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翌日、イヴの言った通りイブキが起きて来た。髪がぼさぼさで笑ってしまったが、ヘルベルトと共に風呂に入れば大暴れ。二人して嫌がるイブキを風呂に入れて、逃走したイブキを二人で追いかけて。
すっぽんぽんのまま追いかけっこをすればスノウに呆れられて。
元気になったイブキの食欲がすごくて、見ているだけで元気になれる。イブキの食欲に触発されたのか、ヘルベルトもよく食べるようになった。
若いってすげぇな。
そんな感想を抱きながら食事を見ていると、連日のマナー講習のおかげかヘルベルトの食べ方に上品さが現れた。スノウの前世…はイヴだからその前、前々世はどうやらどこぞのいいお坊ちゃんだったそう。スノウがさらっと教えてくれた。まぁ、故郷が同じだから話しても問題ないと判断されたのだろうが。
そんなわけで、マナー系はスノウに丸投げ。ヘルベルトのマナー講習は俺とイブキもついでに習っている。俺は出来なければじいちゃんに恥をかかせることになるから学び直すのに必死で、イブキはイブキで楽しそうに学んでいる。
勉強も『イヴ』の知識をフル活用してヘルベルトに教えている。初日に暴走した魔力のコントロールもうまくなった。栄養のある食事を食べ、少し運動し、勉強する。健康的?な生活のおかげがこけていた頬も心なしか膨らんできたような気がする。よしよし。健康になってきたな。
イブキとも打ち解け、仲良くお絵描きやら勉強をしている。兄弟の様にも見えて来た二人。良好な関係を築けているようで何よりだ。
「そう言えば…暴走させた部屋は大丈夫なの?」
「あぁ。あの部屋か。あの部屋はやべぇから使えないぞ」
「へ?」
そう。ヘルベルトが魔力の暴走をさせたあの空間。無事、しっちゃかめっちゃかになりどこに繋がっているか不明になった。ブラックホール的な存在になり、どうすることもできなくなった。…あそこ繋げると、吸い込まれて藻屑になりそう。
そんなわけで別の空間を使っている。あの空間にいた人、マジですまん。
ヘルベルトとイブキとスノウの生活に慣れてきたところで、期限の一週間が過ぎた。ドアを消しているからあちらからのコンタクトは取れない。こちらは見えるけどな。
朝食をのんびりと食べ、部屋でまったりしているとドアを激しくノック…というよりも殴りつける勢いで叩かれる。
おーおー。だいぶやばそうだな。
たかだか一週間。俺たちは快適な暮らしができたが、あちらは相当不便な生活を強いられた。魔具に慣れ切った人間が不便な生活にどこまで対応できたか楽しみでならない。
恐らく掃除もできていなさそうだから埃っぽいのは困るけどな。
だからここを出るときに全体にクリーンを使う予定。俺だって埃っぽくて臭う城の中を歩くのは嫌だからな。それに、イブキに汚れた場所を歩かせたくない。
「たーべるー!」
「イブキはいっぱい食べるね」
「おいしいから!」
「そうだね。スノウのおやつはおいしいからね」
「うん!」
そんなことをつらつらと考えていたら、イブキがお腹を空かせたらしい。まぁ、俺たちを呼びに来てかれこれ二時間ほど経っている。朝食を食べてから着替えをしたから、ではなくヘルベルトがそうなのだからそうするのが礼儀だろう。
今日は皆でおめかしをしている。ヘルベルトもきちっとした礼服。…若干可愛いのはじいちゃんの趣味かも知れない。イブキもロリータ風。こちらも大変可愛らしい。俺は…うん、やっぱり露出が多めの透け透け服だ。だからさ…。
それにじいちゃんから託されたヘッドチェーンを着けている。しゃらしゃらと聞こえる金属音がやっぱり気になるけど、待っている間に慣れてしまった。髪はすっきりと纏められているが、これもスノウが結ってくれた。ヘルベルトもイブキもスノウがセットしている。本当に器用だな。
「おいしい!」
「ゆっくり食べなよ?」
「うん!」
こくこくとミルクを飲むイブキにヘルベルトもカップを優雅に傾けている。本当に仕草が上品になったな。スノウ先生のおかげだ。
更に時が過ぎ、そろそろ三時間が経とうとしたときだった。
「じゃあ、行こうか」
ヘルベルトがそう言うと、俺たちも立ち上がる。お手洗いはこれからクリーンをかけてしまうから問題ない。ソファから立ち上がったその位置で、魔法陣を展開。それからクリーンを城全体にかければ、スノウが扉を開いた。
先にスノウが部屋から出て、ヘルベルトが続く。その後ろをイブキが歩き、最後に俺が部屋を出る。扉を消してヘルベルトの前に移動すると、ゆっくりと歩き出した。
周りを見ればやはり恨みがましい視線を受けるが、文句があるなら俺ではなくあの男に言ってくださいね。それと、また強制有休を取りたくなければ大人しくしててくれよ?
