悪役令息に転生したのでそのまま悪役令息でいこうと思います

マンゴー山田

文字の大きさ
25 / 105
フーディ村編

急襲! コカトリス 後

しおりを挟む
※フリードリヒ視点になります。



逃げる村人から逆流して走る私たちに、すれ違いざまに情報を大なり小なり落としてくれるのはシュルツの指導のおかげだろうか。
学生の証である制服を着ていても、その制服が騎士科だと分っているからこうして何かしら近況を報せてくれる。
一ヶ月半ほど身体をあまり動かしていなかったのにも拘らず、息を上げずに動くこの身体に感謝せねば。
レイジス発案の料理を毎食食べているとどうも脂肪がつきやすくなる。そうしたのは骨と皮だけの身体をどうにかしたかった私のわがままなのだが。
だが野菜だけではなく肉もきちんとバランスよく食べるおかげがそこまで体重も増えた感覚はない。

「この先寒いのでお気をつけて!」

そう言いながら走っていく村人に頷くと「寒い?」とハーミットが小さく呟く。
確かに春先で少し肌寒い時もあるが村人の言う「寒い」とはどういう意味なのだろうか。
アルシュも眉を寄せているがとにかく行ってみないと分らない。ノアも怪我人を運び込んだ後の事は知らないだろう。
どういうことだ、と困惑している。
全員が疑問を抱きながら走り続けると、不意に冷気が頬に当る。
ピリッとした空気が進めば進むほどに強くなり、遂には息が完全に白くなった。冷たい空気を肺に入れると痛い。だが代わりに足は速くなる。
レイジスはどうなっているのか。リーシャは、ソルゾは。

ギィン!という剣戟の音が耳に届くと、ハーミットとアルシュが走る速さを上げながら剣を抜く。
そして狂ったように頭を動かすコカトリスが視界に入ると「えぶしゅ!」というなかなかに男らしいくしゃみが耳に入った。

「レイジス!」
「フリードリヒ殿下!」

私の姿を見た途端、ぱあっと表情が明るくなるレイジスにほっとすると同時にハンカチを取り出し、鼻をかませてやる。
この寒さの中どれだけいたのだろうか。耳も頬も赤くなっている。

「大丈夫か?」
「はい。寒さで蛇さんの動きを止めたらものすごく楽なので」
「うん?」

そういえば動いているのは鳥の部分だけ。厄介な蛇はきゅうと股の間に入りこみ動かない。
だから戦うといっても、突っつきを避けてはリーシャが水魔法を顔にかけて視界を奪っているだけだ。剣戟はリーシャに嘴が近付いた時に払うだけの物になっている。

「これは…?」
「えへへー。蛇さんが寒さに弱くて助かりましたー」

にぱっと鼻の頭を赤くして笑うレイジスに肩の力が抜けていく。
冷え切った身体を温めるようにその小さな身体を抱きしめれば「ほわぁ」と可愛らしい声が漏れる。それにくすりと笑えばふとその違和感に気付いた。

「レイジス? 髪はどうした?」
「ふえ? 髪ですか?」

ぱちりとグレープフルーツ・グリーン色が瞬き、きょとんとした表情が見上げてくる。
ブレス・オブ・スプリング色の腿まであった髪が今はなぜか腰の辺りまでしかない。しかも不揃いで。

「あー…もしかしたら避けきれなかったときにやられちゃったかもですね…」

そう言ってへらりと笑うレイジスの肩を掴み、どこか他に怪我はないかとざっと見れば魔法科特有のフードに大きな穴が開いている。
つまり。
ここにコカトリスの嘴が当ったということだ。
もう少し位置がずれていたらレイジスの頭に…。
その事実を見せつけられた瞬間、目の前が真っ赤に染まった。不揃いになった髪を持ち上げるとぎりっと奥歯を噛みしめる。
今すぐにでもコカトリスを私の手で殺してやりたい。そんな感情が腹の底から湧きあがる。

「あ、フリードリヒ殿下」
「――っ?! なんだ?」

だがレイジスの声にハッとすると、もぞもぞと身体を左右に動かし離れたがる動きに抱きしめていた腕を離せばどことなく険しい表情を浮かべている。
おや?

