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※前半遥都、後半ハワード視点になります。
「…それで?」
「……………」
応接室に残された俺はシモンの膝から降りることを許されず、むしろ拘束されている。
給餌の体勢だから、左腕で突っぱねることも不可能。と、いうか左腕も掴まれているから抵抗なんかできないんだよなー…。
でも俺にできる抵抗らしい抵抗はひたすら視線を逸らす、ということだけ。
けど、そんなことはいつまでも続けられるはずがないんだよ。
謂わばこれは悪あがき。
そして時間稼ぎ。
シモンから漏れた「は?」で、ハワードとウィンダム様、そしてマシュー殿下はそそくさと部屋を出て行ったし、ルスも“我も邪魔になるな”と言って消えてしまった。
いや、マシュー殿下は「待て! まだ食べていないケーキがあるんだ!」と言っていたけど、ウィンダム様が引きずっていった。
どんだけ好きなのよ。ケーキとタルト。
ハワードは「今までこれからのことを話し合ったことがないからいい機会じゃない?」とにこにこしてた。
確かにハワードにはなんとなく俺の今後のことについて話してたりしてるけど、シモンには何も言ってないような気がする。
でも話が筒抜けなんだから、ハワードが話してると思ったんだよ。でもまさか話してないとは…。
それに。
「ダンジョンを攻略したら話したいことがある、と言っていたな?」
「…うん」
それは確かに言った。
シモンに謝るために。
「…このままだと話し辛いな」
「へ?」
寧ろこの方が話しやすいんだけど、なんて言葉は俺の間の抜けた声に変換された。
なんせ…。
「…なんでこうなるんだ?」
「互いの顔を見た方が話しやすいだろう?」
「……………」
真面目な話し、ならな。
いや。これからするのも真面目な話なんだけど…。
けどさ。
「近くない?」
「こうでもしないと逃げるだろう」
「………………」
バレてる。
つか逃げたくても逃げれないだろ。
そう。俺はシモンと向かい合っている。給餌の体勢から俺の脇に手が差し込まれたかと思ったら、持ち上げられてそのまま膝の上に乗せられた。
右腕は腰を持たれたけどな。それでも腕力だけで俺の体勢を変えたんだから「筋肉ってすげー」という感想しか出てこなかった。
「話はしないのか?」
「する。約束だから」
そうだ。
俺の保身のためだけにシモンに媚びを売っていた、ということを詫びなければならないのだ。
きゅっと唇を結んでから、俺は口を開いた。
「ごめんなさい」
「なぜ謝る?」
「…俺さ、シモン達を利用してたんだよ」
「ふむ。それで?」
「俺の保身のためだけに、その…甘えたりしてた」
シモンの顔が見れなくて、視線をあちこちと彷徨わせるのは許してほしい。
怖いんだよ。どんな目で俺を見てるのかが。
でも、言わないとけじめがつかないからな。
最終的には視線を落としたまま小さな声で告げた。けど、シモンからの反応がない。
実は反応がないのが一番怖かったりするのだ。
怒ったり、呆れたり。
どんな反応でもいい。何か言ってくれ、と願っていると、なぜか右腕のあった場所を撫でられた。
それにびくりと肩を震わせてから、顔を上げればそこには右腕があった場所を愛おしそうに見つめながら撫でているシモンの表情に、ぽかんとする。
すると、当然だがぱちりと視線が合った。
「実はな、オレもハルトに謝らなければならないことがあるんだ」
「え?」
シモンが俺に謝る?
俺が謝ることはたくさんあるけど…?
心当たりが全くないから首を傾げてみる。
「…ハルトがオレたちを利用していることは知っていたんだ」
「は?」
え? 俺がシモンとハワードを利用してるのを知っていた…?
知っていて、優しくしてくれた?
「な、んで知って…」
俺から出た声は思いの外、掠れた。
だってそうだろ?
利用されてるのに優しくするとか。
「一度ユナと話していたことがあっただろう?」
「花村さんと話し…?」
シモンの言葉に、そう言えば花村さんと話しをしてる時に本音を吐き出したような気がする。
じゃあ、花村さんが?それともあの時の侍女さんが?