カツカツと靴音を響かせ、俺たちが通ることを知らせながら廊下を歩けば所々に見える使用人たちは頭を下げることなく俺たちを見つめている。
本当に躾がなってないことで。
無言で歩き、再び扉の前にやって来るとあの時強制有休を取らせた騎士がいて。それににこりと微笑めば、不機嫌な表情のままだが扉を開けてくれた。
やはり軋む音がしない扉が開けば、疲れた顔の連中の視線が突き刺さる。おや、お疲れ様。
「…少々遅いのでは?」
「そうでしょうか? ヘルベルト王太子殿下の時と同じだと思われますが?」
にっこりと微笑みながらそう告げれば、思い当たることしかないらしいオーバルが苦々しい表情を浮かべた。よしよし。自分がしたことを返される気持ちはどんな感じだ?
うっかりするとニヤニヤしそうになる頬を引き締めていると、俺の横からヘルベルトが姿を現した。
「お久しぶりです」
「お前…ヘルベルトか?」
「おや。やはり滅多に見ない息子の顔などお忘れですか」
うーん…。ヘルベルトもやるなぁ。腹も膨れて睡眠もしっかりとったことで余裕が生まれてるんだろうな。よきかなよきかな。
一方言い返されたオーベルは愕然としていて。ふふふ。そうだろうそうだろう。本来のヘルベルトはカッコいいだろう。
この日のために痛みまくった髪をとぅるとぅるにして、散髪までした。散髪はもちろんスノウだ。
太陽の光を集めたプリムローズイエローの髪に、雲一つない青空の瞳。それに一週間で肉が付き健康的な身体。一週間前までとは全く違う容姿に、王族全員が驚いている。
「さて、一週間前のゴミですが…。きちんと処分してくださいましたか?」
「ああ」
お? やけに自信満々じゃないか。こういう態度の奴に限って処分が甘いんだよなー。さて、オーバルくんはどうかな?
