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聖女編
プールで遊ぼう!
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「テッポウウオ隊の皆さん! お願いしまーす!」
そいやー!と水魔法で作ったテッポウウオさんたちが一斉にお口からびゃー!っと水鉄砲よろしく騎士科の生徒の顔に向かって放水する。
「ぎゃーッ!」
「なんだこれー?!」
ホースから直接浴びてるような勢いで水を吐き出し続けるテッポウウオさんたちに、ぐっとサムズアップするとお次はペンギン部隊がお腹を滑らせてこちらに向かってくる生徒の間を華麗に縫いながら突進していく。
ペンギンさんももちろん水魔法。テッポウウオ隊の皆さんは水を浴びせ続けた生徒がひっくり返っているのを見て放水を止める。その間に、騎士科の先生たちがきゅうと伸びた生徒を回収していき、怪我をした生徒はソルゾ先生が治癒の魔石で治していく。
むっふっふー!
「あー。これは決まりましたねー」と、リーシャが告げる視線の先には赤い旗が揺らめいている。
それを見た瞬間、魔法科の生徒全員が抱き合い、健闘をたたえた。
「これは見事にしてやられたな」
「魔法科の魔法に何一つ対応できませんでしたね」
「レイジス様の動物さんシリーズにはかないませんね」
じりじりと肌を焼く午後。
僕たちは出来上がったばかりのプールで模擬戦闘を行っていた。
プール作りは僕たちと残っていた生徒、それに先生たちも巻き込んだ。なんてことはない、学園長先生が「手伝えば食堂のご飯がちょっとだけ豪華になるらしいですよ」と煽ったかららしい。
ご飯につられて手伝いに来てくれた先生と生徒たちは、困惑している。無理もない。僕はまだ『癇癪持ちの問題児』のままなのだから。
けどそれを「こいつなら問題ないぞ?」と掘削作業をしていたメトル君がそう告げると「本当かよ、メトル」と騎士科の誰かがメトル君にそうひそひそと話しているのを、他の生徒と先生が聞き耳を立てている。
それに苦笑いを浮かべると「おーい! レイジスくーん!」と学園長先生の僕を呼ぶ声が聞こえて振り向けば、学園長先生がにこにことしながら歩いてきた。おん?
「いやー…食堂がちょっと忙しくなりそうなので、君付の侍女さんとフリードリヒ君の侍従君たちを借りたいんだけど、いいかな?」
「あ、大丈夫だと思います。けど一応ジョセフィーヌに聞いてからにしてくださいね」
「侍従も平気だろう」
「いやー。助かりますー」
にこにこと笑う学園長先生の言葉に、さっきまでひそひそとしていた先生と生徒たちが顔を見合わせる。
つまり。
学園長先生の言葉が本気だと確信したのだろう。
「ユアソーン君、何か手伝うことはあるかい?」
「あ、俺も手伝います!」
「あわわ!」
知らない人に、わっと話しかけられると怖くなっちゃう。
「リーシャー!」
「はいはい。レイジス様はちょっと人見知りなんで大勢の人に話しかけられると怖がるんだよ。悪いね」
「あ、いや。こちらこそ申し訳ない」
リーシャの陰に隠れて、ぶるぶると震えているとソルゾ先生がそっと背中を撫でてくれる。それに僕が隠れるようにノアが動いてくれた。
「人手が増えるのは助かりますが、少しだけ距離を開けてくださいね」
にっこりと笑うノアの言葉に、一歩下がる先生と生徒たち。
それを見て学園長先生がころころと笑う。
「では侍女さんと侍従さんたちをお借りしますね」
「はーい…」
震える声で返事をすると「それで、どうします?」とリーシャに聞かれ「それじゃあ…」と掘削班とタイル班に分かれて作業を開始した。
人が増えたことによってプールはなんと午前中にできてしまった。魔法科の生徒と先生たちが頑張ってくれて、騎士科の生徒と先生たちも掘削とタイル貼りを頑張ってくれた。途中で水分休憩をとってもできてしまったことに驚きを隠せない。
みんなにお礼を言って食堂でご飯。食堂の厨房には侍女さんの姿と侍従さんの姿。おおー! 手伝ってくれたんだー! ありがとう!
