悪役令息に転生したのでそのまま悪役令息でいこうと思います

マンゴー山田

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海編

氷魔法の使い手が増えたよ!

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ガラムヘルツ殿下とシュルスタイン皇子がマーハ君に呼ばれていったと思ったら、なぜか騎士さんたちが戻ってきた。おろろ? どうしたんですか?

「えと?」
「…レイジス様をお守りせよとの命を受け、レイジス様の護衛をさせていただきます」
「はい?」

ええー。ガラムヘルツ殿下もシュルスタイン皇子も何してんのー?! ほらー! 騎士さん達すっごい悔しそうじゃんー!

「えと…えと…」
「なら少し借りようか。レイジス。それでいいね?」
「はい。僕はそれで…」

いいですけど、と言えば落ち込んでる騎士さん達におろおろとしてしまう。
どうしよう、ときょろきょろとしているとマーハ君がぴょいんと僕の背中に張り付いた。
うえ?!

「うさぎ! 遊べ!」
「にゃあー! 痛いー!」

ぐいぐいと後ろ髪を引っ張られて涙目になる僕。痛いから髪の毛引っ張らないでー!
でも相手はマーハ君。ううう! 怒ることができない僕は痛みに耐えているとそれが急になくなった。
はえ?

「うにゅ?!」
「こら」
「ぎー!」

僕の髪を引っ張るマーハ君をフリードリヒがひょいっと持ち上げ腕に座らせると「髪を引っ張てはダメだぞ」と叱っている。ほわ。
フリードリヒの意外な一面。それを見た僕はぼぼっと頬が熱くなるのを感じ、慌てて両手で頬を冷やすけど顔はますます熱くなって。胸がきゅんきゅんとする。
フ…フリードリヒがお父さんになったらこんな感じなんだろうな…なんて思ったらきゅーん!と胸が締め付けられて。
でも僕はフリードリヒの子供は産めないからね。だからこんな顔は今後見ることができないかもしれない。
そんな事を思ってると、熱くなった頬が一気に冷めていく。

「レイジス?」
「―――ッ?! 何でも…」

ないです、って言おうとして顔を上げたらぎょっとした。

「マーハ君?!」
「ぎぎぎー!」
「髪が少なくならなければいいな」

ぎー!と言いながらフリードリヒの髪を引っ張りながらガジガジと頭に噛み付いてるマーハ君。

「まままままマーハ君?!」

なにしてんの?!と驚くと周りの騎士さん達もオロオロしている。アルシュ達もどうしたらいいのか分からずオロオロしてるし、ノアに至っては非常に楽しそうににこにことしている。
あ、止める気がない。

「ぎー! ぎー!」
「ふむ。将来子供ができたらこんな風に遊ぶのも楽しそうだな」
「じゃなくて! マーハ君!」
「ぶー!」
「ぶーじゃない!」

フリードリヒの頭にしがみついてるマーハ君の身体を引き剥がして腕に抱き締めると「ぎぎぎ」と歯を剥いている。怒ってるな。

「ソルと同じ匂い! ヤダ!」
「ええええー? ソルさんと一緒の匂いってどういうことなのー?」

マーハ君の言いたいことが分からなすぎて困惑する。それでも短い両手をばたばたと上下に動かして「ぎーぎー」と鳴いている。
ううー。落ち着いてー。マーハ君! 落ちちゃう落ちちゃう!

「レイジス様、ちょいと貸してもらってもいいですか?」
「うえ?」

ひょいっとマーハ君の身体を持ち上げるハーミット先生。ううん? どうしました?
いたた、と引っ掻かれた腕を擦っていると、ハーミット先生がぽすんとマーハ君の身体をそのまま肩に乗せる。
おお? 肩車だー!

