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言い合いはよそでやれ
本音を花村さんに零してから2日。なぜかシモンの監視が付くようになった。
なんでだよ。
ただでさえ右腕の監視があるってーのに。今まではベッドでゴロゴロしてたけど、なぜか執務室のソファにいるように言われている。
でもやることがないからひたすら本を読んでるけど、団員の人の視線が常に俺に向けられてるのも辛い。
シモン、右腕、団員。
3人になぜか監視されて過ごした2日はただただ疲れただけだった。
それに飯も団員がいようがいまいがシモンは時間になると、俺に給餌を始める。恥ずかしいからやめろ、と言っても聞きやしない。
何なんだよ。本当に。
そんなストレスマックスな日を過ごしていた翌日。
ハワードが現れたかと思えば、シモンに俺を着替えさせるように言った。
着替え、と言っても俺は服なんか持ってないから、ハワードが持ってきたものに着替えるだけなんだけど…。
けど。
「ハワードと話してくる。少し待ってろ」
「あ、うん?」
服を見た瞬間、シモンの眉間に深い深い皺が寄った。
なんか変なもんでも着せられるのかと思ったんだけど、シモンが持っていった服をちらりと見てみた。
そしたらそれは、ごく普通の服だったような気がする。
それに対してなぜシモンが怒ったのかは分からない。
仕方なくシモンが戻るまで、ベッドに座って待つことにした。
すると、寝室まで聞こえてくる声が聞こえてきたことに驚く。
主に聞こえるのはシモンの怒声。ハワードの声はあんまり聞こえない。
だからシモンの声を注意深く聞いてみると、なぜ急に着替えろなんて言ったのかが分かった。
そしてなぜか近付いてくる怒声。
え? え?
ちょっと! 激おこ状態のシモンなんか連れてくんなよ!
思わず身構えたけど、バン!と勢いよくドアを開けたのはシモンではなく、ハワード。
お? 珍しいな。
「だから! ハルトがずっと部屋にこもりきりは可哀想だって言ってんの!」
「ハルトの身を守るためだ! もしものことがあっても、ここなら守れると言っているだろう!」
がるるといがみ合う2人はまさにトラとライオン。
怖ッ!
っていうかハワード。俺がここに閉じ込められてることを不憫に思ってくれてたのか。
でも急になんでだ?
「この部屋を出てあいつにでも会ったらどうする!」
「そのためにあいつらの仕事をひねり出してきたんだってば! 今日しかチャンスはないんだって!」
「しかし…!」
「あのね!」
ハワードの声の大きさに、俺もシモンもビクリと肩を震わせる。
そして、ハワードがシモンの鼻先に指を突き付けた。
「君はそれでいいかもしれないけどね! ハルトはダンジョンから帰って来てから一度もこの部屋から出てないの! 分かる?!」
ふんす!と鼻息荒くそう言い切るハワードに、俺はぽかんとしながらも、ぱちぱちと手を叩いていた。
すげー。
「ハルトだって外に出たいよね?!」
そう言いながらしゅばっとこっちを見た。
ひえ!
い、いきなりこっちに振られても…?!
「出たいよね?!」
「は…はひ…」
しかしハワードの気迫に押され、こくこくと頷けば「おい!」とシモンが怒鳴る。
怖いって!
「ハルトを怖がらせるな!」
「怖がらせてるのはそっちでしょ?!」
またもやぎゃんぎゃんと口論し始める二人にどうしたらいいのか分からず困っていると、ガチャっとノックなしに扉が開いた。
今度は何だ?!
「部屋の外まで漏れてんぞー」
「あ!」
ドアを開いたのはあのダンジョンで出会った、剣使いの人。
それから槍使いの人と、弓使いの人もひょこっと現れた。
あれ? ここ、シモンの私室だよな?