「ああ。言っておくが彼女たちからは聞いていない」
「え?」
まさかという疑問はシモンによって否定された。
「じゃあ…?」
「あの時、オレ達は部屋の外で聞いていたんだ」
「なっ?!」
盗み聞き?!
「なんでそんな…?!」
花村さんと侍女さんまで使って?!
「ハルトの怒りは分かる。けど、オレ達に気持ちを聞かせろ、といったら素直に話したか?」
「そ…れは…」
絶対に言えない。
だってそうだろ? 言ったら追い出されるかもしれないのに。
「だからハルトの気持ちを知りたくて協力してもらった。彼女たちは仕事をしただけだ」
「………………」
「彼女たちのことは責めないでやってくれ」
シモンの言葉にハッとすると、そっと頬を撫でられた。
「オレ達を責めるなら責めてもらっても構わない」
じっと見つめてくる瞳は逸らされることはない。
一度瞳を閉じてから、ふるふると横に振ると「ありがとう」となぜか言われてしまった。
お礼を言われるほどのことをしたわけじゃないのに。むしろ謝るのは俺の方なのに。
「怒って…ないのか?」
「なぜ?」
「だって…俺は、俺の為だけに…」
「それはそうだろう」
「え?」
思っても見ない言葉に驚けば、小さく笑っていて。
「ハルトが不安になるのは当たり前だろう。突然ここに呼ばれたのだから」
「それは…そう、だけど…」
「それに、ハルトの不安に気付かなかったオレ達に責任がある」
「なんで…?」
「ハルトがオレ達を利用する、と考えたのはハワードがジムショクインとして呼んだからだろう?」
「…うん」
そう。俺がここに呼ばれたのは事務職員として仕事をするため。
けれど俺はそれができないから他のことをするしかなかった。けどすぐに他の仕事なんか思いつかないから、ダンジョンの話しに飛びついたわけだけど。
「だが、本当にそれだけなのか?」
「え?」
何が?と視線でシモンに問えば、視線が俺から左腕に向けられた。
「左腕を噛んでまで協力をしたのは、それだけか?」
「……………」
シモンの言葉に、怪我は治っているのに左腕がずきりと痛む。
あの時は必死過ぎて、とにかくトレバー達を帰さなきゃという考えでいっぱいだった。
俺が寝たら多分戻れない、って感じたから。
そこでふとある考えがよぎった。
俺の考えが分かっているのなら、いっそのこと嫌われて二度と姿をみせないようにすればいいのでは、と。
どうせ実らぬものなのだ。
ならば嫌われた方が、気持ちが楽になるのではないか。
けどそれは自分で自分を傷つける行為だ。
俺はMじゃないし、当然傷がついた心を癒すのには時間がかかると思う。
でも、ここでシモンのことをすっぱりと割り切れたなら、それでいいんじゃないか?
「ハルト?」
「――ッ!」
黙ってしまった俺をどう思ったのかは分からないけど、頬に触れている手が優しく撫でてくれるから心配させたんだと思う。
ああ。嫌だな。この優しさを突き放すのは。
でも、シモンはまだルカさんを思ってる。
もしも、もしも…そんなことはないけど、本当にもしも。シモンも同じ気持ちだとしても、ルカさんが心にいると思うと切なくなる。
そうか。俺って結構、独占欲が強かったんだ。
こんなところで気付くとは。
おかしいな。
「ははっ」
「ハルト?」
思わず笑いが漏れた俺に反応したシモンに、ふっと笑みを浮かべる。
腹は、決まった。
「そうだよ」
「……………」
「トレバー達を助ければ、きっと恩を感じてくれると思ったからだよ」
違う、と言い切れないのは下心があったからだ。だから、はっきりと違うとは言えない。
「それに、ダンジョンを攻略すればこの国から放り出されることはなくなるだろうしな」
そうだ。言え。
俺が思っていたことを言え。
「ハワードは多分召喚した後ろめたさがあるから何でも聞いてくれそうだし」
「それで?」
「シモンは…」
「オレは?」
シモンのことについて何か言わなければ、と思うのに喉がひりついて言葉がうまく出てこない。
言え。言葉を出せ。
「シモンは俺が死なない為に必要だからそうしてただけ、だし」
はっ、とわざとらしく鼻を鳴らしながら左手を胸に置いて、距離を取る。
まるで「もう必要ない」と言わんばかりに。
本当は違うのに。
でも、言わなきゃ引きずる。
泣くのは後でもできる。だから今は。
「だ…」
から、と続けようとした言葉は食われた。
あの時と同じで、シモンに口を食われて。
なんで。どうして。
けど、あの時と違うのは。
「んぅ?!」
口の中にぬるりと入り込んできたそれに、びくりと膝を跳ねさせる。
目を閉じることも忘れて、口の中で動くそれにどうしたらいいのか分からず、ただされるがままでいる。
なんで…なんでこんなこと…ッ!