「ぎぎぎー!」
「はっはっ! 怖いか?」
「怖くない! バカにするな!」
「そうかそうか。ならしばらくこのままでいろよ?」
「ぎー!」

むっむっと髪を引っ張ってるマーハ君だけどハーミット先生はにこにこしてる。

「ぎぎぎー!」
「おう。落ちるなよ?」

両手で小さな足を掴んで落とさないようにしてるハーミット先生。はわぁ。周りもにこにこだぁ。
ハーミット先生とマーハ君を見てる僕にそっとフリードリヒが「腕は大丈夫かい?」と聞いてくれる。

「あ、フリードリヒ殿下も大丈夫でしたか?」

頭に手を翳して治癒魔法をかければ「レイジスも」と言われてしまった。ううう。やっぱり気付かれてますよねー…。
しょわっと僕にも治癒魔法をかけて引っ掻かれたところを治す。

「それにしても…マーハの噛み癖は治らないのか?」
「ううーん…もしかしたら歯が痒い…のかな?」
「歯が痒い?」
「はい。うさぎさんって歯が痒くなると色んなものをがじがじするんですよ」
「へぇ」

そう言いながらマーハ君を見つめるその視線は柔らかい。フリードリヒも頭がじがじされたんですけどねー。

「それでですが…」
「あっ! すみません!」

そうだった! マーハ君が王子様二人を呼びに来て、なぜか頭をがじがじし始めたフリードリヒを見て固まっちゃったんだよねー。
今日は村の人たちにレシピを教えに来たんだけど。
でもね。マーハ君のやんちゃぶりを見てにこにこしてるんだよねー。まるで近所の子供を見守るような優しい笑みを湛えて…。
お菓子があったら絶対両手で持ち切れないほど貰うんだろうなー。ちっちゃな手に一杯お菓子を貰ってわたわたしてるマーハ君を想像してほんわかとする。

「っは! マーハ君は可愛いけど、早めにお魚さんのお腹掻っ捌かないと!」
「レイジスは時々物騒なことを言うね」

よしよしとフリードリヒに頭を撫でてもらう。んふー。

「じゃあお魚のお腹を掻っ捌きに行こうか」
「はい!」
「フリードリヒ殿下が言われると洒落にならないんですよね…」

そうぽそりと告げるアルシュにノアとリーシャ、それにソルゾ先生がこくりと頷く。あー…まぁねー。王族だからねー。
そんなこんなでソルさんとガラムヘルツ殿下、シュルスタイン皇子が見える場所で作業することに。と言ったら集会所を紹介された。あそこ便利ねー。
と、言うわけで騎士さん達は集会所の外で待機。暑いから気分悪くなったら言ってねー!

「それで? 何を作るんだい?」

わくわくと瞳を輝かすおばちゃん達に僕は「まずはいくらの醤油漬け作りましょー」と告げるのだった。



「ガラムヘルツ殿下もシュルスタイン皇子もお口に合いましたか?」

あれから今朝獲れたサーモンのお腹をおばちゃん達が素晴らしい速さと技術で掻っ捌いていった。しゅごーい!とぱちぱちと手を叩けば、マーハ君もぱちぱちと手を叩く。むふふ。
それとタラのお腹も一緒に捌いてもらって水魔法で綺麗にしていく。余った身は塩じゃけや生でいただく。売り物にするのなら塩じゃけがベスト、かな? 日持ちするし。
それでも氷魔法が必要だよねーと思ってたけどここでふとこの世界は夏、どうしてるんだろう?という疑問が降ってわいた。
それをフリードリヒに聞けば「暑すぎる日は水の近くにいるかな?」と答えてくれた。水…川の近くとか涼しいもんねー。と思っているとそうか!とうさうさバッグの中に手を突っ込む。そして使ってない魔石を取りだすと水魔法を入れる。

「レイジス?」
「氷だと強すぎるから水魔法と少しの闇魔法ならいけるかなって」
「ふむ?」

そう言いながら僕が作った水の魔石を手にするフリードリヒ。それをくるくると色々な角度で見てるけど楽しい?
それを木箱に入れて蓋をすれば冷蔵庫っぽい温度になるんじゃないかなって。そうすれば冷凍庫の改良もうまくいくと思うんだ!

いくらの醤油漬けを作って瓶を光魔法で消毒。そこにいくらと醤油とお酒とみりんを混ぜたものを入れて蓋をする。木箱へと作ったそれを並べて半日ほど放置。たらの卵も塩漬けにしてたらこに。
お腹を掻っ捌いた、たらは今日のお昼ご飯!
ムニエルにしてみんなでおいしくいただくことに。それにお味噌汁とおばちゃん達にお願いして殻をむき、背ワタを取ってもらったエビは天ぷらに。ぐぐぐー。お腹なっちゃう!
お野菜も天ぷらにして、アンギーユ丼で作ったタレをかけてもいいし、お出汁につけてもおいしい。
小さなお魚さんは塩ゆでしてかき揚げに。絶対おいしいやつ。

ワイワイと準備をしてもみんなはそれぞれの場所で食べちゃうみたい。寂しい…。
でも今日はスワリさんとカルモさんが一緒なのだ! わーい!