侍女さんたちがいるから知らない料理もさくっと作っちゃうからねー。
ちなみに今日のお昼ご飯は唐揚げ定食!もちろんお味噌汁もついてる! けど暑いのにお味噌汁?!って思ったかもしれないけど、学園長先生に許可をもらって水と風の魔石のクーラーよりも強力な、氷と風の魔石のクーラーを置いてある。
もちろんめちゃくちゃ暑くなる厨房にもね! ちなみに氷像はやっぱり寒い動物さんシリーズにしてある。シロクマさんにペンギンさん。むふふー。可愛いー。
ひんやりとした食堂にほぼ全員が集まってお昼ご飯。けど、せっかく作ったプール。午後からさらに暑くなるからということで軽い模擬戦闘を行うことに。
ルールは魔法で作った旗に水をかけると色が変わるようにして全員が旗を守る、というシンプルなもの。けど攻撃方法も個人差があるからどうしようかと思ったけど、今日は直接人に攻撃をしないこと、ただし魔法科は威力を最大まで落とした攻撃でなら可能、というルールで遊ぶことに。
細かいルールは明日以降、ということで作戦会議という名の交流会。
魔法科と騎士科と別れ、お昼ご飯を食べる。僕はお腹がすいてたからもっぎゅもっぎゅとご飯をうままーしてたけど、リーシャとソルゾ先生以外の先生と生徒はがちがちに緊張してたのか、挙動がおかしい。
でも知らない人と…自分よりも立場が上の人間といきなりご飯ね、なんて言われたらそうなるか。
それでもなんとかご飯を食べて、ちょっとしたデザートをうまうまして小休憩。その間に作戦を考える。ちなみに先生たちは一応参加はしない、ということになる。先生を参加させちゃうと生徒たちが好き勝手出来ないからね!
ご飯を皆でもりもりと食べてたら、僕が癇癪持ちということを改めたのか先生と生徒たちが少しすつ話すように。それをむふむふとしながら眺める。
午後二時。一番暑い時間帯。
プールの水漏れ問題や改善を目的とした模擬戦を開始。
まぁ僕の水魔法、動物さんシリーズであっさりと勝敗がついてしまった。
けど、浄化の魔石もうまく動き、騎士科の生徒が滑ったりはするけど体幹で転ぶ前に受け身をとる。すごーい!
全員ずぶぬれになりながらプールから上がると、先生たちが火魔法で乾かしてくれる。ぶわわ!
水分を補給して、教室に移動。ふわー! 久しぶりの教室ー!
それから模擬戦のルールを作るために全員であーだこーだと言いながら作っていく。準備は僕らができるものは僕らが準備する。魔法科しかできないこともあるけど、授業ではあまり魔法が使えないからか魔法科の生徒が快く受けてくれた。
騎士科の生徒はとりあえず属性武器を作れるようになるために、魔法訓練場で訓練開始。ちなみに先生はハーミット先生だ。厳しくはないけど頑張ってね!
「今年は多分学園に戻ってくる生徒が多いと思いますから、戻ってきた生徒を巻き込んでいきましょうね」
「はい?」
学園長先生の言葉の意味が分からず首を傾げたけど、その言葉の意味をすぐに理解した。
それから一週目。
魔法科の勝利。
動物さんシリーズの水魔法であっけなく旗の色が変わる。魔法科の生徒も頑張って動物さんを作っては水をかけて騎士科の生徒を翻弄した。
ちなみに。威力は全員同じにするように、クリスタルを作り一時的に威力を下げている。だから僕が全力で魔法をぶっぱしても、そんなに痛くはない。ぶつかった衝撃で痛いかもしれないけど、それだけ。
それと先生たちにメトル君がラジオ体操を教え、プールで遊ぶときはこれを必ずすることにしている。準備運動大切。
まぁそんなこんなで学園長先生が言った通り、生徒が続々と戻ってきて模擬戦の説明も忙しくなってくる。
それを一手に引き受けてくれたのは騎士科と魔法科の先生だった。食堂のご飯も侍女さんや侍従さんが手伝ってくれるからか、やはり少しだけ豪華になっている。
