17 / 25
北方大陸編
キノコのバケモノに捕らわれて
しおりを挟む
ザザァ・・・・・・ザザァ・・・・・・
穏やかな波に音が聞こえる。
暗くて冷たい海じゃなくて暖か、むしろ暑いくらいの場所。
ミャアミャアという海鳥の声。
死んだのかな、と思ってみたけれど手足の感覚は普通に残っていた。
空が青い。
白い雲がゆっくりと空を流れてゆく。
本で見たことのある南国の木みたいなのが風に揺れていた。
・・・・・・
・・・・・・
・・・―――
あれ?! また意識を失っていた?!
青い空がきれいなオレンジ色に染まっていた。
半身を起こすと隣に見知らぬ男性が三角座りで舟を漕いでいるのが見える。
キレイに刈り揃えられた黒髪のバチバチとした髪型。
小麦色の健康そうな肌は割と筋肉質だった。
黒い短パンみたいな姿なのは、現地の人だからかもしれない。
と思ったけれど、木の枝の上で衣服が風に揺れていた。
もしかしたら同じ船に乗っていた生き残りなのかな?
そこまで思った時に男性が夢から覚める。
「ここは・・・・・・?」
あたしが男性に声を掛けたから目が覚めたのかもしれないけど、どっちなのかはどうでも良かった。
「ここは・・・・・・」
男性は困ったように首を傾げる。
黒曜石のようなキレイな瞳の男性だった。
「わからん!」
男性はあたしの目を見つめ、一息に言いきった。
とてつもなく男前すぎる返答だった。
あまりにも真剣なまなざしに何でか笑えてきてしまう。
もっとこう、取り繕ったりするのかな、と思ったらそんな事は微塵もない。
きっとカッコつけたりしない人なんだ。
で、一緒に迷子なんだ。とか思ったら親近感が湧いてきた。
「一緒に迷子ってことね。アンタが助けてくれたの? あたしはリディア。ありがとね」
お礼を言い、握手を求めるとそれに応じる彼は、夕陽に照らされ、割とカッコよかった。
「オレはユーマだ。ユーマ・トワイライト。大したことはしていない」
でもパンツ一丁だった。うん。
白い砂浜は夕陽が当たり、オレンジ色に輝いているけれど、特に何も無かった。
短い草がなだらかな曲線を描いて内陸部に続く。
そして、遠くにどう見てもおかしなサイズの木々が並立しているような場所だった。
このまま浜辺にいても何も変わりそうにない。
「ねえ、とりあえず人が住んでそうなところ、探さない?」
最悪、無人島って可能性もあったけれど、行ってみないと分からない。
「そうだな」
ユーマは木の枝から服を回収するといそいそと着込む。
ハードレザーアーマーに厚底ブーツ、指ぬきグローブというスタイルだった。
動きやすさを重視した冒険者って感じの恰好。
ラレスみたいに剣を持っているわけでも、あたしみたいに杖を持って・・・・・・あれ?!
