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急造イケメン・ヤスオのその後
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かわい子ちゃんレスラーとして人気を博していた赤毛のアン子(本名・安子)が、女子から男子へと大変化(へんげ)をとげたという噂は、光の速さにも負けないほどのスピードで、おてんば市内を駆け巡った。
「えっ、あのアン子ちゃんが男子かよ」「チン〇コが生えてきたって、ほんとうか?」「男子になって日奈子社長とラブホテルへ行ったんだと」etc、いい加減きわまりないフェイクニュースがSNS上を賑わせていた。
あのアン子が男子になった――というのは紛れもない事実だった。しかもイケメンとして生まれ変わったのには度肝を抜かれた。
小説『おてんばプロレス』シリーズを初めてお読みの方のために補足しておくと、赤毛のアン子は、つい最近までおてんばプロレスで活躍していた女子レスラーのリングネームである。本名は安子といい、勤め先である有限会社おてんば企画では、タウン誌やフリーペーパーなどの編集ウーマンとして働いていたが、諸般の事情から、今は安夫という名前で編集の業務に携わっていたのだ。当年とって二十三歳。親元を離れ、現在はおてんば市内のアパートでひとり暮らしを満喫していた。
いくらなんでもチン〇コが生えてきたというのは盛りすぎだが、あそこをああして、あんな風に形成し、♀から♂へと変わったことだけはたしかである。
おてんば企画の別事業であるおてんばプロレスで、赤毛のアン子改めダンプヤスオは、ローカルプロレス界の悪徳マネージャーとして、その名を馳せていた。どちらかというと女子を絵に描いたようなアン子だったが、いざ男子へと生まれ変わってみると、これがまたイケメン中のイケメンであった。インターネットのフリマサイトで買い集めたらしく、今どきの男子のファッションも決まっていた。ハートはいいし、見栄えもいいし。元・上司、いや今でも上司の編集部長・美央から見て、ヤスオは理想の男子そのものだったのである。
「ああ、なんてイケメン。まさかあのアン子ちゃんが、こんなに凛々しいなんて――」。そんな想いから、すっかり恋する女の顔に変わってしまった女上司・美央と、今やイケメンに大変身を遂げた元・女子で後輩のヤスオ。おてんば企画という女の園にあって、美央とアン子は“ミーアンコンビ”と呼ばれるほど、息がぴったりであったが、女子と男子という関係になってからは、今ひとつ歯車がかみ合わなくなっていた。
以前までの姉妹のような関係から、男女の間柄になったわけだから、それも仕方あるまい。ある昼休みのこと、いつもの調子で「ねー、ヤスオ。ファンデーションを持っていたら貸して」という美央に対し、「えっ、ファンデーションなんて持ち歩いていないですよ。一応男子なので必要なくなりました」という感じで、ちょいと調子が狂ってしまうのだ。
「うーん、生理の相談とか。もうできないな」と思う美央。今までは女子の先輩として、いいたい放題であったが、今後はひとりの男子としてヤスオのことを扱わなければならないのである。
いつぞやは、いつもの乗りで「さぁ、残業もここまで。駅前の焼き鳥屋さんに飲みに行こう」といい、後輩のヤスオを誘い出したところまではいいのだが、日頃の寝不足がたたって、たちどころに美央が酔っ払ってしまい、ふと気がついたらヤスオと一緒に駅裏のラブホテルで朝を迎えていた。なぜラブホテルなのかはわからないが、心のどこかで一度行ってみたいと思わないわけではなくもないということがなかったらしい(一体どっちなのよー)。しかも目覚めた場所というのが、ヤスオの腕の中。男の匂いがする中、夢心地で朝を迎えたのだ。
えっ、噓でしょ。まさかヤスオとセ〇〇スしちゃうなんて。ていうか、セ〇〇スしたという記憶がまるでない。これはたぶんだけど、不覚にも酔いつぶれてしまった自分のことを介抱すべく、とり急ぎヤスオが一番近くにあった宿泊施設へ連れてきてくれただけのような――。焦焦焦。焦るじゃん。
ヤスオに問いただしたら「えっ、そうなんですかね。まったく覚えていないや」なんて口にしながら、すっとぼけた表情を浮かべているだけ。もともとアン子ことヤスオは天然っぽい一面があり、とぼけているというよりも何もわかっちゃいない雰囲気ではある。あのなー。私は上司なんだよ。ほんとうのことをいえ!と美央は迫ったが、「超」の字がつくほど天然のヤスオは、ひたすら困惑の表情を浮かべるだけであった。
あれ、でも、待って。ヤスオのあそこは、果たして男子としての機能を持ち合わせているのかしら?? 女子の生まれたままの姿を見たら、やっぱり勃(た)つのかしらん。なんて、きゃっ。私ったら何を考えているの、まったく。小説『おてんばプロレスの女神たち』シリーズも、ついに十八禁の仲間入りかぁと思いつつ、天下のイケメン・ヤスオとの間に、ひとつぐらいは秘密があってもいいわよね――と美央は自分自身にいい聞かせるのであった。
