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3.花火と温泉と俺の決意(受)
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お互い春の異動もなくて、それは本当に良かったし、話せなくてもモニターから顔を上げると桂一郎の顔が見えるのは安心する。どうやら桂一郎もそれは思ってくれてるみたいだ。
「お前、前より聞きに来すぎ。仕事できなくなってる人みたいじゃないか」
「だってぇ……」
「……俺も話せるのは嬉しいけど」
「典明さん好き。あ、湯気」
蓋を開ければ、くつくつと白いスープが揺れて、野菜はいい感じにくったりとしている。こういう白い鍋だとにんじんのオレンジ色が映えるな。豚肉もちゃんと火が通っているようだ。豆腐はどうだろう……中心が冷たいなんてことがないといいんだけど。
「あー、いい匂い! 典明さん、食べましょ」
「好きなタレ使ってな」
「おれ、どっちも使いたいです」
「じゃあ、とんすい二つ使っていいぞ。俺はポン酢だけでいい」
「この器ってとんすいって言うんですね。オレずっと取皿って呼んでました」
まあ、今どきとんすいって呼ぶ人も少ないもんな。俺はじいちゃんが陶芸をやってたから覚えてるだけだし。
ちなみにこのとんすいは、じいちゃんの手作りをもらったやつだ。同じような形に同じ釉薬を使っているけど、重ねると市販品みたいには揃わない。でもそれがなんか個性みたいでいいんだよな。
熱々の鍋と冷え冷えのビールはやたらと合う。締めの雑炊は余ったら明日の食事にって思ったのに、食が進んであっという間になくなってしまった。
「雑炊っていうよりリゾットみたいでしたね。めちゃくちゃ美味かった」
「豆乳だからな……チーズとかあったらもっとよかったかもな」
「あ、それ絶対合いますね。今度やるときは買っておきましょうよ」
台所で並んで後片付けをしながら、桂一郎はまた食べる気満々で言う。こういう甘え上手なところは本当に羨ましい。最初に褒めてくるからか全然嫌な気分にならないし、むしろ叶えてあげたくなる言い方をしてくる。会社の上司にもさらりとお願いして要望を通しちゃうんだからなぁ。
俺から見ると、会社での桂一郎は器用に立ち回ってると思う。こいつは『自分は口が上手いことしか特技がない』みたいに思ってるみたいだけど、そんなことないんだよ。ちゃんと下調べもするし、問題点の提示も的確で、こうするとどんなメリットがあるかもわかりやすく言ってくる。確かにその途中で他人を上手く動かしてるとは思うけど、それは結局桂一郎がこうしたいっていうビジョンがちゃんとあるからだし。
そんな桂一郎は今後絶対に昇進していくはずだ。そのとき俺は……。
「お腹いっぱいになったし、片付けもしたし、そろそろメインの話をしましょう!」
「メイン?」
「はい。えっと、まずは……バッグ、バッグ……」
桂一郎はバッグを取ると、中から書類のようなものを取り出した。それをテーブルの俺の前に並べていく。それは駅から何分やら間取り図のかかれた、職場からもここからもそこまで遠くない物件を印刷したものだ。
「……物件? お前、引っ越しするのか?」
「オレだけじゃなくて、二人で、です」
「………………は?」
「調べてみたら、この区もパートナーシップ制度が認められてるみたいですね。前は全然なかったイメージだったのに、いつの間にか使えるところ増えてて。あ、でも大家さんが条件でルームシェアだめとか男二人だめとかいうところもあるからそれはしょうがないんですけど。で、これとか結構ここから近いし、お手頃な家賃で2LDKなんですよ。あとは──」
「ちょ、まっ。なに? なんなんだ?」
桂一郎が何を言い出したのか言葉はわかるのに理解がついてこない。二人でって二人でって、俺と……?
