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仏白目

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アインリヒ.シュバルツ

チェルシーと精霊の悪戯

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精霊王の歓迎を受けてチェルシー王女が到着した

「チェルシー王女よく来てくれた」


「シュバルツ国王陛下、ご機嫌麗しく・・ こないだぶりでございます」

なんだか変な挨拶におかしくなったが、笑うのは我慢する

「ああ、結果振り回した形になってしまってすまなかった 話しはしたいのだが 疲れているだろう?まずはゆっくりしてくれ」

長い間馬車の旅で疲れているだろうから、まずは休んで貰い、夕食の時にでも話しをしょうと思っていた

「いえ、大丈夫です、シュバルツ国王陛下が大丈夫でしたら聞きたいことがございます、よろしいですか?」

急いた様子のチェルシー王女に、何があったのか気になった

「ああ、では案内させよう」


王城の応接室に案内させると部屋に飾った妖精花を気に入ったようだ

「とても綺麗な花ですね」

「ああ、王城の庭にしか咲かない妖精花だ」

「妖精花?初めてみました」

「君の部屋にも飾ってあるよ、今朝は庭にこの花が沢山咲いてね、歓迎しているんだろう」

「ふふふ、虹もでてましたね、嬉しいです」

「あんな虹は初めてみたよ 」

チェルシー王女とは話していて楽しく、アインリヒも自然と笑顔になる

「突然、姉君と婚約者の変更なんて、君には無理を強いたのではないかと思っている」

アインリヒは一番気にしていた事を話す

「ええ、驚きましたよ?  でも・・
私は一度お会いしてましたので不安はありませんでした 
陛下は素敵な方ですし好意もありますよ?ふふふ」

好意もあると、言われて内心は嬉しさでドキドキする気持ちを抑えた これでは年下のチェルシー王女の方が余裕があるみたいだ

「そ、そうか、それは良かった 私達は婚約者なのだから、陛下では無く アインリヒと呼んでくれ」

「アインリヒ様!それでしたら私もチェルシーとお呼び下さいね」

「う、うむ、・・チェルシー・・」

「はい、アインリヒ様」

いざ名前を呼ばれるとなんだかくすぐったい、嬉しいのに落ち着かない



「そうそう、アインリヒ様に聞きたいことがございましたの」

そう話しながらチェルシーは紺色の本を手にして説明をしだした

「こちらへ来る道中、侍女と不思議な体験をしました
この本を読み終わり、その後夢を見せられました このお話しの中に入り込んだような内容でした この精霊の悪戯と言う本をご存知ですか?」