「内容を教えていただいても?」
「一家を処刑した」
「ふむ?」
オーバルの言葉を鵜呑みにはしない。ちらりとアホ共を見れば、どことなく血走っている。相当魔具の制限がきつかったんだな。自業自得だけど。
「その言葉に偽りはありませんか?」
「ああ。無いと誓おう」
さて。オーバルくんはああ言ってるけど? ちらりとヘルベルトを見れば軽く首を振る。ですよねー。
「これで魔具の制限は解除されるのですよね?」
俺が無言だったのにしびれを切らした女性が、懇願するようにそう尋ねてくる。ほかの奴らも「そうですよね?」と期待の瞳を向けているけど…。
「なら、言ったことが本当か見てみましょうか」
「え?」
俺の一言に見えて慌てだすアホ共。ふーん。やっぱりそうか。オーバルはどうかな?と視線を向ければ、悔しそうに手すりを握りしめていて。
「み、てみるとは…?」
「言葉の通りですよ? 言ったでしょう? 私は『タイムキーパー』でもある、と」
「ま、待たれよ! 使者殿!」
「何をそんなに慌てているんですか? あなたが言ったのでしょう? 処刑をした、と」
「それは…!」
「それとも嘘をついたのですか? 誓ったのに?」
にっこりと綺麗に微笑みながらそう言えば、オーバルがぎりりと奥歯を噛み締めている。それを見て確定した。
こいつらは嘘をついている、と。
まぁそんなことだろうとは思ったけどさ。
予想通りすぎてため息すらもったいない。肩を竦めて杖を消す。そして右手を伸ばすと、手のひらに玉を出現させる。
「では、本当に処刑をしたのか確認しましょうか」
「ま…待て! 待ってくれ…!」
オーバルの止める声など無視して、玉にあの一家があれからどうなったのかを映し出す。
今回は特別に巨大スクリーン風にして映し出す。優しいなー。俺。だって小さすぎて見えないと困るじゃん? 確認なんだから。
するとあれから一度は牢に入れられてはいたが、そこでの待遇は罪人よりも当然扱いはいい。魔具が制限されているとはいえ、食事もできる。牢に入っていたのはわずか二日。その間にこいつらの運命が決まったようだ。
牢から出された一家はローブを羽織り、馬車でどこかへ移動するようだ。それを追いかけて見てみれば着いた先は関門。どうやら首都から追い出すようだ。しかし、一家を逃した後、それを追うように何台もの馬車がついていく。
ふぅーん?
そしてその馬車は休憩を取りながら進む。そして行き着いた先は地方都市のような街。首都とは違い小ぢんまりした印象だが、不便はなさそうで。
そこに着いた一家は、庶民よりも大きな屋敷に入っていった。そして。そこで迎え入れられたのは妻側の両親。ふーん。
そこまで映し出し、映像を切ればアホ共がガタガタと震えている。随分とまぁ舐められてもんだな。
「この国では…」
話始めた俺に、アホ共がびくりと肩を跳ねさせる。
「アレを処刑、というのですか。随分と言葉の意味が変わりましたね」
嫌味たっぷりにそう言えば、全員の顔色が白くなっていく。さて。どうしようか。
こいつらの追加処分を考えていると、我慢できなかったのか一人の少女が前に出てきた。あん?
「お願いします! もうこんな生活は耐えられないんです!」
「おい!」
「お願いします! 元に戻してください!」
「やめろ!」
おっと? アレのおかげで俺に逆らうのはまずいと気付いたのか、周りの男性たちに止められている少女。よく見れば髪は汚れているが、服はそれほど汚れていない。
「服が汚れていないようなので、まだ平気ではありませんか」
「え?」
「前のヘルベルトに比べればまだ余裕じゃないですか」
「〰〰〰〰っ!」
「その美しいドレスが黒ずんだら元の生活に戻してもよろしいかと思いますが…?」
「嫌ぁ! もうあんな生活は嫌なの!」
「静かにしろ!」
髪を振り乱し泣き叫ぶ少女を冷たく見てから、顔色をどこかに落としてしまったオーバルを見る。
「さて。血を引かぬ者」
俺の言葉にびくりと肩を震わせるオーバル。残念だけど君をどうこうするのは俺の仕事じゃないんだよね。
「君は自分が暴言を吐かれて殴られても、相手を追放するだけでよいのですね?」
「〰〰〰〰…っ」
「では、今ここで君を殴っても私は追放されるだけ。そうですね?」
おっと。だんまりか。なら。
