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海編
魔物って長生きすると皆そんなことできるの?
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「ここの者達は?」
「全員無事です」
「そうか」
ガラムヘルツ殿下がそれを聞いてほっとした表情を浮かべると、ようやく戦闘が終了したのだと思ったら一気に気が抜けた。
「ふにゃあ…」
「レイジス!」
フリードリヒに身体を預け「疲れましたぁ…」と言えば「頑張ったからね」と頭を撫でてくれる。ふふふー。ご褒美ー。
ごろごろとフリードリヒに甘えていると「お怪我は?」とストラウムの騎士さんが聞いてくれる。
「大丈夫ですよー」
「気が抜けただけだろう。大丈夫だ」
「分かりました」
それだけ告げて頭を下げてシュルスタイン皇子の元へと走って行く騎士さんだけど、レヴィアタンとタコさんを見てびくっとしてる。まぁおっきいからねー。
というか海水につかってなくても大丈夫なのかな?
「フリードリヒ殿下、フリードリヒ殿下」
「お腹空いた?」
「それもあるんですけど…。タコさん達海に入らなくて平気なのかな、と」
そう言ってちらっと二匹?を見れば“ワレワレノコトナラキニスルナ”と言われる。あ、じゃあ大丈夫なのかな?
ふよふよと浮いてるレヴィアタンとうねうねと足を動かしてるタコさん。僕からしたらどっちも可愛いんだけど、騎士さん達はそうじゃないみたい。
可愛いのにー。
するとスワリさんとカルモさんが走って僕たちの元へとやって来る。
ちょっとだけスワリさんの方が早いのは体力の差、なのかな?
「大丈夫か?!」
「ああ。怪我人はいないな」
「はぁ~…よかった…」
ふうふうと息を切らしてカルモさんが到着すると「怪我は…?」と同じを聞いてて「ふひっ」と笑えば「おお! 嬢ちゃん! ってお前さん…!」と動揺するスワリさん。
「ああ。お腹が空いているだけですよ。ね? レイジス?」
「はいー…。魔法いっぱい使ったからお腹空きましたー…」
頭を撫でられながらそう言えば「ぐうううぅぅ…」と控えめにお腹が鳴る。お腹空いたぁー。すりすりとフリードリヒの胸に顔を頬摺りをすれば「そうかそうか。腹減ってるだけか!」とがははと笑うスワリさん。それにほっとした様子のカルモさん。
“コノムラノオサハオマエカ”
そう言ってレヴィアタンがスワリさんではなく、カルモさんに向かって告げる。おん?
それにびくりと肩を震わせるカルモさん。まぁそうだよねー。っていうかレヴィアタンさん。カルモさんに言葉通じてませんよー。
「レヴィアタンさん、レヴィアタンさん」
“ナンダ?”
「僕たち普通に会話してるけど、スワリさん達には聞こえてませんよ?」
“ナン…ダト?!”
僕の言葉に驚いてるレヴィアタンさん。ってタコさんも足をあげて驚いてるー! 可愛いー!
はうはうとタコさんの驚く姿に癒されていると「もしかしたら…会話、できていらっしゃるのですか?」と恐る恐る話しかけてくるカルモさん。
「ああ。なぜか会話はできるな」
苦笑いをしているフリードリヒに「はぁ…」と告げるカルモさん。まぁ…魔物と会話なんか普通できないからねー。僕らは普通じゃないみたいだけど。
「どうしましょう? 通訳してもいいですけどラグがありますしねー…」
“フム。ソレハソレデメンドウダナ”
「え?」
“クラーケン、オマエモツキアエ”
“…ナゼワレマデ”
“ソノホウガベンリダカラナ”
そんな会話をしてるタコさんとレヴィアタンさん。え? なんか会話の端からちょっと期待しちゃう単語がちらほら出てるんだけど…。
“デハ”
「はわぁ?!」
レヴィアタンさんがくるっとその場で一回転するとその姿が変わる。
「ふむ。こんなものか…ってクラもやれよ」
“ワレハカンケイナクナイカ?”
「はーぁ? なに言ってんだよ。そう恥ずかしがるなって。こいつも見たいとさ」
そう言ってレヴィアタンさんが僕の方を見る。あれ? もしかしてばれてました?