くちゅ、という音にハッとすると、侵入していたそれに歯を立てる。同時に俺も舌を噛んだけど、痛みで思考がはっきりする。
それと同時に睨めば、シモンもまた俺を見つめていて。
「にゃ…ん…っ! ぐ…ぅっ!」
噛んだことで怒らせたのか、頬を包んでいた手に力が入り離れなくなった。
嘘だろ?!
それに、さっきはゆっくりと、優しく撫でるような舌の動きが激しくなる。
逃げ惑う俺の舌を追いかけ、追い詰められて逃げ場を失ったそれを絡めとられるとそのまま吸われる。
何か言いたくても舌も口も奪われれば何も言えなくて。
呼吸も奪うようなキスに、俺は翻弄され酸欠で頭がくらくらし始める。
「ん…ッ!」
身体から力が抜け、倒れそうになる身体を左腕だけで支えるシモンに泣きたくなる。
いや、もう泣いていたりする。
気持ちがぐちゃぐちゃなうえに、呼吸もできない。
そんな俺の身体は、泣くことで相手に訴え始めたのかもしれない。
鼻水は出るし、泣いたことでさらに頭ががんがんと痛み始める。
「ハルト、息をしろ」
「は…?」
「ゆっくり吐いて、吸って」
「は…、はぁ…」
呼吸の仕方を忘れた俺に言葉で指示をくれるシモンの言うとおりにしてみると、呼吸の仕方を思い出したように俺の身体は途端に酸素を求め始める。
「はぁ…っ、は…っ、ぁ…」
全力で走ったような荒い呼吸を繰り返していると、顔を撫でられた。
なんだ、という言葉は発せられず、よく分からないまま、顔を撫でられ続ける。
そして呼吸と共に、気持ちが落ち着き始めると疑問が浮かぶ。
顔を撫でていた手は、今は背中をゆっくりと叩いている。まるで子供をあやすように。
「なんで…?」
ぽつりと出た言葉は、しっかりとシモンの耳に届いていたようで背中を叩いていた手が、ぴたりと止まったがすぐに撫で始めた。
「…ハルトが話をしたい、と言った時、気付いていた」
「…何が?」
「ハルトがここを去ることを」
「………………」
ぽつぽつと独り言のように話すシモンに、俺は何も言わず肩に額を押し当て聞いている。
「本来なら手を離すべきだ」
「…………」
「けれど、離せなくなった」
そう言いながら背中を撫でていた手が離れ、抱きしめられる。
諦めたいのに。こんなに強く抱きしめられたら諦めきれなくなるじゃんか。
やめてよ。
「離して…くれ…」
「今、離したら戻ってこないだろう?」
「…戻ってくるよ」
「線を引いて、な」
「………………」
ああ。全部分かってるのか。
俺の気持ちも、行動も、何もかも。
なんでだ? なんで俺の気持ちまで分かったんだ?