今日のお味噌汁はなんとあおさ! 油は危ないからっておばちゃん達に火の元から離されてふらーっと海岸に来た時に見つけたんだ。「わっほー!」と岩についてるあおさを夢中で毟る僕に「だから! 殿下の婚約者!」とリーシャが僕の頭をすぱーんと叩いた。
それにきゃっきゃと喜んだのはマーハ君。ううう…酷いー…。
それから僕の様子を見に来てくれたおっちゃん達にもぎょっとされたけどね! ミントはいいけどあおさはダメなの?

「岩のりとかも取りたいのに…」
「だから! 貴族が! のりとか毟ってたら! ダメなんですって!」

ぶぶーと頬を膨らませて「不満です」って言ってみたら、おっちゃん達が代わりに取ってくれた。おっちゃん達も気になってたけど何か分らなくて放置してたんだって。
よし! 岩のりで佃煮作ろう! 白米のお供だよ!
とまぁこんな感じで「あんたたち! ご飯だよ!」っていうおばちゃんの声に「わーい!」と声を上げれば、ソルさん達も話しが終わったのか僕たちの方へ歩いてくる。
そこで合流して皆で集会所へ。

僕が座るところには丼がちょーんと置かれていてにっこりと笑えば「あんたはよく食べるからね」とおばちゃんに言われてしまった。ありがとー!
揚げたての天ぷらやかき揚げ、それにムニエルを取り分けてもらっていただきまーす!

さっくりとした天ぷらはほっぺが落ちそうなほど美味しくて、お出汁につけてしみしみさせて…。ぱくん!

ふまーい!

美味しさのあまりぷるぷるとしてると「レイジス?」とフリードリヒが心配そうに見つめてくる。それに「おいひいですぅ…」と言えば「そうか。よかった」と笑う。
そんな僕を見てレヴィさんとクラさん、それにソルさんがマネをしてお出汁に天ぷらを入れてしみしみにしたものをぱくり! すると全員の瞳が大きくなったかと思えば、無言で食べ続ける。マーハ君もしみしみの天ぷらは気に入ったようで、しゅぴーん!とお耳を真っ直ぐ伸ばしていた。
それに色んな天ぷらを丼に乗せて、たれをかけて天丼にしてみる。そして…ぱくり!

「おほー!」

しまった! つい変な声が出た!
でも美味しいんだよー! お出汁とは違う美味しさにはふはふと息を吐きながら食べていると「ばかうさぎ! ボクにもそれくれ!」とマーハ君がソルさんのお膝の上から叫ぶ。それにおばちゃん達が「はいはい。坊やにも作りましょうか」と笑いながら用意してくれる。それに「すまない。我々にも頼めるか?」とフリードリヒが言えば「我らも」とレヴィさんとクラさんも頷く。そしてやっぱりガラムヘルツ殿下とシュルスタイン皇子も「私たちにもいただけるかい?」と結局全員が天丼を所望することに。

「やっぱりレイジスを見ていると食べたくなるな」
「ああ! 実においしそうに食べるからな!」
「未知のものだがそれを感じさせなくさせる」

うんうん、と王族三人が頷けば、ずずっとお味噌汁を飲んでる魔物二人が「いっそのこと我らも地上で暮らすか?」と話している。いや。流石にそれはダメだと思うんですよ。
それに「イカさん食べたいです!」とクラさんに言ったところ、くるりと指で円を描くとそこからまたもやだばぁと大量の海水と共にイカさんだけがびちびちと足元に大量に落ちていた。それに「ありがとうございますー!」とクラさんにお礼を言えば「気にするな」と頬を赤くしてた。大丈夫かな? 熱でもでちゃったのかな?
クラさんが出してくれた大量のイカさんの半分は塩辛に、半分は天ぷらとイカ焼きになっている。すでに漁が終わって、加工品作りも終わってるからたぶんイカ焼きをつまみにお酒飲んで騒いでるんだろうなー。
あ、ちゃんとイカ焼き用のマヨは作らせてもらった。生卵を使った途端、おばちゃん達が悲鳴を上げたけど光魔法でしょわっとしたらそれにもまた悲鳴をあげてた。そういや光の浄化魔法って教会の人しかできないんだっけ? それにべらぼうに高い。
それをあっさりと使っちゃうからねー。それは驚くか。
でもお出汁が手に入ったことだし、またお好み焼きとか食べたくなるよねー。イカにー卵にーミックスにー。うふふー。
天丼食べてるのにじゅるりと涎を垂らせば「また何か美味しいものでも思い付いたのかい?」ってフリードリヒに涎を吹いてもらう。おっと。