勝手に入ってきていいのか?と3人を見れば、ハワードが「シモンのわからずや!」とぷんこぷんこと怒っている。
それにカチンときたのか、シモンが口を開こうとしたときだった。
「なー。早くダンジョンいかねぇと時間なくなるぜー?」
弓使いの人のその言葉に、シモンがぎょっとしてようやく振り向いた。そして3人の姿を確認すると驚き、声を失った。
いきなり私室に知り合いが入ってきたら、そらビビるよなー。
「お前ら?!」
「なー。兄さ…団長さんいいだろー?」
「そうそう。そこのハワードさんとも約束したしな!」
俺の知らない間にどうやら話しはついていたらしい。
だから珍しく昨日、姿を見せないと思ったら。俺を外に出す準備をしてくれてたのか。
「ハワード!」
「あのね。シモンがハルトを守りたい気持ちは分かるよ? でもね、ハルトだって外の空気を吸ったっていいでしょ?」
「だからといって、なぜよりにもよってダンジョンへ行かせる許可を出した!」
「今回許可を出したのは10階層まで。それ以上は行かせない条件にしてある」
「だ…!」
だから、と言いかけたシモンに枕を投げる。
「な…?!」
「少しは落ち着きなって」
見事に頭にヒットした枕は誰にも受け止められることなく、そのままカーペットへと悲しく落ちた。それを、拾ってぱんぱんと埃を落としてくれたのは槍使いの人。
「ありがと」
「おう」
にこりと笑ってお礼を言えば「どういたしまして」と返された。
枕を投げつけられたシモンは、目を見開いて俺を見つめている。
「あのさ。シモンが俺を心配してくれるのも分かるよ? 現に右腕は動かないし」
静かに語りかけるように話す俺を、シモンはただじっと聞いている。
そうそう。少し冷静になりなって。
「俺だってダンジョンのことは少し分かったつもりでいるし、危ないことは絶対にしない」
じっとシモンを見つめながらそう言えば、口を開きかけて閉じた。握った拳が少し震えているのは見間違いじゃないと思うけど、何も言わないでおく。
「そうそう。ハルトに怪我は絶対にさせないし、自分で自分を傷つけさせることもしない。ルス様にも誓おう」
「……………」
弓使いの人のその言葉に、ぐっと唇を噛むシモン。
ベッドから立って、シモンのもとに歩いていくと力の入り過ぎている拳にそっと手を重ねる。
「絶対に怪我しないし、自分で傷つけない。だから、ダンジョンに行かせてほしい」
「…ハルト」
お互いの視線を逸らさず、しばし見つめ合っていると「はぁ」とシモンから息が漏れた。
「分かった」
「ありがと!」
渋々許可をしてくれたシモンに抱きつき、感謝の言葉を告げれば、なぜか抱きしめ返された。
おお?!
「必ず時間内までには戻ること。それも守れるか?」
「ああ! 守る!」
ふんすと鼻息を荒くしてそう言えば、ぎゅっと強く抱きしめられた。
そういえばシモンはダンジョンに対していい思いを抱いてないんだっけ。
中央部分で見せたあの苦々しそうな表情は、いっそのことダンジョンを憎んでいるようにも見えた。
もしかしたら、シモンの大切な人が戻ってこられなかったのかもしれない。
そう思えば、シモンの過保護にも納得がいく。
安心させるように、ぽんぽんと左手で背中を叩くと「約束は絶対に守るから」と額を胸に押し当ててそう告げる。
絶対に戻ってくる。だから、待っててほしい。
そう願いを込めてシモンを抱きしめれば、腕から力が抜けた。
「…着替えを済ませたら、城門までオレが送る」
「むしろそうしてもらえると助かる」
さっきの気迫はどこへやら。すっかりと落ちつき、いつものシモンに戻っている。
そのことにほっとしながら、もぞもぞとシモンの腕から逃れるように身じろげば、腕が離れていった。
「さて。着替え終わるまで俺たちは応接室で待機するよー」
「分かった。また後でな」
「ああ」
ハワードが3人を部屋の外に促した後、2人きりになる。
少し気まずいけど、せっかく外に出る許可をもらったんだ。そわそわする身体を押さえながらシモンに「早く」と袖を引っ張れば、はぁ、とまたもや大きなため息を吐いた後、着替えを開始するのだった。
「なんか…人多い?」
「そらそうだ。おれ達が人食いダンジョンから生還したって広げてきたからな!」
「ええ…」
着替えて3人と合流し、城門までシモンに送ってもらった。
心配そうなシモンに元気よく「行ってくる!」と手を振れば、小さく振り返してくれた。
けど城門で一人立ち尽くしているシモンの姿は、留守番を頼んだ犬みたいでなんか心が痛かった。
後ろ髪を引かれる思いをしながらも、なんとかダンジョン前へとやって来た俺たち。
けれどそこにはたくさんの人であふれていて。
前潜った時は裏技的なところから入ったみたいだし、もしかしたらこれが普通なのかも?とも思ったけど、ハワードに教えてもらった「冒険者が流れている」という言葉を思い出し、今が異常なのだということを感じ取った。
ざわざわとざわつくダンジョン前。
鎧を着た人に、動物を連れている人。それに見るからに魔術師です!っていう格好の人に、露出の激しい人。
コスプレイベントみたいで楽しい。
「さて、俺たちはもう許可をもらってるからいつでも入れる。が」
「約束は覚えてるな?」
「10階層以外は入らない、怪我をしない、自分で傷つけない、時間を守る」
「よくできたが、もう一つ忘れてるな」
「?」
あれ?ハワードとシモンと交わした約束ってそれだけだったハズなんだけど?
