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聖女編
ユアソーン家の秘密
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「ユアソーン家の…秘密?」
「うん。本当はもう少し早く教えなきゃいけなかったんだけどね」
そう言って苦笑いする父様。あ、そっか。子供のころは魔力過多でベッドで寝込んでて、お話できそうになったかと思えば、手のつけようがなかったからお話ができなかったのか。
それに申し訳なさを感じながら、ずるりと滑っていたネコさんをぎゅうと抱きしめると「それでね?」と父様が言いにくそうに言葉を紡ぐ。
うん?
「きっとレイジスはすっごく悩んじゃうと思うからね。逃げ道もちゃんと用意しておいたから、安心してね?」
「はへ?」
なんだろう。父様の言葉からすごく嫌な感じがする。どくんどくんと脈打つ心臓が耳に届く。
嫌だな…聞きたくない。
けど、これを知らなければいけない、という気持ちもあってなんかぐちゃぐちゃだ。
「レイジス、大丈夫?」
「だい…じょぶです」
はっはっと呼吸が浅くなって、ぎゅううっとネコさんを抱きしめれば少し落ち着いたような気がする。
すると父様が立ち上がって僕の前に膝をつき、手を握ってくれた。それにほっと息を吐くと、父様もにこりと笑う。
「レイジスが心配だからこのままお話しするね?」
「はい…ごめんなさい」
「私よりレイジスの方が心配だからね。それに」
「?」
そこで一度言葉を切る父様を見れば、いつも通りの優しい顔。
「レイジスは、私の大切な子だからね」
「ふぎゅうぅ…」
父様の言葉に不安が一気にあふれ出してネコさんを持ったまま抱きつけば、よしよしと背中を撫でられた。それが安心できて、ぐずぐずと泣けば「謝らなくていいんだよ」と優しく背中を叩いてくれる。
「よっこいしょ」
そう言って僕を抱きしめたまま立ち上がって、僕が座っていたソファに抱きしめられたまま座れば、ぎっと小さくソファが鳴く。
「うんうん。レイジスも重くなったね」
「ぷぎょっ?! おもい…ですか?」
父様の言葉にばびょっとアホ毛様を伸ばし「やだ…僕ぽっちゃりしてきた…?!」と少しばかりショックを受けるも「ああ、違う違う」と父様が慌てる。ぐずっ。
「レイジスが成長したなってことだよ」
「重く…ない、ですか?」
「重いということは、いい事だよ。特にレイジスはね」
「重くても…いいんですか?」
「もちろん! この重みが父様には嬉しいんだよ」
「ふふー」
ぎゅうぎゅうと抱きしめながら、すりすりと胸に頬擦りする。
「父様、大好き」
「んん! レイジス、それは反則だろう」
んふふーと笑いながらコアラのように抱きつけば、頭を撫でられる。むふふー。
「じゃあこのままお話ししようか」
「…父様は重くないんですか?」
「何を言っているんだい! レイジスはまだまだ軽いよ!」
「んふふ。重いって言ったり軽いって言ったり父様おもしろい!」
「そうそう。レイジスにはいつも笑顔でいてほしいからね」
そう言いながら、頭にたくさんキスをしてくれる。くすぐったいけど、嬉しい。
「じゃあまずね。レイジスはフリードリヒ殿下が好き?」
「ほぎゃあ?!」
突然そんなことを聞かれて、ぼぼっと顔が熱くなる。っていうか父様も僕とフリードリヒがごにょごにょしたの知ってるでしょ?!
恥ずかしさのあまり、父様の胸に顔をぎゅうぎゅう押し当ててこくりと頷く。
「うんうん。レイジスは可愛いなぁ!」
「はぎゃー!」
ぎゅうううっと力いっぱい抱きしめられてつい悲鳴を上げれば、ハッとした父様が「すまない! レイジス!」と力を緩めてくれた。ほ…。今日はストッパーのフリードリヒもいないから、うっかりすると天に召されかねない。
父様には悪いけど、自重してもらおう。
「それでね、レイジス」
「はい」
ぽんぽんと背中を一定のリズムで叩かれるとうとうとしてくる。ほわ…。気持ちいい。
「ユアソーン家と王家はね、惹かれあうようになってるんだ」
父様のその言葉に、うとうととした眠気が裸足で逃げていく。ほえ?