「なんで…」
「…ハルトは分かりやすいからな」
「嘘…」
「ハワードの方がよほど分からないぞ?」
「うそ、だ」
小さく笑いながら、頭を撫でてくるシモンに涙が溢れてくる。
もう、ダメだ。
「もう…諦められないじゃんか…」
「諦めなくていい」
「…ばか」
冗談っぽく、そう言ったけど声が震えてしまった。
でも、ルカさんのことは忘れられないんだろうな。
だって…。
「ルカさんは…」
「ルカのこと、か…。ハルト」
「………………」
シモンからルカさんのことを聞くのが怖い。
だから聞きたくない、と首を振れば「ハルト」と落ち着かせるように、抱き締められる。
もう、抱き締めたり頭を撫でたりすれば落ち着くと思ってるな。
くそう。その通りだけど。
すると左手首を掴まれて胸元へと導かれる。それにハッとして顔を上げれば、なぜか小さく笑みを浮かべていて。
なんて…なんて残酷なことをするんだろうか。
涙が溢れて俯こうとして、それに気付いた瞬間、俺は瞳を大きくしてシモンの顔を見つめた。
「な…んで…」
何度目かのなんで、という疑問を口にすればシモンが俺を見た。
「前に進まなければ、と思ってな」
「え?」
「7年間、オレは立ち止まったままだとハワードに言われた」
そう告げるシモンの言葉を聞きながら、胸元を撫でればやはりあるはずの物がなくて。
「だから、前に進むことにした」
「…………ッ!」
そう。俺が見つけてからずっとつけていたルカさんのペンダント。
それが今、シモンの胸にはなくて。
その意味を教えてもらって、俺はさらに涙が止まらない。
「ばか…。シモンの…ばか…!」
「こうでもしないとハルトにはわかってもらえないからな」
そう言いながら、こめかみに唇を落とすシモン。恥ずかしい、という感情はなく、ただただ信じられないという気持ちでいっぱいで。
ぎゅうと胸元の服を握ると、そのまま抱きつく。
「諦めなくてよかった」
「前に進めてよかった」
シモンに抱きついたまま鼻をすすれば、背中を撫でられ、俺の涙が止まるまでそのまま抱き合っていた。
■■■
「やれやれ。ようやく、くっついたかー」
部屋の前で待機していた僕がそう言えば「盗み聞きはよくないぞ」とバカに言われる。
というか、そう思うなら離れればいいのに。
そう。部屋の前で3人並んで盗み聞きしている。
だって気になるじゃん。
シモンも大概だけど、ハルトも臆病だよね。
まぁルカのことがあるからだろうけど、さ。
「でも、よかった」
「…なんであいつらは気付かなかったんだろうな」
「恋は時に臆病になるものだよ、マシュー」
「…そんなもんですか?」
「そんなものだよ」
ふふっと笑うバカと、よく分からないというクズ。
まぁ、僕らは恋愛とかほど遠いからね。
「ルカのこと、ようやく吹っ切れたかな?」
でもあのハルトのことだ。もだもだぐずぐずしそうだから、あのことを言っちゃったほうがいいかなー?
バカとクズにも内緒なんだけど。
…いい機会、だと思っておこう。
「…早くあのケーキ食いたいんだけど」
「クズが」
「仕方ないだろ」
「まぁまぁ。もうしばらくしたら突入すればいいさ」
「それはいいですね。兄上!」
わくわくしてるクズは放っておいて、そろそろ突入しないとやばいかな?
主にシモンが暴走しそうだし。
「よし。じゃあ行こうか」
「ハワード?!」
「いきなりおっぱじめられても困るし」
「いやいや。さすがにそれは…」
「ないとは言い切れないよー? なんせ吹っ切れたシモンがどうなるか分かんないし」
「ううーん…。そう、なのか?」
「そうだよ。おっぱじめられたらケーキもタルトも食べられなくなるし」
「それは由々しき事態だ。行くぞ、ハワード」
「指図しないでよ。でもそうこなくちゃね☆」
タルトとケーキにつられたクズににやりと笑うと、クズもにやりと笑う。バカは肩を竦めてるだけだから、止めはしないんだろうな。よしよし。
「それじゃあ、行くぞ」
「おっけー☆」
お互い目配せをして、バン!と扉を開ければ、ハルトの身体がびくっと跳ね上がった。
そして…。
「やーやー。いい雰囲気を邪魔してごめーんね☆」
「ハワード…!」
てへ☆と笑ってシモンを見てからハルトを見れば、恥ずかしいのか小さくぷるぷると震えていて。
うんうん。小動物みたいで可愛いね!
