悪役令息に転生したのでそのまま悪役令息でいこうと思います

マンゴー山田

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フーディ村編

皆でお出かけ! 後

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※フリードリヒ視点になります。



レイジス達がわいわいと話しながら畑を見に歩いて背中が小さくなるのを確認すると、ここを管理している男が「お久しぶりです。フリードリヒ殿下」と片膝を付き頭を下げる。

「急な申し出で悪かったな」
「いえ。学園のことはそこの愚弟に聞いておりますから」

顔を上げにこやかに話す男に「そうか」とだけ伝えると、立つように言う。そしてちらりとアルシュを見れば、すんっと表情なく立っている。それに頬を緩めると「それにしても」と男が腕を組んで視線を逸らした。

「報告は受けておりましたがあそこまで変わられるとは…」

レイジスがいるであろう畑の方を見ながらしみじみとそう言う男も、人間全てを拒否していた頃のレイジスを見ているからであろう。実際に魔法を放たれ、部下に庇われたことを未だに引き摺っている。その部下は今、元気にこの村で土いじりを楽しんでいるようだが。
少なからずいい感情を抱いていないであろうレイジスを見る目は私に向けるものよりも、やはり冷たかったが。

「それで?」

険悪な空気を変えたのはやはりハーミットだった。
第二騎士団副団長、ハーミット・ブレイブ。今は第二騎士団団長も兼任しているが本人は副団長のままだと言い張っている学園の臨時教師である。

腕を組んで少々面倒くさそうにそう言うハーミットに、男―シュルツはにこりと笑う。

「こちらに」

そう言ってドアの近くにいた者にシュルツが頷けば、その者がこくりと頷き返す。そしてドアが開け放たれるとそこには男女がこちらを向き、頭を下げていた。
それに「よく来てくれた」と声をかければ、男女がゆっくりと頭を上げる。その瞳には水の幕が張られており、今にも零れ落ちそうだった。

「久しぶりだな。ユアソーン侯爵」
「お久しぶりでございます。フリードリヒ殿下」

男の方はレイジスの父であるフォルス・ユアソーン。その隣で口元を押さえているのはミュルス夫人。レイジスの母親だ。

「ご報告をいただいた時は信じられませんでしたが…。本当にあの子が…」
「ああ。ここからでも見えただろう? あの子が」

ちらりと窓を見てすぐさま視線をフォルスへと戻す。3年ほど、息子の錯乱状態を見てきた彼はやはり少し痩せたようだ。剣豪と名高く、第一騎士団長を務めていたが人間不信に陥ったレイジスの様子を見守るために騎士団を辞めた。その後を引き継いだのが当時副団長を務めていたアルシュの父である。学園に入学してからはこちらから手紙という名の報告書を月に一度出していた。
返事も徐々に数が少なくなり、私も心を痛めた。だが一ヶ月ほど前、レイジスが穏やかになったことを知らせるために使いを出した。それを知ったフォルスは「会いたい」と一言、その使いの者に告げたそうだ。
約6年。豹変した息子が再び穏やかになったとすれば、会いたいと思うのは当然だ。

だからレイジスにそれとなく聞いてみようとした矢先に「両親は元気か」と聞いてきたことに驚いたのだ。
薬を盛られ高熱が続きレイジス本人から「ちょっと記憶が曖昧なんですよね」と困ったように言われたことも二人に伝えてある。

「はい。あんなに元気に歩く姿を…」

そこまで言葉を告げると、ミュルス夫人と同じようにフォルスが口元を手で覆う。そして肩を小さく震わせると俯いてしまう。
そんなフォルスにミュルス夫人も限界を迎え、小さな嗚咽を漏らし涙を流す。