杖が無くなって・・・・・・。
服を整えるユーマを見て、着ている服以外、何もかもが無くなっていることに気付いてしまった。
着替えが入っていたポシェットはおろか、小銭が入った革袋、樫の木でできた魔法用の杖。
「どうしたんだ?」
身なりを整えたユーマが尋ねる。
「どこかで荷物を無くしたみたい・・・・・・。たぶん、海の底・・・・・・」
もしかしたら、どこかの海原をどんぶらこどんぶらこと流れているかもしれない。
「それは参ったな。浜辺には何も落ちていなかったな・・・・・・」
とりあえず、内陸部に向かいながら言葉を交わす。
完全に無一文だった。
もし集落とか町があっても辛い現実が待っている。
生きているだけでも良かった、なんて割り切れるほど聖人君子では無い。
ああー、とか情けない声を出すあたしの肩をポンポンと叩くユーマ。
「困った時は頼ればいい」
とか言いながらニッコリと笑った。
白い歯がキラリと輝く。
なんだこれ。
初対面からろくに時間が経ってないのにこの黒髪の青年はイケメンであった。
性格が。
そんなとき、ふと目に入ったのが巨木の間を行き来する気球みたいな何かだった。
赤い風船みたいなものにロープと思しき何かでカゴが吊るされている。
カゴの色は、緑と白の縦ストライプだった。
どうみても人工物。
顔を見合わせて、目と目で会話する。
「「行こう」」
2人同時に声をあげ、小走りに駈け出していた。
なだらかな丘を駆け抜け、巨木の林に近付くにつれ、視線が上に上に上がっていく。
見上げるほどに巨大な木には、はしごが掛かっていたり、側面にらせん状のステップが付いていたりしていた。
どうやら中をくり抜いて誰かが住んでいるらしかった。
「ツリーフォーク? 初めて見た・・・・・・」
学校の教科書で“ジャバ神族”という文化圏の人たちは、見上げるほどに巨大な木と共に生きているって習ったのだ。
それがツリーフォーク。
まさか本物が見れるなんてステキ!
辺りを見渡すと木々の根元付近に無数のキノコ・・・・・・型の家が建っている。
「キノコの家ね。素敵」
きっと森の誇り高き民ジャバ神族っていうのが住んでるだろうな。
ガチャ
唐突にキノコの家のドアが開いた。
中から服を着た、あたしより身長の高いキノコが姿を現す。
傘の下、柄の部分に小さな宝石みたいな目が二つ、軽くとがり、途中から歪んだ鼻、半開きのアヒル口。
ヤツが手に持っていた鍋が地面に落ち、甲高い音を立てる。
鍋の中から湯がいたキノコが地に撒き散らされる。
あたし達を凝視するキノコ。
もといバケモノ。
身構えるユーマ。
「AAAッ!!?」
バケモノが何やら吠えた。
聞き取れない声で喚く。
「SGOII! FUTEENNONINNINN! EROFUNONNON!? SGOII!!」
立て続けに吠えた。
威嚇行動かもと後ずさる。
脇に抱えていたキノコの束がバサバサと地面に散る。
極度に興奮したバケモノがぴょんぴょん飛び跳ねると胞子が傘からバサバサと降り注ぐ。
若干、黄色い胞子が風に乗って辺りに広がっていく。
「スモークだ!!」
ユーマは叫ぶと踵を返し、あたしを抱き上げると駈け出した。
「ユーマ! よけて!!」
意味不明の雄たけびを上げたバケモノは、反射的に走り出すと跳躍、あたしとユーマは圧し倒される。
「ぐえー!」
ユーマは、苦悶に満ちた表情で倒れ込むと気絶する。
動かなくなったユーマよりも動くものを狙う習性があるんだろう。
何とか立ち上がったあたしにバケモノが飛び掛かる。
「ギャー――――――ッ!!!」
不気味な顔とブニブニした柔らかボディが迫る。
咄嗟に回し蹴りを打ち込むが全く効いてなかった。
「ヤダヤダ!! 何すんのよ!! 来ないで!!」
「NINNIN!! KWII!! BKNOMONONO!!」
ボコスカ蹴りまくったけどものともしないバケモノに押し倒される。
ベタベタした粘液みたいなものが出ている手であちこち触りまくるバケモノ。
「ヤダ――ッ!! ギャァァァァ―――――ッ!!」
バケモノが激しく興奮し、何か喚いていた。
うつ伏せに転がされるとブニブニした手が、あたしの腕を後ろ手に捻り上げ、どこからか出てきたロープでグルグル巻きに縛られていく。
グルグル巻きに縛られて地面に転がされると、きょろきょろと辺りを見渡したヤツは、落ちているキノコの束を拾うとあたしの口にねじ込んだ。
「むーーーッ!! むぅぅむーーーーッ!!」
猿轡のつもりらしかったが、生臭いニオイと味が広がり、意識が遠のく。
イヤらしい目つきで見下ろすバケモノの姿がそこにあった。
穏やかな波に音が聞こえる。
暗くて冷たい海じゃなくて暖か、むしろ暑いくらいの場所。
ミャアミャアという海鳥の声。
死んだのかな、と思ってみたけれど手足の感覚は普通に残っていた。
空が青い。
白い雲がゆっくりと空を流れてゆく。
本で見たことのある南国の木みたいなのが風に揺れていた。
・・・・・・
・・・・・・
・・・―――
あれ?! また意識を失っていた?!