「今度また、お好み焼き作りましょうね!」
「お?」
「何だいそれは?」
「小麦粉と、卵とお出汁。それにキャベツと長いもで簡単にできるけどとってもおいしい食べ物です!」
「ほう?」

それに食い付くのは人間だけではない。魔物四人もきらりと瞳が輝く。

「それはぜひ食してみたいものだ」
「今度食わせてもらってもいいだろうか」
「ぜひぜひもちろーん!」

お込み焼きはみんなでわいわい作って食べるとおいしいからねー。んふふーと笑いながら天丼を頬一杯にしてもぐもぐとたべていると「はい! お待ちどうさま!」とおばちゃん達が大量の天丼を持って戻ってきた。



お腹いっぱい食べて砂浜でアルシュとハーミット先生、それにハガルマルティアの騎士さんとストラウムの騎士さんがビーチフラッグ大会をしていた。
バレーボールができないなら、と提案してみたんだ。初めはやり方が分かんないから僕がお手本を見せたら、なぜか全員が目を逸らすというよく分らない事態に陥った。なんでよ。
フリードリヒ曰く「昨日の格好を思い出してごらん?」と言っていたけどワンピースの下はちゃんとハーフパンツ履いてたよ?と首を傾げたけど「皆さんは耐性がありませんから」とノアが笑っていた。おん? なんの耐性?
騎士さん達は鎧を脱いでビーチフラッグを楽しみ、魔物三人も一回だけ遊んで騎士さんと競ってた。フラッグは枝とかだと折れちゃうから、火か水の魔法で僕が棒を作ったんだ。
腹ごなしも兼ねてのビーチフラッグだったけど思いの外白熱してみんなぜーはーしてた。そんなみんなに氷魔法で作ったかき氷を渡す。シロップはイチゴジャムとバニラアイス。大量に使っちゃったものは近くの村から補充するから気にするなと言われたからお言葉に甘えちゃった。
「急いで食べると頭キーンってしますからねー」と一応注意はしたけど、やっぱりキーンってなる人が多かった。
村の人たちも喜んでくれたしよかった。フリードリヒには内緒だけど、村の人たちには日本酒のかき氷を作ったんだ。お酒の匂いを嗅ぐだけでも「ほにゃ~」ってなる僕はおばちゃんたちに手伝ってもらいながら作ったんだ! これなら、おばちゃん達でも堂々と食べられるからね!

もちろんレシピは渡したけど問題は氷の魔石。なかなか手に入らないから困ったものだよね…。

「そう言えばリーシャって氷の魔法使えるようになったんだっけ?」
「マーハが言った通りならね」
「んー…ならちょっと試したいことあるんだけど付き合ってくれる?」
「…まぁ。僕はいいですけど」
「やった!」
「でも魔法を使うならソルゾ先生がいないと無理ですよ」
「なんで?」

首を傾げれば「あのですね」と大きな溜息を吐きながら僕を見る。うん?

「本来なら魔法は許可されないと使えないんです」
「ほへ? そうなの?」
「そうなんです。戦闘もそうだったでしょ?」
「あ、そういえば。でも僕、勝手に魔法を使いまくってるけど?」

コカトリスと戦闘をした後、学園長先生に呼び出しをくらったんだっけ。
というか勝手に魔法を使ったことに対しては、何も言われなかったからなぁ。

「それはソルゾ先生がいたからですよ」
「ほわ。ソルゾ先生ってすごい人だったんだよね?」
「一応第二宮廷魔導士副団長と言う肩書を持ってますからね」
「はびゃあ?!」

後ろから声をかけられてびくっと全身を跳ねさせれば、ソルゾ先生が「内緒話ですか?」と笑っている。どきどきと跳ねる心臓を押さえると、リーシャが「僕が氷魔法を使えるようになったから見たいんだそうです」と告げる。

