おてんばプロレスの女神たち ~ダンプヤスオ&ジャッキー美央&ジュリーの摩訶不思議な三角関係!?~

ちひろ

文字の大きさ
1 / 5

急造イケメン・ヤスオのその後

しおりを挟む
 かわい子ちゃんレスラーとして人気を博していた赤毛のアン子(本名・安子)が、女子から男子へと大変化(へんげ)をとげたという噂は、光の速さにも負けないほどのスピードで、おてんば市内を駆け巡った。
 「えっ、あのアン子ちゃんが男子かよ」「チン〇コが生えてきたって、ほんとうか?」「男子になって日奈子社長とラブホテルへ行ったんだと」etc、いい加減きわまりないフェイクニュースがSNS上を賑わせていた。
 あのアン子が男子になった――というのは紛れもない事実だった。しかもイケメンとして生まれ変わったのには度肝を抜かれた。
 小説『おてんばプロレス』シリーズを初めてお読みの方のために補足しておくと、赤毛のアン子は、つい最近までおてんばプロレスで活躍していた女子レスラーのリングネームである。本名は安子といい、勤め先である有限会社おてんば企画では、タウン誌やフリーペーパーなどの編集ウーマンとして働いていたが、諸般の事情から、今は安夫という名前で編集の業務に携わっていたのだ。当年とって二十三歳。親元を離れ、現在はおてんば市内のアパートでひとり暮らしを満喫していた。
 いくらなんでもチン〇コが生えてきたというのは盛りすぎだが、あそこをああして、あんな風に形成し、♀から♂へと変わったことだけはたしかである。
 おてんば企画の別事業であるおてんばプロレスで、赤毛のアン子改めダンプヤスオは、ローカルプロレス界の悪徳マネージャーとして、その名を馳せていた。どちらかというと女子を絵に描いたようなアン子だったが、いざ男子へと生まれ変わってみると、これがまたイケメン中のイケメンであった。インターネットのフリマサイトで買い集めたらしく、今どきの男子のファッションも決まっていた。ハートはいいし、見栄えもいいし。元・上司、いや今でも上司の編集部長・美央から見て、ヤスオは理想の男子そのものだったのである。
 「ああ、なんてイケメン。まさかあのアン子ちゃんが、こんなに凛々しいなんて――」。そんな想いから、すっかり恋する女の顔に変わってしまった女上司・美央と、今やイケメンに大変身を遂げた元・女子で後輩のヤスオ。おてんば企画という女の園にあって、美央とアン子は“ミーアンコンビ”と呼ばれるほど、息がぴったりであったが、女子と男子という関係になってからは、今ひとつ歯車がかみ合わなくなっていた。
 以前までの姉妹のような関係から、男女の間柄になったわけだから、それも仕方あるまい。ある昼休みのこと、いつもの調子で「ねー、ヤスオ。ファンデーションを持っていたら貸して」という美央に対し、「えっ、ファンデーションなんて持ち歩いていないですよ。一応男子なので必要なくなりました」という感じで、ちょいと調子が狂ってしまうのだ。
 「うーん、生理の相談とか。もうできないな」と思う美央。今までは女子の先輩として、いいたい放題であったが、今後はひとりの男子としてヤスオのことを扱わなければならないのである。
 いつぞやは、いつもの乗りで「さぁ、残業もここまで。駅前の焼き鳥屋さんに飲みに行こう」といい、後輩のヤスオを誘い出したところまではいいのだが、日頃の寝不足がたたって、たちどころに美央が酔っ払ってしまい、ふと気がついたらヤスオと一緒に駅裏のラブホテルで朝を迎えていた。なぜラブホテルなのかはわからないが、心のどこかで一度行ってみたいと思わないわけではなくもないということがなかったらしい(一体どっちなのよー)。しかも目覚めた場所というのが、ヤスオの腕の中。男の匂いがする中、夢心地で朝を迎えたのだ。
 えっ、噓でしょ。まさかヤスオとセ〇〇スしちゃうなんて。ていうか、セ〇〇スしたという記憶がまるでない。これはたぶんだけど、不覚にも酔いつぶれてしまった自分のことを介抱すべく、とり急ぎヤスオが一番近くにあった宿泊施設へ連れてきてくれただけのような――。焦焦焦。焦るじゃん。
 ヤスオに問いただしたら「えっ、そうなんですかね。まったく覚えていないや」なんて口にしながら、すっとぼけた表情を浮かべているだけ。もともとアン子ことヤスオは天然っぽい一面があり、とぼけているというよりも何もわかっちゃいない雰囲気ではある。あのなー。私は上司なんだよ。ほんとうのことをいえ!と美央は迫ったが、「超」の字がつくほど天然のヤスオは、ひたすら困惑の表情を浮かべるだけであった。
 あれ、でも、待って。ヤスオのあそこは、果たして男子としての機能を持ち合わせているのかしら?? 女子の生まれたままの姿を見たら、やっぱり勃(た)つのかしらん。なんて、きゃっ。私ったら何を考えているの、まったく。小説『おてんばプロレスの女神たち』シリーズも、ついに十八禁の仲間入りかぁと思いつつ、天下のイケメン・ヤスオとの間に、ひとつぐらいは秘密があってもいいわよね――と美央は自分自身にいい聞かせるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゆりいろリレーション

楠富 つかさ
青春
 中学の女子剣道部で部長を務める三崎七瀬は男子よりも強く勇ましい少女。ある日、同じクラスの美少女、早乙女卯月から呼び出しを受ける。  てっきり彼女にしつこく迫る男子を懲らしめて欲しいと思っていた七瀬だったが、卯月から恋人のフリをしてほしいと頼まれる。悩んだ末にその頼みを受け入れる七瀬だが、次第に卯月への思い入れが強まり……。  二人の少女のフリだけどフリじゃない恋人生活が始まります!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

先生の秘密はワインレッド

伊咲 汐恩
恋愛
大学4年生のみのりは高校の同窓会に参加した。目的は、想いを寄せていた担任の久保田先生に会う為。当時はフラれてしまったが、恋心は未だにあの時のまま。だが、ふとしたきっかけで先生の想いを知ってしまい…。 教師と生徒のドラマチックラブストーリー。 執筆開始 2025/5/28 完結 2025/5/30

ほんとうに、そこらで勘弁してくださいっ ~盗聴器が出てきました……~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 盗聴器が出てきました……。 「そこらで勘弁してください」のその後のお話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...