「どうしようもなくなった時は?」
「あ! 左足のポーチを開けること!」
「よし!確認できたな! それじゃ、行くぞー」
「おー!」
元気よく左腕を突き出す俺に、槍使いのグレン、弓使いのヒューム。それに、先頭を行く剣使いのトレバーも俺と同じように、左手を突き出した。
それにくすくすと笑いながら、俺たちはダンジョンへと進んだ。
■■■
ハルトの小さくなっていく背中を見送ると、どこか寂しさを感じてしまう。
2週間ほど前まではこれが当たり前だというのに。
オレの中で、ハルトという存在がここまで大きくなっていることに、驚きを隠せない。
ぽっかりと空いてしまった穴に、ハルトという存在が入り込んだ。
そっと胸に手を置いてハルトが消えた街へと視線を向けると、ぽん、と肩を叩かれた。
それに驚いて振り返れば、にやにやとしているハワード。
くそ。嫌なところを見られた。
「なぁーに捨て犬みたいな顔してんのー?」
「…していない」
「してたしてた」
くっふふと笑うハワードを一度睨めば「きゃあ☆こわーい」とふざけた態度で身体をくねらせる。
そのポーズは何なんだ。
じと、と半眼でハワードを見れば「ごめんて」と笑いながら謝る。だが反省などはしていないだろうな。
「行くぞ」
「わわっ! 待ってよー!」
もうこの場所には用はない、と踵を返し歩き出せばハワードが小走り追いかけてくるが、合わせる必要はない為さっさと部屋に戻ることにした。
「少し過保護すぎじゃない?」
「……………」
ぺらりと書類をめくっていると、暇になったのかハワードが声をかけてくる。
お前…仕事はどうした。
そんなことを聞いてもどうせ「後でやるからいいよー」と返されるだけなのだから。まぁ…オレが怒らなくても、魔道具開発部に戻ればテレンスが怒るだろうし。
読んだ書類にサインをして、箱に入れる。
「聞いてる?」
「聞いてない」
「聞いてんじゃん」
あははと笑うハワードだが、その声の裏に気付いた。
にこにことしているのに、その裏ではいくつも考えを張り巡らしている。
それは魔道具だったり、この国の為だったり。
「それで? オレがハルトに対して過保護、ということだが?」
「自分でも気付いてんでしょ? ハルトを軟禁状態にしてまで」
「軟禁などしていない」
「またまたぁ。そういう冗談は好きじゃないよー」
うふふと笑っているけれど、その目は笑っていない。寧ろ、怒りさえ感じるもので。
「じゃあ、君は怪我を理由に部屋に軟禁されても構わない、ってこと?」
「ああ」
「嘘ばっか」
「……………」
「あの時、怪我しても動き回ってたのに?」
あの時、とは7年前のことだろう。
未だに傷が塞がらない人は多い。特に第一騎士団は父親を失ったものが多いのだ。
だから、動けるオレが動いていただけなのだが。
「7年だよ?」
「…そうだな」
「もうそろそろ前に進んでもいいんじゃない?」
「………………」
7年。
それはオレを子供から大人にするには十分な時間だった。
『朔月』で失った父の穴を埋めるために、ひたすら動き続けた。この国にいる者の多くが家族を、恋人を失い悲しみに暮れていた。
他国の支援もあったが、やはり人の寂しさを埋めることは出来なくて。
「それを言ったら、お前だってそうだろう?」
「僕? 僕はもう吹っ切れたよ。良くも悪くも脳足りんな兄上のせいでね」
はっ、と鼻で笑いながらそう告げるハワード。強いな。
「いつまでも彼のことを引きずるよりも、新しい大切な人を作ってもいいんじゃない?」
「それは…」
「彼…ルカもそれを望むと思うけど?」
ルカ。
ルカ・バルチェローナ。
それは7年前の『朔月』で父と一緒に喪った人の名だ。
オレにとっては大切な名前でもある。
「ハルトのこと、大事なんでしょ?」
「ハルトは…」
ハルトは…。オレにとってはどんな位置なのかが分からない。
大切な人?