思わず父様を見上げれば、にこりと笑っていて。え? 今?
「とう…」
「ずっと言えなくてごめんね。レイジスがショックを受けるだろうと思って、今まで黙ってた僕のせいだね」
「とう…さま?」
ごめんねと謝る父様に抱きしめられるけど、さっきの言葉が頭の中をぐるぐるしてる。
ユアソーン家と王家は惹かれあうようにできてる?
それってつまり?
「フリードリヒ殿下はもしかしたら僕が好きじゃなくて、僕もフリードリヒ殿下が好きじゃないってことですか?」
「…そう、かもしれないね」
「え…?」
じゃあ。僕のフリードリヒが『大好き』って気持ちは『偽物』だったってこと?
え? どういう…?
混乱する僕を父様はただ抱きしめて背中をゆっくりと優しく叩いてくれている。
「これはね。スズネの祝福であり、呪いでもあるんだ」
「鈴音…さんの?」
「うん。スズネの日記を読んでいた時、メトル君が不自然に話をそらした時があったでしょ?」
「あ、はい」
それは確かにあったこと。
余りにも強引でびっくりしたけど、それは読み飛ばしても大丈夫なものだろうって思ったんだよね。
でも、違った?
「あの時、フリードリヒ殿下以外もいたからメトル君が気を利かせてくれたんだと思う」
「ってことは、これは…」
「うん。これはね、ユアソーン家とウィンシュタイン王家しか知らないんだ」
「そう…なんだ」
だからメトル君が強引に「ここを読んでみろ」って言ったのか。僕だけじゃなくてメトル君が一緒にいてくれてよかったー。僕だけだったらさらっと読んでそうだもん。
「でも…」
もしかしたらフリードリヒのことが『大好き』って気持ちが『偽物』かもしれないってことが悲しくて、しょんと肩を落とせば「大丈夫だよ」って父様が頭を撫でてくれる。
「父様から見たらレイジスはちゃんとフリードリヒ殿下が好きだし、フリードリヒ殿下もレイジスが好きだと思うから」
「ホントですか?」
「ああ。じゃなきゃ最後までするっていう許可は出さないよ」
「あばば」
あっはっはっと笑う父様にまたもやぼばばんと顔を赤くすると「レイジスはやっぱり可愛い!」とむちゅむちゅと頭にいっぱいキスをされる。はわわ!
そんな父様の背中に回した手でぎゅうと服を掴むと、またもやぎゅうぎゅうと抱きしめられ「可愛い!」と今度はぐりぐりと頬擦りし始める父様。ふわわー!
「可愛い可愛い! レイジス可愛い!」と言いながらむぎゅむぎゅされていると、ふとある疑問が頭に浮かんだ。
「あれれ? ユアソーン家とウィンシュタイン王家が惹かれあうのなら、僕と陛下、父様とフリードリヒがそうなっていた可能性も…?」
「十分あるだろうね」
「ほげー?!」
ぼぼぼ僕が陛下と?! そう考えてすぐさま「無理」という言葉が浮かぶ。
だって僕はフリードリヒだからああいう…えっちなことまでできるんだもん。
「ふふ。レイジスならそう言うと思った」
くすくすと笑う父様にぷぷーと唇を尖らせると「でもね」って言葉を続ける。
「レイジスはきっと悩んじゃうからね」
「え?」
「優しくしてくれたからっていう刷り込みじゃないのかな、って思ってたりするかもしれないなと思ってね」
「そんな…」
ことはない、と口を開いたけど、言葉が出てこない。僕が知らないだけで何か引っかかってる?
「だから、ゆっくりと言葉を消化していけばいいよ」
「…はい」
そこまで言ってから、また頭を撫でられる。
嬉しいし安心もするけど、でも心のどこかに影ができた感じ。ううう…。
「それとね。ここからが本題なんだけどね」
「…今のが本題じゃないんですか?」
「そうだよ。それに言ったでしょ?『ユアソーン家の秘密』って」
「さっきのは王家も知ってるから秘密じゃないってことですか?」
「そうだね。それに、ここから話すのはユアソーン家当主しか知らないんだ」
「はば?!」
そんな話を僕なんかにしちゃっていいの?! 父様!
