考えたアーサーはその仕事仲間からその廃墟の場所を教えてもらったのだそうだ。その際にひと悶着あったらしいが、それはまた別の話。
「もしかして」
ジョージは何か確信を得たような目で、アーサーの青色の瞳を見つめた。
「あぁ、おそらくそこに噂の絵画があるんじゃないかと思う」
そういうと、アーサーはエールを飲み干し、ジョッキをドンッとテーブルに置いた。
「ジョージ」
「何だい?」
「もしその廃墟に忍び込むんだとしたら、かなり危険が伴うぞ」
それでもやるのか? というように、アーサーはジョージを見た。
「何かあったら、アーサーが何とかしてくれるんだろう?」
ジョージはフフッと息を漏らした。
「……とんでもない奴を主人にしちゃったらしいな、俺は」
アーサーはエールを追加で頼もうとした。
ジョージはそれを制止すると、飲みかけのオレンジジュースを勢いよく飲み干した。しかし勢い余って口の端から少しこぼれてしまった。ジョージは右手でそれを拭った。
「俺もエール一つ頼む」
「お前……飲めるのか?」
アーサーは眉をひそめてそう言った。
「大丈夫さ」
「ならいいんだが」
「さぁ、忍び込む日取りを決めよう」
ジョージは椅子に座りなおすと、アーサーの方を向き直った。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる