一瞬短編

徒区迷

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体育館

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 私は近所の夜道を歩いていた。たまに、こんな夜遅くに暗い田舎町を歩くのが好きなのだ。まあ、田舎と言っても山に囲まれているとか、過疎地域であるとかそういうことはない。コンビニは徒歩一分だし、スーパーやデパートもある。
 ただ、発展はしていないだけである。

 ここはいつも通る家路。だけど、たまには別の道で帰ろうかな。そう思い、小学校のすぐ近くを通る道を選んだ。

 その道は比較的明るく、大きかった。歩道のすぐ横には網で張られた塀、そのさらに奥には体育館が見えた。電気は消えている。

 しかし、少し不可解なことがあった。音が聞こえるのだ。キュッ、キュッ、キュッキュッ。
 こんな時間にバスケの練習か?私は心霊的な存在や七不思議のような、そんな事を連想し恐怖感に襲われた。
 人間は時に怖いものに対して好奇心を抱く。私は体育館の中を、網の隙間から覗いた。

 キュッ、キュッ、キュッ。

 体育館の中には、入るだけ設置された水道が何列にもわたって存在していた。しかも、その蛇口一つひとつに小学生がそれぞれ目の前に直立不動で棒立ちし、表情も真顔から何一つ動かさず、ひたすら伸ばした腕の先端にある手首を捻って蛇口を開けたり閉めたりしていた。

 そういえば、この学校に自分のいとこがいたような。いた。彼もまた、ひたすら蛇口を捻り続けている。
 心霊的な何かか。もしそうだとしたら、何故皆生きている人なのか?そういえば、今何時だ。時計には、二十四時間表示で2:47と記されている。
 どういう事なのか。その後いとこに会ってみたが、いとこはいつも通りだし、結局、訳も分からず私の心にトラウマが植え付けられただけであった。
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