青い空がきれいなオレンジ色に染まっていた。
半身を起こすと隣に見知らぬ男性が三角座りで舟を漕いでいるのが見える。
キレイに刈り揃えられた黒髪のバチバチとした髪型。
小麦色の健康そうな肌は割と筋肉質だった。
黒い短パンみたいな姿なのは、現地の人だからかもしれない。
と思ったけれど、木の枝の上で衣服が風に揺れていた。
もしかしたら同じ船に乗っていた生き残りなのかな?
そこまで思った時に男性が夢から覚める。
「ここは・・・・・・?」
あたしが男性に声を掛けたから目が覚めたのかもしれないけど、どっちなのかはどうでも良かった。
「ここは・・・・・・」
男性は困ったように首を傾げる。
黒曜石のようなキレイな瞳の男性だった。
「わからん!」
男性はあたしの目を見つめ、一息に言いきった。
とてつもなく男前すぎる返答だった。
あまりにも真剣なまなざしに何でか笑えてきてしまう。
もっとこう、取り繕ったりするのかな、と思ったらそんな事は微塵もない。
きっとカッコつけたりしない人なんだ。
で、一緒に迷子なんだ。とか思ったら親近感が湧いてきた。
「一緒に迷子ってことね。アンタが助けてくれたの? あたしはリディア。ありがとね」
お礼を言い、握手を求めるとそれに応じる彼は、夕陽に照らされ、割とカッコよかった。
「オレはユーマだ。ユーマ・トワイライト。大したことはしていない」
でもパンツ一丁だった。うん。
白い砂浜は夕陽が当たり、オレンジ色に輝いているけれど、特に何も無かった。
短い草がなだらかな曲線を描いて内陸部に続く。
そして、遠くにどう見てもおかしなサイズの木々が並立しているような場所だった。
このまま浜辺にいても何も変わりそうにない。
「ねえ、とりあえず人が住んでそうなところ、探さない?」
最悪、無人島って可能性もあったけれど、行ってみないと分からない。
「そうだな」
ユーマは木の枝から服を回収するといそいそと着込む。
ハードレザーアーマーに厚底ブーツ、指ぬきグローブというスタイルだった。
動きやすさを重視した冒険者って感じの恰好。
ラレスみたいに剣を持っているわけでも、あたしみたいに杖を持って・・・・・・あれ?!
杖が無くなって・・・・・・。
服を整えるユーマを見て、着ている服以外、何もかもが無くなっていることに気付いてしまった。
着替えが入っていたポシェットはおろか、小銭が入った革袋、樫の木でできた魔法用の杖。
「どうしたんだ?」
身なりを整えたユーマが尋ねる。
「どこかで荷物を無くしたみたい・・・・・・。たぶん、海の底・・・・・・」
もしかしたら、どこかの海原をどんぶらこどんぶらこと流れているかもしれない。
「それは参ったな。浜辺には何も落ちていなかったな・・・・・・」
とりあえず、内陸部に向かいながら言葉を交わす。
完全に無一文だった。
もし集落とか町があっても辛い現実が待っている。
生きているだけでも良かった、なんて割り切れるほど聖人君子では無い。
ああー、とか情けない声を出すあたしの肩をポンポンと叩くユーマ。
「困った時は頼ればいい」
とか言いながらニッコリと笑った。
白い歯がキラリと輝く。
なんだこれ。
初対面からろくに時間が経ってないのにこの黒髪の青年はイケメンであった。
性格が。
そんなとき、ふと目に入ったのが巨木の間を行き来する気球みたいな何かだった。
赤い風船みたいなものにロープと思しき何かでカゴが吊るされている。
カゴの色は、緑と白の縦ストライプだった。
どうみても人工物。
顔を見合わせて、目と目で会話する。
「「行こう」」
2人同時に声をあげ、小走りに駈け出していた。
なだらかな丘を駆け抜け、巨木の林に近付くにつれ、視線が上に上に上がっていく。
見上げるほどに巨大な木には、はしごが掛かっていたり、側面にらせん状のステップが付いていたりしていた。
どうやら中をくり抜いて誰かが住んでいるらしかった。
「ツリーフォーク? 初めて見た・・・・・・」
学校の教科書で“ジャバ神族”という文化圏の人たちは、見上げるほどに巨大な木と共に生きているって習ったのだ。
それがツリーフォーク。
まさか本物が見れるなんてステキ!