「あはは。大丈夫だよ。それに今はユアソーン家と分家すべてが知っていることだからね」
「そう…なんですか?」
「うん。じゃないと大混乱だから」
「?」
父様の含みのある言葉に首を傾げれば「ワイバーンネグリジェで上目使いするレイジス可愛い…!」と口元を手で覆う。むふー。
可愛いと言われて嫌な気分にならないのはきっと、フリードリヒや侍女さんたちがいつも「可愛い」って言ってくれるからだと思うんだ。
「それでね」
「はい」
可愛いと悶えていた父様が急にでれでれしながらも、話す切り替えの早さは僕も見習いたい。
「ユアソーン家はね、男の子でも子供が作れるんだ」
「はい?」
うん? なんかすごい言葉が聞こえたんだけど?
え?
「父様、もう一度お願いします」
「うん。ユアソーン家の男の子は子供が作れるんだ」
「聞き間違いじゃなかった…!」
何そのファンタジー設定! いや、ここがゲームの中なのは分かるんだけど!
っていうか鈴音さんは何をもってそんなことを…?!と思った瞬間、そういえばユアソーン家の始まりの人―ルークスさんは確か当時の陛下が好きだって言ってたよね? そこに聖女の力で子供を作る能力を与えたってこと?!
「だからユアソーン家と王家は惹かれあうんですか?」
「レイジスは賢いね」
そう言っていい子いい子と頭を撫でられる。
あわー! だとしたら当時は相当混乱したのでは?!
「それにね」
「はい」
「王家にはユアソーン家で生まれた子供は『ヴァルヘルム殿下とリオンのもう一人子供』って伝えてあるけど、本当は当時の陛下とルークスの子供なんだよ」
「ほんぎゃああああ!」
父様の話を聞いてそんな予感はしてたけど! ばびょーと後ろ髪が伸びて驚けば「レイジスは器用だね」と褒められた。えへへ。
「え? じゃあユアソーン家は聖女の血は入ってなくても王族の血が入ってるんですか?!」
あれれ?! だとしたらまずくない?!
「うーん…そのことなんだけどね」
父様の言葉に、ごくりと喉を鳴らしてじっと見つめる。
「王族の血は引いてないんだよ」
「はん?」
あれ? 僕の口から変な言葉が出た。
「不思議なことにユアソーン家は王族の血を絶対に継がないんだ。だから子供ができても王族とは認められない」
「はえー…本当に不思議ですね」
「スズネの配慮かもしれないね。もしも子供が王族の血を引いていたら、継承問題に巻き込まれるからね」
「もうちょっと違うことに配慮してほしかった…」
「あっはっはっ! 確かに!」
これでユアソーン家が高い爵位を持っていることにも納得できた。相変わらず父様のお仕事は謎だけど。
あれ? そこで王宮にいるとき、父様が朝疲れてたり腰が痛そうだったのって…。
「父様、陛下とえっちしてたの?!」
「レイジスー!」
もがっとお口を大きな手でふさがれて、もがもがとしていると「ああ! ごめんよ!」とお口から手を離してくれる。びっくりした!
「レイジス、そういうことは小声でね?」
「もがが! ごめんなさい! びっくりして…」
とはいっても今は遮蔽魔法で音は洩れてないはずなんだけど、その時は父様と一緒にすこぽんと忘れてた。
「いいかいレイジス。このことは内緒だからね?」
「あ、はい。分かりました」
しーと人差し指をお口に持って行く父様に、こくんと頷けばよしよしと頭を撫でられる。んっふふー。
「でも子供っていないんですよね?」
「うん?」
「えと…過去にユアソーン家と王家の間にできた子供はその子だけなんですよね?」
父様の言葉からして、作れるだけで生まれたって言葉はないからそう聞いたんだけど…。あれ?
「実は過去に3人ほどいるんだ」
「ぴ?!」
え?! いるの?!