「精霊の悪戯?」

そう言ってアインリヒは本を受け取る


「初めて見る本だ、私も読んでみてもいいかな?」

「ええ、是非」

向かい同士のソファに座り この部屋には2人きりなので、しばらくの間静寂が続く

アインリヒはページをめくり、読み始めた




昔、むかし 緑豊かな精霊の国がありました。

 その国は精霊樹を中心に成り立ち精霊王が守る国、妖精たちは楽しく暮らしていました

その妖精の中に 1人、変わり者の妖精がいます


「あっ!きたきた」

そう独り言を言っては森の中へと毎日消えていきます

精霊王はその子が仲間に馴染まず、いつも1人で居る事に気がついていました

まだ幼いその妖精を気にかけていたのです




森の中では、1人の人間の少年が木の実を集めていました


少年の身なりは貧しく、痩せっぽちでした

「くそっ、こんだけしか見つからない!」

手に持った籠の中は 木の実が少し入っているだけです

妖精は木の枝に座り、その人間を眺めるのが楽しく、森にこの少年の気配がするといつも見に来ていました

木の実や木苺を集めては帰っていく少年を見たのが妖精が見た、初めての人間でした


「はあ、どうしよう 全然足りないよ」


妖精はベリーの実がなっている木を少年に教えてあげたくなり 


『こっちにあるよー』

妖精は少年の目の前にヒラヒラと浮かびながら、教えてあげようとしました


「うわーっ!なんだ こいつ!」

少年は妖精の姿を見るなり 後ろに転んでしまい 両手を振り回しながら追い払おうとします

『こわがらないで? 美味しいベリーの実がなっている所を教えてあげるー』


びっくりした顔の少年は、妖精の言った事に更に驚きながら、

「え?ベリーの実があるの? 本当かい?」


妖精の国の側の森は季節に関係なく、木の実が豊富に実っているが、人間はそこまで入れない 

だけどそこに近いこの少し奥の木も精霊樹の恩恵を受けていて 少しではあるが季節外れの実をつけていた

『うん!教えてあげる こっちだよー』

小さな光る体は宙を舞って、先導する

「あ!待てよ」

少年は急いで立ち上がり、追いかけた

森の中をしばらく歩いていくと、景色が変わり気温もほんの少し暖かく感じる

『ほら!そこにあるよ、ベリーの木だ!』

少年はベリーの木に駆け寄り

「うわー凄い!この時期にベリーが採れるなんて!夢みたいだ!」


それから少年はこの場所までやってきては木の実や果物を採って帰る様になった


「僕はルシアンていうんだ、君の名前は?」

ある時 木の実を採りに来た少年は妖精に名前を聞いた

『君はルシアン?僕の名前はね・・・だよー』

「え?

『・・・だよ』

「聞こえ無いよ、名前だけ聞き取れないんだ」

『そっかー、君達人間の音と違うんだね』

「うーん、じゃあ僕が名前を付けてあげるよ!  光るって意味で リヒト!」

『うん、リヒトいい名前だねー』


それからもルシアンが木の実を採る間はリヒトと2人 楽しく過ごしていた


日々の生活の中で、ルシアンは妖精の話しを耳にする

「御伽話の中にあるじゃないか、人魚の肉を食べたら不老不死になって、妖精を捕まえたら願いが叶うって!まぁ 眉唾物の話しだけどさぁ」

大人達が笑いながら話している会話だった




森で木の実を広いながら、ルシアンはリヒトに尋ねる

「リヒト 君は妖精なの?」

『うん、なんで今さらー』

「本当に?じゃあどんな力が使えるの?」

『え?力かい?僕自身はそんなに大した力は使えないよ? 明るく照らしたり少しの傷を治せるくらいだよー』

「明るく照らすって、どのくらい明るいんだい?」

『うーんと、このくらい?』

するとリヒト自身が眩しくひかり、ルシアンは目を開けていられなくなった

「凄いじゃないか!」

『えへへ』

リヒトは褒められてうれしくなった



ルシアンはリヒトにお願いがあるんだと言うと、リヒトを捕まえて箱の中に押し込めて森から連れ出してしまった

『出して!ルシアンひどいよ!』

「ごめんよ、途中誰かに見られたら困るんだ」

ルシアンは急いで家に戻り 古い鳥籠の中にリヒトの入った箱を入れて蓋を開けた

箱の蓋が空き自分が逃げられない籠に入れられている事がわかり、リヒトは悲しい顔をする

『ルシアン・・どうして・・』

「君が妖精だからだよ!誰かに見つかったら奪われてしまう 」

『どうゆうこと?』

「大人達が言っていたんだ、妖精を捕まえたら願いが叶うって」

『それを信じたの?』

「君は凄い力を持っているじゃないか!僕の願いを叶えてよ」

『ルシアンの願いは何?』

「僕をお金持ちにしてよ!こんな暮らしは嫌なんだ」

『ルシアン・・・』





( 読み進めながら、アインリヒは何故か 否定する気持ちが湧いてくる
いや! そうじゃない・・・何が?
本を読んでいるだけなのに 心を揺さぶられるような感情が湧いてきて・・・
それでも本を読み進める )





それからのルシアンは不思議と幸運に恵まれるようになり 食べ物も木の実を拾わなくても手に入れるようになってきて、毎日が楽しくなってくる

妖精を捕まえると願いが叶う

本当だったんだ!


