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出会い編
後編
しおりを挟むふわふわの布団の中で、朝を告げる日差しの眩しさをまぶた越しに感じる。
……うーむ起きたくない。
しかし徐々に頭が覚醒しだすのを感じ、微睡みを引きずったまま薄く目を開けた。
霞んだ視界に映るのは……
「……うあ?」
目を開け広がった天井は、格子状に組まれた木を額縁のようにして、美しい植物の絵が描かれた立派な天井だった。
驚いて起き上がるとそこは、俺が住んでる単身者マンションの部屋が丸ごと入ってしまうくらい広い畳の部屋だった。
泊まっていた実家の普通の和室ではなく、何というかすごく洒落た部屋だ。
細緻な鶴や松が彫られた欄間は芸術品もかくやだし、襖(ふすま)には漆塗りの上から銀箔や金箔が貼られていたり、ものすごく豪華な寺の内装の様である。
……っていうか、ここどこ!?
「貴由、おはよう」
声がするほうに振り向けば、何故か俳優もかくやな色気のあるおじ様からフェロモンアタックを浴びました…起き抜けに。
男の少し長めの黒髪が寝起きで少し乱れ、寝着の衿が開き鍛えられた胸が見えている。
気怠げに肘をついてこちらを見つめた男は、寝起きには刺激が強すぎる、掠れた色気過多な低音ボイスで笑った。
「ヒィッ!誰、この男前な紳士は!?」
というか、なんで俺とベッドで一緒に寝てるの!なんだこれ…どういう状況!?
あせる俺を優しく見守っていた男は、首を傾げながら正体を述べた。
「何を言ってるんだ、お前の“ダンディ”は俺だよ?」
「な、なんだってー!!!」
父さん、兄貴。
とうとう俺の可愛いダンディが人化してしまったようです。
しかも、「人化するなら可愛い男の子かなぁ?ダンディ可愛いし。喋れるのなら人化も楽しみかもしれない!」と実はワクワクしていた俺の予想に反して、ダンディは……ダンディは……、本当にまごう事なくダンディでした。
名は体を表すとか言うけど、まさかこんな喋る声だけで女の子が孕みそうなおフェロが過ぎる男前なおじ様が、俺の可愛かったダンディだなんて、予想外にもほどがあるわ!!
「ダンディ」
「うん。なんだい、可愛いね貴由」
「いや、あの…」
なんで俺…、ダンディに抱きしめられてるんだろう。
ナチュラルに胸に囲われて、布団の上で呆然としている俺に、ダンディはとろりと溶けたような笑みを浮かべ、耳障りの良い低い声で語り出した。
「貴由、君のおかげで私の本来の霊力が満たされたんだ。ありがとう。感謝しているよ」
「……本来の霊力?」
「君と出会ったあの日、私は雨師と喧嘩してね…久方振りに力を使い過ぎて、地上に降りてしまったんだよ」
雨師とは、雨ノ神の総称である。
梅雨の始まりを告げる雨と雷を起こすのは、雨師と雷獣の仕事である。
実はこのふたり、めちゃくちゃ仲が悪い。
仲違いの原因は簡単に言えば、雨師に仕える雨童子である澪という美少年が、雷獣を褒め慕っているから。に尽きる。
雨師と雨童子は主従関係だが恋人同士であり、周囲を憚らぬイチャイチャカップルなのだが、そんな溺愛する雨童子がむかーし雨師に、
「雷獣さんってカッコイイですよね!僕いつも雷獣さんに会える梅雨の始まりと終わりが楽しみなんです」
とか言ったもんだから、その日から嫉妬に狂った雨師に八つ当たりで攻撃されているのだ。そこからずっとふたりは犬猿の仲である。
雨師のように、基本自然を司るものは、他に無関心なものが殆どなのだが、逆を言うと執着しているものに対する想いは深く、狂気に近くなる。いわゆるヤンデレというやつである。
まあそんな性質を持つ雨師なので、会ったが最後、ネチネチとした嫌味から始まるのはもう雷獣も慣れていた。
「貴様、我の目の前によくも姿を現せるな」
「これが仕事であろう。私はお前の掌中の珠に興味などないと何度言ったら分かるのだ」
この様にいつもは、お互い若干イラつきながらも何とか卒がないように仕事をこなして終わるのだが、今回はそうはいかなかった。
「嘘つきッ!!……雨師なんて嫌いです!そんなに私より色界の飛天たちが良いなら、そちらを選んだら良いのです!!!」
「誤解だ、澪!我は飛天どもなど興味なぞない
!お前だけだ澪!!」
「そうやって、他のものにも情けをかけているのでしょう!」
さて梅雨入りの仕事だと来てみれば、迷惑なバカップルが痴話喧嘩の真っ最中だった。