「分かりました。では言葉の意味を理解されていないようなので、理解するまで魔具の完全停止」
「なっ!」
「それから今回は私に虚偽の報告をしたため、お前たち一族、それと領民にも魔具の停止を行います」
俺の処罰の言葉に数人が倒れたようだが、お前たちが決めたことだ。恨むのなら自分自身を恨め。
「ヘ、ヘルベルト! お前は…!」
「イヴの言葉に同意します」
「兄上!」
「お前に兄と呼ばれる筋合いはない」
「ヘルベルト!」
「都合のいいときだけ家族扱いするのやめてもらえませんか? ヘドが出る」
「な…っ!」
「アンタもアンタだよ。サイラスばかり構って、危うくなると助けを求める。俺の助けてくれは聞こえない耳を持っているくせに、自分の声は聞こえると思ってる」
ハッと鼻で笑いながら告げるヘルベルトに、心の中で拍手を送る。
ヘルベルトにここまで言い返されると思っていなかった奴らは黙りこくる。そうだよなぁ。今までのことを考えれば普通はそうなる。
散々虐げておいていざとなったら助けてくれると思ってるんだからびっくりくりだよな。
「あ、そうでした」
アホさ加減にげんなりしてたけど、伝えなければならないことがあったんだ。
「引かぬ者の横…ええ、と?」
「妻…ですか?」
「そう、貴女に伝えなければならないことがありました」
「…なんでしょうか」
「『正統なる王家の血』を産んだ貴女は今、中間にいらっしゃいます」
「……………」
『正統なる王家の血』と聞いて眉が動いたのは『あの事』があるからだろう。まぁまぁ聞いてくれよ。あんたにとっても悪い話じゃないんだから。
「貴女の行動次第では『正統なる王家の血』を引くヘルベルト王太子殿下と同じ待遇を受ける事ができます」
「…理由は?」
「貴女の中に『正統なる王家の血』が入っ――」
「――黙れッ!」
俺の言葉を遮るように声を荒げ、玉座から立ち上がるオーバル。ほう?サイラスは意味が分かっていないのかオーバルを見つめている。他の奴らもサイラスと同じで、オーバルを見つめている。
「…そういうことですので、こちら側に来るのであれば行動を改めてくださいね?」
「……………」
唇を噛み、俺を睨みつけるメリルー。うーん…気持ちいい。とはいっても悔しそうな視線は上手くいっていることを示しているから気持ちがいいだけだからな?
さて、メリルーがどっちに転ぶか楽しみが増えたし…。そろそろお暇しようか。イブキが暇すぎて眠くなり始めているし。
「さて、と。話しは以上です」
「――っく!」
「処罰の対象は『正統なる王家の血』を引かぬ一族すべてと、その王に忠誠を誓う者、それとここに勤めている者全員の家族、並びに一族それに『正統なる王家の血』を引かぬ者の領地」
「なっ?!」
「魔具の一時完全停止。期間は…一週間でいかがですか?ヘルベルト王太子殿下」
「そう…だな。イヴやイブキ、私に対して不敬を一人でも働けば期限を延ばす」
「ではそのように」
「待て…!」
誰かの静止がかかるが俺たちには関係ない。これはお前たちが出した結論なんだから。
「というのは今までの条件です」
「…え?」
「あなたたちがゴミに『処罰』をすれば、期限は早まります」
重い処罰を言い渡してから条件付きで軽くする。制限された生活でさえ耐え切れないのだから、完全停止はもっと耐え切れないはずだ。そこで甘い言葉を囁けば…。
「アレを『処罰』すれば、元の生活に戻れる…?」
「そうだ。アレを『処罰』しよう」
こういった意見が当然出てくる。限界が近ければ判断力が鈍る。そこを突いてやれば甘い意見は崩れていく。
「いい報告、お待ちしております」
最後にそう告げて背を向ければ、後はあいつらが勝手に話し合いを始めるはずだ。
スノウが扉を開け、ふあー…とあくびをしているイブキを抱き上げる。いきなり扉が開いたことでそこにいた騎士が驚いていたがそれを無視して謁見の間を出ると、ぱちんと指を鳴らす。するとそのまま扉が閉まった。
その後ろではただの貴族共があのゴミをどうするか話し合っているのを聞きながらヘルベルトの部屋へと向かうのだった。
すっぽんぽんのまま追いかけっこをすればスノウに呆れられて。
元気になったイブキの食欲がすごくて、見ているだけで元気になれる。イブキの食欲に触発されたのか、ヘルベルトもよく食べるようになった。