ならば。
「次の勝者には食堂で好きなものが一つだけ食べられる権利を与えよう!」
そう高らかに宣言したのはフリードリヒ。
それに沸き上がる先生と生徒。無理もない。自分の好きなものが一品だけとはいえ食べられるのだ。
僕はいつもおいしいもの食べてるから気にならないけど、食堂はメニューが決められてる。だからこそ、食べたいものが今食べられる、というものは魅力的だったみたい。
大興奮の食堂にくふくふと笑う。これでより一層団結力が増すねーとにんまりする。
二週目。
「くまさんがおおー!」
「うわああああああ!」
「ぎゃあああああぁ!」
水魔法で作ったシロクマさんをざっばぁ!と突然目の前に出現させると悲鳴が上がる。その間に、魔法科の生徒が水魔法のお魚さんで追撃。
大混乱の間にリーシャが旗を目指してペンギンさんに乗って疾走していく。すごーい! しかし騎士科もやられっぱなしではなかったけど、やっぱり混乱したのが響いたのか旗の色が変わった。
二週目後半。
「ゾウさんぱおおーん!」
「ふふっ。ゾウさんに乗ってるレイジス可愛い」
「むっふふー!」
今まで後ろで旗を守っていて、出てこなかったフリードリヒが楽しそうに僕の目の前にいる。けど手加減はしないぞー!とゾウさんのお鼻で放水するけど、フリードリヒはそれをうまくかわして全然当たらなくて「むー!」とムキになりながらフリードリヒをゾウさんの放水で追いかけまわす。
けどその間にアルシュが横を駆け抜けていき…。
「あああああ!」
「勝負あり、だね」
「ふぎゅうううぅ…」
というわけで、二週目は引き分け。
好きなもの頼める券は全員に配られ、生徒たちがほくほくしながら食堂へとなだれ込んでいくのを見ながら、僕らはお部屋へ。
一緒にご飯を食べて、フリードリヒと一緒にお風呂に入って眠る。
そして、三週目前半。
だいぶ暑さもましになったけど、まだまだ暑い。
夏休みなのに全生徒が戻ってきたようで、学園長先生がころころと笑っていた。
「ね?」
「ほわぁ…。すごい」
なんでもご飯と涼しさを求めて戻ってきたらしい。ご飯は…。うん、ごめん。
食堂の味に慣れちゃうと、うす味が耐え切れなくなるよねー…。そして戻ってきた生徒がまず行く先は食堂らしい。
だからいつものように食堂が混んでいるのを見て、んふふーと笑う僕なのだった。
それから模擬戦闘の説明を受け、今回はついに騎士科と魔法科の混合模擬戦闘。いざ!
「いけー! ペンギンさん部隊!」
「それは誘導だ! 作戦通りにいくぞ!」
僕とフリードリヒがぶつかってる間に、リーシャがアルシュとぶつかる。ノアも魔法科の生徒をあしらうけど、生徒たちも負けてはいない。
人が増えた分、やれることが増え、そして動きに制限がかかる。
しかし。
「やりました!」
「ふにゃああぁぁ!」
喜ぶフリードリヒ組とがっくりする僕組。
なんだか悔しくて、ぷくぅと頬を膨らませれば「お疲れ様、レイジス」とフリードリヒに頭を撫でてもらって、ほわんほわんする。うふふー。
三週目後半は無事、悔しさをばねにした僕組の勝利!
やったね!
勝負がついた後は戦った相手とみんなで称えあう。うんうん。青春だ!
そして、四週目。
「やぁ、レイジス」
「うん?」
僕の部屋になぜか父様がいて、優雅にお茶を飲んでいた。
「あれれ? 父様だー?」
「うん。父様だよー」
かくんと首を倒して持っていたネコさんのぬいぐるみを抱き直してソファに近付けば「なかなか面白いことをしてるみたいだね」と笑っている。
「なんで父様がここに? もしかしてドアベルに何かあったんですか?」
「うーん、それは大丈夫なんだけどね」
「?」
なんだかいつもと違う父様にぱちりと瞬きをすれば「レイジスは遮蔽魔法使えるよね?」とにこりと笑う。
遮蔽魔法…? あ、魔石を作ればいいのか!