「ノアに怒ってませんよね?」
「……………」

じいっと見つめてくる瞳は「怒ったでしょう?」という確信の色が浮かんでいる。それにちらりとノアを見ればにっこりと笑っている。
…怒鳴ったことは事実だからな。

「んもう! ちゃんと最後まで話を聞いてから怒ってください!」
「悪かった。今度からちゃんと話を聞くから」
「絶対ですよ! ちゃんと聞かなくて怒ったら嫌いになっちゃいますからね!」

ぷんすこと一人怒るレイジスの言葉に、すうっと全身から血の気が引いた。
嫌われる。レイジスに嫌われる。
その言葉だけで私の身体は動かなくなる。
もしレイジスに嫌われてしまったら私はどうやって生きていけばいい? 一人レイジスの居ない生を過ごすなど考えられない。

「フリードリヒ殿下?」
「あ、ああ。すまない」
「顔色がよくないです。寒いですか?」

そう言ってそっと両手を伸ばし、まるで温めるように頬を包んでくれる手に詰まった息を吐き出す。
この小さな手がいつも私を生かしてくれる。
一度瞳を閉じて私とは違う温もりを全身で感じる。それだけで先程の絶望にも似た負の感情が消えていく。

ああ。やはりレイジスは…。

「大丈夫だ。ありがとう。レイジス」
「ホントですか? 気分が悪いならすぐに言ってくださいね?」

眉を寄せてオロオロしているレイジスは可愛い。それにふはっと笑えば「もう! 心配してるんですからね!」とまたしてもぷんすこと怒っている。それでも頬から手を離さないのはまだ顔色がよくないからだろう。

「それとフリードリヒ殿下」
「うん?」
「アルシュを貸してもらってもいいですか?」
「アルシュを?」

私の力ではなくアルシュの力が必要とは?という疑問が顔に出ていたのだろう。

「はい。ちょっと試したいことがあって」
「試す…ふむ。アルシュ!」

むふむふと笑っているレイジスの表情からしてリーシャやソルゾでは考えつかないことを思いついたのだろう。
突き攻撃を避けていたアルシュの名前を呼べば、すぐにこちらに向かって走ってくる。その間に「温かかったよ」とレイジスの手を名残惜しく離させると頭を撫でる。
どういたしましてと瞳を細めて笑うレイジスにほっこりとしていると「お呼びでしょうか。殿下」と剣を鞘へとしまう。

「レイジスがお前の力を貸してほしいそうだ」
「レイジス様が?」
「うん。アルシュって弓得意?」

わふわふとまるで子犬のように期待を込めた瞳にふっと思わず小さく笑えば「フリードリヒ殿下?」と首を傾げるレイジス。それがまた可愛くてつい頭を撫でれば「嬉しいですけど今はちょっと待ってほしいです」と言われてしまった。
それもそうか。コカトリスは人間たちにおちょくられている状態だが今は戦闘中なのだ。蛇がいないだけで難易度が一気に低くなったのも原因だろう。
怒り狂っては突くが避けられては水魔法で視界を奪われる。それをずっと繰り返しているのだ。
…なんだか可哀相になってくるな。
まさか魔物に同情をする日がこようとは…。

そんな事を思っていると、ちらりとアルシュの視線がこちらを向いた。なんだ?

「フリードリヒ殿下よりは腕は劣りますが」
「謙遜するな。弓の腕は私以上だ」
「よかった! 僕弓とか使ったことなかったから!」

ぱあっと花がほころぶような笑顔に、ついこちらもつられほわほわとしてしまう。
間違いなくミュルス夫人の血を引いているな。
というかレイジスに弓を与えたら、そもそも弦が引けないような気がして仕方がない。恐らくアルシュも同じことを思っているのだろう。ほわんほわんと和んでいるが、脳内ではレイジスが弦を引けずに首をひねっている事だろう。