「あの頃には考えられなかったな」

今よりも幼く初めて会った頃のレイジスはいつもベッドの上だった。はぁはぁと苦しそうに肩で息を吐きながら、その額には濡れたタオルが置かれていた。頬を赤くしてベッドに横たわるレイジスを私はただその小さな手を握りしめることしかできなった。
それでも、きゅうと握り返してくれるのが嬉しくてずっとレイジスの苦しそうな顔を見ながら手を握るだけの毎日。たまに調子がいいときはクッションがたくさん置かれたそこに背中を預けて外の話をよくしていた。その間に体調を崩し、横になるなんてことは珍しくもなく。
一人窓の外を見つめることしかできないレイジスを不憫に思い、うさぎのぬいぐるみを渡したその日、瞳が顔から零れ落ちそうなほど大きくして喜んでくれた。人と関わることなどできなかったレイジスから放たれた言葉に小さく笑いながら。
それからはアルシュと共にユアソーン家へと遊びに行っては父上や母上に小言を言われたが、それでも私はユアソーン家へ行かないという選択肢は持ちえなかった。
その時、父上と母上よりも優しくしてくれたのもこのユアソーン侯爵だった。

母上はなぜか私を悲しそうな、そして憐れむような瞳で見つめてくる。だがフォルスとミュルス夫人は何も言わずアルシュと共によくしてもらった。

レイジスとの婚約を決め、喜び勇みユアソーン家へと走っていくとそこには錯乱し髪を振り乱し使用人たちに取り押さえられているレイジスがいた。その後もレイジスは元に戻ることはなく、逆に錯乱は酷くなるばかり。そんな婚約者を選んだ私はただ冷たい視線を受ける日々が続いた。
それから学園へと通うために王宮を離れリーシャとノアと出会い、レイジスが幼いころ苦しんでいた理由が分かった。
リーシャ曰く「魔力が多すぎると子供の身体だと収まりきらなくて魔力が漏れ出して体調を崩すんです。だいたい10歳ころになると安定するんですけどね」とのこと。リーシャもそれに苦しんだらしく「週に4日体調がよければいい方でした」と言っていた。
レイジスはそれ以上に魔力が漏れ出していたためか、週に1日ないし半日体調がよければいい方だったことを思い出し、瞳を伏せた。
レイジスのことを知っていたアルシュも何も言わず、痛ましそうに瞳を伏せていたと後にノアから聞いた。

そんなユアソーン侯爵を呼び出したのはレイジスの今の姿を見てもらうためでもあり、確かめたいことがあったからだ。

「フォルス。突然だがレイジスは海に行ったことはあるか?」
「え…?」

ハンカチで涙を拭うフォルスが私の言葉に眉を寄せ、ミュルス夫人がぱちりと瞬きを返す。
それだけで先程の質問の答えを悟った。なるほど。レイジスは海には行ったことはない。なのになぜ『カキ』のことを知っていたんだ?

するとフォルスが私をじっと見つめ、ミュルス夫人もフォルスの服を握り眉を寄せ困惑している。何か思い当たることがあるのだろうか?

「フォル…」
「殿下。申し訳ありませんがこの先は人払いをお願いできますでしょうか?」

その声は淡々としているが「部外者に聞かせる話はない」と言っている。部外者とはもちろんシュルツとハーミットの事だろう。それに村の人間にも聞かせらない、となる。

「…シュルツ、ハーミット」
「はっ」

フォルスの言葉に眉を寄せたシュルツだが、素直に従う気はあるようで一礼をしてから部屋を出ていく。その後をハーミットが付いていき、アルシュも一礼をする。

「アルシュ君、ちょっと待ってくれる?」
「はい?」

呼び留めたのはミュルス夫人。

「ああ、ごめんなさいね。貴方にも知っていてほしいのよ。あの子の…レイジスのお友達として」
「とも、だち…ですか?」

確かにアルシュは私と共に一緒にユアソーン家へと遊びには行っていたが、それは私が巻き込んでいたからだ。だが、今思い出してみればアルシュにもきちんとおやつも用意されていた。
ということは、アルシュも友人扱いをされていたのだろう。
どうしましょう、という瞳を向けるアルシュに「いればいいと思うぞ」と返せば、困惑しながらも「では…」とフォルスへと向き直る。

「ふふっ、ごめんなさいね。でもとっても大切なことだから」

ほわんほわんとした独特な空気を持つミュルス夫人がのんびりとそう告げると、魔法陣を展開させる。何事かと驚くのも一瞬。
フォルスが「申し訳ございません」と頭を下げる。