「すまないね。2人とも。止められなくて」
「…………いえ」
たっぷり間を取っていうシモンに、プークスクスと笑えばものすごい勢いで睨まれて。
「でもおっぱじめてなくて助かったよー!」
「ハワード!」
「――――ッ!」
やっぱやーと明るくそう言えば、シモンから雷が落ちて。
やんやと騒がしくなった部屋は、輝いて見える。
大丈夫。
シモンとハルトなら、きっとあのことも驚いてくれるだろうな、と思いながら。
「…それで?」
「……………」
応接室に残された俺はシモンの膝から降りることを許されず、むしろ拘束されている。
給餌の体勢だから、左腕で突っぱねることも不可能。と、いうか左腕も掴まれているから抵抗なんかできないんだよなー…。
でも俺にできる抵抗らしい抵抗はひたすら視線を逸らす、ということだけ。
けど、そんなことはいつまでも続けられるはずがないんだよ。
謂わばこれは悪あがき。
そして時間稼ぎ。
シモンから漏れた「は?」で、ハワードとウィンダム様、そしてマシュー殿下はそそくさと部屋を出て行ったし、ルスも“我も邪魔になるな”と言って消えてしまった。
いや、マシュー殿下は「待て! まだ食べていないケーキがあるんだ!」と言っていたけど、ウィンダム様が引きずっていった。
どんだけ好きなのよ。ケーキとタルト。
ハワードは「今までこれからのことを話し合ったことがないからいい機会じゃない?」とにこにこしてた。
確かにハワードにはなんとなく俺の今後のことについて話してたりしてるけど、シモンには何も言ってないような気がする。
でも話が筒抜けなんだから、ハワードが話してると思ったんだよ。でもまさか話してないとは…。
それに。
「ダンジョンを攻略したら話したいことがある、と言っていたな?」
「…うん」
それは確かに言った。
シモンに謝るために。
「…このままだと話し辛いな」
「へ?」
寧ろこの方が話しやすいんだけど、なんて言葉は俺の間の抜けた声に変換された。
なんせ…。
「…なんでこうなるんだ?」
「互いの顔を見た方が話しやすいだろう?」
「……………」
真面目な話し、ならな。
いや。これからするのも真面目な話なんだけど…。
けどさ。
「近くない?」
「こうでもしないと逃げるだろう」
「………………」
バレてる。
つか逃げたくても逃げれないだろ。
そう。俺はシモンと向かい合っている。給餌の体勢から俺の脇に手が差し込まれたかと思ったら、持ち上げられてそのまま膝の上に乗せられた。
右腕は腰を持たれたけどな。それでも腕力だけで俺の体勢を変えたんだから「筋肉ってすげー」という感想しか出てこなかった。
「話はしないのか?」
「する。約束だから」
そうだ。
俺の保身のためだけにシモンに媚びを売っていた、ということを詫びなければならないのだ。
きゅっと唇を結んでから、俺は口を開いた。
「ごめんなさい」
「なぜ謝る?」
「…俺さ、シモン達を利用してたんだよ」
「ふむ。それで?」
「俺の保身のためだけに、その…甘えたりしてた」
シモンの顔が見れなくて、視線をあちこちと彷徨わせるのは許してほしい。
怖いんだよ。どんな目で俺を見てるのかが。
でも、言わないとけじめがつかないからな。
最終的には視線を落としたまま小さな声で告げた。けど、シモンからの反応がない。
実は反応がないのが一番怖かったりするのだ。
怒ったり、呆れたり。
どんな反応でもいい。何か言ってくれ、と願っていると、なぜか右腕のあった場所を撫でられた。
それにびくりと肩を震わせてから、顔を上げればそこには右腕があった場所を愛おしそうに見つめながら撫でているシモンの表情に、ぽかんとする。
すると、当然だがぱちりと視線が合った。
「実はな、オレもハルトに謝らなければならないことがあるんだ」
「え?」
シモンが俺に謝る?
俺が謝ることはたくさんあるけど…?
心当たりが全くないから首を傾げてみる。
「…ハルトがオレたちを利用していることは知っていたんだ」
「は?」
え? 俺がシモンとハワードを利用してるのを知っていた…?
知っていて、優しくしてくれた?
「な、んで知って…」
俺から出た声は思いの外、掠れた。
だってそうだろ?
利用されてるのに優しくするとか。
「一度ユナと話していたことがあっただろう?」
「花村さんと話し…?」
シモンの言葉に、そう言えば花村さんと話しをしてる時に本音を吐き出したような気がする。
じゃあ、花村さんが?それともあの時の侍女さんが?
「ああ。言っておくが彼女たちからは聞いていない」
「え?」
まさかという疑問はシモンによって否定された。
「じゃあ…?」
「あの時、オレ達は部屋の外で聞いていたんだ」
「なっ?!」
盗み聞き?!