「あと、水属性も大丈夫?」
「はい。水なら大丈夫です」
「よかった!じゃあちょっと弓を作るから待ってて!」

そう言ってふんすふんすと気合を入れるレイジスが少し離れていく。その間にアルシュがこそりと耳打ちをしてくる。

「コカトリスに普通の弓は効きませんでしたよね?」
「ああ。羽毛に阻まれて弓では討伐はできなかったはずだが…」

一体何をしようとしているのかが分からず、レイジスを見守ることにする。
すると両手で見えない何かを包むと、じいっとその空間を見つめている。そう言えば氷魔法を使っていながらだが大丈夫なのだろうか。
いくら魔力が多いからといっても倒れはしないだろうか。
はらはらとしながらレイジスがいつ倒れてもいい様にすす、とアルシュと共に近付くが集中しているレイジスは気付いていないようだ。

するとパキ、という聞きなれてしまった音が何もない空間から生まれる。そしてそれはパキ、ペキとまるで小枝を踏んだような音をたてながら形を作っていく。
そしてそれは直ぐに形になり氷の弓ができあがった。
だがリムの部分が透けているのは気のせいだろうか。
それに弦が張られていないがそれで完成なのだろう。ふうと小さな息を吐くと、レイジスがなぜかきょろきょろと辺りを見渡す。
ああ、私たちが移動したからな。

「それは?」
「はわぁ?!」

真後ろから声をかければ少し飛び上がったレイジスが「ビックリさせないでくださいよ!」とぷりぷりと怒る。
可愛い。
けれどすぐに氷でできた弓を見せると鼻をすするその鼻を、アルシュの差し出したハンカチでかませると「ありがとうございます」とえへへと笑う。
うん、鼻水を出していてもレイジスは可愛いな。

「さあ、早く終わらせて温かい飲み物でも頂こう」
「はい」

寒さで赤くなっている頬を撫でればアルシュがこほんと咳払いをする。分かっているからそう急かすな。

「レイジス様。弓は…ありますが矢は?」
「あ、うん。矢も氷で作るからちょっと待ってて」

あっけらかんとそう言うレイジスだが、魔法の具現化。更に言えば二属性を使い分けている魔法など見たことがない。
ここにリーシャがいれば発狂しそうだな。そういうリーシャは楽しそうに水魔法をかけてコカトリスと遊んでいるし、ソルゾはすでに魔力が切れたのかリタイア組と一緒にたき火を囲んでいる。

「はい! できました!」

まるで問題が解けたように告げるレイジスに苦笑いを浮かべると、その手には一本の氷の矢。
こちらは完全な氷の様で、真っ白だ。

「弦は…いかがなされますか?」
「弦は一応僕の魔力で作る予定だよ」
「……………」

もう意味が分からない。魔法の勉強をしているとはいえ、レイジスの言っている事は私の持ちうる知識ではありえないものばかりだ。
ソルゾとリーシャも頭を抱えそうな答えだが、レイジスがしたいようにさせる。どうせレイジスの常識外れの作戦は皆が知っているのだから。誤魔化すよりもその力を見せた方が早い。そしてそれを見て「癇癪持ちのわがまま」がどういう人間か知ってもらうのもいい。

「私の魔力はその…あまり高くないのですが…」
「弓の制御は僕がやるからアルシュは僕の手に重ねて矢を持ってくれる?」
「……………」

にぱりと笑うレイジスは可愛いがその言葉がいただけない。アルシュもにこやかに笑ったまま固まっている。

「…いい。許可を出そう」
「…あまり触れないようにいたします」
「ダメだよ! がっつり握って魔力を流してくれないと!」
「レイジス様…!」

それ以上は…!というアルシュの願い虚しくレイジスは「ちゃんと握ってくれなきゃダメ!」と告げている。
レイジスがしたいようにさせたい。分かっている。分かってはいるが…!