「わからないフリはやめましょうね。オレ、旅行のあとからずっと考えてました。典明さんのこともう泣かせたくないし、ちょっとしたことで勘違いもさせたくないし、他の人にも取られたくないです。毎日行ってきますとおかえりを典明さんと言い合いたい。もちろん気持ちいいことももっとしたいです。だから、一緒に暮らしましょう」
「だ……めだ。同じ住所になったら会社にバレるだろ。気持ちは嬉しいけど、これから伸びるはずの桂一郎の立場が悪くなるようなこと……俺にはできない」
「なんでオレの立場が悪くなるんですか?」
「だって、男同士でなんて変な噂立てられるだろ……。桂一郎は上役の覚えもめでたいから、変なケチをつけたくないんだよ」
俺は桂一郎と別れることは考えてないけど、それでも桂一郎の足を引っ張るようなことはしたくないんだ。仕事のことならサポートするし、私生活でも支えられることは支えてやりたい。
ただ、そんな努力も差別にあったら水の泡だ。
桂一郎が俺なんかとそういう関係だって後ろ指をさされている姿を想像して、血の気が引いてくる……。
「典明さんっ! こっち見て。変な噂とか、言わせたいやつには言わせておけばいいんです。ケチがつけれらないほど仕事頑張ればいいんです」
「けど……俺は怖い」
「典明さん、うちの会社も福利厚生でパートナーシップあるんですよ? 上層部はそういうことを認めているんです」
「え、うそ……」
そんなのなかったはずだと言うと、桂一郎が社内規定の最新版を見せてくる。そこには確かにパートナーシップとして、同性で届け出たら結婚と同等に扱うという項目ができていた。
結婚祝いとして祝い金も出るし、婚姻休暇も与えられるし、介護休暇とかそういったものもちゃんとパートナーと使えるように規定されている。
「ね。だから、下っ端の言うことなんて気にしなくていいんです。制度があるんですから。だから……ちゃんと俺とパートナーになってください。自治体と会社に届け出て、一緒に暮らしましょう」
「でも、だって……」
いくら規定を見せられても、俺が知らなかったみたいに他の人だって知ってる人のほうが少ないだろ? ってことは、やっぱり陰口は叩かれるかもしれないってことには変わらないじゃないか。
「でもじゃないんです。オレ、本当に余裕ないんですって。最近また典明さんは女性に声かけられまくってるし、他の人に手を出されたら、オレ、その人に何するかわからないです。想像するだけでも嫌だ……。典明さん、オレを犯罪者にしたくないですよね?」
「桂一郎は俺を脅して一緒にいて嬉しいのか?」
前にも監禁するかもとか言ってたことがあったけど、あんまりなことを言い出す桂一郎に、思わず諌めるようなことを言ってしまった……。
「それだけ必死だってわかってくださいよ……卑怯なことしてまで典明さんを離したくないんです。って、もう! 典明さん素直になるって言ったじゃないですか。ごねるのやめてください。でもでもだってって言ってても、そんな顔してたら可愛いだけですからね」
どうしよう……心臓は不整脈かってくらい早鐘を打っていて、喉がカラカラだ。本当にいいんだろうか。桂一郎の将来を俺が奪うことにならないだろうか。でも、何を言っても桂一郎は説得してくるし、プレゼンのごとく資料を次々出してくるし、挙句の果てに脅してきた。
俺だって桂一郎にそんなことを言われて嬉しくないわけじゃない。勝手に目が潤んでくるし、顔が熱い……どうしよう。
そっと顔を上げれば、桂一郎の目はギラギラとしていて、俺を絶対に逃さないって訴えている。
「後悔しても、知らないからな」
「しませんよ。絶対」
そうして、俺は覚悟を決めた。