「なんでそんな…?!」
花村さんと侍女さんまで使って?!
「ハルトの怒りは分かる。けど、オレ達に気持ちを聞かせろ、といったら素直に話したか?」
「そ…れは…」
絶対に言えない。
だってそうだろ? 言ったら追い出されるかもしれないのに。
「だからハルトの気持ちを知りたくて協力してもらった。彼女たちは仕事をしただけだ」
「………………」
「彼女たちのことは責めないでやってくれ」
シモンの言葉にハッとすると、そっと頬を撫でられた。
「オレ達を責めるなら責めてもらっても構わない」
じっと見つめてくる瞳は逸らされることはない。
一度瞳を閉じてから、ふるふると横に振ると「ありがとう」となぜか言われてしまった。
お礼を言われるほどのことをしたわけじゃないのに。むしろ謝るのは俺の方なのに。
「怒って…ないのか?」
「なぜ?」
「だって…俺は、俺の為だけに…」
「それはそうだろう」
「え?」
思っても見ない言葉に驚けば、小さく笑っていて。
「ハルトが不安になるのは当たり前だろう。突然ここに呼ばれたのだから」
「それは…そう、だけど…」
「それに、ハルトの不安に気付かなかったオレ達に責任がある」
「なんで…?」
「ハルトがオレ達を利用する、と考えたのはハワードがジムショクインとして呼んだからだろう?」
「…うん」
そう。俺がここに呼ばれたのは事務職員として仕事をするため。
けれど俺はそれができないから他のことをするしかなかった。けどすぐに他の仕事なんか思いつかないから、ダンジョンの話しに飛びついたわけだけど。
「だが、本当にそれだけなのか?」
「え?」
何が?と視線でシモンに問えば、視線が俺から左腕に向けられた。
「左腕を噛んでまで協力をしたのは、それだけか?」
「……………」
シモンの言葉に、怪我は治っているのに左腕がずきりと痛む。
あの時は必死過ぎて、とにかくトレバー達を帰さなきゃという考えでいっぱいだった。
俺が寝たら多分戻れない、って感じたから。
そこでふとある考えがよぎった。
俺の考えが分かっているのなら、いっそのこと嫌われて二度と姿をみせないようにすればいいのでは、と。
どうせ実らぬものなのだ。
ならば嫌われた方が、気持ちが楽になるのではないか。
けどそれは自分で自分を傷つける行為だ。
俺はMじゃないし、当然傷がついた心を癒すのには時間がかかると思う。
でも、ここでシモンのことをすっぱりと割り切れたなら、それでいいんじゃないか?
「ハルト?」
「――ッ!」
黙ってしまった俺をどう思ったのかは分からないけど、頬に触れている手が優しく撫でてくれるから心配させたんだと思う。
ああ。嫌だな。この優しさを突き放すのは。
でも、シモンはまだルカさんを思ってる。
もしも、もしも…そんなことはないけど、本当にもしも。シモンも同じ気持ちだとしても、ルカさんが心にいると思うと切なくなる。
そうか。俺って結構、独占欲が強かったんだ。
こんなところで気付くとは。
おかしいな。
「ははっ」
「ハルト?」
思わず笑いが漏れた俺に反応したシモンに、ふっと笑みを浮かべる。
腹は、決まった。
「そうだよ」
「……………」
「トレバー達を助ければ、きっと恩を感じてくれると思ったからだよ」
違う、と言い切れないのは下心があったからだ。だから、はっきりと違うとは言えない。
「それに、ダンジョンを攻略すればこの国から放り出されることはなくなるだろうしな」
そうだ。言え。
俺が思っていたことを言え。
「ハワードは多分召喚した後ろめたさがあるから何でも聞いてくれそうだし」
「それで?」
「シモンは…」
「オレは?」
シモンのことについて何か言わなければ、と思うのに喉がひりついて言葉がうまく出てこない。
言え。言葉を出せ。
「シモンは俺が死なない為に必要だからそうしてただけ、だし」
はっ、とわざとらしく鼻を鳴らしながら左手を胸に置いて、距離を取る。
まるで「もう必要ない」と言わんばかりに。
本当は違うのに。
でも、言わなきゃ引きずる。
泣くのは後でもできる。だから今は。
「だ…」
から、と続けようとした言葉は食われた。
あの時と同じで、シモンに口を食われて。
なんで。どうして。
けど、あの時と違うのは。
「んぅ?!」
口の中にぬるりと入り込んできたそれに、びくりと膝を跳ねさせる。
目を閉じることも忘れて、口の中で動くそれにどうしたらいいのか分からず、ただされるがままでいる。
なんで…なんでこんなこと…ッ!
