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北方大陸編
紅い空、暗い海
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右を見ても左を見ても海。
ゆらゆら揺れる船にもようやく慣れてきたある日の夕方、空と雲が紅に染まっていた。
「すごいね」
オレンジ色を通り越して、赤に近い夕焼け。
ところ変われば見える世界も変わってくるんだね。
「ちょっと不吉ですね」
甲板上で夕焼けをウォッチするあたしとパル。
世界の美しさに感動するあたしを尻目にパルの顔は曇っていた。
「そうなの? 赤すぎるから?」
血のような赤と言えなくもないけど、なんとなく虫の知らせ的なヤツかな?
「こりゃ嵐が来るな」
ひとりほっつき歩いていたリュオが、突如背後に現れる。
「ぴゃー!!」
思わず飛びのくと彼は悪ぃ悪ぃと謝った。
「嵐が来るってなんで分かるの?」
雲はあれど空は澄み切っているし、風も船の帆を軽やかに後押しする程度しか吹いていない。
とてもじゃないけど嵐の前って感じじゃないのだ。
「小難しい話はメンド―だからカンタンにいうと、空気中の水蒸気が増えるとより赤々しく見えんの」
「う、うん?」
なんて?
「お日さんの光ってな複数の色の光が降り注いでるんだよ。で、水蒸気が多いと青色の光が散って、赤色の光が通りやすくなんの」
「神学、ですかね」
あたしは聞いたことも無かった話に首を捻るが、パルは心当たりがあるらしかった。
さすが王族。教養が違うわね。
「神学でも多少触ってっかな。ま、自然科学とか気象学ってのが本来の学び。たぶん一般的には習わないし、知らなくても当然」
神学っていうのは、いわゆる宗教学と神話学ってやつのはずだ。
この世界を創った白い竜の神様がいる。
“創造と再生”を司る白い竜の神様は、世界を創ったあと眠りについたって言われている。
対になる黒い竜の神様は“破壊と浄化”を司る。
で、神様たちが眠っている間、世界の管理を行っている神様がいて、“太守”と呼ばれているらしい。
全部で13体いるって話だけど、ここら辺は詳しく書かれている書物が無い。
あとは獣の神様とか大海の神様だとかがいっぱいいて、そこに宗教が絡んでくるのだ。
割とあたし、学校成績は良いんだからね。と心の中でドヤっていた。
「リュオ物知りだね。もしかしてどこかの王子様だったりしてぇ?」
自然科学とか気象学とかいう謎の学問があるなんて初めて知ったあたしが茶化す。
「・・・・・・だったらどうする?」
少し間があってから彼がイタズラっぽく笑った。
「そーだなー、白馬に乗って正装した姿が見たいかな!」
冗談半分、ロマン半分であたしが言うとパルが笑っていた。
やがて夕陽が大海を赤く染めて沈んでいった。
薄闇が世界を覆う頃、風が吹きすさび、船が上下に激しく揺れ始めていた。
船員達は乗客に部屋から出ないように告げると上甲板や船内の各所に散っていく。
ギギギギギィ
船体が軋む音と激しく上下に揺れる状況に不安が駆られる。
「大丈夫・・・・・・だよね?」
気を紛らわせるためリュオに話しかける。
「ダメかもしれんね」
「ちょ!」
いつもみたいに「まあ何とかなんだろ」とか言ってケラケラ笑って欲しかった。
が、残念ながら今夜は現実的だった。
「いいか、最悪の場合は自分が助かる事だけ考えろよ。下手な優しさを出したら死ぬぞ」
リュオの目はマジだった。
「う、うん・・・・・・」
船員の怒号がどこかから聞こえてくる。
固定されていない家具が右に左にゴトゴト大きな音を立てて転がりまわっていた。
おしゃれな彫刻がなされたイスは、あちこちにぶつかり粗大ごみと化しているし、壁から掛かっていたカンテラは早々に床に叩きつけられ粉々になっていた。
薄闇の中、叩きつける雨の音と木材が軋む音だけが聞こえる。
より一層激しく空間が上下左右に揺すぶられる。
ラレスやパルたちは無事かな。
むくむくと底知れぬ恐怖が這い寄ってくるような気がした。
“死”というモノがヒタリヒタリと近付いている気がしていた。
「やべえ!! しっかり掴まれ!!