桂一郎がここまで真剣に俺とのことを考えて、俺の退路を塞いできてるんだからどうにもできないし……ってのは言い訳で、俺だって桂一郎を俺のものにできるならそうしたい思いがあるから。
もしかしたら、いつか桂一郎に捨てられる日が来るかもしれないけど、それまでは夢を見ていてもいいんじゃないかって。
「ど……どう、したら、いいんだ?」
「まずは、物件決めましょうよ。埋まっちゃってるのもあるかもしれないけど、こういうの見ながら条件出すのも楽しいですよ。譲れないポイントとかありますか? 俺はできれば寝室一緒がいいですけど、典明さんが一応は別にしたいなら譲歩します。あ、スーパーとかコンビニは近くにほしいですね」
「あ、うん。スーパーは近くがいいかな。家広くなるなら寝室とは別の、個人の部屋は欲しいかも。いつもテーブルにパソコン出してたから……」
二人で希望を出し合うのは楽しかった。
全部が叶う家なんてないだろうけど、少しでも近いものを見つけたいなって話したり、いっそマンション買うとか……なんて話も出たりした。マンション買うなんて別れるときどうするんだろうって考えた瞬間頬をつままれる。
「典明さん、変なこと考えてるでしょ。別れませんからね? なんで悪いことばかり考えようとするんですか……」
「ごめん……臆病で」
「オレのこと信じてくださいよ。離れられないのも、囲い込もうとしてるのもオレなんですから」
「うっ……」
「泣かないで、典明さん。覚悟決めてくれたんでしょ?」
年下の桂一郎にここまで言わせる自分が情けない。ていうか、気分が上がったり下がったりしまくってて、情緒不安定だ。
そんな俺を見抜いたのか、桂一郎は俺を浴室に連れ込んでいたずらを始めた。こんなに情緒不安定でも俺の身体は桂一郎の愛撫にすぐ反応してしまう……恥ずかしすぎる。
「典明さんのココはこんなに素直なのに……」
「言うな」
「ふふ。典明さん大好きです。ずっと一緒にいたいからオレに丸め込まれて? ね、こっちもオレが欲しいって」
「あっ、あっ……」
俺の後ろの穴に桂一郎の指が入り込んで、くっとイイトコロを押し込まれた。もうそれだけで、俺の穴は突っ込まれることを期待して桂一郎の指を喰む。
でも、桂一郎はそれ以上のことをしてくれなくて……俺が我慢できなくて欲しいと訴えた。
桂一郎は俺を浴室の壁に押し付けるようにすると、バックで俺の中に入ってくる。久しぶりの桂一郎のはちょっと苦しい。相変わらず、俺が我慢できなくて懇願するまで解しまくられたから痛くはなかったけど、やっぱり桂一郎のちんこはでかいんだって再確認した。
前はひとり遊びの場所だった浴室で、今は桂一郎に抱かれている。それが不思議で気持ちが勝手に盛り上がって……喘ぎ声が漏れてしまった。浴室は声が響くから必死で我慢したけど、そうすると息が止まってクラクラとしてくる。
「典明さん、ごめ……止まらない」
「くっ……ふっ……」
「オレがこうなるのは典明さんだけなんだから、責任取ってください、ね」
桂一郎に抱えられて、腰を突き出した体勢で俺はあっという間にイッた。それを見た桂一郎は、まだイッてないみたいなのにちんこを抜くと、俺を抱えるようにベッドに移動する。
覆いかぶさられた瞬間に見えた桂一郎の顔は飢えた獣みたいで、つい息を飲んでしまった。桂一郎はすぐ俺の中に入ってきて続きを始めて……落ちるまで何回したんだろう……。
「……しすぎ」
「典明さんのせいですよ。オレの本気を疑うから」
「ん、もう言わない。男女だって結婚前から離婚のことなんて考えないもんな。桂一郎とずっと一緒にいられるように俺も頑張る」
そう伝えると、桂一郎は破顔して俺を抱きしめてきた。ああ、どうしよう、幸せすぎて泣きそうだ。