「な?」というレヴィアタンさんに、こくこくと頷けば「ほら」とタコさん、もといクラさんが大きな溜息を吐いた。ほほう。面白いな。
“ナラシカタナイ”
「わーい!」
やったー!と喜ぶ僕に無い肩を竦めたクラさんがうにょーんと足で円を描くと、これまた姿が変わる。
というか二人ともイケメンだな。
「レヴィ、これでいいんだろう?」
「ああ」
どこか拗ねるようなクラさんにきゅーんとしながらはぁはぁしていると「レイジス、クッキーしかないけど食べるかい?」とフリードリヒに言われ、迷わず「食べる!」と言えばうさうさバッグの口を開いて可愛い包みを取りだしてくれる。そう言えばうさうさバッグの中にはお腹が空いた時用と、小腹がすいた時用の二つのおやつが入ってたことをすっかりと忘れていた。
リボンを解いて、浄化魔法で手を綺麗にしたフリードリヒがアーモンドクッキーを僕の前に差し出してくれる。
「はい、あーん」
「あーん!」
ぱくり!とそれを頬張り、むっむっと口を動かせば甘いけれどアーモンドがしっかりと味わえるクッキーにむふむふと鼻息を荒くする。おいしーい!
「はい、二枚目」
「あーん!」
そうやって食べさせてもらって五枚あったクッキーがお腹の中にしまわれると「ふむ」となにやらレヴィさんが僕たちをじっと見つめている。あ。そうだった。みんないたんだった。
「そなたはヴァルヘルムの血を受け継いでいる者だな?」
「ああ」
「なるほど。ならばアイツの事も知っているんだな?」
レヴィさんの言葉にあいつ?と首を傾げれば「ああ。黒いあいつだ」と笑う。黒いあいつってソルさんの事かな?
というかヴァルヘルムさんって誰なんだろう? 首を傾げて瞬きをすれば「ぐう」とお腹が鳴った。あ、まだ足りなかった。
「ふふっ。どこかでおやつを食べようか。レイジスはどこで食べたい?」
「んー…砂の上で食べたいですけど…風が吹くと大変なことになりますよね…」
海水浴に行って、荷物を開けっぱなしで違うことやってるとカバンの底に砂があったりするじゃない? あれちょっと悲しくなるよね。
それが食べ物とかだったら泣いちゃうもん。
しょん、と肩を落とせば「だったら」とスワリさんがくいっと親指で場所を指す。
「集会所を使え。それと何か作らせる」
「いいのか?」
「構わんさ。そんなに腹を鳴らされたらな」
そういってがはははと笑うスワリさんに村の人たちがうんうん、と頷いている。
「あんたたちは…」
「我も人の食べ物というのに興味がある」
「…レヴィは人の子を見たからだろう」
「じゃあ、みんなで食べよう?」
ね?とレヴィさんとクラさんに言えば「…そなたが言うなら」とクラさんが折れた。んんー?
「では案内を頼もうか」
フリードリヒのその言葉で僕たちはぞろぞろとさっきの集会所へと移動するのだった。
「はわぁ…落ち着くー…」
村の人たちが料理してる間、ちょびっとだけ見学をさせてもらってアサリのお味噌汁を作ってもらった。それから雷の矢でびりびりさせちゃったお魚さんをどうしようか、とレヴィさんとクラさんに言ったら「なら我が回収してこよう」と言ってくるりと円を指で描いた。するとどばぁ!とお魚さん達があふれ出てきて僕も村の人たちもびっくり!
それからお魚さんの種類ごとに分けて、直ぐに食べられるからとカルパッチョを作ってもらう。村の人たちは初めてだったようで「なるほど」とレシピを盗みながら作ってくれた。ドレッシングも簡単だからね! そんなことをしていると三枚おろしにしたお魚さんを一冊貰って漬けにする。どんぶり一杯にご飯を盛ってその上に漬けを乗せて、作ってもらったアサリのお味噌汁と一緒にいただきます!
むほー! おいしーい!
むしゃむしゃとまぐろとぶり漬けを掻っ込むように食べていると、フリードリヒの瞳が細くなる。む、これはとても楽しい表情だな!
ずずず…とお味噌汁を飲めば「ほわぁ…」と声が出ちゃう。お味噌汁って美味しいよねぇ…。
むふーと息を荒くさせながら丼を掻っ込んでいると、レヴィさんももぐもぐと頬を膨らませて食べている。クラさんは?と視線を向ければクラさんもおっかなびっくりしながらちまちまと食べている。一口食べてからはむしゃむしゃと食べているからクラさんはアルシュ達と同じだね!
ちなみにガラムヘルツ殿下もシュルスタイン皇子ももぐもぐと漬け丼を食べている。アルシュ達は後で食べるみたいだからおいしい漬けを作っておこう。フリードリヒも僕のほっぺについたご飯粒を時々取ってくれながら食べてくれる。
「生の魚は苦手だと思ったがこれはうまい」
「生臭さもあまりないな。レイジス、港町でこれと同じものを出してもいいか?」
「むふふー。気に入ってくださったのならどうぞー! あとでレシピをまとめておきますねー」
「ああ! 助かる!」
「ならうちも港町の料理として広めようか。このカルパッチョも一緒にね」
「わーい! 生魚さん一杯食べてくださいねー!」
むふふーと笑いながらそう言えばとレヴィさんとクラさんを見ればうんうんと頷いている。あ。そうだった。
「人の食べるものがこれほどうまいとは…」
「これだと魚を丸飲みしても味気なくて食べられそうないな」
うん、とお互い頷き合ってるレヴィさんとクラさん。お気に召されたらよかったです! でも海鮮はこんなものじゃないですからねー!