————なんと、間が悪い。
雷獣は溜息をついた。
「……帰りたい」
ぽつりと呟いて、その場に立ち尽くしていたのだが、雨童子がこちらに気づいて大泣きしながら走って抱きついてきた。
「ふぇっ、う゛わあぁん!雷獣さまぁッ!!」
「うぐっ…!?」
雨童子は小柄ながら、勢いをつけて抱きつかれた所為か、腹が痛い……。
「全く、一体なんの騒ぎだ」
「雨師が酷いんですッ!色界の天女と私に隠れて逢って、剰え、くっ…くちずけをされていたんですっ!私に愛を誓ってくれたのに、う、浮気されたんです~!」
涙を零しながら、雨童子が泣く。
悲壮に顔を歪めても美しさを損なわぬ美少年の、真っ青な瞳が溶けたように潤み、次から次へと雫が真っ白な頰を伝う。
「まさか、雨師がお前以外と?」
信じられずに雨師を見て、雷獣は後悔した。
悋気に焼かれた両眼で睨みつけられ、冷や汗が出る。本気で殺気を飛ばす奴があるか!
「鳴神の獣風情が、我のものに手を出すか」
「冗談ではない、私は他人のものに興味など湧かぬわ。これはそもそもお前が飛天に浮気したから怒っているんだろう」
「浮気などしておらぬ!我の事が信じられぬのか、澪!!」
腹に巻きついている雨童子が、雨師の言葉にビクリと震えた。
怯え泣くその姿を哀れに思った雷獣が、そっと掌で涙を拭ってやる。
その、刹那。
風が混じった激しい雨が、周囲を包んだ。
息がつまるほどの緊張感に、心臓が凍る。
「その手を離せ」
恐ろしく低い声で、雨師が雷獣に向かい、雨の矢を降らせた。
……もう、そこから先は悪夢のような戦いであった。理性のない、嫉妬で怒り狂った雨ノ神と戦う羽目になり、雷獣は幾度も天空を雷で裂き、力を使い果たしてしまい、人間界へと落ちてしまったのだ。
「流石に雨ノ神よ。力を使い果たすまで戦わざるを得なかった。私はそのまま無様に下界に落ち、衰弱し枯渇した霊気を補うために周囲を見回したその時だ、近くからあまりの芳しさに酩酊するほどの精気を感じた。それが、貴由の精気だった」
「お、俺の、精気?」
「ああ。そしてその時、偶然にも窓を開けてくれたから、貴由の部屋に入れたんだ。私はその瞬間から貴方が欲しくなった」
嵐のような豪雨に晒された外とは違い、その部屋の中では、馥郁とした菖蒲(あやめ)のような甘く高貴な香りが、一人の青年の周囲を纏い揺蕩っていた。
鼻を狂わすような甘ったるいものではない、清涼な気品を感じる甘さは、彼の魂の清廉さに寄るものだろう。天界でも目にかかれぬ様な香りは、夢中で嗅いでしまいたくなるものだった。
天界のものではなく、ただの人間であろう青年から香る精気に、私は心すら盗まれたのだ。
「貴由は、得体の知れない私を追い払うどころか、手を差し伸べてくれたね。優しい子だ。貴方のそういう無防備で、慈悲深いところに惹かれたんだ」
貴由と共にいるだけで充溢する、膨大で清浄な精気に酔いしれた。
一度地上に落ちてしまえば百年は掛かるであろう霊力の回復が、数日で終わってしまうのだから彼の精気は極上と言えよう。
しかしそれ以上に、彼から手ずから与えられる美味しい食餌も、優しく撫でられる甘やかな拷問も、私を見つめころころと変わる素のままの表情も、寝起きを共にできる幸せも、最早無くてはならないものになってしまった。
立派に成人した青年のはずだが、貴由があまりに可愛すぎて、理性がブチ切れて獣の姿のまま襲いそうになったのも何回かあるほどだ。その時はセクハラと叫ばれて、シャワーの水を掛けられたり、揉みくちゃに撫でられたりして阻止されてしまった。それはそれでなかなか楽しかったが。
貴由と一緒にいること、それが私(ダンディ)の日常になってしまった。もはや手放せないほどに、彼を愛してしまった。私にとっての掌中の珠は貴由なのだ。
「貴由、私は貴方を愛している。心の底から貴方が欲しい。どうか、お願いだ、私の伴侶になってくれないか」
★★★
夢かな…?と思うほどの状況だった。
人生においてこんな風に口説かれる事態に巡り合ったことがないせいか、脳が処理落ちしているのが分かる。
というか、愛してるなんて今まで生きてて言われたことないや……俺。ははははは。
……現実逃避してる場合じゃないな!ちょっと、整理しよう。
マジでダンディは俺のこと好きなの?伴侶にしたいとか言ってたよね? 伴侶って、お嫁さんってこと?この人が、俺を嫁にしたいって言ってるの?