まだ今の世の中じゃ同性同士は偏見があるだろうし、そういう意味では怖くもある。だけど、俺も桂一郎も、ただお互いを大事に思っているだけだから堂々としていようって思う。関係のない他人に気持ち悪いって思われることなんて跳ね除けられるくらい、桂一郎と幸せを紡いでいきたい。
俺たちは新しいスタートラインに立ったばかりなんだから……。
──3.終──
「お前、前より聞きに来すぎ。仕事できなくなってる人みたいじゃないか」
「だってぇ……」
「……俺も話せるのは嬉しいけど」
「典明さん好き。あ、湯気」
蓋を開ければ、くつくつと白いスープが揺れて、野菜はいい感じにくったりとしている。こういう白い鍋だとにんじんのオレンジ色が映えるな。豚肉もちゃんと火が通っているようだ。豆腐はどうだろう……中心が冷たいなんてことがないといいんだけど。
「あー、いい匂い! 典明さん、食べましょ」
「好きなタレ使ってな」
「おれ、どっちも使いたいです」
「じゃあ、とんすい二つ使っていいぞ。俺はポン酢だけでいい」
「この器ってとんすいって言うんですね。オレずっと取皿って呼んでました」
まあ、今どきとんすいって呼ぶ人も少ないもんな。俺はじいちゃんが陶芸をやってたから覚えてるだけだし。
ちなみにこのとんすいは、じいちゃんの手作りをもらったやつだ。同じような形に同じ釉薬を使っているけど、重ねると市販品みたいには揃わない。でもそれがなんか個性みたいでいいんだよな。
熱々の鍋と冷え冷えのビールはやたらと合う。締めの雑炊は余ったら明日の食事にって思ったのに、食が進んであっという間になくなってしまった。
「雑炊っていうよりリゾットみたいでしたね。めちゃくちゃ美味かった」
「豆乳だからな……チーズとかあったらもっとよかったかもな」
「あ、それ絶対合いますね。今度やるときは買っておきましょうよ」
台所で並んで後片付けをしながら、桂一郎はまた食べる気満々で言う。こういう甘え上手なところは本当に羨ましい。最初に褒めてくるからか全然嫌な気分にならないし、むしろ叶えてあげたくなる言い方をしてくる。会社の上司にもさらりとお願いして要望を通しちゃうんだからなぁ。
俺から見ると、会社での桂一郎は器用に立ち回ってると思う。こいつは『自分は口が上手いことしか特技がない』みたいに思ってるみたいだけど、そんなことないんだよ。ちゃんと下調べもするし、問題点の提示も的確で、こうするとどんなメリットがあるかもわかりやすく言ってくる。確かにその途中で他人を上手く動かしてるとは思うけど、それは結局桂一郎がこうしたいっていうビジョンがちゃんとあるからだし。
そんな桂一郎は今後絶対に昇進していくはずだ。そのとき俺は……。
「お腹いっぱいになったし、片付けもしたし、そろそろメインの話をしましょう!」
「メイン?」
「はい。えっと、まずは……バッグ、バッグ……」
桂一郎はバッグを取ると、中から書類のようなものを取り出した。それをテーブルの俺の前に並べていく。それは駅から何分やら間取り図のかかれた、職場からもここからもそこまで遠くない物件を印刷したものだ。
「……物件? お前、引っ越しするのか?」
「オレだけじゃなくて、二人で、です」
「………………は?」
「調べてみたら、この区もパートナーシップ制度が認められてるみたいですね。前は全然なかったイメージだったのに、いつの間にか使えるところ増えてて。あ、でも大家さんが条件でルームシェアだめとか男二人だめとかいうところもあるからそれはしょうがないんですけど。で、これとか結構ここから近いし、お手頃な家賃で2LDKなんですよ。あとは──」
「ちょ、まっ。なに? なんなんだ?」
桂一郎が何を言い出したのか言葉はわかるのに理解がついてこない。二人でって二人でって、俺と……?
