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学園生活は7年間
アクアとスティード【アクア視点】
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俺は孤児だった。
気づいたら、孤児院の中で育ち、それなりに「良い子」をしていたと思う。
孤児院のシスターたちに褒められたくて、手伝いや年下の子たちの面倒もすすんでやった。
何でこんなことができるかの答えは簡単だった。
俺は前世の記憶を持っている。こことは違う、科学が発展した世界で生きていた記憶だ。
だからその記憶で、何をどう手伝えばいいかわかる。
だが、その結果、俺に貼られたレッテルは、「使い勝手のいい子」だった。
たまに来る、孤児を引き取りたいという申し出は、俺のところまで来る前に終わっていた。
そんなある日のことだった。
俺のいる孤児院の領主夫人とその子息達が孤児院を訪れるという話になった。
シスターたちは、俺たちに出来るだけ綺麗な服を着せ、夫人たちの到着を待った。
夫人たちは事前に知らされていた時間通りに到着した。
俺はびっくりした。
領主の夫人と子息と言うものだから、もっときらびやかな服装で来るのかと思っていたのに、その人たちは動きやすい服装…まるで庶民のような恰好をしていた。
けれど、漂う品が違う。夫人は長い黒髪を一つにまとめ、ルビーの瞳でこの院を見ていた。
「ようこそいらっしゃいました、エルジュ様。皆様のご来院を心よりお待ちしておりましたわ。」
シスターがにこやかに夫人にお礼を言う。
しかし夫人は、俺たちの方を見て、こう言い放った。
「みんな!今日は遊びに見こさせていただきました。いつもの服に着替えてらっしゃい。」
俺たちは一斉にいつもの服を取りに戻る。横目で見たシスターは、わなわなと震えていた。
まだうまく着れない年下たちの面倒を見ていると、ひょこっと俺と同い年くらいの子供が…黒い艶やかな髪とルビーの目を持った少年が現れた。
「着替え、手伝うぜ。俺も兄さまたちに手伝ってもらったり、弟たちの着替え手伝ったりしてんだ。」
だから、お前も着替えろよ。そう言われて、自分も手早く着替える。
その間に少年は2人ほどを着替えさせ終わっていた。
「本当に慣れてるん…ですね。」
「何だよそのとってつけたような言葉遣いは!普通に話そうぜ。俺はスティード。よろしくな!お前の名前は?」
本当にフラットな物言いに、俺は驚いた。貴族ってものはもっと傲慢だと思っていたからだ。
「アクア…。」
「アクアか、いい名前しゃん!あ、俺のことはスティードって呼んでくれよ。俺もアクアって呼ぶから!」
ニカっと少年…スティードは笑う。
あんまりにも気安く話しかけてくれるものだから、拍子抜けし、距離はすぐに縮まった。
俺たちが友人になるのには、そうかからなかった。
今日もパタパタとエルジュ夫人が部屋中にはたきをかける。
スティードと俺は落ちてきた埃を掃いたり、床を磨きながらおしゃべりをしていた。
俺たちは14歳になっていた。
彼らが孤児院を訪れてから、もう7年だ。
「やっぱり騎士って格好いいよな!俺は騎士科を目指そうと思うんだ。アクアは?」
「俺は騎士ってガラじゃないから、薬学科かな。」
「おっ!いいな!アクアは手先が器用だから向いてるぜ。きっと。」
ニコリと微笑まれる。少年の者だった笑顔は、いつの間にか柔らかなものに変わり、俺はそのたびにドキリとした。
スティードの瞳の色がとろり色濃くなる。
俺はパッと顔をそらした。
ドキドキ胸が高鳴って、どうしていいのかわからなかったからだ。
その様子を見ていた夫人が何を思ったのかはわからない。
けれどその1か月後に、俺は男性夫夫に引き取られた。
その夫夫はとても優しく、俺を本当の息子のように愛してくれる。
身体のがっちりした力持ちさんがアゼル父さんで、線の細い柔らかな印象のかわいい人がカロア父さんだ。
2人はとても愛し合っていて、見ているこっちが照れちゃうくらいだ。
そんな2人は夜の営みもすごい。声は聞こえてこないよう配慮してくれてるけど、興味本位でのぞいたら…うん、すごかった。
俺も、いつか誰かとあんなふうに愛し合えるのかな。
そう思っていたら、スティードの顔が思い浮かんで…慌てて考えないようにした。
そうやって毎日を過ごして、あることに気づく。
スティードが、一度も遊びに来てくれない。
場所はエルジュ夫人を通して知っているはずなのに、一度も会いに来てくれない。
もしかして、俺と仲良くしてくれてたのは俺がたまたま孤児院にいたからか?
そんな不安がよぎる。
けど、待てど暮らせどスティードが現れることはなかった。
学園に入っても、スティードと会うことはなかった。
俺たちは学科が違うし、同じ普通科目の時でも会うことはなかった。
―――意図的に避けられている?