ある日 ルシアンの家の前でうずくまっているお爺さんに声をかけると、足らを挫いてしまい動けないという

そのお爺さんはルシアンにお金を渡して、自分の家の者を連れて来てくれたらまたお金をあげるからと頼まれた、

「その倍をくれるなら、今すぐ治してあげるよ」

「そんな事が出来るのかい?」

「多分、出来るよ 待ってて」

ルシアンは家の中から、リヒトの入った鳥籠に布を被せて持ってきて、お爺さんの前に置いた

布を被せているので 中は見えない

「この人の怪我をなおして!」


ルシアンが声をかけると布をかけた鳥籠が中から光始めて キラキラした光の粉がお爺さんの怪我をした足に降り注ぎ、みるみるうちに痛みが消えていった

「まさか!痛みがきえた!怪我が治っているぞ!」


お爺さんは喜び、倍以上のお金をルシアンに渡して帰っていきました。


「リヒト!凄いよ こんなにお金が貰えたよ!」

「ルシアン嬉しい?」

「ああ!凄く嬉しいよ!」

「そっか、良かったねルシアン」

布を被された鳥籠の中のリヒトはお互いの姿が見えないまま、言葉を交わした・・



その事があり、数日経ったある日、
その老人が身なりの良い若い男性を連れて家を訪れた


「この間は世話になったね、私は伯爵家に仕える執事でこちらは、伯爵様だよ」


「やあ、はじめまして、執事から話しを聞いてね 連れて来てもらったんだ 君のその光る鳥籠の中身に興味があってね?」

ルシアンはリヒトを取られるのでは無いかと不安になった 

「ああ、もちろん対価は払うよ 君たち家族が一生楽に生活できるようにもしてあげるよ」

「!本当ですか?」

「ああ、もちろんだとも 私の領内の家に引っ越しておいで、対価の他に仕事もしてもらったら給金も出すから そうすれば不安はないだろう?」

良い話だった、 ルシアンはその話に飛びついた

「ありがとうございます、お受けします!」


そしてルシアンはリヒトを手放した


その後、リヒトは伯爵家に連れて行かれた


時々、力を使うように言われたが 殆ど鳥籠の中で過ごす毎日で、籠に被さる布は綺麗なものに変わったが囚われたまま、時間だけが過ぎていった


リヒトの最後は伯爵の子供の怪我を治すように言われて力を使い切ってしまったから

『大きな怪我で全部の力を使ったけどあの子は治せたかな・・? 』

それがリヒトの最後の想い 

光はだんだん弱まり、そして鳥籠から光は消えた・・






( アインリヒは何か大切な事を忘れているような気がして・・・

そうだ、この話はリリアン リリアンのことだ )






ルシアンは平和な生活を送っていた

食べ物に困る事もなく 暖かい布団で眠り

家族も幸せに出来て満足していた


リヒトと引き換えに手に入れた生活は幸せで、リヒトの事を忘れさせた


そんな毎日を送っているある日どこからか声が聞こえてきた

『君は幸せかい? もうあの子の事はすっかり忘れてしまった様だね

あの子の献身的な犠牲の上に成り立つ、君の幸せを私は許す事が出来ないんだ』


その声が聞こえた日からルシアンの生活は一変する

家族との団欒 寒い日だった、暖炉に薪をくべ部屋を暖かくしているのに、ルシアンはその場で凍えるように寒くなる

部屋をでると凍えることはないが、暖かくもない


食べ物を食べている時、家族が美味しいと食べているのに、ルシアンは美味しいと思えない

夜布団に入り 疲れていても気持ち良く眠る事が出来なかった


全てに置いて常に丁度いいと思える事がルシアンには無くなってしまった


それは、些細な事でも幸せを感じる事が許されない 

「それでも、君の願いは叶ったのだろう?」

それが精霊王の与えた罰だった  




(違う、ルシアンは僕にそんな事はしていない!鳥籠に入れたのは・・・)

アインリヒは最後まで読み、確信した

ああ、私はリヒトだ

はっきりと思いだした

僕はルシアンに幸せになって欲しかったんだ








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