————え。やばい。なにこれ。
男にプロポーズされて、それを自覚した瞬間に、なんでこんなに心臓が煩いくらいにバクバク鳴ってるんだよ。なにこれ。
いやいや、勘違いだ。
あまりの状況に俺の心臓が驚いてるんだろ。
それにかなり今更かもしれないけど男同士だろ俺たち!
あれ待てよ……。兄貴や父さんが関係ないとか言ってたけど、本当なのか?
「ダンディ、伴侶っていうけどさ、俺は…男だよ?」
「ん?お風呂で見たし分かっているよ?」
……そうだね。一緒にお風呂も入ってたね。
「お、男も伴侶になれるの?」
「天界では普通だが、人界では同性の伴侶はあり得ないのか?」
「一般的ではない……かな」
「そうか……。じゃあ貴由は、私のことが嫌いか?」
「なっ、なんでそうなる!俺はダンディが好きだよ!!短い期間でも一緒に過ごして楽しかったし、嫌いなわけないじゃないか」
まあ、一緒に過ごしていた期間はずっと獣の姿だったから、好きだけど恋愛対象外というか、完全にペット扱いしていたのだ。
だから、いきなり人化してプロポーズされたって、突然過ぎて分からないというのが、正直な気持ちだった。
「その、俺、この歳で恥ずかしいんだけど、あんまり恋愛とかしたことなくて、ダンディにプロポーズされて嬉しい気持ちはあるんだけど、自分の気持ちがよく分からなくって」
「貴由は、人化した私を見てどう思った?この姿は嫌いかい?」
「え?すごくカッコいい大人の男の人だなって思ったよ。嫌いなんて思った事ないよ」
「……そうか。貴由はこの姿の私は好きか」
なら、大丈夫そうだな。と、ダンディが独言(ひとりごち)て笑った。
その笑い方が、なんだか悪い大人の顔だったのは俺の気のせいではなかった。
徐に抱き寄せられていた体を離され、そっと指を顎に添えられ、顔を上げさせられた。
「……ダンディ?」
「その愛称も気に入っているが、折角だから貴由に私の名前を教えよう」
本当の名前かぁ。
そりゃあこんな美形の大人の男つかまえて、ダンディなんてふざけた愛称で呼ぶのは可笑しいもんな。
「私の名は、光琳という。鳴神の従臣にして、天空に雷をもたらす雷の精だ」
「光琳」
なんかそんな名前の日本画家がいたなぁ。と思いつつ、教えられた名前を紡いだ。
「あぁ。愛称も良いが、愛しい人に真名で呼ばれるのは堪らないな」
ダンディに耳を擽るように撫でられ、目を細めた瞬間、俺は攫うように、唇を奪われた。
「ンぅー!?」
いつのまにか押し倒されて、唇を貪られるように口づけられる。可愛らしく唇を合わせるだけじゃ無い。角度を変え、舌を絡められ、息継ぎさえ奪うように、念入りに口を犯された。
これはキスとか可愛いもんじゃない。口と口のセックスだろ!みたいなやつだ。
気持ちいい感覚も有るけれど、今は息が、息ができない!!