「何遊んでいらっしゃるんですか?!」
「ハーミット先生!」

白い息を吐きながら私たちの元へと来たハーミットがレイジスの手にしている氷と水の弓を見て眉を寄せた。
そう言えばハーミットは「ちょっとした」魔物オタクだったな。

「レイジス様。まさかコカトリスに弓を?」
「はい! これで頭をずどん!とやろうかと思いまして!」

天使のような可愛い顔をして言っている事は悪魔だ。

「…レイジス様。コカトリスに矢は効きませんよ?」
「そうなんですか?」
「はい。奴は分厚い羽毛に覆われていますから矢は通らないんです」
「じゃあこれでもダメなのかな…」

そう言ってハーミットに氷でできた矢を見せれば、その瞳が大きく見開かれ私に視線が突き刺さる。

「…レイジスが氷の魔法で作った矢だ。見ていたから間違いはない」
「魔法で作った矢…じゃああれは…」
「氷魔法と水魔法で作りました!」

やほーい!と告げるレイジスにハーミットが頭を抱える。
やはりそうなるよな…。
というか私とアルシュの知識は間違っていないことにほっとしたことは秘密だ。

「…具現化した魔法での矢はどうなるか俺にも分かりかねますよ」
「まぁ…気持ちは分らんでもない」

ハーミットの背中を慰めるようにぽん、と叩けば「なんであんなことできるんですか」と瞳が訴えているが私とて分らないのだ。
詳しく聞きたいのならばレイジスに聞け、と視線で返せば首を左右に振る。
まぁ…レイジスに聞いても理解はできなさそうだからな。それが正解だろう。

「それって誰もやったことがないってことですか?」
「…そもそも魔法の具現化なんて誰もやろうとは思いませんよ」
「ふぅーん…便利そうなのに」

意外だ、という表情をレイジスは浮かべているが魔導士の間でもそんなことをしようとするものはいないだろう。
ソルゾもリーシャも具現化など考えもしなかっただろうに、レイジスは我々の考えの遥か上の考えを持っているようだ。
これがフォルスの言う「知識の流入」なのだろう。

ふむ、とレイジスを見ていると「じゃあやってみよっか」とアルシュに近付いていく。
そして弓を持ち、矢を番うように腕を引くとぼんやりと発光した弦が引っ張られていることに気付いた。

「あれがレイジスの魔力か」
「は?!」

ハーミットの間の抜けた声を無視してレイジスが一度弓を構えると、その手に触れ同じように弓を構える。
しかし。

「―――っ?!」

バヂン!とまるで弦が切れたような音が聞こえ、アルシュが後退る。

「どうした?!」
「ごめん! ごめんね! 大丈夫?!」

矢を持っていた右手を抑え奥歯を噛みしめているアルシュの表情は痛みに耐えている。
泣きそうな表情で謝るレイジスからアルシュを隠すように身体を滑り込ませると、ハーミットがアルシュの様子を見てくれるようだ。
ハーミットならば全身が隠れる。
だが。

「だい、じょうぶですよ。レイジス様」
「でも…!」
「ああ。大丈夫ですよ。ちょっと掌を切ったみたいです」
「騎士科ではよくある怪我ですので」

そう告げるアルシュとハーミットだが、ぼたりぼたりと地面へと落ちる赤は決して少なくない。
それを見せないようにしながら動揺しているレイジスの両肩をそっと抱いてやれば、潤んだ瞳が揺らめいている。

「レイジス。アルシュは大丈夫だ」
「でも…でも…!」
「原因は分かるかい?」

無理矢理アルシュの怪我から意識を切り離すようにそう告げれば、視線をあちこち彷徨わせながらも震える唇を動かす。

「矢は…その硬くしようとして…。だから水じゃなくて闇属性…」
「ふむ。矢は闇属性ならば持てるんだね?」
「…はい、たぶん」

レイジスから出た『闇属性』という単語に少なからず私も動揺する。それは恐らくアルシュも同じだろう。
これは絶対に知られてはいけないことだと子供の頃から父上から言われ続けたことだ。だが、レイジスがいるのであればそれも怖くはない。