「遮断の魔法を使わせていただきました」
「それほどまでに重要な話、か」
「はい。あの子の、レイジスに関する話は全て機密事項になりますので」
「全て?」

私の呟きにフォルスがこくりと頷く。
レイジスに関することが国家機密に匹敵するものだと言われ、眉を寄せれば「はい」とフォルスが硬い声色で返す。

「…それで。レイジスに関してだが」
「失礼します」

すると遮断魔法と共に部屋全体が黒い靄のようなものが包むと「幕をしておきませんと唇を読まれるかもしれませんからね」とフォルスが冗談めいた声色で告げる。なるほど。そこまでしなければならないことか。王宮辺りならもっと厳重になるだろう。

「さて、たびたびお話を中断させて申し訳ありません。レイジス、あの子のことですが…」
「ああ」

ようやく本題か、と内心溜息を吐く。

「あの子は恐らく先祖返りをしています」
「先祖返り?」

フォルスの言葉をそのまま返せば、こくりと頷く。アルシュをちらりと見ると、彼も同じく眉を寄せている。
どういうことだ?

「詳しくは話せませんが、我がユアソーン家は先祖返りをする者が現れやすいようなのです」
「どういう意味だ?」
「先程も申しました通り、詳しくは殿下でもお話できません。ですが先祖返りをしたものは突然気が触れることが報告されております」
「……………」

フォルスの突拍子のない言葉が理解できず、顎を掴むと「突然気が触れる」という言葉が重くのしかかる。

「…レイジスが突然錯乱したことはつまり」
「はい。先祖返りが原因かと思われます」
「ふむ」

フォルスの言うことが本当ならばそれはレイジスに当てはまる。だがなぜ先祖返りをしただけで気が触れるのだろうか。
普通ならば容姿に出るだけだと思っていたが。

「では気が触れる原因は?」
「…知識の流入、だと聞いております」
「知識の流入?」
「はい。どうやら私たちの知識では考えられないようなものを作ったり、知らないことを知っていたり、ですね」
「ああ…」

そこまで聞いて、思い当たることがありすぎることに苦笑いを思わず浮かべてしまう。アルシュも同じようにきっと苦笑いを浮かべているかもしれない。

「なるほど。すでにあの子はやらかしていましたか…」

私たちの表情を見て目元を押さえ天を仰ぐフォルスに口元を隠してくつくつと笑えば、ミュルス夫人が「あらあら、あの子はもう…」と笑っている。

「いや。レイジスの知識は楽しいものばかりだ。それに、うまい」
「うまい?」
「ああ。レイジスの作る料理はうまい」
「なるほど」

私の言葉に、フォルスは肩を竦める。その仕草にフォルスはそのことを既に知っていたようだ。

「先祖返りをすると食に関して異様な興味を示すと聞いてはおりましたが…」
「例えば?」
「『味が薄くて美味しくないから料理を作る』と」
「あっはっはっ!」

思わず声を上げて笑えば、アルシュもそっぽを向いて肩を震わせている。ミュルス夫人も口元を隠しくすくすと笑っている。

「確かにレイジスも言っていたな。『味が薄くてあまり食べられない』と」
「ああ…もう、あの子は…」

くっくっ、と肩を震わせながらそう言えば、フォルスは呆れたように頭を振る。
これでレイジスが先祖返りをしている事は確定した。あの錯乱状態もそれが原因だということも。
今のレイジスが『知識の流入』に耐え、ああやって元気になってくれただけでも奇跡なのだろう。

「だがレイジスは年齢よりも幼くなっているような気がしているのだが…」
「それは…それぞれなのでしょうね。ユアソーン家の血が流れている者が2人、過去先祖返りをしている者がおりますがどちらも年齢よりも大人びていると聞いておりますが…」
「レイジスの場合は逆だった、と」
「恐らくは」
「ふむ。ならば6年分甘やかしても問題はないようだな」
「フリードリヒ殿下…」