「わからないフリはやめましょうね。オレ、旅行のあとからずっと考えてました。典明さんのこともう泣かせたくないし、ちょっとしたことで勘違いもさせたくないし、他の人にも取られたくないです。毎日行ってきますとおかえりを典明さんと言い合いたい。もちろん気持ちいいことももっとしたいです。だから、一緒に暮らしましょう」
「だ……めだ。同じ住所になったら会社にバレるだろ。気持ちは嬉しいけど、これから伸びるはずの桂一郎の立場が悪くなるようなこと……俺にはできない」
「なんでオレの立場が悪くなるんですか?」
「だって、男同士でなんて変な噂立てられるだろ……。桂一郎は上役の覚えもめでたいから、変なケチをつけたくないんだよ」
俺は桂一郎と別れることは考えてないけど、それでも桂一郎の足を引っ張るようなことはしたくないんだ。仕事のことならサポートするし、私生活でも支えられることは支えてやりたい。
ただ、そんな努力も差別にあったら水の泡だ。
桂一郎が俺なんかとそういう関係だって後ろ指をさされている姿を想像して、血の気が引いてくる……。
「典明さんっ! こっち見て。変な噂とか、言わせたいやつには言わせておけばいいんです。ケチがつけれらないほど仕事頑張ればいいんです」
「けど……俺は怖い」
「典明さん、うちの会社も福利厚生でパートナーシップあるんですよ? 上層部はそういうことを認めているんです」
「え、うそ……」
そんなのなかったはずだと言うと、桂一郎が社内規定の最新版を見せてくる。そこには確かにパートナーシップとして、同性で届け出たら結婚と同等に扱うという項目ができていた。
結婚祝いとして祝い金も出るし、婚姻休暇も与えられるし、介護休暇とかそういったものもちゃんとパートナーと使えるように規定されている。
「ね。だから、下っ端の言うことなんて気にしなくていいんです。制度があるんですから。だから……ちゃんと俺とパートナーになってください。自治体と会社に届け出て、一緒に暮らしましょう」
「でも、だって……」
いくら規定を見せられても、俺が知らなかったみたいに他の人だって知ってる人のほうが少ないだろ? ってことは、やっぱり陰口は叩かれるかもしれないってことには変わらないじゃないか。
「でもじゃないんです。オレ、本当に余裕ないんですって。最近また典明さんは女性に声かけられまくってるし、他の人に手を出されたら、オレ、その人に何するかわからないです。想像するだけでも嫌だ……。典明さん、オレを犯罪者にしたくないですよね?」
「桂一郎は俺を脅して一緒にいて嬉しいのか?」
前にも監禁するかもとか言ってたことがあったけど、あんまりなことを言い出す桂一郎に、思わず諌めるようなことを言ってしまった……。
「それだけ必死だってわかってくださいよ……卑怯なことしてまで典明さんを離したくないんです。って、もう! 典明さん素直になるって言ったじゃないですか。ごねるのやめてください。でもでもだってって言ってても、そんな顔してたら可愛いだけですからね」
どうしよう……心臓は不整脈かってくらい早鐘を打っていて、喉がカラカラだ。本当にいいんだろうか。桂一郎の将来を俺が奪うことにならないだろうか。でも、何を言っても桂一郎は説得してくるし、プレゼンのごとく資料を次々出してくるし、挙句の果てに脅してきた。
俺だって桂一郎にそんなことを言われて嬉しくないわけじゃない。勝手に目が潤んでくるし、顔が熱い……どうしよう。
そっと顔を上げれば、桂一郎の目はギラギラとしていて、俺を絶対に逃さないって訴えている。
「後悔しても、知らないからな」
「しませんよ。絶対」
そうして、俺は覚悟を決めた。
桂一郎がここまで真剣に俺とのことを考えて、俺の退路を塞いできてるんだからどうにもできないし……ってのは言い訳で、俺だって桂一郎を俺のものにできるならそうしたい思いがあるから。
もしかしたら、いつか桂一郎に捨てられる日が来るかもしれないけど、それまでは夢を見ていてもいいんじゃないかって。