ぼわっと後ろ髪を膨らませて逆立てれば「レイジス、ネコさんみたいだ」と父様がふふふと笑う。
ネコさんよりうさぎさんの方がいいです!
「その3人はね、ここではない他の世界の知識を持っていたんだよ」
「え?」
あれれ? それって…?
「それって…」
「そう。レイジス、君と同じだ」
「え?」
そう言って僕を見つめる父様の瞳は柔らかくて。
え? でもちょっと待って?
「ユアソーン家は男の子でも子供が作れる…」
「うん」
「ユアソーン家と王家は惹かれあう…」
「そうだね」
「ユアソーン家と王家の間にできた子供は…他の世界の知識を持っている…」
「うん」
「じゃあ…僕は…」
「レイジス。君はバイロンと僕との間にできた子だよ」
父様のその言葉に、ひゅっと喉が鳴った。
え? ちょっと待って。どういうこと?
「フリードリヒ殿下とは…腹違いの兄弟になるの?」
「王家の血は全く持っていないから厳密には兄弟にはならないね。『イデンシ』もないんだって」
「あ…え?」
理解が…。追いつかない。
僕が…陛下と父様の間にできた子供?
あれ? じゃあ母様は?
「そ、れじゃあ…。か…母様は…?」
「母様はね、元々公爵家のお嫁さんだったんだけどちょっといざこざがあって子供ができない身体になっちゃてね。それで絶望の淵にいた母様に結婚を申し出たんだ。ちょうどその時、僕もお嫁さんを探してたからね」
「え…そんな…」
「だから母様とレイジスは血が繋がっていないんだ。ごめんね」
そう言って頭を優しくなでてくれる父様。けど涙が止まらない。
ずっと父様と母様の子供だと思ってた。けど実際は違ってて。
「けど…僕にとって母様は母様です」
「そうだね。僕は父様だからね」
「はい」
ずびずびと鼻を鳴らして父様の胸に顔を埋めて泣けば、何度も何度も頭を撫でてくれる。
「陛下は…」
「うん?」
「陛下は、僕がそうだって知ってるんですか?」
「知らない…とは思うけど…。でも気付いてはいるんだろうね。バイロンはレイジスには甘いから」
そう言って苦笑いを浮かべる父様に、そういえば陛下に何度も頭を撫でてもらったことを思い出す。それに何をしても怒らないし、めちゃくちゃ心配される。
あ、結構思い当たることが多いな。
「レイジスが街に行くときも、自分の心配よりもレイジスの警備にほとんど割いてるからね」
「ほわ…」
だから第一騎士団副団長のフィルノさんがいたのか。
っていうかまずご自分のことを心配してくださいよー。
「まぁワイバーンに襲われたって聞いて警護が厳しくなったのもあるんだけどね」
「あれは…まぁ…」
そっかー。あれもあったからかー。
「あの時のバイロンの取り乱しようは僕以上だったよ」
そう言ってくすくす笑う父様は、本当に陛下のことが好きなんだなって。
それに涙がぴたりと止まって、鼻水を父様の服でぐしぐしと拭いた後光魔法で綺麗にしておく。
「ありがとう。レイジス」
「むっふふー」
難しい話を聞いたからか、安心したからか両方からか、僕のお腹の中の怪獣が「ぐごおおおぉぉっ!」と咆哮する。
ほわー!
「うんうん。お腹すいちゃったね」
「はじゅかしいー!」
しゅばっと顔を両手で隠せば「お腹がすくのは、とってもいいことだからね」と父様が笑う。
それから遮蔽魔法を解けば、侍女さんがなだれ込んできた。ほわわ?!