馬車の中で作った遮蔽の魔石。きょろきょろと魔石を探していると「レイジス様、どうぞ」と侍女さんが魔石を渡してくれた。
「ありがとー!」
侍女さんにお礼を言って、魔石に『遮』の文字を掘る。そして出来上がったそれをどうすれば?と父様を見れば、にこにことしている。
なんだか侍女さんも緊張してるし…なんだろう?
「フリードリヒ殿下も一緒にご飯…」
「ああ。フリードリヒ殿下は陛下に呼ばれて、アルシュ君、ノア君、リーシャ君と一緒に昨日の夜王宮に向かったよ」
「ほへぇ?!」
そういえば昨日の夜は珍しくフリードリヒが早めにお部屋を出て行ったと思ったら…。なるほど。
あれれ? じゃあメトル君は?
「メトル君なら、今日の作戦変更のために忙しくしているよ」
「ほはぁ。そうなんですか」
「うん。だから今日はレイジスだけだね」
「あう…」
みんながいないとちょっとだけ寂しい。しょん、としながらネコさんの頭に顎を乗せると、テーブルの上にご飯が置かれていく。
いい香りにふんふんと鼻を動かせば「ご飯を食べようか」と父様に促され、ネコさんを隣のソファに置くと「いただきまーす!」と手を合わせもぐもぐと食べ始める。
父様と二人きりのご飯は初めてで、ちょっとだけ嬉しい。
んふーと笑いながらご飯を食べれば、父様も一緒にご飯を食べてる。んん-! やっぱりふわふわパンおいしーい! 杏ジャムもうままー!
いつもと同じ量をぺろりと食べて、お茶を飲む。けふー。おいしかったー。
「さて、お話をしても大丈夫かな?」
「はい! 大丈夫です!」
そう父様が言うと、侍女さんたちがお部屋の外に出ていく。おん?
ジョセフィーヌも出て行って父様と本当の二人きりに。あれれー?
テーブルの上にはおやつとお茶。首を傾げて父様を見れば、笑みが消えてじっと僕を見つめている。ほわ?
そして遮蔽の魔石を発動させると、音が消えた。
「じゃあ、お話しするね?」
「は、はい…」
なんだか茶化せない空気にごくりと息を飲むと、父様が口を開く。
「ユアソーン家の秘密を」
「ほへ?」
父様の言葉にぱちぱちと瞬きをすると、ネコさんがずるりとソファを滑った。
そいやー!と水魔法で作ったテッポウウオさんたちが一斉にお口からびゃー!っと水鉄砲よろしく騎士科の生徒の顔に向かって放水する。
「ぎゃーッ!」
「なんだこれー?!」
ホースから直接浴びてるような勢いで水を吐き出し続けるテッポウウオさんたちに、ぐっとサムズアップするとお次はペンギン部隊がお腹を滑らせてこちらに向かってくる生徒の間を華麗に縫いながら突進していく。
ペンギンさんももちろん水魔法。テッポウウオ隊の皆さんは水を浴びせ続けた生徒がひっくり返っているのを見て放水を止める。その間に、騎士科の先生たちがきゅうと伸びた生徒を回収していき、怪我をした生徒はソルゾ先生が治癒の魔石で治していく。
むっふっふー!
「あー。これは決まりましたねー」と、リーシャが告げる視線の先には赤い旗が揺らめいている。
それを見た瞬間、魔法科の生徒全員が抱き合い、健闘をたたえた。
「これは見事にしてやられたな」
「魔法科の魔法に何一つ対応できませんでしたね」
「レイジス様の動物さんシリーズにはかないませんね」
じりじりと肌を焼く午後。
僕たちは出来上がったばかりのプールで模擬戦闘を行っていた。
プール作りは僕たちと残っていた生徒、それに先生たちも巻き込んだ。なんてことはない、学園長先生が「手伝えば食堂のご飯がちょっとだけ豪華になるらしいですよ」と煽ったかららしい。
ご飯につられて手伝いに来てくれた先生と生徒たちは、困惑している。無理もない。僕はまだ『癇癪持ちの問題児』のままなのだから。
けどそれを「こいつなら問題ないぞ?」と掘削作業をしていたメトル君がそう告げると「本当かよ、メトル」と騎士科の誰かがメトル君にそうひそひそと話しているのを、他の生徒と先生が聞き耳を立てている。
それに苦笑いを浮かべると「おーい! レイジスくーん!」と学園長先生の僕を呼ぶ声が聞こえて振り向けば、学園長先生がにこにことしながら歩いてきた。おん?