若いってすげぇな。
そんな感想を抱きながら食事を見ていると、連日のマナー講習のおかげかヘルベルトの食べ方に上品さが現れた。スノウの前世…はイヴだからその前、前々世はどうやらどこぞのいいお坊ちゃんだったそう。スノウがさらっと教えてくれた。まぁ、故郷が同じだから話しても問題ないと判断されたのだろうが。
そんなわけで、マナー系はスノウに丸投げ。ヘルベルトのマナー講習は俺とイブキもついでに習っている。俺は出来なければじいちゃんに恥をかかせることになるから学び直すのに必死で、イブキはイブキで楽しそうに学んでいる。
勉強も『イヴ』の知識をフル活用してヘルベルトに教えている。初日に暴走した魔力のコントロールもうまくなった。栄養のある食事を食べ、少し運動し、勉強する。健康的?な生活のおかげがこけていた頬も心なしか膨らんできたような気がする。よしよし。健康になってきたな。
イブキとも打ち解け、仲良くお絵描きやら勉強をしている。兄弟の様にも見えて来た二人。良好な関係を築けているようで何よりだ。
「そう言えば…暴走させた部屋は大丈夫なの?」
「あぁ。あの部屋か。あの部屋はやべぇから使えないぞ」
「へ?」
そう。ヘルベルトが魔力の暴走をさせたあの空間。無事、しっちゃかめっちゃかになりどこに繋がっているか不明になった。ブラックホール的な存在になり、どうすることもできなくなった。…あそこ繋げると、吸い込まれて藻屑になりそう。
そんなわけで別の空間を使っている。あの空間にいた人、マジですまん。
ヘルベルトとイブキとスノウの生活に慣れてきたところで、期限の一週間が過ぎた。ドアを消しているからあちらからのコンタクトは取れない。こちらは見えるけどな。
朝食をのんびりと食べ、部屋でまったりしているとドアを激しくノック…というよりも殴りつける勢いで叩かれる。
おーおー。だいぶやばそうだな。
たかだか一週間。俺たちは快適な暮らしができたが、あちらは相当不便な生活を強いられた。魔具に慣れ切った人間が不便な生活にどこまで対応できたか楽しみでならない。
恐らく掃除もできていなさそうだから埃っぽいのは困るけどな。
だからここを出るときに全体にクリーンを使う予定。俺だって埃っぽくて臭う城の中を歩くのは嫌だからな。それに、イブキに汚れた場所を歩かせたくない。
「たーべるー!」
「イブキはいっぱい食べるね」
「おいしいから!」
「そうだね。スノウのおやつはおいしいからね」
「うん!」
そんなことをつらつらと考えていたら、イブキがお腹を空かせたらしい。まぁ、俺たちを呼びに来てかれこれ二時間ほど経っている。朝食を食べてから着替えをしたから、ではなくヘルベルトがそうなのだからそうするのが礼儀だろう。
今日は皆でおめかしをしている。ヘルベルトもきちっとした礼服。…若干可愛いのはじいちゃんの趣味かも知れない。イブキもロリータ風。こちらも大変可愛らしい。俺は…うん、やっぱり露出が多めの透け透け服だ。だからさ…。
それにじいちゃんから託されたヘッドチェーンを着けている。しゃらしゃらと聞こえる金属音がやっぱり気になるけど、待っている間に慣れてしまった。髪はすっきりと纏められているが、これもスノウが結ってくれた。ヘルベルトもイブキもスノウがセットしている。本当に器用だな。
「おいしい!」
「ゆっくり食べなよ?」
「うん!」
こくこくとミルクを飲むイブキにヘルベルトもカップを優雅に傾けている。本当に仕草が上品になったな。スノウ先生のおかげだ。
更に時が過ぎ、そろそろ三時間が経とうとしたときだった。
「じゃあ、行こうか」
ヘルベルトがそう言うと、俺たちも立ち上がる。お手洗いはこれからクリーンをかけてしまうから問題ない。ソファから立ち上がったその位置で、魔法陣を展開。それからクリーンを城全体にかければ、スノウが扉を開いた。
先にスノウが部屋から出て、ヘルベルトが続く。その後ろをイブキが歩き、最後に俺が部屋を出る。扉を消してヘルベルトの前に移動すると、ゆっくりと歩き出した。
周りを見ればやはり恨みがましい視線を受けるが、文句があるなら俺ではなくあの男に言ってくださいね。それと、また強制有休を取りたくなければ大人しくしててくれよ?