「ならこの海岸を借りましょうか。万が一暴走しても海ですから」
「あ! 魔力の暴走なら暴走した魔力をクリスタルが吸収するので問題ないと思います!」
「そういえばアルシュ君とノア君の暴走した魔力はクリスタルに吸い込まれてましたね。いいでしょう。許可します」

そう言ってにこにこと僕の頭を撫でてくれるソルゾ先生。うふー。嬉しいんですけど僕じゃなくてリーシャを撫でて上げてくださいー。
なんて思いながら、皆がいる場所から少し離れる。何事か、とレヴィさんとクラさん、それにソルさんとマーハ君も付いてきた。とはいってもマーハ君はすでに電池切れ。すぴょーとソルさんの背中で寝てる。可愛いなー。

「何をするんだ?」
「リーシャの氷魔法を見たくて」
「ほう? それは面白そうだ。我らも見学させてもらおう」

そう言って少し離れた所に座る三人。もう少し離れた所で王族三人が見守ってくれている。

「よし!」
「リーシャがんばれー!」
「ちょっと黙っててくださいよ!」
「ごめん」

がうとリーシャに噛み付かれてしょんとするけど、たぶん緊張してるんだろうな。前は魔力がものすごい勢いで吸われるって言ってた気がするからね。
マーハ君が光と闇が強化されたって言ってたから以前よりは全然いけると思うんだ。
ぎゅうと指を組んで成功しますように、と祈れば「ふぅ」と息を吐くリーシャ。

武器を作る時と同じように両手を前に出して水魔法を生み出す。そしてゆっくりと闇属性が混ざり…。

「え?」

リーシャのそんな言葉に「どうしたの?!」と思わず声を上げれば「いえ…」と首を振っている。え? どうかした?
するとパキン、と聞きなれた音がすると、水魔法がパキ、ペキと凍っていく。おおー! もう少しだよ!
ぎゅうと組んだ指に力を込めるとパキンと大きな音がした。そしてリーシャの手の中には、野球ボールくらいの氷が浮かんでいた。

「しゅ…しゅごぉい! リーシャ! しゅごい!」
「素晴らしい! これは完全に氷魔法を会得したようですね!」

わぁ!と僕と先生がリーシャに近付けば「なにこれ」と困惑している。うん? どったの?

「闇魔法が…前に比べてすごくスムーズに出ました…」
「もしかしたらレイジス様の氷魔法を見てコントロールを覚ちゃった、とかですかね?」

うーん?と首を傾げるソルゾ先生と僕。よく分んないけど氷魔法会得おめでとう!
わーい!と両手を上げて喜べば、リーシャが僕を見た。おん?

「…それで? 何を試したいんですか?」
「うん? あ、そうだった! えっとね…!」

そう言いながらうさうさバッグから魔石を取りだし、半分に割る。金のスキルを使ったら綺麗に割れた。しゅごい。

「これにね氷魔法を入れてほしいんだ」
「入れるならレイジス様の氷魔法でもいいんじゃないんですか?」
「僕は強すぎてダメなんだ」
「……………。レイジス様は無駄に威力が高いですからね」

はっと鼻で笑うリーシャに「そうなんだ」と笑えば「貸してください」と言われて魔石を渡す。
そしてその魔石に氷魔法を入れて、氷の魔石を作ってもらう。

「できましたよ」
「ありがとう」
「いえ。頼りにされるの嬉しかったです」
「リーシャ…」

だから気になさらないでください、と笑うリーシャに思わずごめんと言いそうになったけどそれを強引に飲み込む。

「で? それをどうするんですか?」
「あ、えっとね」

作ってもらった氷の魔石を持って海に向かう。そしてそのまま波につけると、途端にそれが冷える。

「ひょわ!」
「え?」

思わず氷の魔石を落として小さな悲鳴を上げれば「大丈夫ですか?!」とソルゾ先生が手を掴んで怪我がないか見てくれる。

「やっぱり」
「なにがやっぱりなんですか?」
「うん? 氷の魔石に塩をかけると急激に冷えるなって」
「はい?」

何言ってんですか?って言うリーシャに「リーシャありがとう!」とお礼を言う。
それに「お礼ならさっきいただきました」って言って横を向くリーシャの耳が赤くなってるのを見逃さなかった僕は、むふふと笑うと「それで?」とレヴィさんが聞いてくる。