そう言われればそうだ。けれど、ハワードの言う『大切な人』ではない。
「庇護対象に過ぎない」
「あっそ」
そうだ。ハワードに守れと言われたから守っているだけだ。
そう。言われたから。
「…今、自分がどんな顔してるか分かんないでしょ?」
「?」
ハワードの言葉に眉を寄せれば、肩を大きく竦められた。
なんだ。
「いいよ。君がハルトのことを『庇護対象』って言うならそれでもいい。なら」
そこで不自然に一度言葉を切ると、じっとオレを見つめる。
その視線をオレから逸らすと、にんまりと笑う。
「じゃあ、僕がハルトのことが好きだって言っても問題ないよね☆」
みゃは☆と笑うハワードに、自分でも分かるくらいに眉が寄った。
なんだと? ハルトのことが好き、だと?
「…ハルトを嫁にでもするつもりか?」
「それもいいかもね!」
ハワードのその言葉に、腹の底が冷えていくのを感じる。
嫁にする? ハルトを?
久しぶりの感情にコントロールが追いつかない。
漏れ出す殺気を、深呼吸をすることで押さえ込む。
「ほら。シモンだってハルトのことが『大切』なんじゃない」
にひっと歯を見せて悪戯っぽく笑うハワードを睨んでから、再び書類に視線を落とす。
ハワードのおかげで無駄な時間を取ってしまった。
しかし、書類の内容が頭に入ってこないことに、大きなため息を吐く。
「別にルカのことを忘れろって言ってんるんじゃないよ。ただ、シモンだけがあの日から止まってるんだ」
「……………」
「みんな前に進んでる。でも君だけが立ち止まったまま、進もうとしていない」
「…だから?」
「周りを見て見なよ。この国だって、国民だって前を向いて進んでる。たまに後ろを振り向くことができるのは、前を見ている証拠でしょ?」
前に進む。
前に進んだ先にはルカはいない。
でも?
ハルトの本音を聞いてもなお、変わらないのはなぜなのか。
「『庇護対象』とはよく言ったもんだよ。君がハルトを見つめる目はそんなものじゃないのに」
ぼそりと呟かれたその言葉は、オレを迷わせるには十分で。
「それに。心配しなくてもハルトは戻ってくるよ」
「…どこに?」
「ここに。その為にシモンを残したんだから」
「なに?」
ハワードのことは時々本気で分からない時がある。
ハルトが戻るためにオレを残した?