「いやー…食堂がちょっと忙しくなりそうなので、君付の侍女さんとフリードリヒ君の侍従君たちを借りたいんだけど、いいかな?」
「あ、大丈夫だと思います。けど一応ジョセフィーヌに聞いてからにしてくださいね」
「侍従も平気だろう」
「いやー。助かりますー」
にこにこと笑う学園長先生の言葉に、さっきまでひそひそとしていた先生と生徒たちが顔を見合わせる。
つまり。
学園長先生の言葉が本気だと確信したのだろう。
「ユアソーン君、何か手伝うことはあるかい?」
「あ、俺も手伝います!」
「あわわ!」
知らない人に、わっと話しかけられると怖くなっちゃう。
「リーシャー!」
「はいはい。レイジス様はちょっと人見知りなんで大勢の人に話しかけられると怖がるんだよ。悪いね」
「あ、いや。こちらこそ申し訳ない」
リーシャの陰に隠れて、ぶるぶると震えているとソルゾ先生がそっと背中を撫でてくれる。それに僕が隠れるようにノアが動いてくれた。
「人手が増えるのは助かりますが、少しだけ距離を開けてくださいね」
にっこりと笑うノアの言葉に、一歩下がる先生と生徒たち。
それを見て学園長先生がころころと笑う。
「では侍女さんと侍従さんたちをお借りしますね」
「はーい…」
震える声で返事をすると「それで、どうします?」とリーシャに聞かれ「それじゃあ…」と掘削班とタイル班に分かれて作業を開始した。
人が増えたことによってプールはなんと午前中にできてしまった。魔法科の生徒と先生たちが頑張ってくれて、騎士科の生徒と先生たちも掘削とタイル貼りを頑張ってくれた。途中で水分休憩をとってもできてしまったことに驚きを隠せない。
みんなにお礼を言って食堂でご飯。食堂の厨房には侍女さんの姿と侍従さんの姿。おおー! 手伝ってくれたんだー! ありがとう!
侍女さんたちがいるから知らない料理もさくっと作っちゃうからねー。
ちなみに今日のお昼ご飯は唐揚げ定食!もちろんお味噌汁もついてる! けど暑いのにお味噌汁?!って思ったかもしれないけど、学園長先生に許可をもらって水と風の魔石のクーラーよりも強力な、氷と風の魔石のクーラーを置いてある。
もちろんめちゃくちゃ暑くなる厨房にもね! ちなみに氷像はやっぱり寒い動物さんシリーズにしてある。シロクマさんにペンギンさん。むふふー。可愛いー。
ひんやりとした食堂にほぼ全員が集まってお昼ご飯。けど、せっかく作ったプール。午後からさらに暑くなるからということで軽い模擬戦闘を行うことに。
ルールは魔法で作った旗に水をかけると色が変わるようにして全員が旗を守る、というシンプルなもの。けど攻撃方法も個人差があるからどうしようかと思ったけど、今日は直接人に攻撃をしないこと、ただし魔法科は威力を最大まで落とした攻撃でなら可能、というルールで遊ぶことに。
細かいルールは明日以降、ということで作戦会議という名の交流会。
魔法科と騎士科と別れ、お昼ご飯を食べる。僕はお腹がすいてたからもっぎゅもっぎゅとご飯をうままーしてたけど、リーシャとソルゾ先生以外の先生と生徒はがちがちに緊張してたのか、挙動がおかしい。
でも知らない人と…自分よりも立場が上の人間といきなりご飯ね、なんて言われたらそうなるか。
それでもなんとかご飯を食べて、ちょっとしたデザートをうまうまして小休憩。その間に作戦を考える。ちなみに先生たちは一応参加はしない、ということになる。先生を参加させちゃうと生徒たちが好き勝手出来ないからね!
ご飯を皆でもりもりと食べてたら、僕が癇癪持ちということを改めたのか先生と生徒たちが少しすつ話すように。それをむふむふとしながら眺める。
午後二時。一番暑い時間帯。
プールの水漏れ問題や改善を目的とした模擬戦を開始。
まぁ僕の水魔法、動物さんシリーズであっさりと勝敗がついてしまった。
けど、浄化の魔石もうまく動き、騎士科の生徒が滑ったりはするけど体幹で転ぶ前に受け身をとる。すごーい!
