泣きたいくらい幸せよ アインリヒside

仏白目

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アインリヒ.シュバルツ

ルシアンとマルクス

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「逢いたいよルシアン・・・」

そう呟いた途端、目の前は懐かしい森の景色に変わった 


「リヒトー!」

森の中でルシアンはリヒトを大きな声で呼んだ

だが、何度も呼ぶのにリヒトは現れなかった

「やっぱり、兄さんが言った事は嘘なんだ 森に帰すなんて、嘘だったんだ!」

ルシアンは泣いていた 

「リヒトー!」何度も泣きながらリヒトを探していた、もう何日もこうしている





あの日、いつものようにルシアンが木の実を取りに森に入りリヒトと楽しく過ごしていると、

「驚いたな、いつも、季節はずれな木の実や果物を持って帰ってくるから、不思議に思ってついてきてみれば、そいつは妖精じゃないか?」

「マルクス兄さん!」

「よお、ルシアンその子に紹介してくれよ」

「う、うん  リヒト、僕の兄さんのマルクスだよ」

この時ルシアンは12歳、長男のマルクスは20歳 
両親と4人家族だった ルシアンの上と下にも姉と弟がいたが食べ物がなく、病気になり続けて亡くなってしまった この国は困窮を極めていた

ルシアンに紹介されて、怖がりながらもリヒトはマルクスに挨拶をした

「弟と仲良くしてくれてありがとうな」

マルクスは優しくリヒトに笑いかける

「うん、ルシアンは僕の大事な友達なんだ」

「そっか、リヒトはルシアンの事が好きかい?」

「うん,大好きだよー」

リヒトは羽をキラキラさせながらルシアンの周りを飛んではしゃぐ

それを見てルシアンも嬉しそうに笑った

「そっか、これからも弟と仲良くしてやっておくれ」

マルクスも嬉しそうにしていた
その日は兄弟で木の実を拾い 森を後にした

「ルシアン、またねー」

リヒトの声が聞こえて、ルシアンは振り向き またねと言って手を振った


ルシアンが見たリヒトはそれが最後だった



しばらくの間、ルシアンは森に来る事が出来なかった

両親と一緒に痩せた土地を耕す手伝いをしていた、毎日同じ様に畑を耕していた

リヒトが森に行けばその日は食べる物が手に入っていたが、この一週間は森からの恵みの蓄えを食べていて、それも底をつきそうだった

「僕森で木の実を拾ってくるよ」

森に行こうとした時、マルクス兄さんが大きな声をあげて、家の中に入ってきた

「父さん!みんな聞いてくれ!別の領地の伯爵様が仕事をくれたんだ!家族みんなで引っ越してこいって、住む所もある!急いで向こうに行こう!
ここにいたって、死ぬのを待つだけだ!」

マルクス兄さんの剣幕に驚いたが、両親も僕も喜んで兄さんの用意した馬車に乗り込んだ


マルクス兄さんが連れて行ってくれた領地は食べ物に困ることはなかった

用意された家はとても広く快適で、今までの暮らしが嘘のようだった

美味しいご飯に暖かい布団

ここでは、毎日の食べ物を心配しないでも安心していられた

ひと月が過ぎた頃 

夜、喉が渇いて水を飲みに起きた 時計を見ると夜中の2時をまわっている

炊事場に行くと灯りが灯っていた

こんな夜中に?

ルシアンはこっそり中を覗くと、両親と兄さんがテーブルを囲んで座り話しをしていた

「それで、もうそろそろ教えてくれるだろ?こんないい暮らしが出来ているのはどうしてなんだ? もうひと月だ そろそろ話してもいいだろう?」

「ルシアンは寝ているよな?」

「こんな真夜中に起こしたって起きやしないさ・・・
 ルシアンには聞かせられ無い話なのか?」

「ああ、 ルシアンがよく森から木の実や果物を持って帰っていただろう?
時期はずれなのに、森の実りを持って帰ってくるのが不思議だったんだ、 俺たちはあの実りのおかげで助けられていたけど、気になってルシアンの後をつけたんだ、
あいつは森の奥に入って行って、そこで妖精と友達になっていたんだよ」

「・・・妖精?」

両親はマルクスが何を言っているのか、信じられない顔をしている

「そう、妖精だよ 御伽話にでてくるあれだよ 自分でも目を疑ったよ?まさか実在するなんて思ってなかったからさ」

「・・・・・」

「だけど、合点がいったんだ それで時期はずれなのに木の実や果物をルシアンは手に入れられたんだって」

「あ、ああ、妖精のおかげだったのか」

「ルシアンを森に行かせないように、畑仕事を手伝わせている間に、俺は妖精を捕まえた、
それからすぐ不思議な事に良い話しが向こうからやってきたんだ、ここの領地の伯爵様からで、
今の暮らしを一生保証してやるから、是非譲って欲しいと言われてね」

「お前、妖精を伯爵に売ったのか?」

「ああ、そのおかげで俺たちはいい暮らしが出来ているんだよ」

「・・・・・」

ルシアンは今聞いた話が信じられなかった、マルクス兄さんの事は大好きだった
姉と弟を立て続けに無くして、悲しみに暮れる両親やルシアンをいつも気にかけ守ってくれていた、大好きな兄が・・ルシアンの友達を売った?

ガタン、と音がしてマルクスは振り向いた
そこには呆然としたルシアンが立っていた

「・・・リヒトを?兄さんリヒトを捕まえて・・売ったの?」


「ルシアン!・・お前聞いてたのか!」


「答えて!リヒトをどうしたの!」


「・・ああ,その通りだよ・・仕方ないだろう?あの国に居たら俺たちはみんな死んでいた!どうしたらよかったんだ!」

「リヒトは・・僕たちを助けてくれたのに・・・売られて・・リヒトは酷い事はされてない?大丈夫だよね?兄さん!
なんとか言ってよ!」


「ああ、大丈夫だよ、伯爵も少ししたら あの森に逃がすからって、言っていたし
酷い事なんてされていないさ」

「あの森に・・そっか、大丈夫だよね?」

「ああ、心配しなくて大丈夫だよ」

「・・うん」


マルクスはルシアンを安心させる為に嘘をついた、いいや、自分が責められたく無いから嘘をついた リヒトを売った後の事なんて伯爵からは何も聞いていない

その場をやり過ごす事が出来ればそれで良かった


そして、その嘘がマルクスの一生の後悔となる 

ルシアンはあの森にリヒトに会いに、1人で行ってしまった 




そして、マルクスが探して見つけだしたルシアンは冷たく動かなくなっていた



「・・・いやだ・・」


マルクスの後悔も精霊王様とのやり取りも頭には情報として入ってくる



この国が出来た経緯も分かった、



でも、アインリヒは・・ 

リヒトはマルクスに騙されていた事に、今になって気がついた・・・


あの時、なんでマルクスを信じてしまったのか・・・



「そんな・・・」

アインリヒは流れる涙をそのまま ルシアンが死んでいた事に放心状態でいた


「マルクスは言ったのに、ルシアンは幸せに暮らせるって、なのに・・・」



リヒトの悲しみの感情に押しつぶされそうになりながらも、アインリヒは分かっていた

あの後 マルクスは大勢の人を助けている

精霊王様の力を借りたとはいえ、マルクスが動かなければ大勢の人達は飢餓にくるしみ滅び、今のシュバルツ王国は存在していないだろう


素晴らしい事をしたんだ、 だけど

そこに、ルシアンはいなかったなんて・・


過去に想いを馳せ、アインリヒは涙を流した・・・

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