「やっ、こ、ぅうんっ!……こうりんッ!うむぅ!!!」
息苦しさにバシバシと背中を叩いたら、ペロリと唇を舐めキスを止めて、額を合わせてきた光琳は、笑いながら散々嬲られて赤くなったであろう唇を指でなぞる。
「貴由は、私に対して無防備すぎる。愛を囁く男が近くにいて、警戒すらしないんだ。恋に溺れた男は隙あらば、貴方を抱こうとするんだよ。さあ、貴由。私を嫌いじゃないなら、流されて私に溺れてしまいなさい。キスは気持ちよかっただろう?………もっと、気持ちいいことを私としようじゃないか」
脳髄を犯すような甘い声だ。
唇をなぞる指の感覚に、ぞくぞくと身体が震える。その状態を見て、光琳が笑ったのが分かった。
昏くて、熱に魘されたような艶やかな視線に、俺は身動きすらできなくて、魅入られたみたいにずっと光琳を見上げていた。
光琳と見つめあったままでいたら、掬うように手をとられ、まるで許しを得るかのようにペロペロと指先を舐められた。
……ダンディもそう言えばよく、俺の手を舐めていたな。
そうか。この人はダンディなんだ。
分かっていたのに、今、実感した。
俺の前にいきなり現れて、孤独な日常をガラリと変えた、変な生き物。そして、こんな俺の側にいてくれる、大切な存在。
そしたら、勝手に俺の口から言葉が出ていた。
「俺が、お嫁さんになりたくないって言ったら、光琳はどうするの?」
「私は長く人界にはいられぬから、傷心のまま天界に帰るほかないな」
「じゃあ、お嫁さんになったら、俺とずっと一緒にいてくれるのか?」
「ああ勿論。ずっと一緒にいよう」
「たまに、また獣(ダンディ)の姿になってくれる?」
「貴由が望むなら、いつでも」
……じゃあいいか。
すとん、と俺の中で覚悟が決まった瞬間だった。単純だけどな。
ずっとダンディが一緒にいてくれるなら、きっと人生は楽しいだろう。
俺は一人でまた寂しく、あの単身者用のボロマンションの部屋に戻ることが、想像できない自分に気づいてしまった。そしてこんなに他人から欲しがられた事なんて、俺の人生で初のことだから。
理由はきっといっぱいあるけど、ただ単純に、一緒にいたいんだと、分かってしまった。
「光琳」
手を伸ばして、身体を抱き上げてもらう。膝の上を跨ぎ座る形で、俺は光琳を見つめた。
「ん?どうした貴由」
空気すら読まずに急に質問責めにされても、優しく笑う光琳は、頬を撫でながら黙って俺の言葉に耳を傾けてくれるから、俺ははっきりとした声で伝えた。
「俺、光琳のお嫁さんになる。なりたい」
★★★
「……ぁっ、ん、アッ!やだ、やぁ、こうりん」
貴由は、とても私の理性をブチ切ることが上手な子だと思う。
なんと、罪深い子だ。
こんなに欲しいと思ったものなど、私は貴由以外にない。それ故に欲深く、私は溺れる様に貴由を貪るのだろう。
乳首を舐めながら、繋がり合うために後孔を解している最中だが、貴由は初めてだから緊張しているのか身体が硬くなってる所為で、お尻も指二本を入れてもまだ解れきれてない。
しかし、感度は良いのか、淡く色づいた乳首を啜るとキュウキュウと指を締めつけている。調教しがいのある身体だ。
「貴由。私のお嫁さんになってくれるんだろう?ちゃんと脚を開いてないと、おしりが解せないよ?」
羞恥に染まった目元で睨みつけられたが、ゆっくりと脚を開き、秘部を露わに見せてくれた。
濡れて勃ち上がる男の象徴すら可愛らしく、更に脚に手をかけて開かせて、それを口で可愛がってやると、貴由が甘い声で啼く。
「あっ!やっ…ぁ、ッ!あ、あっぅ」
悦楽と羞恥に染まった貴由の身体から、いつもより甘い極上の精気が漂い、私の下肢も熱を帯びだす。ああ、早く繋がりたい。
射精出来ないように根元をきつく指で握り、ペロペロと後孔まで舐め解し、指を受け入れるように蕩かせた。
ジュルジュルと音を立てて粘膜を啜ると、経験がない貴由は、羞恥に喘ぎ、息を乱し、首を振って悦がっていた。
ウブな嫁というのは、可愛らしくて良いものだ。
「……は、はなして、あっやぁ、前、はなして、こうりんッ!イきたいっ、出したいからぁッ!!」
