俺、人型兵器転生。なぜかゴブリンとかエルフがいる未来の崩壊世界を近代兵器で無双する。

ねくろん@アルファ

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イギニス連合王国大使、チャールス

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 ムンゴルが支配しているはずのペーランドで、俺たちを出迎えたのは、ムンゴル軍でもなく、その主のチンガス・ハンでもなかった。

 ワリシャワの中央広場にて、俺たちと対峙する人物。

 シルクハットに、マジシャンみたいなスーツを着た男。
 イギニスの大使と名乗る、どこか胡散臭いそいつが出迎えたのだ。

「お初にお目にかかります。イギニス連合王国、全権大使のチャールスと申します。以後お見知りおきを」

「……名乗る名はない。機人と呼べ。どうせ我の他にはおらん。」

「ンッンー!素晴らしぃデスね!機人さま!」
「その尊大な態度!そしてそれにふさわしい能力をおもちだ!」

「オーマに出かけたムンゴル騎兵は、機人様の導入された新兵器によって、さんざんに打ち破られた上に、そのお力で吹き飛ばされたとか?」

 なんちゅう耳の速さだ!ムンゴルみたいな伝令技術は持っているっていう事か?
 うーん、かなり油断ならないぞこれは。

「……お前の目的はなんだ。イギニス連合王国、全権大使のチャールス」

「ンー!私の目的、と言いますか命じられましたことは、ただ一つです」
「機人様の治める地、ポトポトにイギニス大使館を開くことです!」

――ん?ずいぶん文明的な連中だな?
 これはオーマとかムンゴルと違って、大分発展してる連中なんじゃないか?
 初めてオッサンと価値観が近い、文明人に出会えたのかもしれない。

 おお、ならちょっと仲良くしておいた方が良い気がする。
 もうちょっとくわしく話を聞こう。

「イギニス連合王国、ここより南にある国だったか?詳しく聞こう。」

「ンー!では少々お時間をいただいて。私達イギニスは、同じような価値観を持つ国々、友好関係を持てるに足る友邦を探し求めておりました」

「ですが、オーマもムンゴルも、少々野蛮にすぎます。我々は人を食料や工芸品の材料として見る彼らとは、ちょっと一線をひいたお付き合いをしてきました」
「――これまでは。」

「……つまり、神聖オーマ帝国に起きた変化、それによって、外交関係を取るに足る変化が始まったとみた。そしてその中心にいるのが、我だという事だな?」

「ンッンー!!!素晴らしい!まさにその通りです!文明化された国同士がつながりを持つ。これこそがイギニスの求めているものにございます!」

 やったああああああああ!!!!!
 ようやく文明人にであえた!!!!ウッヒョーーー!

 やったぜ、ローキックの腕ばかり磨いてるエルフ、倫理観以外のクオリティのおかしいオーマ、やたらに狂暴なムンゴルの次に、やっとまともな国に出会えた!

 ちょっとうれしくて、オッサン涙が出そう。あ、そうだムンゴルのこと忘れてた。

「……ムンゴル帝国はどうなっている?何故、騎兵も奴隷兵も、その姿を見せぬ」

「ンー!それがですな、どうやらハーンが急病で倒れたとのことで、侵略を中断し、ムンゴリアの本拠地まで、療養のために帰るそうです!ハハッ!」

「……実に唐突だな。」
「……何をした?ただの一兵も動かさずに軍を引かせるとは、ただ事ではない。」

「我々はこの地で、ちょっとした商売をしたまでです。」

 とんっとチャールスが足蹴にした箱。その箱の中身は、俺のUIではこう表示されていた。『高純度ヘロイン』わーぉ、すっごい駄目な奴。

「ンー!これは医療用の麻酔として使うものなのですが、どうやらムンゴル人は個人的なンッ!な楽しみのために珍重してしまったようで……」

「そのため、薬物の汚染がとてもひどくなってしまい、今やこのアヘアヘンを求めるために、人々は働くような有様となってしまいました」

 あー、確かに司法が未熟だとそうなるかもね。
 元の時代でも、随分薬物の取り扱いには苦労してたみたいだし。
 中世レベルの社会じゃ、ほぼ対抗できる枠組みが無いっすよね。

 ……ん?なんか引っかかる。

「特にオーマの変化は素晴らしい!労働者!ちょっとしたお金で単純な部品をつくる、職人とは異なる、低級労働階級。オーマは農奴を使う事を止め、「雇う」ということのすばらしさにようやく気付きました!」

「わずかなお金を渡し、社会全体で吸い上げる、新しい世界!」

 両手をワキワキとさせて、チャールスはさらに続ける。

「イギニスはオーマの信じる神や、ムンゴルの広大な領土には興味はございません」
「我々が興味を持つのは……そう!お金!言葉なんかよりもずっと雄弁に語り、行動する!お金さえあれば何でもできる!」

「……機人様はそれをよくわかっている世界に生きてらっしゃった」
「それに違いありませんな?」

――これまでに会った中で、一番やべー奴らと出会ってしまったかもしれない。
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