辺りを見渡すと木々の根元付近に無数のキノコ・・・・・・型の家が建っている。
「キノコの家ね。素敵」
きっと森の誇り高き民ジャバ神族っていうのが住んでるだろうな。
ガチャ
唐突にキノコの家のドアが開いた。
中から服を着た、あたしより身長の高いキノコが姿を現す。
傘の下、柄の部分に小さな宝石みたいな目が二つ、軽くとがり、途中から歪んだ鼻、半開きのアヒル口。
ヤツが手に持っていた鍋が地面に落ち、甲高い音を立てる。
鍋の中から湯がいたキノコが地に撒き散らされる。
あたし達を凝視するキノコ。
もといバケモノ。
身構えるユーマ。
「AAAッ!!?」
バケモノが何やら吠えた。
聞き取れない声で喚く。
「SGOII! FUTEENNONINNINN! EROFUNONNON!? SGOII!!」
立て続けに吠えた。
威嚇行動かもと後ずさる。
脇に抱えていたキノコの束がバサバサと地面に散る。
極度に興奮したバケモノがぴょんぴょん飛び跳ねると胞子が傘からバサバサと降り注ぐ。
若干、黄色い胞子が風に乗って辺りに広がっていく。
「スモークだ!!」
ユーマは叫ぶと踵を返し、あたしを抱き上げると駈け出した。
「ユーマ! よけて!!」
意味不明の雄たけびを上げたバケモノは、反射的に走り出すと跳躍、あたしとユーマは圧し倒される。
「ぐえー!」
ユーマは、苦悶に満ちた表情で倒れ込むと気絶する。
動かなくなったユーマよりも動くものを狙う習性があるんだろう。
何とか立ち上がったあたしにバケモノが飛び掛かる。
「ギャー――――――ッ!!!」
不気味な顔とブニブニした柔らかボディが迫る。
咄嗟に回し蹴りを打ち込むが全く効いてなかった。
「ヤダヤダ!! 何すんのよ!! 来ないで!!」
「NINNIN!! KWII!! BKNOMONONO!!」
ボコスカ蹴りまくったけどものともしないバケモノに押し倒される。
ベタベタした粘液みたいなものが出ている手であちこち触りまくるバケモノ。
「ヤダ――ッ!! ギャァァァァ―――――ッ!!」
バケモノが激しく興奮し、何か喚いていた。
うつ伏せに転がされるとブニブニした手が、あたしの腕を後ろ手に捻り上げ、どこからか出てきたロープでグルグル巻きに縛られていく。
グルグル巻きに縛られて地面に転がされると、きょろきょろと辺りを見渡したヤツは、落ちているキノコの束を拾うとあたしの口にねじ込んだ。
「むーーーッ!! むぅぅむーーーーッ!!」
猿轡のつもりらしかったが、生臭いニオイと味が広がり、意識が遠のく。
イヤらしい目つきで見下ろすバケモノの姿がそこにあった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる