8 / 20
chapter. 8
そして。
「おお! 久しぶりだな!」
伸び放題の草の中に放置された社が姿を現す。
主人公がここを見つけたのは入学式の日。そこに行けばいいか分からず、うろうろした結果ここにたどり着いた。
無理があるとは思うが、そうなのだから仕方ない。そんで主人公がいなことに気付いた樹享が恒晟と碧斗を連れて探しに来てくれた、というのが出会いだったりする。
それを今言う、ということはつまりはそういうことだ。不親切。
「やっぱボロボロだな…。どうにかして直したり…」
できねぇかな?という言葉は宙に舞う。
「どした?」
「…君のこと、ずっと探してたんだ…!」
「そかそか。一人ぼっちは寂しいもんな」
後ろから抱きつかれているため、ぽんぽんと腕を軽く叩いてやれば「ぐず」と鼻をすする音が耳元で聞こえる。
碧斗が泣いている…。正しくは『狐』なんだけどさ。
それでも碧斗が泣いている姿は初めて見る。立ち絵とかも泣いてるものはなかった。せいぜい困り顔で終わっていたから。
ぐずぐず、と泣きながらぎゅうぎゅうと抱きしめてくる碧斗の頭を撫でてやる。いつもしてくれるからな。お返しだ。
「君の…名前…」
「暁。五月七日暁」
「暁…。僕…ッ!」
「まぁまぁ、待て待て」
ステイ、とそのままの状態でいるように『狐』に伝えると、おずおずとそのまま抱きついている。
「お前が俺を探してたことには何にも言わないけどさ」
「うん」
「消えた生徒、返してくんない?」
「…暁が一緒にいてくれるなら」
「あー…そのことなんだけどさ」
なでなでと耳の生えている頭を撫でながら、俺は少しだけ躊躇う。
「俺、人間だからすぐ死ぬぞ?」
「え?」
「そうだろ?お前と俺の寿命がそもそも違うんだよ」
「え…でも父様は…」
「お前の父ちゃんはそもそも人間じゃなくしちまったからだよ」
「そう…なの?」
「そうなの」
こいつの父親も人間…元人間と結婚している。その前にその人に憑りつき妖化した。
つまりは『狐』が憑依し続けると人間は妖気を与えられ続け、少しづつ少しづつ人間から離れていくのだ。
それを利用して、こいつの父親はその人を人間から切り離してしまった。そのせいで、その人はこいつの父親に助けられと錯覚させられ嫁いだ。クソが。
こんな胸糞を乙女ゲーに組み込むんじゃない。
「じゃあ…暁も人間辞める?」
「辞めねぇよ」
「なんで?」
「んー…人間が好きだから?」
「僕も暁のこと好きだよ?」
「それは優しくされたからだろ?」
「そう…なのかな?」
「そうだよ。お前はカッコいいんだから、俺以外の方に目を向けて見ろ」
「…ぅん」
「よしよし。いい子だな」
そすよすと頭を撫でれば、肩に顎を乗せて気持ちよさそうに瞳を細めている『狐』がかわいく思える。
動物好きなんだよ。
するとぴくりと『狐』の耳が動き、顔を上げると俺の前に黒髪の顔が見えない人が立っていて。
「…九尾様」
男とも女とも取れる声にぱちりと瞬きをすると、その人が膝をつく。
高そうな着物が汚れるぞ、なんて思ってしまうのは仕方ないと思う。…うん。
その人の頭にも耳が、そして尻尾があり、もっふりとしている。もふりたい。
「お迎えに上がりました」
「…もうちょっと」
「これ以上ここに留まれば、九尾様は…ッ!」
「だって! せっかく暁に会えたのに!」
「そこの人」
帰りたくない!とごね始めた『狐』を背中で感じながら、膝をついているその人に声をかければ、耳が折りたたまれた。
「貴様か!」
「ちょい、話を聞いて」
威嚇すんのやめて、と告げてみるけど目の前の人がぐるぐると喉を鳴らしてその怒りを俺に向けてくる。わお。
「あのさ。この『狐』寂しいみたいだから、あんたが構ってやってよ」
「なにを…!」
「そうだよ!暁! 僕はこいつより暁に構ってもらいたいんだ!」
『狐』のこの言葉に、怒っていた狐の耳がさらに折りたたまれる。
『狐』にクリティカルを受けたその人が、目に見えて落ち込んでいる姿を見ると、ぺちんと頭を叩く。
「暁?」
「こら! お前を心配してきてくれた奴になんてことを言うんだ」
「だって…」
「だから、こいつと仲良くすれば問題ないだろ」
「え?」
「き、貴様…ッ! 何を…!」
頭を叩かれてきょとんとする『狐』とは逆に大慌てなのがそいつだ。
わたわたと目に見えて慌てているそいつに可愛いなぁとほんわか癒されたのだった。
「おお! 久しぶりだな!」
伸び放題の草の中に放置された社が姿を現す。