カツカツと靴音を響かせ、俺たちが通ることを知らせながら廊下を歩けば所々に見える使用人たちは頭を下げることなく俺たちを見つめている。
本当に躾がなってないことで。
無言で歩き、再び扉の前にやって来るとあの時強制有休を取らせた騎士がいて。それににこりと微笑めば、不機嫌な表情のままだが扉を開けてくれた。
やはり軋む音がしない扉が開けば、疲れた顔の連中の視線が突き刺さる。おや、お疲れ様。
「…少々遅いのでは?」
「そうでしょうか? ヘルベルト王太子殿下の時と同じだと思われますが?」
にっこりと微笑みながらそう告げれば、思い当たることしかないらしいオーバルが苦々しい表情を浮かべた。よしよし。自分がしたことを返される気持ちはどんな感じだ?
うっかりするとニヤニヤしそうになる頬を引き締めていると、俺の横からヘルベルトが姿を現した。
「お久しぶりです」
「お前…ヘルベルトか?」
「おや。やはり滅多に見ない息子の顔などお忘れですか」
うーん…。ヘルベルトもやるなぁ。腹も膨れて睡眠もしっかりとったことで余裕が生まれてるんだろうな。よきかなよきかな。
一方言い返されたオーベルは愕然としていて。ふふふ。そうだろうそうだろう。本来のヘルベルトはカッコいいだろう。
この日のために痛みまくった髪をとぅるとぅるにして、散髪までした。散髪はもちろんスノウだ。
太陽の光を集めたプリムローズイエローの髪に、雲一つない青空の瞳。それに一週間で肉が付き健康的な身体。一週間前までとは全く違う容姿に、王族全員が驚いている。
「さて、一週間前のゴミですが…。きちんと処分してくださいましたか?」
「ああ」
お? やけに自信満々じゃないか。こういう態度の奴に限って処分が甘いんだよなー。さて、オーバルくんはどうかな?
