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ポトポトモータースの戦い

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 インダからビッグバードが飛び立って、1週間後……

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 私、元聖ヨワネ騎士団のケムラーは、元騎士団員の配下を伴って、ここイギニスにやってきた。

 これは機人様による、「我々の手に職を」という計らいであるのは明らかであった。

 なにせ我々は、人生の大半を、戦士として戦うことに費やしてきた。

 大工の真似事まねごとはできても、職人として技量や、商才があるわけでは無い。

 なので、オーマでの戦いが落ち着けば、我々は無用の存在だ。
 だから世の中に対して、剣を振るう以外のなにかで、役に立つ必要がある。

 しかし我らはもう結構としだ。いまさら職人に弟子入りなど、職人の方が困るだろう。

 そこで言うとこの、工場、という仕組みは素晴らしかった。

 職人は自分で作った物を売りさばくだけの手間と時間、商売のセンスが必要だ。

 しかし工場では、定められた手順で、時間を守り、誠実に働きさえすれば賃金が支払われる。これは、徒弟とていのような、半ば奴隷どれいのような仕組みとは違う。

 純粋に、労働をして金をもらうというだけの、じつにシンプルな仕組みだ。
 これはとても良い仕組みだと思う。

 私は再度、機人様の慈悲じひに感じ入り、心に涙を溜め、再度忠誠を誓った。

 機人様は、我々の人生を、これからの先を、心を砕いて真剣に考えてくださっているのだ。

 だが機人様の思惑をよそに、ここイギニスは不穏な状況にあった。

 機人様が古代竜と交渉して、ようやく平和な時代を作ったというのに、それを破るおろか者が、イギニスには居たのだ。

 実に度しがたおろか者である。

 そしてイギニスの、「ポトポトモータース」では、私がかねてより恐れていたことがついに起きた。

 連日のニューペーパー、「ザン」の扇動せんどうによって、ついにポトポトに関係するこの工場は、怒り狂ったイギニス人に取り囲まれるに至ったのだ!

 ここにいたって「ポトポト新聞」の社員たちも集まり、籠城ろうじょうの構えになった。

 どこから手に入れたのか、暴徒たちはフリントガンまで持っていた。
 おそらくイギニス軍が提供したのだろう。

 銃はともかく、弾まで持っているのは、どう考えたっておかしい。
 この暴動に、イギニス軍が絡んでいることは、疑うべくもない。

 そうなるとこれは、国公認の暴動という訳だ。警察や、軍の出動は期待できない。

 イギニスの国家権力は、この工場が暴徒の手によって、更地になるまで見て見ぬふりを決め込むことだろう。

 緊張の糸が張り詰めている。

 ポトポト側は、完成したばかりの装甲車3両をバリケードの裏に並べ、暴徒たちを見据みすえている。どちらがいつ暴発してもおかしくはない。

 事態が大きく動いたのは、7日目の正午だった。

 取り囲んでいるイギニスの暴徒側から、ついにある物が現れた。
 あれは「大砲」だ!

 もはやこれは、暴動の域を超えている。
 イギニスはそこまでして、ポトポトとインダと戦争をしたいのか?

「ンッンー!降伏すれば良し!さもなければこのカノン砲が火を吹きますよンン!」

 扇動の先頭に立っているのは、チャールスだった。
 機人様と付き合いのあるイギニス人のはずだが、裏切ったのか?

 いや、彼にとっては我々は、最初から仲間などではなかったのだろう。

 ……むう、なんだか妙に筋肉の付きがいい奴だ。

 普段の私、ケムラーだったら、なんとイイ!!筋肉というところだが……。

 何かあの筋肉は妙だ。ついているだけで、使い込まれた柔軟性というものがない。
 見せ筋、ニセ筋、哲学の無い筋肉を、イイ!!とはいえない。

 良い筋肉というのは、その者の魂の形だ。
 あれは偽の筋肉、つまり悪しき魂の具現化だ。

 チャールスの筋肉を見ればわかる。奴は生まれついての悪人だ。

 ここにいたっては、覚悟を決めねばなるまい。

 幸か不幸か、この場で戦闘の指揮をとれるのは、騎士団を率いた経験のある私だけだ。
 私のもう一つの未来を切り開いてくれたかもしれない工場で、またこのように戦うなど、人生とは皮肉なものだ。

 いや、機人様は、これをわかっていて、私をここに留め置いたのだろう。
 そうとしか思えない。※深謀遠慮しんぼうえんりょには恐れ入るばかりだ。

 ※深く考えを巡らし、のちのちの遠い先のことまで見通した周到綿密な計画を立てること。

 チョコ伯領のポルシュ殿が残した「パンパン銃」、そして「装甲車」が我々にはある。恐らく機人様はこれを用いよというのだろう。

「戦う意思のある皆の者に、銃をくばってやれ」

「ハハッ!!」

「念のために言うが、無理強いはさせるな。これはポトポトの戦いだ」

 だが、この私の言葉に異を唱える言葉が出た。
 それも、ほかならぬイギニス人の工員から。

「おっと、俺たちは機人さんが作った平和、それを無茶苦茶にする、あのチャールスってやつをイギニス人とは思わねえぜ」

「そうだ!せっかく家を焼かれなくなったっていうのに、何をいまさらだぜ!」

 ――その心がなによりありがたい。

 私ケムラーは、元ヨワネ騎士団員、そしてポトポトの側に立ったイギニス人にむかって、激を飛ばした。

「皆の者、機人様が作ってくださった平和を守るために、いまこそ戦うぞ!」

「「おう!!!」」

 機人が割とガチめに放置したケムラー達。そのクッソ適当な思いをよそに、彼らは彼らなりに、真面目にイギニスとの戦いを始めていた。

  
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