「これ食べたらお魚の加工品、作りましょうね!」
「加工品?」
「はい! ツナにかつおのたたきとかワカメとかテングサとかですね!」
「テングサ?」
「寒天っていってヘルシーだけどとってもおいしいスイーツが作れるんですよー」
「ほう?」
それに食い付いたのはレヴィさんとクラさん。二人は加工したものはほとんど食べてないからねー! 僕がいる間はこの村にいろんなレシピを残すぞー!
ふんす、と一人やる気を出したところでアサリの殻を捨てようとしているガラムヘルツ殿下に「殻は捨てちゃダメです! 殻は干して粉砕すれば石灰になって畑に撒けば肥料になりますから!」と力説すれば「ほう? そんな使い方があったのか」とシュルスタイン皇子が感心している。
「なら我らも殻は捨てずに人間たちの居る港?とやらに届ければよさそうだな」
「人の子よ。それでいいか?」
そう聞いているレヴィさんとクラさんにガラムヘルツ殿下もシュルスタイン皇子も「ぜひ」と頷いている。
「私の国は土が強いからね。作物が元気になるのは助かる」
「私のところは土地柄あまり作物が育たないからな。少しでも作物が育つなら」
ううーん…。それぞれのお国事情が出てきちゃったなぁ。
焼き魚さんを突きながら聞いてるけど、聞いちゃっててよかったのかなぁ?
「レイジス? お腹いっぱいになっちゃったかい?」
「ん? まだまだ入りますよー? 今度はイカさんとかタコさんが食べたいですー」
僕の「タコさんを食べる」発言にクラさんがびくりと肩を跳ねさせる。おわ?! ごめん!
「我を食うのか?」
「わわわ! ごめん! クラさん!」
ぷるぷると震えだしたクラさんに「ごめんなさーい!」と謝れば「イカなら食べてもいい」と言われてしまう。あ、イカさんはいいんだ。
「だが人の子よ。我を食うよりも我がそなたを食った方が早いと思わないか?」
「うん?」
それって僕をばりばり食べちゃうぞってこと?
「食べるならそっと優しく痛くないように食べてください…」
「レイジス!」
するとフリードリヒとガラムヘルツ殿下、シュルスタイン皇子が勢いよく立ち上がるとクラさんを睨んでいる。え? え? だって食べられちゃうのなら痛いの嫌だから一思いにって思っただけだよ?
「ああもう! なんだこのエロタコは!」
「? 我が何かしたか?」
「さぁ? 人間はよく分らないな」
「んぐっ! そっちの意味ではない…だと?!」
「だとしたら尚悪いわ!」
ぎゃーぎゃーと騒ぎ始めた王族三人をどうしたらいいのか分らずオロオロしていると「ごはんのお代わりは?」とおばちゃんに言われ「いただきます!」と元気よく返事をした所で「あ、これ食べたらいくらの醤油漬けとたらこ、それに塩辛の作り方後で教えますねー」と言えば「あらあら! それは楽しみだわ!」と微笑む。うんうん。どれも白いご飯にあうおかずだからね!
「お魚さん美味しい!」
「そう? こっちのお魚さんもどうぞ」
「わぁーい!」
おばちゃんとおいちゃんにお魚さんを出してもらいながら、騒ぐ王族を放置して僕はもぐもぐと白米を頬張るのだった。
お腹いっぱいご飯を食べて、村の人たちとレヴィさん、クラさんにまた明日来るからねってバイバイをして市場のおやっさんのお店に行く。結構遅くなっちゃったけど大丈夫かな?
なんて思ってたらおやっさんのお店はお魚さんが何もなかった。けどおやっさんの表情は明るい。おお?
「おやっさん!」
「おお! 嬢ちゃんか! 待ってたぞー!」
むふむふとおやっさんの表情が緩んでるってことはうまくいったのかな?
「氷の魔石を敷いたお魚さんはいい感じだったみたいだね!」
「ああ! あれはすごいな! 朝店に来たら四人ほど倒れてたけどな!」
「ああー…」
たぶん闇属性に耐性がない人たちが触ろうとしたんだろうな…。ご愁傷さまです。そっと手を合わせて「成仏してね」と言えば「まだ死んでねぇよ! 憲兵につき出したけどな!」と豪快に笑う。むふふ。人のものを勝手に取っちゃダメだからね!