「内容を教えていただいても?」
「一家を処刑した」
「ふむ?」
オーバルの言葉を鵜呑みにはしない。ちらりとアホ共を見れば、どことなく血走っている。相当魔具の制限がきつかったんだな。自業自得だけど。
「その言葉に偽りはありませんか?」
「ああ。無いと誓おう」
さて。オーバルくんはああ言ってるけど? ちらりとヘルベルトを見れば軽く首を振る。ですよねー。
「これで魔具の制限は解除されるのですよね?」
俺が無言だったのにしびれを切らした女性が、懇願するようにそう尋ねてくる。ほかの奴らも「そうですよね?」と期待の瞳を向けているけど…。
「なら、言ったことが本当か見てみましょうか」
「え?」
俺の一言に見えて慌てだすアホ共。ふーん。やっぱりそうか。オーバルはどうかな?と視線を向ければ、悔しそうに手すりを握りしめていて。
「み、てみるとは…?」
「言葉の通りですよ? 言ったでしょう? 私は『タイムキーパー』でもある、と」
「ま、待たれよ! 使者殿!」
「何をそんなに慌てているんですか? あなたが言ったのでしょう? 処刑をした、と」
「それは…!」
「それとも嘘をついたのですか? 誓ったのに?」
にっこりと綺麗に微笑みながらそう言えば、オーバルがぎりりと奥歯を噛み締めている。それを見て確定した。
こいつらは嘘をついている、と。
まぁそんなことだろうとは思ったけどさ。
予想通りすぎてため息すらもったいない。肩を竦めて杖を消す。そして右手を伸ばすと、手のひらに玉を出現させる。
「では、本当に処刑をしたのか確認しましょうか」
「ま…待て! 待ってくれ…!」
オーバルの止める声など無視して、玉にあの一家があれからどうなったのかを映し出す。
今回は特別に巨大スクリーン風にして映し出す。優しいなー。俺。だって小さすぎて見えないと困るじゃん? 確認なんだから。
するとあれから一度は牢に入れられてはいたが、そこでの待遇は罪人よりも当然扱いはいい。魔具が制限されているとはいえ、食事もできる。牢に入っていたのはわずか二日。その間にこいつらの運命が決まったようだ。
牢から出された一家はローブを羽織り、馬車でどこかへ移動するようだ。それを追いかけて見てみれば着いた先は関門。どうやら首都から追い出すようだ。しかし、一家を逃した後、それを追うように何台もの馬車がついていく。
ふぅーん?
そしてその馬車は休憩を取りながら進む。そして行き着いた先は地方都市のような街。首都とは違い小ぢんまりした印象だが、不便はなさそうで。
そこに着いた一家は、庶民よりも大きな屋敷に入っていった。そして。そこで迎え入れられたのは妻側の両親。ふーん。
そこまで映し出し、映像を切ればアホ共がガタガタと震えている。随分とまぁ舐められてもんだな。
「この国では…」
話始めた俺に、アホ共がびくりと肩を跳ねさせる。
「アレを処刑、というのですか。随分と言葉の意味が変わりましたね」
嫌味たっぷりにそう言えば、全員の顔色が白くなっていく。さて。どうしようか。
こいつらの追加処分を考えていると、我慢できなかったのか一人の少女が前に出てきた。あん?
「お願いします! もうこんな生活は耐えられないんです!」
「おい!」
「お願いします! 元に戻してください!」
「やめろ!」
おっと? アレのおかげで俺に逆らうのはまずいと気付いたのか、周りの男性たちに止められている少女。よく見れば髪は汚れているが、服はそれほど汚れていない。
「服が汚れていないようなので、まだ平気ではありませんか」
「え?」
「前のヘルベルトに比べればまだ余裕じゃないですか」
「〰〰〰〰っ!」
「その美しいドレスが黒ずんだら元の生活に戻してもよろしいかと思いますが…?」
「嫌ぁ! もうあんな生活は嫌なの!」
「静かにしろ!」
髪を振り乱し泣き叫ぶ少女を冷たく見てから、顔色をどこかに落としてしまったオーバルを見る。
「さて。血を引かぬ者」
俺の言葉にびくりと肩を震わせるオーバル。残念だけど君をどうこうするのは俺の仕事じゃないんだよね。
「君は自分が暴言を吐かれて殴られても、相手を追放するだけでよいのですね?」
「〰〰〰〰…っ」
「では、今ここで君を殴っても私は追放されるだけ。そうですね?」
おっと。だんまりか。なら。
「分かりました。では言葉の意味を理解されていないようなので、理解するまで魔具の完全停止」