「レイジス」
「はい」
「闇属性ならいいんだね?」
「…はい」
「殿下!」

先程より少し落ち着いたのか、じっと私を見つめる瞳には確信に近い色が映る。
そして私が言わんとする事を察したアルシュが止めるが、それを振り払う。

「いけません! フリードリヒ殿下!」
「レイジス。私は闇属性を持っている」

その言葉にハーミットがひゅ、と息を飲んだ。
恐らく先程の言葉はこの場にいる者たち全員に聞こえているだろう。

だが私は後悔などないのだ。
そう。レイジスの力になれるのならば後悔などない。

「ほ…んとですか?」
「ああ。寧ろ闇属性が強くてね」
「あ…ならうまくいくかも…です」

どこかほっとしているレイジスとは対照的に動揺しているハーミット。それに「なぜそれを言ったのですか!」と鋭い視線で私を責めるアルシュ。
更には「嘘だろ…」という小さな呟きも聞こえるが、リーシャとノアは動かなくなった絶好の的達を守っている。

「それで?」
「えっと…矢を持って…弓は僕の手に重ねるように持ってください」
「分かった」

レイジスに言われるように矢を持った瞬間に闇が手を覆う。
なるほど。これは闇属性を持たないアルシュが怪我をするわけだ。
闇が強すぎて水属性などほとんどないに等しい。この闇の強さならリーシャでも怪我をしそうだ。

「はわー…。フリードリヒ殿下ってホントに闇属性が強いんですね」
「そうだな。私もこれほど強いとは思わなかった」
「むふふ」

素直にそう言えば、レイジスがくふくふと笑う。レイジスが笑っている。それだけで十分だ。
そしてレイジスの背後に回り、弓を持つ小さな手に手を重ねる。すると途端にレイジスの魔力が流れ、私の魔力も一気に吸い取られる。

「えと…弓のことはさっぱりなので調整があれば言ってください」
「そうだな。できればもう少し引きたいな」
「分かりました」

すると透けているリムが柔らかくなり、更に矢を引けるようになった。普段使っている弓と同じかそれ以上のいい弓だ。
レイジスのつむじを見つめながらそんなことを思っていると不意に振り向いた。
おや? どうしたんだい?
だがその瞳がグレープフルーツ・グリーンではなくもっと黄色く…いや虹色に近い色になっていることに驚く。

「あの、ちょっと高いので僕の身長だとこれ以上無理ですー!」
「あ、ああ。そうか。ならばしゃがんでみようか」

だが本人はそんなことなど気にしていないのかはたまた気付いていないのか普段通りだ。
しかし今はそんなことよりも弓の高さ調整が必要だ。なんせレイジスとの身長差はかなりあるのだから。
ゆっくりと二人でしゃがむと私の腿にレイジスが座り込む形になる。それについ笑えば、ぷくりと頬が膨らんだ。
瞳は未だ淡い光を放っているが、やはりレイジスは気付いていないようだ。
だが瞳のことが気になるが今はコカトリスだ。

「さて、矢を放つタイミングは私がやっていいのかな?」
「もちろんですよ!」

僕は添えるだけですから、と笑うレイジス。
ならば。

「リーシャ! ノア! 次の突きの後だ!」
「分かりました!」

それだけで理解してくれる二人に感謝をすると動かない的からこちら側へとさりげなく誘導をしてくれる。
ノアが剣で嘴を弾き、リーシャが何度目かの水魔法をかける。
そして怒った突きの瞬間、二人が後ろへと飛ぶとがら空きになったコカトリスの頭。
そこに向け矢を放てばそれは真っ直ぐ狙った通りに頭へと飛んでいき貫通する。
きっとコカトリスにとっては何が起きたのか分らないまま脳を破壊されたことだろう。貫通し飛び出した矢は光となり霧散した。

そしてどさりという音と共にコカトリスが倒れ、無事討伐が完了したことを報せる。
それに合わせてレイジスが吹雪のような氷魔法を解除すると同時にノアが寒さに縮み上がっていた蛇の頭を切り落とす。
討伐が終わると同時にシュルツとハーミット、それに村人たちの視線が突き刺さる。

「王族は…光魔法しか使えないはずでは?」

シュルツのその絞り出したような声に私は瞳を閉じるとレイジスの手を握ったまま口を開く。
瞳の色が元に戻り、きょとんとしているレイジスに「心配ないよ」と微笑みかければつられてにぱりと笑う。
その笑みを力に変えて私はシュルツを見つめると口を開く。

「私は光魔法を使えない」


しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する

SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する ☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

処理中です...