「ハルトだって戻る場所があるなら戻ってくるよ。先は分からないけど、少なくとも『今』はここに戻ってくる」
ルカは戻ってこなかったけれど。
自分で言って自分で傷付く。なんと愚かなことだ。
けれど右腕が動かないのに、一人で何とかしようとするハルトを見ていると穏やかに…そして見えない傷が柔らかなもので覆われていくのを感じる。
「…そうか」
「だから。ハルトのことを信用してあげなよ」
「…善処する」
「そ。じゃあついでに君の感情も信用してあげな」
「……………」
「返事は?」
返事はせずにハワードを見れば「わ!」と驚いた声を上げる。なんだ。
「いやいや。返事はその顔で十分だよ!」
その言葉の意味が分からず首を傾げれば、いひひーとハワードが笑った。
なんでだよ。
ただでさえ右腕の監視があるってーのに。今まではベッドでゴロゴロしてたけど、なぜか執務室のソファにいるように言われている。
でもやることがないからひたすら本を読んでるけど、団員の人の視線が常に俺に向けられてるのも辛い。
シモン、右腕、団員。
3人になぜか監視されて過ごした2日はただただ疲れただけだった。
それに飯も団員がいようがいまいがシモンは時間になると、俺に給餌を始める。恥ずかしいからやめろ、と言っても聞きやしない。
何なんだよ。本当に。
そんなストレスマックスな日を過ごしていた翌日。
ハワードが現れたかと思えば、シモンに俺を着替えさせるように言った。
着替え、と言っても俺は服なんか持ってないから、ハワードが持ってきたものに着替えるだけなんだけど…。
けど。
「ハワードと話してくる。少し待ってろ」
「あ、うん?」
服を見た瞬間、シモンの眉間に深い深い皺が寄った。
なんか変なもんでも着せられるのかと思ったんだけど、シモンが持っていった服をちらりと見てみた。
そしたらそれは、ごく普通の服だったような気がする。
それに対してなぜシモンが怒ったのかは分からない。
仕方なくシモンが戻るまで、ベッドに座って待つことにした。
すると、寝室まで聞こえてくる声が聞こえてきたことに驚く。
主に聞こえるのはシモンの怒声。ハワードの声はあんまり聞こえない。
だからシモンの声を注意深く聞いてみると、なぜ急に着替えろなんて言ったのかが分かった。
そしてなぜか近付いてくる怒声。
え? え?
ちょっと! 激おこ状態のシモンなんか連れてくんなよ!
思わず身構えたけど、バン!と勢いよくドアを開けたのはシモンではなく、ハワード。
お? 珍しいな。
「だから! ハルトがずっと部屋にこもりきりは可哀想だって言ってんの!」
「ハルトの身を守るためだ! もしものことがあっても、ここなら守れると言っているだろう!」
がるるといがみ合う2人はまさにトラとライオン。
怖ッ!
っていうかハワード。俺がここに閉じ込められてることを不憫に思ってくれてたのか。
でも急になんでだ?
「この部屋を出てあいつにでも会ったらどうする!」
「そのためにあいつらの仕事をひねり出してきたんだってば! 今日しかチャンスはないんだって!」
「しかし…!」
「あのね!」
ハワードの声の大きさに、俺もシモンもビクリと肩を震わせる。
そして、ハワードがシモンの鼻先に指を突き付けた。
「君はそれでいいかもしれないけどね! ハルトはダンジョンから帰って来てから一度もこの部屋から出てないの! 分かる?!」
ふんす!と鼻息荒くそう言い切るハワードに、俺はぽかんとしながらも、ぱちぱちと手を叩いていた。
すげー。
「ハルトだって外に出たいよね?!」
そう言いながらしゅばっとこっちを見た。
ひえ!
い、いきなりこっちに振られても…?!
「出たいよね?!」
「は…はひ…」
しかしハワードの気迫に押され、こくこくと頷けば「おい!」とシモンが怒鳴る。
怖いって!
「ハルトを怖がらせるな!」
「怖がらせてるのはそっちでしょ?!」
またもやぎゃんぎゃんと口論し始める二人にどうしたらいいのか分からず困っていると、ガチャっとノックなしに扉が開いた。
今度は何だ?!
「部屋の外まで漏れてんぞー」
「あ!」
ドアを開いたのはあのダンジョンで出会った、剣使いの人。
それから槍使いの人と、弓使いの人もひょこっと現れた。
あれ? ここ、シモンの私室だよな?
