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Chapter 2 山奥の別荘
第十九話 異変①
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「寒いな……」
アーサーは身震いした。冬はまだ遠いのに、吐く息は白かった。部屋の外と比べると、明らかに気温が低い。ジョージは思わす手を擦り合わせた。
部屋の奥に暖炉があるが、もちろん火がついていない。暖炉の前には火かき棒が転がっていた。
床のラグはエキゾチック模様で、ジョージにはあまりなじみないものだった。中央に置かれた木製のテーブルには、木製の椅子が四脚ついていた。テーブルには職人が彫ったのであろう、美しい蔦の模様がほどこされていた。
アーサーは暖炉の上やその周辺の本棚を調べているので、ジョージは部屋の入り口付近やそのあたりを調べてみることにした。
部屋の左手側には細い通路があり、気になって覗いてみると、なんと隣の部屋に繋がっていた。短い通路を通って先に進むと、キッチンルームがあり、そこの空気は特に埃っぽく籠っていた。洗い場にはナイフやフォークが散乱していて、割れた皿が床に何枚か落ちていた。ジョージは間違って踏みつけないように細心の注意を払いながら、元の部屋に戻った。
入ってきたドアの近くに、腰くらいの高さの本棚が設置されていた。
一番上の段から一冊の本が飛び出ている。気になっていタイトルを見ると、『イギリスの絵画』と書いてあった。書店に行けば、必ず一冊はあるようなタイトルだった。何気なく手に取ってパラパラとめくる。やはり、ターナーやロセッティといった有名な画家ばかり載っていた。
絵画探しを再開するために、本を閉じて棚に戻そうとした。
そのときジョージはある違和感に気づいた。
(この本、最後の数ページだけ紙の色が違う。何というか、別の本を無理やりくっつけたように見える)
ジョージは気になってもう一度本を開いてみると、とある展示会の目録が張り付けてあった。
その目録のはじめに書いてあるのは『見張りの女』だった。
(なんだろう。全体的に絵のタイトルが不気味だな。誰がこの展覧会を主催したんだろう?)
改めて文字をたどろうと本を持ち直した拍子に、最後のほうに挟まれた古い新聞の切り抜きがパサリと床に落ちた。拾い上げて読んでみると、ジョージの背筋がゾクリとした。
(そうか、噂の絵画には触れてはならないんだ!!!)
そう判断したジョージは、すぐさま叫んだ。
「アーサー!! この家にある絵画に触っちゃだめだ!!!」
そう大声で叫んだが、アーサーの姿が見当たらない。
(おかしい、さっきまで暖炉の近くにいたはずなのに……)
ジョージは慌ててその切り抜きをポケットに突っ込むと、必死に部屋の中を探し回った。
(くそっ!! アーサーがもう被害にあったかもしれない!!!)
そんなに広くない部屋のはずなのに、どこに行ったのか分からない。
ジョージは完全に気が動転していた。
(部屋の中に絵はないから、おそらく別の部屋に行ったんだ。きっとそうだ!)
そう考えなおしたジョージは、他に通路や扉がないかくまなく探し始める。そしてついに、暖炉の右側にある細い扉を見つけた。
「ここに、入ったのか……???」
ドアを開けた音はしなかったが、ジョージは耳が片方聞こえづらいため、その記憶に自信がなかった。
ジョージは固唾をのんで、ドアの取っ手に手を伸ばした。
アーサーは身震いした。冬はまだ遠いのに、吐く息は白かった。部屋の外と比べると、明らかに気温が低い。ジョージは思わす手を擦り合わせた。
部屋の奥に暖炉があるが、もちろん火がついていない。暖炉の前には火かき棒が転がっていた。
床のラグはエキゾチック模様で、ジョージにはあまりなじみないものだった。中央に置かれた木製のテーブルには、木製の椅子が四脚ついていた。テーブルには職人が彫ったのであろう、美しい蔦の模様がほどこされていた。
アーサーは暖炉の上やその周辺の本棚を調べているので、ジョージは部屋の入り口付近やそのあたりを調べてみることにした。
部屋の左手側には細い通路があり、気になって覗いてみると、なんと隣の部屋に繋がっていた。短い通路を通って先に進むと、キッチンルームがあり、そこの空気は特に埃っぽく籠っていた。洗い場にはナイフやフォークが散乱していて、割れた皿が床に何枚か落ちていた。ジョージは間違って踏みつけないように細心の注意を払いながら、元の部屋に戻った。
入ってきたドアの近くに、腰くらいの高さの本棚が設置されていた。
一番上の段から一冊の本が飛び出ている。気になっていタイトルを見ると、『イギリスの絵画』と書いてあった。書店に行けば、必ず一冊はあるようなタイトルだった。何気なく手に取ってパラパラとめくる。やはり、ターナーやロセッティといった有名な画家ばかり載っていた。
絵画探しを再開するために、本を閉じて棚に戻そうとした。
そのときジョージはある違和感に気づいた。
(この本、最後の数ページだけ紙の色が違う。何というか、別の本を無理やりくっつけたように見える)
ジョージは気になってもう一度本を開いてみると、とある展示会の目録が張り付けてあった。
その目録のはじめに書いてあるのは『見張りの女』だった。
(なんだろう。全体的に絵のタイトルが不気味だな。誰がこの展覧会を主催したんだろう?)
改めて文字をたどろうと本を持ち直した拍子に、最後のほうに挟まれた古い新聞の切り抜きがパサリと床に落ちた。拾い上げて読んでみると、ジョージの背筋がゾクリとした。
(そうか、噂の絵画には触れてはならないんだ!!!)
そう判断したジョージは、すぐさま叫んだ。
「アーサー!! この家にある絵画に触っちゃだめだ!!!」
そう大声で叫んだが、アーサーの姿が見当たらない。
(おかしい、さっきまで暖炉の近くにいたはずなのに……)
ジョージは慌ててその切り抜きをポケットに突っ込むと、必死に部屋の中を探し回った。
(くそっ!! アーサーがもう被害にあったかもしれない!!!)
そんなに広くない部屋のはずなのに、どこに行ったのか分からない。
ジョージは完全に気が動転していた。
(部屋の中に絵はないから、おそらく別の部屋に行ったんだ。きっとそうだ!)
そう考えなおしたジョージは、他に通路や扉がないかくまなく探し始める。そしてついに、暖炉の右側にある細い扉を見つけた。
「ここに、入ったのか……???」
ドアを開けた音はしなかったが、ジョージは耳が片方聞こえづらいため、その記憶に自信がなかった。
ジョージは固唾をのんで、ドアの取っ手に手を伸ばした。
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