くちゅ、という音にハッとすると、侵入していたそれに歯を立てる。同時に俺も舌を噛んだけど、痛みで思考がはっきりする。
それと同時に睨めば、シモンもまた俺を見つめていて。
「にゃ…ん…っ! ぐ…ぅっ!」
噛んだことで怒らせたのか、頬を包んでいた手に力が入り離れなくなった。
嘘だろ?!
それに、さっきはゆっくりと、優しく撫でるような舌の動きが激しくなる。
逃げ惑う俺の舌を追いかけ、追い詰められて逃げ場を失ったそれを絡めとられるとそのまま吸われる。
何か言いたくても舌も口も奪われれば何も言えなくて。
呼吸も奪うようなキスに、俺は翻弄され酸欠で頭がくらくらし始める。
「ん…ッ!」
身体から力が抜け、倒れそうになる身体を左腕だけで支えるシモンに泣きたくなる。
いや、もう泣いていたりする。
気持ちがぐちゃぐちゃなうえに、呼吸もできない。
そんな俺の身体は、泣くことで相手に訴え始めたのかもしれない。
鼻水は出るし、泣いたことでさらに頭ががんがんと痛み始める。
「ハルト、息をしろ」
「は…?」
「ゆっくり吐いて、吸って」
「は…、はぁ…」
呼吸の仕方を忘れた俺に言葉で指示をくれるシモンの言うとおりにしてみると、呼吸の仕方を思い出したように俺の身体は途端に酸素を求め始める。
「はぁ…っ、は…っ、ぁ…」
全力で走ったような荒い呼吸を繰り返していると、顔を撫でられた。
なんだ、という言葉は発せられず、よく分からないまま、顔を撫でられ続ける。
そして呼吸と共に、気持ちが落ち着き始めると疑問が浮かぶ。
顔を撫でていた手は、今は背中をゆっくりと叩いている。まるで子供をあやすように。
「なんで…?」
ぽつりと出た言葉は、しっかりとシモンの耳に届いていたようで背中を叩いていた手が、ぴたりと止まったがすぐに撫で始めた。
「…ハルトが話をしたい、と言った時、気付いていた」
「…何が?」
「ハルトがここを去ることを」
「………………」
ぽつぽつと独り言のように話すシモンに、俺は何も言わず肩に額を押し当て聞いている。
「本来なら手を離すべきだ」
「…………」
「けれど、離せなくなった」
そう言いながら背中を撫でていた手が離れ、抱きしめられる。
諦めたいのに。こんなに強く抱きしめられたら諦めきれなくなるじゃんか。
やめてよ。
「離して…くれ…」
「今、離したら戻ってこないだろう?」
「…戻ってくるよ」
「線を引いて、な」
「………………」
ああ。全部分かってるのか。
俺の気持ちも、行動も、何もかも。
なんでだ? なんで俺の気持ちまで分かったんだ?