そんなこんなで氷の魔石は明日も使ってもらうことに。明後日まで使ってもらってから次は学園まで氷の魔石を使って運んでもらうんだ! これでうまくいけば生のお魚さんが学園でも食べられる。貝もねー。でもカキとかは生でちゅるっと食べたいよねー。それとフグ! 毒があるけど光魔法でしょわっとさせれば問題はないからね! でも本当に早めに光魔法の魔石を作らないとフグで死人が出ちゃうね…。
何かいいヒントがあるといいんだけど。
ガラムヘルツ殿下とシュルスタイン皇子にも生のお魚さんをレシピと共に渡してとバイバイをする。
それからいつも通り僕の部屋で集合をしてお茶を飲んでまったりタイム。色々あって疲れちゃったけど、部屋に戻ってくると気が抜けちゃう。
お夜食のキャラメルナッツタルトをうまうま。今日はちょっとだけ頑張ったからお医者さんにも診てもらったけど「大丈夫ですよ。元気元気」と言ってもらえた。熱もないしね! でもこの部屋ちょっとだけ暑いね…。窓は開いてるけど気温が上がってるからかな? 何か冷やせればいいな…。これも宿題。
髪を解いてもらっていつものネグリジェ…今日は羊さんを着てまったーりとしているとぐにゃりと空間が渦巻いた。それに驚いていると、そこからにゅっと上半身が現れた。
「――――?!」
声にならない声をあげ、後ろ髪をびよっと逆立てるとフリードリヒが僕の手を引っ張って抱き締めてくれた。
そんな僕を見て、くすりと笑う。
「久しくはないが…久しいな、うさぎ」
「だからうさぎじゃないってばー!」
むかぷんちんとフリードリヒの腕の中で頬を膨らませてぷー!と怒れば、渦巻いたところから何かがぴょんと僕めがけて飛んでくる。
それを反射的に受け止めると「ばかうさぎ!」と元気な声が聞こえる。
「ばかうさぎ! 魔力くれ!」
「うん? なんで僕の魔力?」
「お腹空いた!」
「ええー?」
どういうことー?と思いながらも、マーハ君が僕の胸に頭を擦りつけると瞳を閉じる。ううーん…可愛い。
けどお腹空いたってどういうことなんだろう?
首を傾げながら「よっこらせ」と渦巻いた空間から出てきたソルさんが僕らをぐるっと見渡す。
「変わりないようだな」
「まぁ…そんなに日にち経ってないし、ね」
そう言うのはリーシャ。まぁあれからまだ三日くらいしか経ってないし。
「でもソルさん達はどうしてここに?」
ちゅうちゅうと親指を吸いながら寝てるマーハ君に「ふへっ」と笑うと「ああ。マーハの魔力調達と海が見たかったからな」とけろりと告げる。
マーハ君の魔力調達? 魔力足りないのかな?
よしよし、と赤ちゃんをあやすように身体を揺らすと、むにむにと口が動く。ほわぁ…可愛い。
「しかし急だな」
「ああ。マーハが寂しがってな。母親の魔力が恋しんだろう」
「母親じゃないですよー。確かにマーハ君の大半は僕の魔力でできてますが」
ぴょんこ、と出ているうさぎのお耳。それが可愛くてにへにへとしていると「そなた達、誰かと会ったか?」とソルさん聞いてくる。
誰かって…ガラムヘルツ殿下とシュルスタイン皇子。それにスワリさんとカルモさん。あとは…。
「レヴィさんとクラさんかな?」
「ふむ。レヴィアタンとクラーケンに会ったのか」
「何かあるのか?」
「いや。そうか。あやつらに会ったのか」
ふむ、と顎に手をかけて瞳を伏せるソルさん。ねむねむなマーハ君を抱いたままフリードリヒに促されてお膝に座れば、侍女さん達の頬がすっごい緩んでる。可愛いよねー。マーハ君。
ソルさんにお茶を用意してもらって皆に座ってもらうように言えば「ん? ああ」とどっかとソルさんが座る。
「明日、どこかへ出かけるのか?」
「村へ行く予定ですー」
「ふむ。なら我らも行こうか」
ふへ?!