「今しがたものすごい音が聞こえたので心配しておりました!」
「んえー?!」
遮蔽魔法を使っても聞こえる僕のお腹の音に驚けば、早々におやつの準備が整っていく。
手を付けていないベリータルトをとりあえず父様の分までもっしゃぁと食べれば、次々におやつが置かれていく。それにわーい!と喜んでもぎゅもぎゅとおやつを食べれば、父様もにこにこしていて。
だから心に引っかかったものを頭の隅に追いやってしまった。
それが僕を苦しめるとも知らずに。
「うん。本当はもう少し早く教えなきゃいけなかったんだけどね」
そう言って苦笑いする父様。あ、そっか。子供のころは魔力過多でベッドで寝込んでて、お話できそうになったかと思えば、手のつけようがなかったからお話ができなかったのか。
それに申し訳なさを感じながら、ずるりと滑っていたネコさんをぎゅうと抱きしめると「それでね?」と父様が言いにくそうに言葉を紡ぐ。
うん?
「きっとレイジスはすっごく悩んじゃうと思うからね。逃げ道もちゃんと用意しておいたから、安心してね?」
「はへ?」
なんだろう。父様の言葉からすごく嫌な感じがする。どくんどくんと脈打つ心臓が耳に届く。
嫌だな…聞きたくない。
けど、これを知らなければいけない、という気持ちもあってなんかぐちゃぐちゃだ。
「レイジス、大丈夫?」
「だい…じょぶです」
はっはっと呼吸が浅くなって、ぎゅううっとネコさんを抱きしめれば少し落ち着いたような気がする。
すると父様が立ち上がって僕の前に膝をつき、手を握ってくれた。それにほっと息を吐くと、父様もにこりと笑う。
「レイジスが心配だからこのままお話しするね?」
「はい…ごめんなさい」
「私よりレイジスの方が心配だからね。それに」
「?」
そこで一度言葉を切る父様を見れば、いつも通りの優しい顔。
「レイジスは、私の大切な子だからね」
「ふぎゅうぅ…」
父様の言葉に不安が一気にあふれ出してネコさんを持ったまま抱きつけば、よしよしと背中を撫でられた。それが安心できて、ぐずぐずと泣けば「謝らなくていいんだよ」と優しく背中を叩いてくれる。
「よっこいしょ」
そう言って僕を抱きしめたまま立ち上がって、僕が座っていたソファに抱きしめられたまま座れば、ぎっと小さくソファが鳴く。
「うんうん。レイジスも重くなったね」
「ぷぎょっ?! おもい…ですか?」
父様の言葉にばびょっとアホ毛様を伸ばし「やだ…僕ぽっちゃりしてきた…?!」と少しばかりショックを受けるも「ああ、違う違う」と父様が慌てる。ぐずっ。
「レイジスが成長したなってことだよ」
「重く…ない、ですか?」
「重いということは、いい事だよ。特にレイジスはね」
「重くても…いいんですか?」
「もちろん! この重みが父様には嬉しいんだよ」
「ふふー」
ぎゅうぎゅうと抱きしめながら、すりすりと胸に頬擦りする。
「父様、大好き」
「んん! レイジス、それは反則だろう」
んふふーと笑いながらコアラのように抱きつけば、頭を撫でられる。むふふー。
「じゃあこのままお話ししようか」
「…父様は重くないんですか?」
「何を言っているんだい! レイジスはまだまだ軽いよ!」
「んふふ。重いって言ったり軽いって言ったり父様おもしろい!」
「そうそう。レイジスにはいつも笑顔でいてほしいからね」
そう言いながら、頭にたくさんキスをしてくれる。くすぐったいけど、嬉しい。
「じゃあまずね。レイジスはフリードリヒ殿下が好き?」
「ほぎゃあ?!」
突然そんなことを聞かれて、ぼぼっと顔が熱くなる。っていうか父様も僕とフリードリヒがごにょごにょしたの知ってるでしょ?!
恥ずかしさのあまり、父様の胸に顔をぎゅうぎゅう押し当ててこくりと頷く。
「うんうん。レイジスは可愛いなぁ!」
「はぎゃー!」
ぎゅうううっと力いっぱい抱きしめられてつい悲鳴を上げれば、ハッとした父様が「すまない! レイジス!」と力を緩めてくれた。ほ…。今日はストッパーのフリードリヒもいないから、うっかりすると天に召されかねない。
父様には悪いけど、自重してもらおう。
「それでね、レイジス」
「はい」
ぽんぽんと背中を一定のリズムで叩かれるとうとうとしてくる。ほわ…。気持ちいい。
「ユアソーン家と王家はね、惹かれあうようになってるんだ」
父様のその言葉に、うとうととした眠気が裸足で逃げていく。ほえ?