勝手に入ってきていいのか?と3人を見れば、ハワードが「シモンのわからずや!」とぷんこぷんこと怒っている。
それにカチンときたのか、シモンが口を開こうとしたときだった。
「なー。早くダンジョンいかねぇと時間なくなるぜー?」
弓使いの人のその言葉に、シモンがぎょっとしてようやく振り向いた。そして3人の姿を確認すると驚き、声を失った。
いきなり私室に知り合いが入ってきたら、そらビビるよなー。
「お前ら?!」
「なー。兄さ…団長さんいいだろー?」
「そうそう。そこのハワードさんとも約束したしな!」
俺の知らない間にどうやら話しはついていたらしい。
だから珍しく昨日、姿を見せないと思ったら。俺を外に出す準備をしてくれてたのか。
「ハワード!」
「あのね。シモンがハルトを守りたい気持ちは分かるよ? でもね、ハルトだって外の空気を吸ったっていいでしょ?」
「だからといって、なぜよりにもよってダンジョンへ行かせる許可を出した!」
「今回許可を出したのは10階層まで。それ以上は行かせない条件にしてある」
「だ…!」
だから、と言いかけたシモンに枕を投げる。
「な…?!」
「少しは落ち着きなって」
見事に頭にヒットした枕は誰にも受け止められることなく、そのままカーペットへと悲しく落ちた。それを、拾ってぱんぱんと埃を落としてくれたのは槍使いの人。
「ありがと」
「おう」
にこりと笑ってお礼を言えば「どういたしまして」と返された。
枕を投げつけられたシモンは、目を見開いて俺を見つめている。
「あのさ。シモンが俺を心配してくれるのも分かるよ? 現に右腕は動かないし」
静かに語りかけるように話す俺を、シモンはただじっと聞いている。
そうそう。少し冷静になりなって。
「俺だってダンジョンのことは少し分かったつもりでいるし、危ないことは絶対にしない」
じっとシモンを見つめながらそう言えば、口を開きかけて閉じた。握った拳が少し震えているのは見間違いじゃないと思うけど、何も言わないでおく。
「そうそう。ハルトに怪我は絶対にさせないし、自分で自分を傷つけさせることもしない。ルス様にも誓おう」
「……………」
弓使いの人のその言葉に、ぐっと唇を噛むシモン。
ベッドから立って、シモンのもとに歩いていくと力の入り過ぎている拳にそっと手を重ねる。
「絶対に怪我しないし、自分で傷つけない。だから、ダンジョンに行かせてほしい」
「…ハルト」
お互いの視線を逸らさず、しばし見つめ合っていると「はぁ」とシモンから息が漏れた。
「分かった」
「ありがと!」
渋々許可をしてくれたシモンに抱きつき、感謝の言葉を告げれば、なぜか抱きしめ返された。
おお?!
「必ず時間内までには戻ること。それも守れるか?」
「ああ! 守る!」
ふんすと鼻息を荒くしてそう言えば、ぎゅっと強く抱きしめられた。
そういえばシモンはダンジョンに対していい思いを抱いてないんだっけ。
中央部分で見せたあの苦々しそうな表情は、いっそのことダンジョンを憎んでいるようにも見えた。
もしかしたら、シモンの大切な人が戻ってこられなかったのかもしれない。
そう思えば、シモンの過保護にも納得がいく。
安心させるように、ぽんぽんと左手で背中を叩くと「約束は絶対に守るから」と額を胸に押し当ててそう告げる。
絶対に戻ってくる。だから、待っててほしい。
そう願いを込めてシモンを抱きしめれば、腕から力が抜けた。
「…着替えを済ませたら、城門までオレが送る」
「むしろそうしてもらえると助かる」
さっきの気迫はどこへやら。すっかりと落ちつき、いつものシモンに戻っている。
そのことにほっとしながら、もぞもぞとシモンの腕から逃れるように身じろげば、腕が離れていった。
「さて。着替え終わるまで俺たちは応接室で待機するよー」
「分かった。また後でな」
「ああ」
ハワードが3人を部屋の外に促した後、2人きりになる。
少し気まずいけど、せっかく外に出る許可をもらったんだ。そわそわする身体を押さえながらシモンに「早く」と袖を引っ張れば、はぁ、とまたもや大きなため息を吐いた後、着替えを開始するのだった。
「なんか…人多い?」
「そらそうだ。おれ達が人食いダンジョンから生還したって広げてきたからな!」
「ええ…」
着替えて3人と合流し、城門までシモンに送ってもらった。
心配そうなシモンに元気よく「行ってくる!」と手を振れば、小さく振り返してくれた。
けど城門で一人立ち尽くしているシモンの姿は、留守番を頼んだ犬みたいでなんか心が痛かった。
後ろ髪を引かれる思いをしながらも、なんとかダンジョン前へとやって来た俺たち。
けれどそこにはたくさんの人であふれていて。
前潜った時は裏技的なところから入ったみたいだし、もしかしたらこれが普通なのかも?とも思ったけど、ハワードに教えてもらった「冒険者が流れている」という言葉を思い出し、今が異常なのだということを感じ取った。
ざわざわとざわつくダンジョン前。
鎧を着た人に、動物を連れている人。それに見るからに魔術師です!っていう格好の人に、露出の激しい人。
コスプレイベントみたいで楽しい。
「さて、俺たちはもう許可をもらってるからいつでも入れる。が」
「約束は覚えてるな?」
「10階層以外は入らない、怪我をしない、自分で傷つけない、時間を守る」
「よくできたが、もう一つ忘れてるな」
「?」
あれ?ハワードとシモンと交わした約束ってそれだけだったハズなんだけど?