「えっ、あのアン子ちゃんが男子かよ」「チン〇コが生えてきたって、ほんとうか?」「男子になって日奈子社長とラブホテルへ行ったんだと」etc、いい加減きわまりないフェイクニュースがSNS上を賑わせていた。
あのアン子が男子になった――というのは紛れもない事実だった。しかもイケメンとして生まれ変わったのには度肝を抜かれた。
小説『おてんばプロレス』シリーズを初めてお読みの方のために補足しておくと、赤毛のアン子は、つい最近までおてんばプロレスで活躍していた女子レスラーのリングネームである。本名は安子といい、勤め先である有限会社おてんば企画では、タウン誌やフリーペーパーなどの編集ウーマンとして働いていたが、諸般の事情から、今は安夫という名前で編集の業務に携わっていたのだ。当年とって二十三歳。親元を離れ、現在はおてんば市内のアパートでひとり暮らしを満喫していた。
いくらなんでもチン〇コが生えてきたというのは盛りすぎだが、あそこをああして、あんな風に形成し、♀から♂へと変わったことだけはたしかである。
おてんば企画の別事業であるおてんばプロレスで、赤毛のアン子改めダンプヤスオは、ローカルプロレス界の悪徳マネージャーとして、その名を馳せていた。どちらかというと女子を絵に描いたようなアン子だったが、いざ男子へと生まれ変わってみると、これがまたイケメン中のイケメンであった。インターネットのフリマサイトで買い集めたらしく、今どきの男子のファッションも決まっていた。ハートはいいし、見栄えもいいし。元・上司、いや今でも上司の編集部長・美央から見て、ヤスオは理想の男子そのものだったのである。
「ああ、なんてイケメン。まさかあのアン子ちゃんが、こんなに凛々しいなんて――」。そんな想いから、すっかり恋する女の顔に変わってしまった女上司・美央と、今やイケメンに大変身を遂げた元・女子で後輩のヤスオ。おてんば企画という女の園にあって、美央とアン子は“ミーアンコンビ”と呼ばれるほど、息がぴったりであったが、女子と男子という関係になってからは、今ひとつ歯車がかみ合わなくなっていた。
以前までの姉妹のような関係から、男女の間柄になったわけだから、それも仕方あるまい。ある昼休みのこと、いつもの調子で「ねー、ヤスオ。ファンデーションを持っていたら貸して」という美央に対し、「えっ、ファンデーションなんて持ち歩いていないですよ。一応男子なので必要なくなりました」という感じで、ちょいと調子が狂ってしまうのだ。
「うーん、生理の相談とか。もうできないな」と思う美央。今までは女子の先輩として、いいたい放題であったが、今後はひとりの男子としてヤスオのことを扱わなければならないのである。
いつぞやは、いつもの乗りで「さぁ、残業もここまで。駅前の焼き鳥屋さんに飲みに行こう」といい、後輩のヤスオを誘い出したところまではいいのだが、日頃の寝不足がたたって、たちどころに美央が酔っ払ってしまい、ふと気がついたらヤスオと一緒に駅裏のラブホテルで朝を迎えていた。なぜラブホテルなのかはわからないが、心のどこかで一度行ってみたいと思わないわけではなくもないということがなかったらしい(一体どっちなのよー)。しかも目覚めた場所というのが、ヤスオの腕の中。男の匂いがする中、夢心地で朝を迎えたのだ。
えっ、噓でしょ。まさかヤスオとセ〇〇スしちゃうなんて。ていうか、セ〇〇スしたという記憶がまるでない。これはたぶんだけど、不覚にも酔いつぶれてしまった自分のことを介抱すべく、とり急ぎヤスオが一番近くにあった宿泊施設へ連れてきてくれただけのような――。焦焦焦。焦るじゃん。
ヤスオに問いただしたら「えっ、そうなんですかね。まったく覚えていないや」なんて口にしながら、すっとぼけた表情を浮かべているだけ。もともとアン子ことヤスオは天然っぽい一面があり、とぼけているというよりも何もわかっちゃいない雰囲気ではある。あのなー。私は上司なんだよ。ほんとうのことをいえ!と美央は迫ったが、「超」の字がつくほど天然のヤスオは、ひたすら困惑の表情を浮かべるだけであった。
あれ、でも、待って。ヤスオのあそこは、果たして男子としての機能を持ち合わせているのかしら?? 女子の生まれたままの姿を見たら、やっぱり勃(た)つのかしらん。なんて、きゃっ。私ったら何を考えているの、まったく。小説『おてんばプロレスの女神たち』シリーズも、ついに十八禁の仲間入りかぁと思いつつ、天下のイケメン・ヤスオとの間に、ひとつぐらいは秘密があってもいいわよね――と美央は自分自身にいい聞かせるのであった。
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