思わず父様を見上げれば、にこりと笑っていて。え? 今?
「とう…」
「ずっと言えなくてごめんね。レイジスがショックを受けるだろうと思って、今まで黙ってた僕のせいだね」
「とう…さま?」
ごめんねと謝る父様に抱きしめられるけど、さっきの言葉が頭の中をぐるぐるしてる。
ユアソーン家と王家は惹かれあうようにできてる?
それってつまり?
「フリードリヒ殿下はもしかしたら僕が好きじゃなくて、僕もフリードリヒ殿下が好きじゃないってことですか?」
「…そう、かもしれないね」
「え…?」
じゃあ。僕のフリードリヒが『大好き』って気持ちは『偽物』だったってこと?
え? どういう…?
混乱する僕を父様はただ抱きしめて背中をゆっくりと優しく叩いてくれている。
「これはね。スズネの祝福であり、呪いでもあるんだ」
「鈴音…さんの?」
「うん。スズネの日記を読んでいた時、メトル君が不自然に話をそらした時があったでしょ?」
「あ、はい」
それは確かにあったこと。
余りにも強引でびっくりしたけど、それは読み飛ばしても大丈夫なものだろうって思ったんだよね。
でも、違った?
「あの時、フリードリヒ殿下以外もいたからメトル君が気を利かせてくれたんだと思う」
「ってことは、これは…」
「うん。これはね、ユアソーン家とウィンシュタイン王家しか知らないんだ」
「そう…なんだ」
だからメトル君が強引に「ここを読んでみろ」って言ったのか。僕だけじゃなくてメトル君が一緒にいてくれてよかったー。僕だけだったらさらっと読んでそうだもん。
「でも…」
もしかしたらフリードリヒのことが『大好き』って気持ちが『偽物』かもしれないってことが悲しくて、しょんと肩を落とせば「大丈夫だよ」って父様が頭を撫でてくれる。
「父様から見たらレイジスはちゃんとフリードリヒ殿下が好きだし、フリードリヒ殿下もレイジスが好きだと思うから」
「ホントですか?」
「ああ。じゃなきゃ最後までするっていう許可は出さないよ」
「あばば」
あっはっはっと笑う父様にまたもやぼばばんと顔を赤くすると「レイジスはやっぱり可愛い!」とむちゅむちゅと頭にいっぱいキスをされる。はわわ!
そんな父様の背中に回した手でぎゅうと服を掴むと、またもやぎゅうぎゅうと抱きしめられ「可愛い!」と今度はぐりぐりと頬擦りし始める父様。ふわわー!
「可愛い可愛い! レイジス可愛い!」と言いながらむぎゅむぎゅされていると、ふとある疑問が頭に浮かんだ。
「あれれ? ユアソーン家とウィンシュタイン王家が惹かれあうのなら、僕と陛下、父様とフリードリヒがそうなっていた可能性も…?」
「十分あるだろうね」
「ほげー?!」
ぼぼぼ僕が陛下と?! そう考えてすぐさま「無理」という言葉が浮かぶ。
だって僕はフリードリヒだからああいう…えっちなことまでできるんだもん。
「ふふ。レイジスならそう言うと思った」
くすくすと笑う父様にぷぷーと唇を尖らせると「でもね」って言葉を続ける。
「レイジスはきっと悩んじゃうからね」
「え?」
「優しくしてくれたからっていう刷り込みじゃないのかな、って思ってたりするかもしれないなと思ってね」
「そんな…」
ことはない、と口を開いたけど、言葉が出てこない。僕が知らないだけで何か引っかかってる?
「だから、ゆっくりと言葉を消化していけばいいよ」
「…はい」
そこまで言ってから、また頭を撫でられる。
嬉しいし安心もするけど、でも心のどこかに影ができた感じ。ううう…。
「それとね。ここからが本題なんだけどね」
「…今のが本題じゃないんですか?」
「そうだよ。それに言ったでしょ?『ユアソーン家の秘密』って」
「さっきのは王家も知ってるから秘密じゃないってことですか?」
「そうだね。それに、ここから話すのはユアソーン家当主しか知らないんだ」
「はば?!」
そんな話を僕なんかにしちゃっていいの?! 父様!