「なっ!」
「それから今回は私に虚偽の報告をしたため、お前たち一族、それと領民にも魔具の停止を行います」
俺の処罰の言葉に数人が倒れたようだが、お前たちが決めたことだ。恨むのなら自分自身を恨め。
「ヘ、ヘルベルト! お前は…!」
「イヴの言葉に同意します」
「兄上!」
「お前に兄と呼ばれる筋合いはない」
「ヘルベルト!」
「都合のいいときだけ家族扱いするのやめてもらえませんか? ヘドが出る」
「な…っ!」
「アンタもアンタだよ。サイラスばかり構って、危うくなると助けを求める。俺の助けてくれは聞こえない耳を持っているくせに、自分の声は聞こえると思ってる」
ハッと鼻で笑いながら告げるヘルベルトに、心の中で拍手を送る。
ヘルベルトにここまで言い返されると思っていなかった奴らは黙りこくる。そうだよなぁ。今までのことを考えれば普通はそうなる。
散々虐げておいていざとなったら助けてくれると思ってるんだからびっくりくりだよな。
「あ、そうでした」
アホさ加減にげんなりしてたけど、伝えなければならないことがあったんだ。
「引かぬ者の横…ええ、と?」
「妻…ですか?」
「そう、貴女に伝えなければならないことがありました」
「…なんでしょうか」
「『正統なる王家の血』を産んだ貴女は今、中間にいらっしゃいます」
「……………」
『正統なる王家の血』と聞いて眉が動いたのは『あの事』があるからだろう。まぁまぁ聞いてくれよ。あんたにとっても悪い話じゃないんだから。
「貴女の行動次第では『正統なる王家の血』を引くヘルベルト王太子殿下と同じ待遇を受ける事ができます」
「…理由は?」
「貴女の中に『正統なる王家の血』が入っ――」
「――黙れッ!」
俺の言葉を遮るように声を荒げ、玉座から立ち上がるオーバル。ほう?サイラスは意味が分かっていないのかオーバルを見つめている。他の奴らもサイラスと同じで、オーバルを見つめている。
「…そういうことですので、こちら側に来るのであれば行動を改めてくださいね?」
「……………」
唇を噛み、俺を睨みつけるメリルー。うーん…気持ちいい。とはいっても悔しそうな視線は上手くいっていることを示しているから気持ちがいいだけだからな?
さて、メリルーがどっちに転ぶか楽しみが増えたし…。そろそろお暇しようか。イブキが暇すぎて眠くなり始めているし。
「さて、と。話しは以上です」
「――っく!」
「処罰の対象は『正統なる王家の血』を引かぬ一族すべてと、その王に忠誠を誓う者、それとここに勤めている者全員の家族、並びに一族それに『正統なる王家の血』を引かぬ者の領地」
「なっ?!」
「魔具の一時完全停止。期間は…一週間でいかがですか?ヘルベルト王太子殿下」
「そう…だな。イヴやイブキ、私に対して不敬を一人でも働けば期限を延ばす」
「ではそのように」
「待て…!」
誰かの静止がかかるが俺たちには関係ない。これはお前たちが出した結論なんだから。
「というのは今までの条件です」
「…え?」
「あなたたちがゴミに『処罰』をすれば、期限は早まります」
重い処罰を言い渡してから条件付きで軽くする。制限された生活でさえ耐え切れないのだから、完全停止はもっと耐え切れないはずだ。そこで甘い言葉を囁けば…。
「アレを『処罰』すれば、元の生活に戻れる…?」
「そうだ。アレを『処罰』しよう」
こういった意見が当然出てくる。限界が近ければ判断力が鈍る。そこを突いてやれば甘い意見は崩れていく。
「いい報告、お待ちしております」
最後にそう告げて背を向ければ、後はあいつらが勝手に話し合いを始めるはずだ。
スノウが扉を開け、ふあー…とあくびをしているイブキを抱き上げる。いきなり扉が開いたことでそこにいた騎士が驚いていたがそれを無視して謁見の間を出ると、ぱちんと指を鳴らす。するとそのまま扉が閉まった。
その後ろではただの貴族共があのゴミをどうするか話し合っているのを聞きながらヘルベルトの部屋へと向かうのだった。
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しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
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