突如、闇を引き裂いてリュオの怒号が響いた。
何だか分からなかったけど部屋の柱にしがみ付く。
ドッ
何かに激突する鈍い音。
ガガガガガッ
バキバキバキという木材が引き裂かれる音が響き、そして激しい衝撃が襲ってくる。
部屋にあったテーブルが吹き飛び、入り口のドアをぶち破ってすっ飛んでいった。
どこかの部屋の誰かに悲鳴が聞こえ、途切れた。
あたしはたぶん悲鳴を上げてたと思う。
「船体損傷ーーーッ!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーッ!!!」
遠くから船員の叫び声と断末魔が響き、船が大きく左に傾斜する。
入り口のドアの外を水鉄砲が突き抜けていった。
流されていく白髪の男性と一瞬だけ目が合い、次の瞬間には消えていった。
「積み荷を捨てろーーーーッ!!!」
「船底から浸水ぃーーーー!!」
ザアザアと激しく叩きつけられる雨、うねる大波が船内を洗い流してゆく。
準大型船マルス4世号が、まるで木の葉のように揺れていた。
さっきまで壁だったところは裂け、荒れ狂う黒々とした地獄が広がる。
「もうだめだァー!! 神様ぁーーあああぁぁぁーーーッ!!」
波に洗われた甲板から船員が荒れ狂う海に引きずり込まれてゆく。
「わアァぁあああ――ッ!! 船長たす―――」
「リディア!! 来いッ!!」
心臓がバクバク激しく脈打ち、息が乱れる中リュオの腕があたしを抱え込む。
「いいか!! 海に飛び込むぞ!!」
たぶん虚ろな目で見てたんだろう。
リュオはあたしのほっぺをペチペチ叩くと簡潔に、これからすることを伝えてくる。
海に
飛び込む
何か浮くものに
掴まれ
離すな
自分だけの事を
考えろ
コクコク頷くとあたしを抱き抱え、リュオが船体の裂け目から海に飛び出した。
冷たい水を吸った服が張り付く。
浮遊する木箱か木片か分からない何かを押し付けられる。
「いいか? 離すなよ!!」
リュオの手が腰あたりを掴み、押し上げられる。
あたしの体が少し浮き上がり、浮遊物に半身が乗っかる形になった。
とにかくへばりつくようにしがみ付く。
横殴りの雨が叩きつけられ、大きくうねる波に揉まれる中、遠くで船が燃える。
雨が降り注いでいるのに燃えるんだ。
なんて、ぼんやりと見つめる中、不意に力強く抱き締めてくれていた感覚が無い事に気付く。
え? あれ? リュオ?
黒々とした波間に無数の積み荷が揺れる中を見渡すが、彼の姿は無かった。
ラレスも、パルも、モーリアス卿の姿も無かった。
“自分だけの事を考えろ”
リュオの声が聞こえた気がした。
聞こえたのかもしれない。
聞こえなかったのかもしれない。
“いま、おねえさんに死なれたら、ボクが困るんだよ”
どれくらいの時間が経ったのか分からない。
何度も波を被り、拷問かと思うくらいの苦痛の果て、荒れ果てた海は穏やかさを取り戻す。
意識が朦朧とする中で島影を見たように思う。
あたしの意識はそこで途絶えた。
ゆらゆら揺れる船にもようやく慣れてきたある日の夕方、空と雲が紅に染まっていた。
「すごいね」
オレンジ色を通り越して、赤に近い夕焼け。
ところ変われば見える世界も変わってくるんだね。
「ちょっと不吉ですね」
甲板上で夕焼けをウォッチするあたしとパル。
世界の美しさに感動するあたしを尻目にパルの顔は曇っていた。
「そうなの? 赤すぎるから?」
血のような赤と言えなくもないけど、なんとなく虫の知らせ的なヤツかな?
「こりゃ嵐が来るな」
ひとりほっつき歩いていたリュオが、突如背後に現れる。
「ぴゃー!!」
思わず飛びのくと彼は悪ぃ悪ぃと謝った。
「嵐が来るってなんで分かるの?」
雲はあれど空は澄み切っているし、風も船の帆を軽やかに後押しする程度しか吹いていない。
とてもじゃないけど嵐の前って感じじゃないのだ。
「小難しい話はメンド―だからカンタンにいうと、空気中の水蒸気が増えるとより赤々しく見えんの」
「う、うん?」
なんて?