ソルさんの言葉に驚けば「久しぶりにあやつらに会ってみたくなってな」と笑う。それにフリードリヒと顔を見合わせれば、お茶とお夜食のキャラメルナッツタルトがソルさんの前に置かれると手を合わせてから食べ始める。
ぷうぷうと眠るマーハ君を胸に抱いたまま、もぐもぐとお夜食を食べるソルさんをただ見つめることしかできなかった。
■■■
ここで出てきたソルさんとマーハ君は同人誌でひと悶着起こしております。
【簡単な紹介】
ソルさん→黒いユニコーン。人型である場所を守っている。
マーハ君→黒いうさぎ。レイジスに魔力で身体を復活させてもらった元亡きうさぎ。レイジスを「ばかうさぎ」と呼ぶのはレイジスが空気を読めなかったせいでこう呼ばれている。
「全員無事です」
「そうか」
ガラムヘルツ殿下がそれを聞いてほっとした表情を浮かべると、ようやく戦闘が終了したのだと思ったら一気に気が抜けた。
「ふにゃあ…」
「レイジス!」
フリードリヒに身体を預け「疲れましたぁ…」と言えば「頑張ったからね」と頭を撫でてくれる。ふふふー。ご褒美ー。
ごろごろとフリードリヒに甘えていると「お怪我は?」とストラウムの騎士さんが聞いてくれる。
「大丈夫ですよー」
「気が抜けただけだろう。大丈夫だ」
「分かりました」
それだけ告げて頭を下げてシュルスタイン皇子の元へと走って行く騎士さんだけど、レヴィアタンとタコさんを見てびくっとしてる。まぁおっきいからねー。
というか海水につかってなくても大丈夫なのかな?
「フリードリヒ殿下、フリードリヒ殿下」
「お腹空いた?」
「それもあるんですけど…。タコさん達海に入らなくて平気なのかな、と」
そう言ってちらっと二匹?を見れば“ワレワレノコトナラキニスルナ”と言われる。あ、じゃあ大丈夫なのかな?
ふよふよと浮いてるレヴィアタンとうねうねと足を動かしてるタコさん。僕からしたらどっちも可愛いんだけど、騎士さん達はそうじゃないみたい。
可愛いのにー。
するとスワリさんとカルモさんが走って僕たちの元へとやって来る。
ちょっとだけスワリさんの方が早いのは体力の差、なのかな?
「大丈夫か?!」
「ああ。怪我人はいないな」
「はぁ~…よかった…」
ふうふうと息を切らしてカルモさんが到着すると「怪我は…?」と同じを聞いてて「ふひっ」と笑えば「おお! 嬢ちゃん! ってお前さん…!」と動揺するスワリさん。
「ああ。お腹が空いているだけですよ。ね? レイジス?」
「はいー…。魔法いっぱい使ったからお腹空きましたー…」
頭を撫でられながらそう言えば「ぐうううぅぅ…」と控えめにお腹が鳴る。お腹空いたぁー。すりすりとフリードリヒの胸に顔を頬摺りをすれば「そうかそうか。腹減ってるだけか!」とがははと笑うスワリさん。それにほっとした様子のカルモさん。
“コノムラノオサハオマエカ”
そう言ってレヴィアタンがスワリさんではなく、カルモさんに向かって告げる。おん?
それにびくりと肩を震わせるカルモさん。まぁそうだよねー。っていうかレヴィアタンさん。カルモさんに言葉通じてませんよー。
「レヴィアタンさん、レヴィアタンさん」
“ナンダ?”
「僕たち普通に会話してるけど、スワリさん達には聞こえてませんよ?」
“ナン…ダト?!”
僕の言葉に驚いてるレヴィアタンさん。ってタコさんも足をあげて驚いてるー! 可愛いー!
はうはうとタコさんの驚く姿に癒されていると「もしかしたら…会話、できていらっしゃるのですか?」と恐る恐る話しかけてくるカルモさん。
「ああ。なぜか会話はできるな」
苦笑いをしているフリードリヒに「はぁ…」と告げるカルモさん。まぁ…魔物と会話なんか普通できないからねー。僕らは普通じゃないみたいだけど。
「どうしましょう? 通訳してもいいですけどラグがありますしねー…」
“フム。ソレハソレデメンドウダナ”
「え?」
“クラーケン、オマエモツキアエ”
“…ナゼワレマデ”
“ソノホウガベンリダカラナ”
そんな会話をしてるタコさんとレヴィアタンさん。え? なんか会話の端からちょっと期待しちゃう単語がちらほら出てるんだけど…。
“デハ”
「はわぁ?!」
レヴィアタンさんがくるっとその場で一回転するとその姿が変わる。
「ふむ。こんなものか…ってクラもやれよ」
“ワレハカンケイナクナイカ?”
「はーぁ? なに言ってんだよ。そう恥ずかしがるなって。こいつも見たいとさ」
そう言ってレヴィアタンさんが僕の方を見る。あれ? もしかしてばれてました?