後ろから呆れたような声が聞こえるが、それに肩を竦めるとミュルス夫人も笑っている。
フォルスがなぜ錯乱したレイジスを見捨てなかったのかを知った私は、フォルスと同じくミュルス夫人もまた元に戻ると確信していたからだろう。それだけではない。レイジスに対する愛情が深く無ければできないことだ。
一度逃げ出した私とは大違いだ。

「アルシュ君も、ありがとう」
「いえ…。私は何も…」
「あら。あの子、フリードリヒ殿下とアルシュ君に会えた夜はいつも体調がよかったのよ」

うふふと笑うミュルス夫人に、アルシュは言葉を詰まらせる。アルシュも私に巻き込まれただけだと思っていたのだろう。だが、夫人のこの言葉にちゃんとレイジスもアルシュのことを友人として思っていたことに照れくさいのだろう。

「ああ、それとフリードリヒ殿下」
「うん? なんだ?」

ほのぼのとした空気の中、フォルスがニコニコしながら私に話しかける。

「殿下も恐らくはレイジスと同じですよ」
「うん?」

あまりにもさらりと言われた言葉に理解が追いつかない。今、フォルスはなんと言った?
ニコニコと笑っているフォルスとミュルス夫人。
その笑顔にぞくりと肌が粟立つと、笑みを浮かべていたフォルスがすっと笑みを消した。

「殿下。貴方もレイジスと同じく先祖返りをしている可能性が高いです」
「な、にを…?」
「その髪が何よりの証拠です」
「……………」

髪。その言葉にぎくりとする。
だがなぜフォルスが…一侯爵がそのようなことを知っているのだろうか。

「フォル…」

そのことを詳しく、と口を開いたところで黒い靄と遮蔽魔法が解除される。
どうやら詳しく話してくれる気はないらしい。アルシュも動揺しているのか、私を見つめている。

「この先は陛下にお聞きください。それでも分からない時は再び訪れていただければ」
「……………」

にこりと人好きな笑みを浮かべているフォルスはこれ以上話すことはない、と言っている。だがレイジスのことが知れただけでもよしとするしかない。
だが私が先祖返りをしているとしてなぜそれが使えることを知っているのか。ユアソーン家とは一体何なのか。
じっとフォルスを見つめれば、ニコニコとしているだけ。それに溜息を一つ吐くと、コンコン!とやや乱暴にドアがノックされる。

「なんだ」
「殿下!」

部屋に飛び込んできたのはハーミットとノア。

「ハーミットと…ノア? シュルツはどうした」
「そのことですが…」
「村の近くにコカトリスが襲来。リーシャとソルゾ、それにレイジス様が対応しております」
「な…っ?!」

ハーミットの報告にノアを見れば、硬い表情のままこくりと頷く。

「なぜレイジスを置いてきた!」
「――…っ! 申し訳ございません」

ノアに怒声をぶつければ、唇を噛んで頭を下げる。それにチッと舌打ちをすると、ハーミットが「落ち着いてください。殿下」と言うが、落ち着けるわけがない。ソルゾとアンギーユと戦闘をしたリーシャがいるのならば恐らくレイジスは安全だ。
だがそれは安全というだけで、万が一どちらかが怪我を負えば安全ではなくなる。
ぎりっと、つい爪を噛めば「殿下」と妙に冷静なアルシュが声をかけてきた。

「まずは話を聞いてみましょう」
「だが――!」
「殿下。アルシュ君の言う通りです。まずは報告を聞きましょう」
「……………。ノア、報告をするように」
「はっ」

フォルスに諭されるように言われてしまえばそうしなければならない気になってしまうのは、彼が元第一騎士団長だからなのだろう。
そうだ。落ち着け。
私が取り乱せば他の不安を煽ってしまう。
一度瞼を閉じ、すうと息を吸い、吐き出す。そして瞼を持ち上げれば随分と落ち着いた。

「ノア。なぜお前だけ戻ってきた」
「はっ。レイジス様の命により怪我人二名、うち一名を背負い診療所へと向かう途中、他の村人と共にコカトリス襲来を報せながら殿下にこのことをお伝えせよ、と」
「…そうか」