「どうしようもなくなった時は?」
「あ! 左足のポーチを開けること!」
「よし!確認できたな! それじゃ、行くぞー」
「おー!」
元気よく左腕を突き出す俺に、槍使いのグレン、弓使いのヒューム。それに、先頭を行く剣使いのトレバーも俺と同じように、左手を突き出した。
それにくすくすと笑いながら、俺たちはダンジョンへと進んだ。
■■■
ハルトの小さくなっていく背中を見送ると、どこか寂しさを感じてしまう。
2週間ほど前まではこれが当たり前だというのに。
オレの中で、ハルトという存在がここまで大きくなっていることに、驚きを隠せない。
ぽっかりと空いてしまった穴に、ハルトという存在が入り込んだ。
そっと胸に手を置いてハルトが消えた街へと視線を向けると、ぽん、と肩を叩かれた。
それに驚いて振り返れば、にやにやとしているハワード。
くそ。嫌なところを見られた。
「なぁーに捨て犬みたいな顔してんのー?」
「…していない」
「してたしてた」
くっふふと笑うハワードを一度睨めば「きゃあ☆こわーい」とふざけた態度で身体をくねらせる。
そのポーズは何なんだ。
じと、と半眼でハワードを見れば「ごめんて」と笑いながら謝る。だが反省などはしていないだろうな。
「行くぞ」
「わわっ! 待ってよー!」
もうこの場所には用はない、と踵を返し歩き出せばハワードが小走り追いかけてくるが、合わせる必要はない為さっさと部屋に戻ることにした。
「少し過保護すぎじゃない?」
「……………」
ぺらりと書類をめくっていると、暇になったのかハワードが声をかけてくる。
お前…仕事はどうした。
そんなことを聞いてもどうせ「後でやるからいいよー」と返されるだけなのだから。まぁ…オレが怒らなくても、魔道具開発部に戻ればテレンスが怒るだろうし。
読んだ書類にサインをして、箱に入れる。
「聞いてる?」
「聞いてない」
「聞いてんじゃん」
あははと笑うハワードだが、その声の裏に気付いた。
にこにことしているのに、その裏ではいくつも考えを張り巡らしている。
それは魔道具だったり、この国の為だったり。
「それで? オレがハルトに対して過保護、ということだが?」
「自分でも気付いてんでしょ? ハルトを軟禁状態にしてまで」
「軟禁などしていない」
「またまたぁ。そういう冗談は好きじゃないよー」
うふふと笑っているけれど、その目は笑っていない。寧ろ、怒りさえ感じるもので。
「じゃあ、君は怪我を理由に部屋に軟禁されても構わない、ってこと?」
「ああ」
「嘘ばっか」
「……………」
「あの時、怪我しても動き回ってたのに?」
あの時、とは7年前のことだろう。
未だに傷が塞がらない人は多い。特に第一騎士団は父親を失ったものが多いのだ。
だから、動けるオレが動いていただけなのだが。
「7年だよ?」
「…そうだな」
「もうそろそろ前に進んでもいいんじゃない?」
「………………」
7年。
それはオレを子供から大人にするには十分な時間だった。
『朔月』で失った父の穴を埋めるために、ひたすら動き続けた。この国にいる者の多くが家族を、恋人を失い悲しみに暮れていた。
他国の支援もあったが、やはり人の寂しさを埋めることは出来なくて。
「それを言ったら、お前だってそうだろう?」
「僕? 僕はもう吹っ切れたよ。良くも悪くも脳足りんな兄上のせいでね」
はっ、と鼻で笑いながらそう告げるハワード。強いな。
「いつまでも彼のことを引きずるよりも、新しい大切な人を作ってもいいんじゃない?」
「それは…」
「彼…ルカもそれを望むと思うけど?」
ルカ。
ルカ・バルチェローナ。
それは7年前の『朔月』で父と一緒に喪った人の名だ。
オレにとっては大切な名前でもある。
「ハルトのこと、大事なんでしょ?」
「ハルトは…」
ハルトは…。オレにとってはどんな位置なのかが分からない。
大切な人?