「な?」というレヴィアタンさんに、こくこくと頷けば「ほら」とタコさん、もといクラさんが大きな溜息を吐いた。ほほう。面白いな。
“ナラシカタナイ”
「わーい!」
やったー!と喜ぶ僕に無い肩を竦めたクラさんがうにょーんと足で円を描くと、これまた姿が変わる。
というか二人ともイケメンだな。
「レヴィ、これでいいんだろう?」
「ああ」
どこか拗ねるようなクラさんにきゅーんとしながらはぁはぁしていると「レイジス、クッキーしかないけど食べるかい?」とフリードリヒに言われ、迷わず「食べる!」と言えばうさうさバッグの口を開いて可愛い包みを取りだしてくれる。そう言えばうさうさバッグの中にはお腹が空いた時用と、小腹がすいた時用の二つのおやつが入ってたことをすっかりと忘れていた。
リボンを解いて、浄化魔法で手を綺麗にしたフリードリヒがアーモンドクッキーを僕の前に差し出してくれる。
「はい、あーん」
「あーん!」
ぱくり!とそれを頬張り、むっむっと口を動かせば甘いけれどアーモンドがしっかりと味わえるクッキーにむふむふと鼻息を荒くする。おいしーい!
「はい、二枚目」
「あーん!」
そうやって食べさせてもらって五枚あったクッキーがお腹の中にしまわれると「ふむ」となにやらレヴィさんが僕たちをじっと見つめている。あ。そうだった。みんないたんだった。
「そなたはヴァルヘルムの血を受け継いでいる者だな?」
「ああ」
「なるほど。ならばアイツの事も知っているんだな?」
レヴィさんの言葉にあいつ?と首を傾げれば「ああ。黒いあいつだ」と笑う。黒いあいつってソルさんの事かな?
というかヴァルヘルムさんって誰なんだろう? 首を傾げて瞬きをすれば「ぐう」とお腹が鳴った。あ、まだ足りなかった。
「ふふっ。どこかでおやつを食べようか。レイジスはどこで食べたい?」
「んー…砂の上で食べたいですけど…風が吹くと大変なことになりますよね…」
海水浴に行って、荷物を開けっぱなしで違うことやってるとカバンの底に砂があったりするじゃない? あれちょっと悲しくなるよね。
それが食べ物とかだったら泣いちゃうもん。
しょん、と肩を落とせば「だったら」とスワリさんがくいっと親指で場所を指す。
「集会所を使え。それと何か作らせる」
「いいのか?」
「構わんさ。そんなに腹を鳴らされたらな」
そういってがはははと笑うスワリさんに村の人たちがうんうん、と頷いている。
「あんたたちは…」
「我も人の食べ物というのに興味がある」
「…レヴィは人の子を見たからだろう」
「じゃあ、みんなで食べよう?」
ね?とレヴィさんとクラさんに言えば「…そなたが言うなら」とクラさんが折れた。んんー?
「では案内を頼もうか」
フリードリヒのその言葉で僕たちはぞろぞろとさっきの集会所へと移動するのだった。
「はわぁ…落ち着くー…」
村の人たちが料理してる間、ちょびっとだけ見学をさせてもらってアサリのお味噌汁を作ってもらった。それから雷の矢でびりびりさせちゃったお魚さんをどうしようか、とレヴィさんとクラさんに言ったら「なら我が回収してこよう」と言ってくるりと円を指で描いた。するとどばぁ!とお魚さん達があふれ出てきて僕も村の人たちもびっくり!
それからお魚さんの種類ごとに分けて、直ぐに食べられるからとカルパッチョを作ってもらう。村の人たちは初めてだったようで「なるほど」とレシピを盗みながら作ってくれた。ドレッシングも簡単だからね! そんなことをしていると三枚おろしにしたお魚さんを一冊貰って漬けにする。どんぶり一杯にご飯を盛ってその上に漬けを乗せて、作ってもらったアサリのお味噌汁と一緒にいただきます!
むほー! おいしーい!
むしゃむしゃとまぐろとぶり漬けを掻っ込むように食べていると、フリードリヒの瞳が細くなる。む、これはとても楽しい表情だな!
ずずず…とお味噌汁を飲めば「ほわぁ…」と声が出ちゃう。お味噌汁って美味しいよねぇ…。
むふーと息を荒くさせながら丼を掻っ込んでいると、レヴィさんももぐもぐと頬を膨らませて食べている。クラさんは?と視線を向ければクラさんもおっかなびっくりしながらちまちまと食べている。一口食べてからはむしゃむしゃと食べているからクラさんはアルシュ達と同じだね!
ちなみにガラムヘルツ殿下もシュルスタイン皇子ももぐもぐと漬け丼を食べている。アルシュ達は後で食べるみたいだからおいしい漬けを作っておこう。フリードリヒも僕のほっぺについたご飯粒を時々取ってくれながら食べてくれる。
「生の魚は苦手だと思ったがこれはうまい」
「生臭さもあまりないな。レイジス、港町でこれと同じものを出してもいいか?」
「むふふー。気に入ってくださったのならどうぞー! あとでレシピをまとめておきますねー」
「ああ! 助かる!」
「ならうちも港町の料理として広めようか。このカルパッチョも一緒にね」
「わーい! 生魚さん一杯食べてくださいねー!」
むふふーと笑いながらそう言えばとレヴィさんとクラさんを見ればうんうんと頷いている。あ。そうだった。
「人の食べるものがこれほどうまいとは…」
「これだと魚を丸飲みしても味気なくて食べられそうないな」
うん、とお互い頷き合ってるレヴィさんとクラさん。お気に召されたらよかったです! でも海鮮はこんなものじゃないですからねー!