「お日さんの光ってな複数の色の光が降り注いでるんだよ。で、水蒸気が多いと青色の光が散って、赤色の光が通りやすくなんの」
「神学、ですかね」
あたしは聞いたことも無かった話に首を捻るが、パルは心当たりがあるらしかった。
さすが王族。教養が違うわね。
「神学でも多少触ってっかな。ま、自然科学とか気象学ってのが本来の学び。たぶん一般的には習わないし、知らなくても当然」
神学っていうのは、いわゆる宗教学と神話学ってやつのはずだ。
この世界を創った白い竜の神様がいる。
“創造と再生”を司る白い竜の神様は、世界を創ったあと眠りについたって言われている。
対になる黒い竜の神様は“破壊と浄化”を司る。
で、神様たちが眠っている間、世界の管理を行っている神様がいて、“太守”と呼ばれているらしい。
全部で13体いるって話だけど、ここら辺は詳しく書かれている書物が無い。
あとは獣の神様とか大海の神様だとかがいっぱいいて、そこに宗教が絡んでくるのだ。
割とあたし、学校成績は良いんだからね。と心の中でドヤっていた。
「リュオ物知りだね。もしかしてどこかの王子様だったりしてぇ?」
自然科学とか気象学とかいう謎の学問があるなんて初めて知ったあたしが茶化す。
「・・・・・・だったらどうする?」
少し間があってから彼がイタズラっぽく笑った。
「そーだなー、白馬に乗って正装した姿が見たいかな!」
冗談半分、ロマン半分であたしが言うとパルが笑っていた。
やがて夕陽が大海を赤く染めて沈んでいった。
薄闇が世界を覆う頃、風が吹きすさび、船が上下に激しく揺れ始めていた。
船員達は乗客に部屋から出ないように告げると上甲板や船内の各所に散っていく。
ギギギギギィ
船体が軋む音と激しく上下に揺れる状況に不安が駆られる。
「大丈夫・・・・・・だよね?」
気を紛らわせるためリュオに話しかける。
「ダメかもしれんね」
「ちょ!」
いつもみたいに「まあ何とかなんだろ」とか言ってケラケラ笑って欲しかった。
が、残念ながら今夜は現実的だった。
「いいか、最悪の場合は自分が助かる事だけ考えろよ。下手な優しさを出したら死ぬぞ」
リュオの目はマジだった。
「う、うん・・・・・・」
船員の怒号がどこかから聞こえてくる。
固定されていない家具が右に左にゴトゴト大きな音を立てて転がりまわっていた。
おしゃれな彫刻がなされたイスは、あちこちにぶつかり粗大ごみと化しているし、壁から掛かっていたカンテラは早々に床に叩きつけられ粉々になっていた。
薄闇の中、叩きつける雨の音と木材が軋む音だけが聞こえる。
より一層激しく空間が上下左右に揺すぶられる。
ラレスやパルたちは無事かな。
むくむくと底知れぬ恐怖が這い寄ってくるような気がした。
“死”というモノがヒタリヒタリと近付いている気がしていた。
「やべえ!! しっかり掴まれ!!
突如、闇を引き裂いてリュオの怒号が響いた。
何だか分からなかったけど部屋の柱にしがみ付く。
ドッ
何かに激突する鈍い音。
ガガガガガッ
バキバキバキという木材が引き裂かれる音が響き、そして激しい衝撃が襲ってくる。
部屋にあったテーブルが吹き飛び、入り口のドアをぶち破ってすっ飛んでいった。
どこかの部屋の誰かに悲鳴が聞こえ、途切れた。
あたしはたぶん悲鳴を上げてたと思う。
「船体損傷ーーーッ!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーッ!!!」
遠くから船員の叫び声と断末魔が響き、船が大きく左に傾斜する。
入り口のドアの外を水鉄砲が突き抜けていった。
流されていく白髪の男性と一瞬だけ目が合い、次の瞬間には消えていった。
「積み荷を捨てろーーーーッ!!!」
「船底から浸水ぃーーーー!!」
ザアザアと激しく叩きつけられる雨、うねる大波が船内を洗い流してゆく。
準大型船マルス4世号が、まるで木の葉のように揺れていた。
さっきまで壁だったところは裂け、荒れ狂う黒々とした地獄が広がる。
「もうだめだァー!! 神様ぁーーあああぁぁぁーーーッ!!」
波に洗われた甲板から船員が荒れ狂う海に引きずり込まれてゆく。
「わアァぁあああ――ッ!! 船長たす―――」
「リディア!! 来いッ!!」
心臓がバクバク激しく脈打ち、息が乱れる中リュオの腕があたしを抱え込む。
「いいか!! 海に飛び込むぞ!!」
たぶん虚ろな目で見てたんだろう。
リュオはあたしのほっぺをペチペチ叩くと簡潔に、これからすることを伝えてくる。
海に
飛び込む
何か浮くものに
掴まれ
離すな
自分だけの事を
考えろ
コクコク頷くとあたしを抱き抱え、リュオが船体の裂け目から海に飛び出した。
冷たい水を吸った服が張り付く。
浮遊する木箱か木片か分からない何かを押し付けられる。
「いいか? 離すなよ!!」
リュオの手が腰あたりを掴み、押し上げられる。
あたしの体が少し浮き上がり、浮遊物に半身が乗っかる形になった。
とにかくへばりつくようにしがみ付く。
横殴りの雨が叩きつけられ、大きくうねる波に揉まれる中、遠くで船が燃える。
雨が降り注いでいるのに燃えるんだ。
なんて、ぼんやりと見つめる中、不意に力強く抱き締めてくれていた感覚が無い事に気付く。
え? あれ? リュオ?
黒々とした波間に無数の積み荷が揺れる中を見渡すが、彼の姿は無かった。
ラレスも、パルも、モーリアス卿の姿も無かった。
“自分だけの事を考えろ”
リュオの声が聞こえた気がした。
聞こえたのかもしれない。
聞こえなかったのかもしれない。
“いま、おねえさんに死なれたら、ボクが困るんだよ”
どれくらいの時間が経ったのか分からない。
何度も波を被り、拷問かと思うくらいの苦痛の果て、荒れ果てた海は穏やかさを取り戻す。
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