「なんで…」
「…ハルトは分かりやすいからな」
「嘘…」
「ハワードの方がよほど分からないぞ?」
「うそ、だ」
小さく笑いながら、頭を撫でてくるシモンに涙が溢れてくる。
もう、ダメだ。
「もう…諦められないじゃんか…」
「諦めなくていい」
「…ばか」
冗談っぽく、そう言ったけど声が震えてしまった。
でも、ルカさんのことは忘れられないんだろうな。
だって…。
「ルカさんは…」
「ルカのこと、か…。ハルト」
「………………」
シモンからルカさんのことを聞くのが怖い。
だから聞きたくない、と首を振れば「ハルト」と落ち着かせるように、抱き締められる。
もう、抱き締めたり頭を撫でたりすれば落ち着くと思ってるな。
くそう。その通りだけど。
すると左手首を掴まれて胸元へと導かれる。それにハッとして顔を上げれば、なぜか小さく笑みを浮かべていて。
なんて…なんて残酷なことをするんだろうか。
涙が溢れて俯こうとして、それに気付いた瞬間、俺は瞳を大きくしてシモンの顔を見つめた。
「な…んで…」
何度目かのなんで、という疑問を口にすればシモンが俺を見た。
「前に進まなければ、と思ってな」
「え?」
「7年間、オレは立ち止まったままだとハワードに言われた」
そう告げるシモンの言葉を聞きながら、胸元を撫でればやはりあるはずの物がなくて。
「だから、前に進むことにした」
「…………ッ!」
そう。俺が見つけてからずっとつけていたルカさんのペンダント。
それが今、シモンの胸にはなくて。
その意味を教えてもらって、俺はさらに涙が止まらない。
「ばか…。シモンの…ばか…!」
「こうでもしないとハルトにはわかってもらえないからな」
そう言いながら、こめかみに唇を落とすシモン。恥ずかしい、という感情はなく、ただただ信じられないという気持ちでいっぱいで。
ぎゅうと胸元の服を握ると、そのまま抱きつく。
「諦めなくてよかった」
「前に進めてよかった」
シモンに抱きついたまま鼻をすすれば、背中を撫でられ、俺の涙が止まるまでそのまま抱き合っていた。
■■■
「やれやれ。ようやく、くっついたかー」
部屋の前で待機していた僕がそう言えば「盗み聞きはよくないぞ」とバカに言われる。
というか、そう思うなら離れればいいのに。
そう。部屋の前で3人並んで盗み聞きしている。
だって気になるじゃん。
シモンも大概だけど、ハルトも臆病だよね。
まぁルカのことがあるからだろうけど、さ。
「でも、よかった」
「…なんであいつらは気付かなかったんだろうな」
「恋は時に臆病になるものだよ、マシュー」
「…そんなもんですか?」
「そんなものだよ」
ふふっと笑うバカと、よく分からないというクズ。
まぁ、僕らは恋愛とかほど遠いからね。
「ルカのこと、ようやく吹っ切れたかな?」
でもあのハルトのことだ。もだもだぐずぐずしそうだから、あのことを言っちゃったほうがいいかなー?
バカとクズにも内緒なんだけど。
…いい機会、だと思っておこう。
「…早くあのケーキ食いたいんだけど」
「クズが」
「仕方ないだろ」
「まぁまぁ。もうしばらくしたら突入すればいいさ」
「それはいいですね。兄上!」
わくわくしてるクズは放っておいて、そろそろ突入しないとやばいかな?
主にシモンが暴走しそうだし。
「よし。じゃあ行こうか」
「ハワード?!」
「いきなりおっぱじめられても困るし」
「いやいや。さすがにそれは…」
「ないとは言い切れないよー? なんせ吹っ切れたシモンがどうなるか分かんないし」
「ううーん…。そう、なのか?」
「そうだよ。おっぱじめられたらケーキもタルトも食べられなくなるし」
「それは由々しき事態だ。行くぞ、ハワード」
「指図しないでよ。でもそうこなくちゃね☆」
タルトとケーキにつられたクズににやりと笑うと、クズもにやりと笑う。バカは肩を竦めてるだけだから、止めはしないんだろうな。よしよし。
「それじゃあ、行くぞ」
「おっけー☆」
お互い目配せをして、バン!と扉を開ければ、ハルトの身体がびくっと跳ね上がった。
そして…。
「やーやー。いい雰囲気を邪魔してごめーんね☆」
「ハワード…!」
てへ☆と笑ってシモンを見てからハルトを見れば、恥ずかしいのか小さくぷるぷると震えていて。
うんうん。小動物みたいで可愛いね!
「すまないね。2人とも。止められなくて」
「…………いえ」
たっぷり間を取っていうシモンに、プークスクスと笑えばものすごい勢いで睨まれて。
「でもおっぱじめてなくて助かったよー!」
「ハワード!」
「――――ッ!」
やっぱやーと明るくそう言えば、シモンから雷が落ちて。
やんやと騒がしくなった部屋は、輝いて見える。
大丈夫。
シモンとハルトなら、きっとあのことも驚いてくれるだろうな、と思いながら。
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