「これ食べたらお魚の加工品、作りましょうね!」
「加工品?」
「はい! ツナにかつおのたたきとかワカメとかテングサとかですね!」
「テングサ?」
「寒天っていってヘルシーだけどとってもおいしいスイーツが作れるんですよー」
「ほう?」
それに食い付いたのはレヴィさんとクラさん。二人は加工したものはほとんど食べてないからねー! 僕がいる間はこの村にいろんなレシピを残すぞー!
ふんす、と一人やる気を出したところでアサリの殻を捨てようとしているガラムヘルツ殿下に「殻は捨てちゃダメです! 殻は干して粉砕すれば石灰になって畑に撒けば肥料になりますから!」と力説すれば「ほう? そんな使い方があったのか」とシュルスタイン皇子が感心している。
「なら我らも殻は捨てずに人間たちの居る港?とやらに届ければよさそうだな」
「人の子よ。それでいいか?」
そう聞いているレヴィさんとクラさんにガラムヘルツ殿下もシュルスタイン皇子も「ぜひ」と頷いている。
「私の国は土が強いからね。作物が元気になるのは助かる」
「私のところは土地柄あまり作物が育たないからな。少しでも作物が育つなら」
ううーん…。それぞれのお国事情が出てきちゃったなぁ。
焼き魚さんを突きながら聞いてるけど、聞いちゃっててよかったのかなぁ?
「レイジス? お腹いっぱいになっちゃったかい?」
「ん? まだまだ入りますよー? 今度はイカさんとかタコさんが食べたいですー」
僕の「タコさんを食べる」発言にクラさんがびくりと肩を跳ねさせる。おわ?! ごめん!
「我を食うのか?」
「わわわ! ごめん! クラさん!」
ぷるぷると震えだしたクラさんに「ごめんなさーい!」と謝れば「イカなら食べてもいい」と言われてしまう。あ、イカさんはいいんだ。
「だが人の子よ。我を食うよりも我がそなたを食った方が早いと思わないか?」
「うん?」
それって僕をばりばり食べちゃうぞってこと?
「食べるならそっと優しく痛くないように食べてください…」
「レイジス!」
するとフリードリヒとガラムヘルツ殿下、シュルスタイン皇子が勢いよく立ち上がるとクラさんを睨んでいる。え? え? だって食べられちゃうのなら痛いの嫌だから一思いにって思っただけだよ?
「ああもう! なんだこのエロタコは!」
「? 我が何かしたか?」
「さぁ? 人間はよく分らないな」
「んぐっ! そっちの意味ではない…だと?!」
「だとしたら尚悪いわ!」
ぎゃーぎゃーと騒ぎ始めた王族三人をどうしたらいいのか分らずオロオロしていると「ごはんのお代わりは?」とおばちゃんに言われ「いただきます!」と元気よく返事をした所で「あ、これ食べたらいくらの醤油漬けとたらこ、それに塩辛の作り方後で教えますねー」と言えば「あらあら! それは楽しみだわ!」と微笑む。うんうん。どれも白いご飯にあうおかずだからね!
「お魚さん美味しい!」
「そう? こっちのお魚さんもどうぞ」
「わぁーい!」
おばちゃんとおいちゃんにお魚さんを出してもらいながら、騒ぐ王族を放置して僕はもぐもぐと白米を頬張るのだった。
お腹いっぱいご飯を食べて、村の人たちとレヴィさん、クラさんにまた明日来るからねってバイバイをして市場のおやっさんのお店に行く。結構遅くなっちゃったけど大丈夫かな?
なんて思ってたらおやっさんのお店はお魚さんが何もなかった。けどおやっさんの表情は明るい。おお?
「おやっさん!」
「おお! 嬢ちゃんか! 待ってたぞー!」
むふむふとおやっさんの表情が緩んでるってことはうまくいったのかな?
「氷の魔石を敷いたお魚さんはいい感じだったみたいだね!」
「ああ! あれはすごいな! 朝店に来たら四人ほど倒れてたけどな!」
「ああー…」
たぶん闇属性に耐性がない人たちが触ろうとしたんだろうな…。ご愁傷さまです。そっと手を合わせて「成仏してね」と言えば「まだ死んでねぇよ! 憲兵につき出したけどな!」と豪快に笑う。むふふ。人のものを勝手に取っちゃダメだからね!
