転生先はKOTY乙女ゲー部門大賞受賞作品でした

マンゴー山田

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chapter. 8

そして。

「おお! 久しぶりだな!」

伸び放題の草の中に放置された社が姿を現す。
主人公がここを見つけたのは入学式の日。そこに行けばいいか分からず、うろうろした結果ここにたどり着いた。
無理があるとは思うが、そうなのだから仕方ない。そんで主人公がいなことに気付いた樹享が恒晟と碧斗を連れて探しに来てくれた、というのが出会いだったりする。
それを今言う、ということはつまりはそういうことだ。不親切。

「やっぱボロボロだな…。どうにかして直したり…」

できねぇかな?という言葉は宙に舞う。

「どした?」
「…君のこと、ずっと探してたんだ…!」
「そかそか。一人ぼっちは寂しいもんな」

後ろから抱きつかれているため、ぽんぽんと腕を軽く叩いてやれば「ぐず」と鼻をすする音が耳元で聞こえる。
碧斗が泣いている…。正しくは『狐』なんだけどさ。
それでも碧斗が泣いている姿は初めて見る。立ち絵とかも泣いてるものはなかった。せいぜい困り顔で終わっていたから。
ぐずぐず、と泣きながらぎゅうぎゅうと抱きしめてくる碧斗の頭を撫でてやる。いつもしてくれるからな。お返しだ。

「君の…名前…」
「暁。五月七日暁」
「暁…。僕…ッ!」
「まぁまぁ、待て待て」

ステイ、とそのままの状態でいるように『狐』に伝えると、おずおずとそのまま抱きついている。

「お前が俺を探してたことには何にも言わないけどさ」
「うん」
「消えた生徒、返してくんない?」
「…暁が一緒にいてくれるなら」
「あー…そのことなんだけどさ」

なでなでと耳の生えている頭を撫でながら、俺は少しだけ躊躇う。

「俺、人間だからすぐ死ぬぞ?」
「え?」
「そうだろ?お前と俺の寿命がそもそも違うんだよ」
「え…でも父様は…」
「お前の父ちゃんはそもそも人間じゃなくしちまったからだよ」
「そう…なの?」
「そうなの」

こいつの父親も人間…元人間と結婚している。その前にその人に憑りつき妖化した。
つまりは『狐』が憑依し続けると人間は妖気を与えられ続け、少しづつ少しづつ人間から離れていくのだ。
それを利用して、こいつの父親はその人を人間から切り離してしまった。そのせいで、その人はこいつの父親に助けられと錯覚させられ嫁いだ。クソが。
こんな胸糞を乙女ゲーに組み込むんじゃない。

「じゃあ…暁も人間辞める?」
「辞めねぇよ」
「なんで?」
「んー…人間が好きだから?」
「僕も暁のこと好きだよ?」
「それは優しくされたからだろ?」
「そう…なのかな?」
「そうだよ。お前はカッコいいんだから、俺以外の方に目を向けて見ろ」
「…ぅん」
「よしよし。いい子だな」

そすよすと頭を撫でれば、肩に顎を乗せて気持ちよさそうに瞳を細めている『狐』がかわいく思える。
動物好きなんだよ。
するとぴくりと『狐』の耳が動き、顔を上げると俺の前に黒髪の顔が見えない人が立っていて。

「…九尾様」

男とも女とも取れる声にぱちりと瞬きをすると、その人が膝をつく。
高そうな着物が汚れるぞ、なんて思ってしまうのは仕方ないと思う。…うん。
その人の頭にも耳が、そして尻尾があり、もっふりとしている。もふりたい。

「お迎えに上がりました」
「…もうちょっと」
「これ以上ここに留まれば、九尾様は…ッ!」
「だって! せっかく暁に会えたのに!」
「そこの人」

帰りたくない!とごね始めた『狐』を背中で感じながら、膝をついているその人に声をかければ、耳が折りたたまれた。

「貴様か!」
「ちょい、話を聞いて」

威嚇すんのやめて、と告げてみるけど目の前の人がぐるぐると喉を鳴らしてその怒りを俺に向けてくる。わお。

「あのさ。この『狐』寂しいみたいだから、あんたが構ってやってよ」
「なにを…!」
「そうだよ!暁! 僕はこいつより暁に構ってもらいたいんだ!」

『狐』のこの言葉に、怒っていた狐の耳がさらに折りたたまれる。
『狐』にクリティカルを受けたその人が、目に見えて落ち込んでいる姿を見ると、ぺちんと頭を叩く。

「暁?」
「こら! お前を心配してきてくれた奴になんてことを言うんだ」
「だって…」
「だから、こいつと仲良くすれば問題ないだろ」
「え?」
「き、貴様…ッ! 何を…!」

頭を叩かれてきょとんとする『狐』とは逆に大慌てなのがそいつだ。
わたわたと目に見えて慌てているそいつに可愛いなぁとほんわか癒されたのだった。


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