全員ずぶぬれになりながらプールから上がると、先生たちが火魔法で乾かしてくれる。ぶわわ!
水分を補給して、教室に移動。ふわー! 久しぶりの教室ー!
それから模擬戦のルールを作るために全員であーだこーだと言いながら作っていく。準備は僕らができるものは僕らが準備する。魔法科しかできないこともあるけど、授業ではあまり魔法が使えないからか魔法科の生徒が快く受けてくれた。
騎士科の生徒はとりあえず属性武器を作れるようになるために、魔法訓練場で訓練開始。ちなみに先生はハーミット先生だ。厳しくはないけど頑張ってね!
「今年は多分学園に戻ってくる生徒が多いと思いますから、戻ってきた生徒を巻き込んでいきましょうね」
「はい?」
学園長先生の言葉の意味が分からず首を傾げたけど、その言葉の意味をすぐに理解した。
それから一週目。
魔法科の勝利。
動物さんシリーズの水魔法であっけなく旗の色が変わる。魔法科の生徒も頑張って動物さんを作っては水をかけて騎士科の生徒を翻弄した。
ちなみに。威力は全員同じにするように、クリスタルを作り一時的に威力を下げている。だから僕が全力で魔法をぶっぱしても、そんなに痛くはない。ぶつかった衝撃で痛いかもしれないけど、それだけ。
それと先生たちにメトル君がラジオ体操を教え、プールで遊ぶときはこれを必ずすることにしている。準備運動大切。
まぁそんなこんなで学園長先生が言った通り、生徒が続々と戻ってきて模擬戦の説明も忙しくなってくる。
それを一手に引き受けてくれたのは騎士科と魔法科の先生だった。食堂のご飯も侍女さんや侍従さんが手伝ってくれるからか、やはり少しだけ豪華になっている。
ならば。
「次の勝者には食堂で好きなものが一つだけ食べられる権利を与えよう!」
そう高らかに宣言したのはフリードリヒ。
それに沸き上がる先生と生徒。無理もない。自分の好きなものが一品だけとはいえ食べられるのだ。
僕はいつもおいしいもの食べてるから気にならないけど、食堂はメニューが決められてる。だからこそ、食べたいものが今食べられる、というものは魅力的だったみたい。
大興奮の食堂にくふくふと笑う。これでより一層団結力が増すねーとにんまりする。
二週目。
「くまさんがおおー!」
「うわああああああ!」
「ぎゃあああああぁ!」
水魔法で作ったシロクマさんをざっばぁ!と突然目の前に出現させると悲鳴が上がる。その間に、魔法科の生徒が水魔法のお魚さんで追撃。
大混乱の間にリーシャが旗を目指してペンギンさんに乗って疾走していく。すごーい! しかし騎士科もやられっぱなしではなかったけど、やっぱり混乱したのが響いたのか旗の色が変わった。
二週目後半。
「ゾウさんぱおおーん!」
「ふふっ。ゾウさんに乗ってるレイジス可愛い」
「むっふふー!」
今まで後ろで旗を守っていて、出てこなかったフリードリヒが楽しそうに僕の目の前にいる。けど手加減はしないぞー!とゾウさんのお鼻で放水するけど、フリードリヒはそれをうまくかわして全然当たらなくて「むー!」とムキになりながらフリードリヒをゾウさんの放水で追いかけまわす。
けどその間にアルシュが横を駆け抜けていき…。
「あああああ!」
「勝負あり、だね」
「ふぎゅうううぅ…」
というわけで、二週目は引き分け。
好きなもの頼める券は全員に配られ、生徒たちがほくほくしながら食堂へとなだれ込んでいくのを見ながら、僕らはお部屋へ。
一緒にご飯を食べて、フリードリヒと一緒にお風呂に入って眠る。
そして、三週目前半。
だいぶ暑さもましになったけど、まだまだ暑い。
夏休みなのに全生徒が戻ってきたようで、学園長先生がころころと笑っていた。
「ね?」
「ほわぁ…。すごい」
なんでもご飯と涼しさを求めて戻ってきたらしい。ご飯は…。うん、ごめん。
食堂の味に慣れちゃうと、うす味が耐え切れなくなるよねー…。そして戻ってきた生徒がまず行く先は食堂らしい。
だからいつものように食堂が混んでいるのを見て、んふふーと笑う僕なのだった。
それから模擬戦闘の説明を受け、今回はついに騎士科と魔法科の混合模擬戦闘。いざ!