右手で作った拳を左の胸へと押し当て報告をするノアに、怒鳴ってしまったことを反省する。そうか…レイジスが。

「いかがいたしましょう」
「…村人の避難は?」
「シュルツが避難を呼びかけに走りましたゆえ、それは大丈夫かと」
「ならば私も行こう」
「殿下?!」
「リーシャにばかりいい所を見せられないからな」

そう少しだけ冗談めいて言えば、アルシュは肩を竦めハーミットは口角を持ち上げ、ノアは敬礼をやめ深々と頭を下げる。

「レイジス様の命とはいえ、あの方を危険な目に今もあわせております。申し訳ございません」
「レイジスがそう言ったのならお前に非はない。それに」

そこで一度言葉を切ると、私は肩を竦める。

「レイジスならそうするだろう」
「殿下」
「頭を上げろ。ノア」
「はっ」

命でようやく頭を上げたノアに近付き肩をぽんぽんと軽く叩く。

「レイジス達を助けに行くぞ」
「………っ! はい!」
「というわけでユアソーン侯爵。私はレイジスを助けに行くが…」
「私たちはここで怪我人の治療と避難に来た者達の対応をいたしましょう」
「…そなた達に任せておけば安心だな」

フォルスはこういった事態に慣れている。さすが元騎士団長というだけはあるな、と妙な安心感を覚えながらハーミットがフォルスと少し話をするということで、私たちは先に部屋から出ることにする。
学生の身である私がこういった事態に対しての知識がほとんどない為、力にはなれない。私に出来ることと言えば、この村を…レイジスを助けることだけだろう。

「殿下」
「早かったな」
「話が分かる方ですからね。それに、殿下が今にでも飛び出さんとしてますから」
「む」

にやにやと笑いながら告げるハーミットにアルシュとノアはなぜか笑みを浮かべている。ストッパーが来て助かったとも取れるそれに少しだけ気分を下げると「殿下」とハーミットが笑う。

「先に飛び出したシュルツが到着してますよ」
「…そうだな」
「ハルと侍女二名は子供たちや老人を安全な場所へと避難させております」
「そうか」

レイジスの友人であるハルに何かがあっては悲しんでしまう。それに侍女のこともそうだ。彼女たちに怪我でもあれば、レイジスは泣いてしまうかもしれない。
あの子は優しい子だから。
そんなレイジスが今リーシャとソルゾと共に危険であるコカトリスに対応している。彼自身怪我をしていないか心配だ。

「ところでノア」
「はい」

くるりと後ろを向きなぜか制服に土と泥を付けているノアに問う。

「なぜ土と泥を付けているんだ?」
「ああ…その、レイジス様が新たな食材を見つけられまして皆で集めていました」

こんな状況で言いにくそうにそう報告するノアに一瞬静かになる。だがハーミットが「ぶはっ」と吹き出したのを皮切りに、私も吹き出す。アルシュもなんとか耐えてはいるが吹き出すのは時間の問題だろう。

「実にレイジスらしいな」
「…あの方の食事に関する執念は恐ろしいものです」

冗談のつもりで言ったノアの言葉にフォルスの言葉が頭の中に蘇る。

『貴方もレイジスと同じく先祖返りをしている可能性が高いです』

「申し訳ございません。お言葉が過ぎました」
「いや。気にするな」

私が黙ってしまったのをノアは気分を害したと取ったようだが、そのことを悟らせるわけにもいかずノアには悪いが今はそうしてもらおう。
アルシュも笑みを浮かべてはいるがどことなくその表情は硬い。

「さて、おしゃべりはその辺にして走りますよ?」
「ああ。案内を頼む」

ハーミットがやはり空気を変えるとアルシュとノアが頷く。

「少し早めに走りますが…まぁ殿下達なら問題ないでしょう」
「それはなによりだ」

最近はあまり身体を動かすことをしていなかったからちょうどいい運動になりそうだ。
そんな私を見てハーミットがにやりと笑うと「では、行きますよ」と告げると走り出す。その背中を見ながら私たちも走り出した。


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