そう言われればそうだ。けれど、ハワードの言う『大切な人』ではない。
「庇護対象に過ぎない」
「あっそ」
そうだ。ハワードに守れと言われたから守っているだけだ。
そう。言われたから。
「…今、自分がどんな顔してるか分かんないでしょ?」
「?」
ハワードの言葉に眉を寄せれば、肩を大きく竦められた。
なんだ。
「いいよ。君がハルトのことを『庇護対象』って言うならそれでもいい。なら」
そこで不自然に一度言葉を切ると、じっとオレを見つめる。
その視線をオレから逸らすと、にんまりと笑う。
「じゃあ、僕がハルトのことが好きだって言っても問題ないよね☆」
みゃは☆と笑うハワードに、自分でも分かるくらいに眉が寄った。
なんだと? ハルトのことが好き、だと?
「…ハルトを嫁にでもするつもりか?」
「それもいいかもね!」
ハワードのその言葉に、腹の底が冷えていくのを感じる。
嫁にする? ハルトを?
久しぶりの感情にコントロールが追いつかない。
漏れ出す殺気を、深呼吸をすることで押さえ込む。
「ほら。シモンだってハルトのことが『大切』なんじゃない」
にひっと歯を見せて悪戯っぽく笑うハワードを睨んでから、再び書類に視線を落とす。
ハワードのおかげで無駄な時間を取ってしまった。
しかし、書類の内容が頭に入ってこないことに、大きなため息を吐く。
「別にルカのことを忘れろって言ってんるんじゃないよ。ただ、シモンだけがあの日から止まってるんだ」
「……………」
「みんな前に進んでる。でも君だけが立ち止まったまま、進もうとしていない」
「…だから?」
「周りを見て見なよ。この国だって、国民だって前を向いて進んでる。たまに後ろを振り向くことができるのは、前を見ている証拠でしょ?」
前に進む。
前に進んだ先にはルカはいない。
でも?
ハルトの本音を聞いてもなお、変わらないのはなぜなのか。
「『庇護対象』とはよく言ったもんだよ。君がハルトを見つめる目はそんなものじゃないのに」
ぼそりと呟かれたその言葉は、オレを迷わせるには十分で。
「それに。心配しなくてもハルトは戻ってくるよ」
「…どこに?」
「ここに。その為にシモンを残したんだから」
「なに?」
ハワードのことは時々本気で分からない時がある。
ハルトが戻るためにオレを残した?
「ハルトだって戻る場所があるなら戻ってくるよ。先は分からないけど、少なくとも『今』はここに戻ってくる」
ルカは戻ってこなかったけれど。
自分で言って自分で傷付く。なんと愚かなことだ。
けれど右腕が動かないのに、一人で何とかしようとするハルトを見ていると穏やかに…そして見えない傷が柔らかなもので覆われていくのを感じる。
「…そうか」
「だから。ハルトのことを信用してあげなよ」
「…善処する」
「そ。じゃあついでに君の感情も信用してあげな」
「……………」
「返事は?」
返事はせずにハワードを見れば「わ!」と驚いた声を上げる。なんだ。
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