「あはは。大丈夫だよ。それに今はユアソーン家と分家すべてが知っていることだからね」
「そう…なんですか?」
「うん。じゃないと大混乱だから」
「?」
父様の含みのある言葉に首を傾げれば「ワイバーンネグリジェで上目使いするレイジス可愛い…!」と口元を手で覆う。むふー。
可愛いと言われて嫌な気分にならないのはきっと、フリードリヒや侍女さんたちがいつも「可愛い」って言ってくれるからだと思うんだ。
「それでね」
「はい」
可愛いと悶えていた父様が急にでれでれしながらも、話す切り替えの早さは僕も見習いたい。
「ユアソーン家はね、男の子でも子供が作れるんだ」
「はい?」
うん? なんかすごい言葉が聞こえたんだけど?
え?
「父様、もう一度お願いします」
「うん。ユアソーン家の男の子は子供が作れるんだ」
「聞き間違いじゃなかった…!」
何そのファンタジー設定! いや、ここがゲームの中なのは分かるんだけど!
っていうか鈴音さんは何をもってそんなことを…?!と思った瞬間、そういえばユアソーン家の始まりの人―ルークスさんは確か当時の陛下が好きだって言ってたよね? そこに聖女の力で子供を作る能力を与えたってこと?!
「だからユアソーン家と王家は惹かれあうんですか?」
「レイジスは賢いね」
そう言っていい子いい子と頭を撫でられる。
あわー! だとしたら当時は相当混乱したのでは?!
「それにね」
「はい」
「王家にはユアソーン家で生まれた子供は『ヴァルヘルム殿下とリオンのもう一人子供』って伝えてあるけど、本当は当時の陛下とルークスの子供なんだよ」
「ほんぎゃああああ!」
父様の話を聞いてそんな予感はしてたけど! ばびょーと後ろ髪が伸びて驚けば「レイジスは器用だね」と褒められた。えへへ。
「え? じゃあユアソーン家は聖女の血は入ってなくても王族の血が入ってるんですか?!」
あれれ?! だとしたらまずくない?!
「うーん…そのことなんだけどね」
父様の言葉に、ごくりと喉を鳴らしてじっと見つめる。
「王族の血は引いてないんだよ」
「はん?」
あれ? 僕の口から変な言葉が出た。
「不思議なことにユアソーン家は王族の血を絶対に継がないんだ。だから子供ができても王族とは認められない」
「はえー…本当に不思議ですね」
「スズネの配慮かもしれないね。もしも子供が王族の血を引いていたら、継承問題に巻き込まれるからね」
「もうちょっと違うことに配慮してほしかった…」
「あっはっはっ! 確かに!」
これでユアソーン家が高い爵位を持っていることにも納得できた。相変わらず父様のお仕事は謎だけど。
あれ? そこで王宮にいるとき、父様が朝疲れてたり腰が痛そうだったのって…。
「父様、陛下とえっちしてたの?!」
「レイジスー!」
もがっとお口を大きな手でふさがれて、もがもがとしていると「ああ! ごめんよ!」とお口から手を離してくれる。びっくりした!
「レイジス、そういうことは小声でね?」
「もがが! ごめんなさい! びっくりして…」
とはいっても今は遮蔽魔法で音は洩れてないはずなんだけど、その時は父様と一緒にすこぽんと忘れてた。
「いいかいレイジス。このことは内緒だからね?」
「あ、はい。分かりました」
しーと人差し指をお口に持って行く父様に、こくんと頷けばよしよしと頭を撫でられる。んっふふー。
「でも子供っていないんですよね?」
「うん?」
「えと…過去にユアソーン家と王家の間にできた子供はその子だけなんですよね?」
父様の言葉からして、作れるだけで生まれたって言葉はないからそう聞いたんだけど…。あれ?
「実は過去に3人ほどいるんだ」
「ぴ?!」
え?! いるの?!