そう思い始めて何もかもがどうでもよくなった時に現れたのがハルディオだ。
俺はハルディオの優しさに甘えた。
後で、悲惨な結末が待っていたとも知らずに。
俺は時間を巻き戻す。
ハルディオが幸せでいられるよう。
初めて抱かれたのは王太子だ。あいつは媚薬を盛ってきた。
心は拒むのに、気持ちいいのが止まらない…。
いつの間にか俺たちは結ばれたことになっていた。
俺はまた時間を巻き戻す。
でも、宰相の息子も保険医も脅してきたり、寝込みを襲われたりで散々だった。
ハルディオも当然幸せにはならない。
今度こそ、今度こそ、と思い、俺は前世の世界に助けを求めた。
この状況を打破してくれる奴がいないかと…。
でも、スティードがいないと、俺は結局幸せになんかなれないんだろうな。
気づいたら、孤児院の中で育ち、それなりに「良い子」をしていたと思う。
孤児院のシスターたちに褒められたくて、手伝いや年下の子たちの面倒もすすんでやった。
何でこんなことができるかの答えは簡単だった。
俺は前世の記憶を持っている。こことは違う、科学が発展した世界で生きていた記憶だ。
だからその記憶で、何をどう手伝えばいいかわかる。
だが、その結果、俺に貼られたレッテルは、「使い勝手のいい子」だった。
たまに来る、孤児を引き取りたいという申し出は、俺のところまで来る前に終わっていた。
そんなある日のことだった。
俺のいる孤児院の領主夫人とその子息達が孤児院を訪れるという話になった。
シスターたちは、俺たちに出来るだけ綺麗な服を着せ、夫人たちの到着を待った。
夫人たちは事前に知らされていた時間通りに到着した。
俺はびっくりした。
領主の夫人と子息と言うものだから、もっときらびやかな服装で来るのかと思っていたのに、その人たちは動きやすい服装…まるで庶民のような恰好をしていた。
けれど、漂う品が違う。夫人は長い黒髪を一つにまとめ、ルビーの瞳でこの院を見ていた。
「ようこそいらっしゃいました、エルジュ様。皆様のご来院を心よりお待ちしておりましたわ。」
シスターがにこやかに夫人にお礼を言う。
しかし夫人は、俺たちの方を見て、こう言い放った。
「みんな!今日は遊びに見こさせていただきました。いつもの服に着替えてらっしゃい。」
俺たちは一斉にいつもの服を取りに戻る。横目で見たシスターは、わなわなと震えていた。
まだうまく着れない年下たちの面倒を見ていると、ひょこっと俺と同い年くらいの子供が…黒い艶やかな髪とルビーの目を持った少年が現れた。
「着替え、手伝うぜ。俺も兄さまたちに手伝ってもらったり、弟たちの着替え手伝ったりしてんだ。」
だから、お前も着替えろよ。そう言われて、自分も手早く着替える。
その間に少年は2人ほどを着替えさせ終わっていた。
「本当に慣れてるん…ですね。」
「何だよそのとってつけたような言葉遣いは!普通に話そうぜ。俺はスティード。よろしくな!お前の名前は?」
本当にフラットな物言いに、俺は驚いた。貴族ってものはもっと傲慢だと思っていたからだ。
「アクア…。」
「アクアか、いい名前しゃん!あ、俺のことはスティードって呼んでくれよ。俺もアクアって呼ぶから!」
ニカっと少年…スティードは笑う。
あんまりにも気安く話しかけてくれるものだから、拍子抜けし、距離はすぐに縮まった。
俺たちが友人になるのには、そうかからなかった。
今日もパタパタとエルジュ夫人が部屋中にはたきをかける。
スティードと俺は落ちてきた埃を掃いたり、床を磨きながらおしゃべりをしていた。
俺たちは14歳になっていた。
彼らが孤児院を訪れてから、もう7年だ。
「やっぱり騎士って格好いいよな!俺は騎士科を目指そうと思うんだ。アクアは?」
「俺は騎士ってガラじゃないから、薬学科かな。」
「おっ!いいな!アクアは手先が器用だから向いてるぜ。きっと。」
ニコリと微笑まれる。少年の者だった笑顔は、いつの間にか柔らかなものに変わり、俺はそのたびにドキリとした。
スティードの瞳の色がとろり色濃くなる。
俺はパッと顔をそらした。
ドキドキ胸が高鳴って、どうしていいのかわからなかったからだ。
その様子を見ていた夫人が何を思ったのかはわからない。
けれどその1か月後に、俺は男性夫夫に引き取られた。
その夫夫はとても優しく、俺を本当の息子のように愛してくれる。
身体のがっちりした力持ちさんがアゼル父さんで、線の細い柔らかな印象のかわいい人がカロア父さんだ。
2人はとても愛し合っていて、見ているこっちが照れちゃうくらいだ。
そんな2人は夜の営みもすごい。声は聞こえてこないよう配慮してくれてるけど、興味本位でのぞいたら…うん、すごかった。
俺も、いつか誰かとあんなふうに愛し合えるのかな。
そう思っていたら、スティードの顔が思い浮かんで…慌てて考えないようにした。
そうやって毎日を過ごして、あることに気づく。
スティードが、一度も遊びに来てくれない。
場所はエルジュ夫人を通して知っているはずなのに、一度も会いに来てくれない。
もしかして、俺と仲良くしてくれてたのは俺がたまたま孤児院にいたからか?
そんな不安がよぎる。
けど、待てど暮らせどスティードが現れることはなかった。
学園に入っても、スティードと会うことはなかった。
俺たちは学科が違うし、同じ普通科目の時でも会うことはなかった。
―――意図的に避けられている?
そう思い始めて何もかもがどうでもよくなった時に現れたのがハルディオだ。
俺はハルディオの優しさに甘えた。
後で、悲惨な結末が待っていたとも知らずに。
俺は時間を巻き戻す。
ハルディオが幸せでいられるよう。
初めて抱かれたのは王太子だ。あいつは媚薬を盛ってきた。
心は拒むのに、気持ちいいのが止まらない…。
いつの間にか俺たちは結ばれたことになっていた。
俺はまた時間を巻き戻す。
でも、宰相の息子も保険医も脅してきたり、寝込みを襲われたりで散々だった。
ハルディオも当然幸せにはならない。
今度こそ、今度こそ、と思い、俺は前世の世界に助けを求めた。
この状況を打破してくれる奴がいないかと…。
でも、スティードがいないと、俺は結局幸せになんかなれないんだろうな。
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