「いけー! ペンギンさん部隊!」
「それは誘導だ! 作戦通りにいくぞ!」
僕とフリードリヒがぶつかってる間に、リーシャがアルシュとぶつかる。ノアも魔法科の生徒をあしらうけど、生徒たちも負けてはいない。
人が増えた分、やれることが増え、そして動きに制限がかかる。
しかし。
「やりました!」
「ふにゃああぁぁ!」
喜ぶフリードリヒ組とがっくりする僕組。
なんだか悔しくて、ぷくぅと頬を膨らませれば「お疲れ様、レイジス」とフリードリヒに頭を撫でてもらって、ほわんほわんする。うふふー。
三週目後半は無事、悔しさをばねにした僕組の勝利!
やったね!
勝負がついた後は戦った相手とみんなで称えあう。うんうん。青春だ!
そして、四週目。
「やぁ、レイジス」
「うん?」
僕の部屋になぜか父様がいて、優雅にお茶を飲んでいた。
「あれれ? 父様だー?」
「うん。父様だよー」
かくんと首を倒して持っていたネコさんのぬいぐるみを抱き直してソファに近付けば「なかなか面白いことをしてるみたいだね」と笑っている。
「なんで父様がここに? もしかしてドアベルに何かあったんですか?」
「うーん、それは大丈夫なんだけどね」
「?」
なんだかいつもと違う父様にぱちりと瞬きをすれば「レイジスは遮蔽魔法使えるよね?」とにこりと笑う。
遮蔽魔法…? あ、魔石を作ればいいのか!
馬車の中で作った遮蔽の魔石。きょろきょろと魔石を探していると「レイジス様、どうぞ」と侍女さんが魔石を渡してくれた。
「ありがとー!」
侍女さんにお礼を言って、魔石に『遮』の文字を掘る。そして出来上がったそれをどうすれば?と父様を見れば、にこにことしている。
なんだか侍女さんも緊張してるし…なんだろう?
「フリードリヒ殿下も一緒にご飯…」
「ああ。フリードリヒ殿下は陛下に呼ばれて、アルシュ君、ノア君、リーシャ君と一緒に昨日の夜王宮に向かったよ」
「ほへぇ?!」
そういえば昨日の夜は珍しくフリードリヒが早めにお部屋を出て行ったと思ったら…。なるほど。
あれれ? じゃあメトル君は?
「メトル君なら、今日の作戦変更のために忙しくしているよ」
「ほはぁ。そうなんですか」
「うん。だから今日はレイジスだけだね」
「あう…」
みんながいないとちょっとだけ寂しい。しょん、としながらネコさんの頭に顎を乗せると、テーブルの上にご飯が置かれていく。
いい香りにふんふんと鼻を動かせば「ご飯を食べようか」と父様に促され、ネコさんを隣のソファに置くと「いただきまーす!」と手を合わせもぐもぐと食べ始める。
父様と二人きりのご飯は初めてで、ちょっとだけ嬉しい。
んふーと笑いながらご飯を食べれば、父様も一緒にご飯を食べてる。んん-! やっぱりふわふわパンおいしーい! 杏ジャムもうままー!
いつもと同じ量をぺろりと食べて、お茶を飲む。けふー。おいしかったー。
「さて、お話をしても大丈夫かな?」
「はい! 大丈夫です!」
そう父様が言うと、侍女さんたちがお部屋の外に出ていく。おん?
ジョセフィーヌも出て行って父様と本当の二人きりに。あれれー?
テーブルの上にはおやつとお茶。首を傾げて父様を見れば、笑みが消えてじっと僕を見つめている。ほわ?
そして遮蔽の魔石を発動させると、音が消えた。
「じゃあ、お話しするね?」
「は、はい…」
なんだか茶化せない空気にごくりと息を飲むと、父様が口を開く。
「ユアソーン家の秘密を」
「ほへ?」
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彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
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