「ど……どう、したら、いいんだ?」
「まずは、物件決めましょうよ。埋まっちゃってるのもあるかもしれないけど、こういうの見ながら条件出すのも楽しいですよ。譲れないポイントとかありますか? 俺はできれば寝室一緒がいいですけど、典明さんが一応は別にしたいなら譲歩します。あ、スーパーとかコンビニは近くにほしいですね」
「あ、うん。スーパーは近くがいいかな。家広くなるなら寝室とは別の、個人の部屋は欲しいかも。いつもテーブルにパソコン出してたから……」
二人で希望を出し合うのは楽しかった。
全部が叶う家なんてないだろうけど、少しでも近いものを見つけたいなって話したり、いっそマンション買うとか……なんて話も出たりした。マンション買うなんて別れるときどうするんだろうって考えた瞬間頬をつままれる。
「典明さん、変なこと考えてるでしょ。別れませんからね? なんで悪いことばかり考えようとするんですか……」
「ごめん……臆病で」
「オレのこと信じてくださいよ。離れられないのも、囲い込もうとしてるのもオレなんですから」
「うっ……」
「泣かないで、典明さん。覚悟決めてくれたんでしょ?」
年下の桂一郎にここまで言わせる自分が情けない。ていうか、気分が上がったり下がったりしまくってて、情緒不安定だ。
そんな俺を見抜いたのか、桂一郎は俺を浴室に連れ込んでいたずらを始めた。こんなに情緒不安定でも俺の身体は桂一郎の愛撫にすぐ反応してしまう……恥ずかしすぎる。
「典明さんのココはこんなに素直なのに……」
「言うな」
「ふふ。典明さん大好きです。ずっと一緒にいたいからオレに丸め込まれて? ね、こっちもオレが欲しいって」
「あっ、あっ……」
俺の後ろの穴に桂一郎の指が入り込んで、くっとイイトコロを押し込まれた。もうそれだけで、俺の穴は突っ込まれることを期待して桂一郎の指を喰む。
でも、桂一郎はそれ以上のことをしてくれなくて……俺が我慢できなくて欲しいと訴えた。
桂一郎は俺を浴室の壁に押し付けるようにすると、バックで俺の中に入ってくる。久しぶりの桂一郎のはちょっと苦しい。相変わらず、俺が我慢できなくて懇願するまで解しまくられたから痛くはなかったけど、やっぱり桂一郎のちんこはでかいんだって再確認した。
前はひとり遊びの場所だった浴室で、今は桂一郎に抱かれている。それが不思議で気持ちが勝手に盛り上がって……喘ぎ声が漏れてしまった。浴室は声が響くから必死で我慢したけど、そうすると息が止まってクラクラとしてくる。
「典明さん、ごめ……止まらない」
「くっ……ふっ……」
「オレがこうなるのは典明さんだけなんだから、責任取ってください、ね」
桂一郎に抱えられて、腰を突き出した体勢で俺はあっという間にイッた。それを見た桂一郎は、まだイッてないみたいなのにちんこを抜くと、俺を抱えるようにベッドに移動する。
覆いかぶさられた瞬間に見えた桂一郎の顔は飢えた獣みたいで、つい息を飲んでしまった。桂一郎はすぐ俺の中に入ってきて続きを始めて……落ちるまで何回したんだろう……。
「……しすぎ」
「典明さんのせいですよ。オレの本気を疑うから」
「ん、もう言わない。男女だって結婚前から離婚のことなんて考えないもんな。桂一郎とずっと一緒にいられるように俺も頑張る」
そう伝えると、桂一郎は破顔して俺を抱きしめてきた。ああ、どうしよう、幸せすぎて泣きそうだ。
まだ今の世の中じゃ同性同士は偏見があるだろうし、そういう意味では怖くもある。だけど、俺も桂一郎も、ただお互いを大事に思っているだけだから堂々としていようって思う。関係のない他人に気持ち悪いって思われることなんて跳ね除けられるくらい、桂一郎と幸せを紡いでいきたい。
俺たちは新しいスタートラインに立ったばかりなんだから……。
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