ぼわっと後ろ髪を膨らませて逆立てれば「レイジス、ネコさんみたいだ」と父様がふふふと笑う。
ネコさんよりうさぎさんの方がいいです!
「その3人はね、ここではない他の世界の知識を持っていたんだよ」
「え?」
あれれ? それって…?
「それって…」
「そう。レイジス、君と同じだ」
「え?」
そう言って僕を見つめる父様の瞳は柔らかくて。
え? でもちょっと待って?
「ユアソーン家は男の子でも子供が作れる…」
「うん」
「ユアソーン家と王家は惹かれあう…」
「そうだね」
「ユアソーン家と王家の間にできた子供は…他の世界の知識を持っている…」
「うん」
「じゃあ…僕は…」
「レイジス。君はバイロンと僕との間にできた子だよ」
父様のその言葉に、ひゅっと喉が鳴った。
え? ちょっと待って。どういうこと?
「フリードリヒ殿下とは…腹違いの兄弟になるの?」
「王家の血は全く持っていないから厳密には兄弟にはならないね。『イデンシ』もないんだって」
「あ…え?」
理解が…。追いつかない。
僕が…陛下と父様の間にできた子供?
あれ? じゃあ母様は?
「そ、れじゃあ…。か…母様は…?」
「母様はね、元々公爵家のお嫁さんだったんだけどちょっといざこざがあって子供ができない身体になっちゃてね。それで絶望の淵にいた母様に結婚を申し出たんだ。ちょうどその時、僕もお嫁さんを探してたからね」
「え…そんな…」
「だから母様とレイジスは血が繋がっていないんだ。ごめんね」
そう言って頭を優しくなでてくれる父様。けど涙が止まらない。
ずっと父様と母様の子供だと思ってた。けど実際は違ってて。
「けど…僕にとって母様は母様です」
「そうだね。僕は父様だからね」
「はい」
ずびずびと鼻を鳴らして父様の胸に顔を埋めて泣けば、何度も何度も頭を撫でてくれる。
「陛下は…」
「うん?」
「陛下は、僕がそうだって知ってるんですか?」
「知らない…とは思うけど…。でも気付いてはいるんだろうね。バイロンはレイジスには甘いから」
そう言って苦笑いを浮かべる父様に、そういえば陛下に何度も頭を撫でてもらったことを思い出す。それに何をしても怒らないし、めちゃくちゃ心配される。
あ、結構思い当たることが多いな。
「レイジスが街に行くときも、自分の心配よりもレイジスの警備にほとんど割いてるからね」
「ほわ…」
だから第一騎士団副団長のフィルノさんがいたのか。
っていうかまずご自分のことを心配してくださいよー。
「まぁワイバーンに襲われたって聞いて警護が厳しくなったのもあるんだけどね」
「あれは…まぁ…」
そっかー。あれもあったからかー。
「あの時のバイロンの取り乱しようは僕以上だったよ」
そう言ってくすくす笑う父様は、本当に陛下のことが好きなんだなって。
それに涙がぴたりと止まって、鼻水を父様の服でぐしぐしと拭いた後光魔法で綺麗にしておく。
「ありがとう。レイジス」
「むっふふー」
難しい話を聞いたからか、安心したからか両方からか、僕のお腹の中の怪獣が「ぐごおおおぉぉっ!」と咆哮する。
ほわー!
「うんうん。お腹すいちゃったね」
「はじゅかしいー!」
しゅばっと顔を両手で隠せば「お腹がすくのは、とってもいいことだからね」と父様が笑う。
それから遮蔽魔法を解けば、侍女さんがなだれ込んできた。ほわわ?!
「今しがたものすごい音が聞こえたので心配しておりました!」
「んえー?!」
遮蔽魔法を使っても聞こえる僕のお腹の音に驚けば、早々におやつの準備が整っていく。
手を付けていないベリータルトをとりあえず父様の分までもっしゃぁと食べれば、次々におやつが置かれていく。それにわーい!と喜んでもぎゅもぎゅとおやつを食べれば、父様もにこにこしていて。
だから心に引っかかったものを頭の隅に追いやってしまった。
それが僕を苦しめるとも知らずに。
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