そんなこんなで氷の魔石は明日も使ってもらうことに。明後日まで使ってもらってから次は学園まで氷の魔石を使って運んでもらうんだ! これでうまくいけば生のお魚さんが学園でも食べられる。貝もねー。でもカキとかは生でちゅるっと食べたいよねー。それとフグ! 毒があるけど光魔法でしょわっとさせれば問題はないからね! でも本当に早めに光魔法の魔石を作らないとフグで死人が出ちゃうね…。
何かいいヒントがあるといいんだけど。
ガラムヘルツ殿下とシュルスタイン皇子にも生のお魚さんをレシピと共に渡してとバイバイをする。
それからいつも通り僕の部屋で集合をしてお茶を飲んでまったりタイム。色々あって疲れちゃったけど、部屋に戻ってくると気が抜けちゃう。
お夜食のキャラメルナッツタルトをうまうま。今日はちょっとだけ頑張ったからお医者さんにも診てもらったけど「大丈夫ですよ。元気元気」と言ってもらえた。熱もないしね! でもこの部屋ちょっとだけ暑いね…。窓は開いてるけど気温が上がってるからかな? 何か冷やせればいいな…。これも宿題。
髪を解いてもらっていつものネグリジェ…今日は羊さんを着てまったーりとしているとぐにゃりと空間が渦巻いた。それに驚いていると、そこからにゅっと上半身が現れた。
「――――?!」
声にならない声をあげ、後ろ髪をびよっと逆立てるとフリードリヒが僕の手を引っ張って抱き締めてくれた。
そんな僕を見て、くすりと笑う。
「久しくはないが…久しいな、うさぎ」
「だからうさぎじゃないってばー!」
むかぷんちんとフリードリヒの腕の中で頬を膨らませてぷー!と怒れば、渦巻いたところから何かがぴょんと僕めがけて飛んでくる。
それを反射的に受け止めると「ばかうさぎ!」と元気な声が聞こえる。
「ばかうさぎ! 魔力くれ!」
「うん? なんで僕の魔力?」
「お腹空いた!」
「ええー?」
どういうことー?と思いながらも、マーハ君が僕の胸に頭を擦りつけると瞳を閉じる。ううーん…可愛い。
けどお腹空いたってどういうことなんだろう?
首を傾げながら「よっこらせ」と渦巻いた空間から出てきたソルさんが僕らをぐるっと見渡す。
「変わりないようだな」
「まぁ…そんなに日にち経ってないし、ね」
そう言うのはリーシャ。まぁあれからまだ三日くらいしか経ってないし。
「でもソルさん達はどうしてここに?」
ちゅうちゅうと親指を吸いながら寝てるマーハ君に「ふへっ」と笑うと「ああ。マーハの魔力調達と海が見たかったからな」とけろりと告げる。
マーハ君の魔力調達? 魔力足りないのかな?
よしよし、と赤ちゃんをあやすように身体を揺らすと、むにむにと口が動く。ほわぁ…可愛い。
「しかし急だな」
「ああ。マーハが寂しがってな。母親の魔力が恋しんだろう」
「母親じゃないですよー。確かにマーハ君の大半は僕の魔力でできてますが」
ぴょんこ、と出ているうさぎのお耳。それが可愛くてにへにへとしていると「そなた達、誰かと会ったか?」とソルさん聞いてくる。
誰かって…ガラムヘルツ殿下とシュルスタイン皇子。それにスワリさんとカルモさん。あとは…。
「レヴィさんとクラさんかな?」
「ふむ。レヴィアタンとクラーケンに会ったのか」
「何かあるのか?」
「いや。そうか。あやつらに会ったのか」
ふむ、と顎に手をかけて瞳を伏せるソルさん。ねむねむなマーハ君を抱いたままフリードリヒに促されてお膝に座れば、侍女さん達の頬がすっごい緩んでる。可愛いよねー。マーハ君。
ソルさんにお茶を用意してもらって皆に座ってもらうように言えば「ん? ああ」とどっかとソルさんが座る。
「明日、どこかへ出かけるのか?」
「村へ行く予定ですー」
「ふむ。なら我らも行こうか」
ふへ?!
ソルさんの言葉に驚けば「久しぶりにあやつらに会ってみたくなってな」と笑う。それにフリードリヒと顔を見合わせれば、お茶とお夜食のキャラメルナッツタルトがソルさんの前に置かれると手を合わせてから食べ始める。
ぷうぷうと眠るマーハ君を胸に抱いたまま、もぐもぐとお夜食を食べるソルさんをただ見つめることしかできなかった。
■■■
ここで出てきたソルさんとマーハ君は同人誌でひと悶着起こしております。
【簡単な紹介】
ソルさん→黒いユニコーン。人型である場所を守っている。
マーハ君→黒いうさぎ。レイジスに魔力で身体を復活させてもらった元亡きうさぎ。レイジスを「ばかうさぎ」と呼ぶのはレイジスが空気を読めなかったせいでこう呼ばれている。
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