主人公がここを見つけたのは入学式の日。そこに行けばいいか分からず、うろうろした結果ここにたどり着いた。
無理があるとは思うが、そうなのだから仕方ない。そんで主人公がいなことに気付いた樹享が恒晟と碧斗を連れて探しに来てくれた、というのが出会いだったりする。
それを今言う、ということはつまりはそういうことだ。不親切。
「やっぱボロボロだな…。どうにかして直したり…」
できねぇかな?という言葉は宙に舞う。
「どした?」
「…君のこと、ずっと探してたんだ…!」
「そかそか。一人ぼっちは寂しいもんな」
後ろから抱きつかれているため、ぽんぽんと腕を軽く叩いてやれば「ぐず」と鼻をすする音が耳元で聞こえる。
碧斗が泣いている…。正しくは『狐』なんだけどさ。
それでも碧斗が泣いている姿は初めて見る。立ち絵とかも泣いてるものはなかった。せいぜい困り顔で終わっていたから。
ぐずぐず、と泣きながらぎゅうぎゅうと抱きしめてくる碧斗の頭を撫でてやる。いつもしてくれるからな。お返しだ。
「君の…名前…」
「暁。五月七日暁」
「暁…。僕…ッ!」
「まぁまぁ、待て待て」
ステイ、とそのままの状態でいるように『狐』に伝えると、おずおずとそのまま抱きついている。
「お前が俺を探してたことには何にも言わないけどさ」
「うん」
「消えた生徒、返してくんない?」
「…暁が一緒にいてくれるなら」
「あー…そのことなんだけどさ」
なでなでと耳の生えている頭を撫でながら、俺は少しだけ躊躇う。
「俺、人間だからすぐ死ぬぞ?」
「え?」
「そうだろ?お前と俺の寿命がそもそも違うんだよ」
「え…でも父様は…」
「お前の父ちゃんはそもそも人間じゃなくしちまったからだよ」
「そう…なの?」
「そうなの」
こいつの父親も人間…元人間と結婚している。その前にその人に憑りつき妖化した。
つまりは『狐』が憑依し続けると人間は妖気を与えられ続け、少しづつ少しづつ人間から離れていくのだ。
それを利用して、こいつの父親はその人を人間から切り離してしまった。そのせいで、その人はこいつの父親に助けられと錯覚させられ嫁いだ。クソが。
こんな胸糞を乙女ゲーに組み込むんじゃない。
「じゃあ…暁も人間辞める?」
「辞めねぇよ」
「なんで?」
「んー…人間が好きだから?」
「僕も暁のこと好きだよ?」
「それは優しくされたからだろ?」
「そう…なのかな?」
「そうだよ。お前はカッコいいんだから、俺以外の方に目を向けて見ろ」
「…ぅん」
「よしよし。いい子だな」
そすよすと頭を撫でれば、肩に顎を乗せて気持ちよさそうに瞳を細めている『狐』がかわいく思える。
動物好きなんだよ。
するとぴくりと『狐』の耳が動き、顔を上げると俺の前に黒髪の顔が見えない人が立っていて。
「…九尾様」
男とも女とも取れる声にぱちりと瞬きをすると、その人が膝をつく。
高そうな着物が汚れるぞ、なんて思ってしまうのは仕方ないと思う。…うん。
その人の頭にも耳が、そして尻尾があり、もっふりとしている。もふりたい。
「お迎えに上がりました」
「…もうちょっと」
「これ以上ここに留まれば、九尾様は…ッ!」
「だって! せっかく暁に会えたのに!」
「そこの人」
帰りたくない!とごね始めた『狐』を背中で感じながら、膝をついているその人に声をかければ、耳が折りたたまれた。
「貴様か!」
「ちょい、話を聞いて」
威嚇すんのやめて、と告げてみるけど目の前の人がぐるぐると喉を鳴らしてその怒りを俺に向けてくる。わお。
「あのさ。この『狐』寂しいみたいだから、あんたが構ってやってよ」
「なにを…!」
「そうだよ!暁! 僕はこいつより暁に構ってもらいたいんだ!」
『狐』のこの言葉に、怒っていた狐の耳がさらに折りたたまれる。
『狐』にクリティカルを受けたその人が、目に見えて落ち込んでいる姿を見ると、ぺちんと頭を叩く。
「暁?」
「こら! お前を心配してきてくれた奴になんてことを言うんだ」
「だって…」
「だから、こいつと仲良くすれば問題ないだろ」
「え?」
「き、貴様…ッ! 何を…!」
頭を叩かれてきょとんとする『狐』とは逆に大慌てなのがそいつだ。
わたわたと目に見えて慌てているそいつに可愛いなぁとほんわか癒されたのだった。
あなたにおすすめの小説
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って?
いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