必死な嬌声が耳を擽るが、私は繋がり合うことを優先させた。
「貴由、私も限界なんだ。中に挿れていいか?」
耳元で囁けば、それにすら感じてビクビクと身体を震わせ、貴由が必死に頷いた。
「も、いれ…て。挿れていいからぁ、あああッ!!!」
言質を取り、一気に挿入した。
処女である身体を支配する喜びと、繋がりあえた安堵に溜息をつく。
うねる肉壁が、挿入された瞬間に絶頂した事を教えて、私のモノを締めつけてくる。
「……あぁ、貴由は淫乱だな。挿れた途端達してしまったのか」
くちゅり、と濡れた音を立てて、貴由の達したばかりのソレを弄ってやる。
「あっ、ヤダ、そんな…ふうに言うなっ、俺はっ、いんらんじゃ、ないっ!」
「気持ち良いよ貴由。中が締めつけて私のモノを離さない。このまま搾り取られそうだな」
「や、やあぁ、奥、いきなり、突いちゃ、ああッ、ダメ、やっあッ!アッ、あぅ」
耳朶を舐めながら腰を送り込むと、勃ち上がった淫らな乳首を見せつける様に胸を反らして、嬌声を上げるので、誘惑に逆らう事なく、硬く尖った乳首に吸いついた。
「ヒッ!?ぁっ、あッ!くぅっ」
片方の乳首は指で軽くカリカリと弄りながら、もう一方は、念入りに吸い嬲り、甘噛みする。
大きく勃起したそれを、また舐めて宥めてやると、後孔を不規則に締めつけるのだから、堪らない。
貴由が淫らに染まり、私の手に堕ちていく様には、興奮するばかりだ。腰が止まらない。
「貴由っ、私も中に放つが、すぐに子供は出来ぬだろう。……安心して、私の味を覚えたら良い」
熱く柔かく、だがきつく締めつける、私を受け入れる性器と化した後孔に、完全に貴由を私のものにするために、ラストスパートをかける。
「アッ、やあッ!え?…なに?アッ、ああッ!うぅッ…ふぅ!やだ、あっ、もう、イかせて!光琳!!やあああ、こうりんッ!!」
「出すぞ、貴由ッ!」
前立腺を思う様嬲り、濡れた肉壁の締め付けを最後まで愉しみながら、私は欲望を放った。
ドクドクと大量に熱い精液を注がれるのすら感じて、痙攣するように震えた貴由に満足しながら、ゆっくりと貴由から己を引き抜いた。
疲れたように力無く瞼を閉じた貴由を、そっと抱きしめ、囁く。
「愛してる、貴由」
薄く目を開き、貴由がとろりと甘い声で答えた。
「……こうりん、俺も、あいしてる」
可愛い人。
私のただ一人の伴侶。
今はただ、私の腕の中で眠れ。
★★★
蛇足。
「父さん、貴由がいない」
実家に帰って来ていた弟を起こすために、貴明が部屋に向かってすぐに、こちらに戻ってきたと思えばこれだ。
「やっぱりなぁ……。連れてかれたか」
父は諦めたように、溜息をついた。
「あいつは、自分の精気が隠すこともできなかったから……。まさか雷獣に嫁にやるとは思わなかったけど、貴由を守ってやれるなら、充分だろ」
「天界なんぞに、嫁に出すつもりで育てたわけじゃあないんだけどなぁ……」
「今日は自棄酒だな」
「あー今夜の酒はまずいだろうな。あの野郎、早く挨拶に来なかったら、無理矢理にでも別れさせるぞ、俺は」
「俺も、付き合おう」
貴由の家族は、貴由をそれなりに心配しながら、自棄酒を飲んだ。
一方、天界に連れていかれたままの貴由は、混乱の極みにいた。
「え、俺、人間じゃなくなったの?」
「私の伴侶だからね。私の精を受け容れた時に、天界で暮らせる身体に変わる。しかし一度ですぐには変わらない。今から一月ほどは、私の精を受け容れてもらわなければ、天界にも人界にも居られぬ身体になってしまうよ」
「え、それって…」
「一月は私と褥で戯れよう。毎日貴由が孕んでしまうまで、中にたくさん出してあげようね」
「……俺は男なんだから、孕むわけないだろ」
「それはどうだろう?私の伴侶は、私の雌だ。孕ませるのは難しくはないよ」
「な、なんだってー!?」
……そんなこんなで、貴由は雷の精、雷獣光琳のお嫁さんとなり、たいそうラブラブなバカップルとして天界に君臨したそうな。
めでたしめでたし。
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