「思った通りでした。これで小さな氷の魔石でも十分いけます」
「ふむ?」

よく分らんという表情の魔物三人にむふ、と笑うと落とした氷の魔石を拾い上げる。

「よし! じゃあ戻ろっか」

満足のいく結果にほくほくしながらフリードリヒの元へと歩き出した。



それから砂だらけの僕らを風の魔法で砂を飛ばし綺麗にしてからスワリさんとカルモさんにお礼を言って戻ることにする。もちろん市場のおっちゃんのところにも寄って。
どうやら冷凍焼けはないようで一安心。氷の魔石はそのまま持っててもらって、明日の朝とれたてのマグロを学園に送ってもらうことにする。これも実験。だから送る木箱に新しく作った氷の魔石を置いておく。学園までは荷物を通常通り運んでもらうんだ。途中野盗とかに襲われて、マグロさんと氷の魔石が無くなってもおっちゃんへの責任はなし。当然だよね。
「じゃあお願いします」とお願いをしておっちゃんとバイバイをする。レヴィさんとクラさんも魔物へと姿を変え、海に戻っていった。また明日って手を振ればクラさんは足を、レヴィさんは尾を振ってくれた。可愛いなぁ。
ガラムヘルツ殿下もシュルスタイン皇子も明日までここに滞在予定なんだって。それに、ルスーツさんが僕に会えなくて寂しがってるって言われて明日も会うことに。
僕らも一応明後日まで滞在予定だけどまぐろさんが気になるから早めに戻ることにした。
そして退屈な時間を過ごしたであろうお医者さん。お医者さんには快適に過ごしてもらおうと氷の魔石と風の魔石を置いて簡易クーラーなるものを作っておいた。でもこれなら水の魔石でもいけるかも。

ご飯もお魚さん尽くし! と言いたいところだけどお魚さんばっかだと飽きそう。と言うことで今日のお夕飯はお肉! ここはもうがっつり食べよう!と言うことでステーキ! いぇあ!
ソルさんとマーハ君の分も用意してもらって肉厚ステーキをいただきます! ステーキソースはおろしでさっぱりと!

んまー!

ホテルっぽいところに着いた時にマーハ君が目を覚まし「お腹空いた」と一言。その言葉通りフライドポテトを無心になって食べている。ステーキもあるけどフライドポテトをひたすら食べている。
デザートはプリンアラモード。実験に使った氷の魔石を使って生クリームを大量に作ってもらった。プリンもゼラチン使ってるからぷるんぷるんだぞぅ!
お肉を少しだけ食べてふわふわパンも少しだけ食べたマーハ君は今、プリンアラモードに夢中だ。可愛い。
お夕飯を食べてまーったりとしているとソルさんが「では我はこれで戻る」と言って戻っていった。というか一体何しに来たんだろう?
ソルさんが戻る時に侍女さんがお弁当を用意してくれたみたいで、おっきなお弁当箱を二つ持っていった。一つはご飯、もう一つはおやつかな?

「はぁ~…疲れたぁ…」
「今日も頑張ったからね」
「ふふー」

フリードリヒのお膝の上に乗ってごろごろと甘えていると、疲れと温かさに瞼が自然に落ちてくる。
むむ。まだお風呂入らなきゃいけないんだってばー。下がってくる瞼にそう言っても言うことを聞いてくれなくて。
瞼がくっつく前にお風呂に入らないと、と思っていたら「レイジス? お風呂に入らないといけないよ?」とフリードリヒに言われるけど、もうダメかもです…。

「今日、一緒に入る約束しただろう?」

そう言ってちゅっと瞼に唇を落とされると、ずばっと瞼が離れていった。そうだった! 昨日約束したんだった!
一気に眠気が吹っ飛んだ僕は恐る恐るフリードリヒを見れば、とてもとても綺麗な笑みで僕を見つめているフリードリヒ。

うん。逃げられない。

それから一緒にお風呂に入って、今日は一緒のベッドで寝ることに。
暑いとか恥ずかしいとか言う前に既に電池が切れそうだった僕は、フリードリヒに抱き締められるとすぐにその匂いと温かさにほっと力を抜けば、完全に電池が切れたのだった。


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