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凛と、木葉ちゃんと一緒にお昼ご飯を食べる。
紅葉君は寝坊して遅刻なんだとか。だからって、昼までこないのはもうサボりといってもいいのでは……と思ったのは心の中だけに留めておく。
弁当箱を広げた2人に対し、わたしはいつも通りパンとお惣菜の組み合わせ。この煮物、美味しいな。冷たいけど。
朝挨拶をした時からずっと思っていたのだけど、木葉ちゃんが眠そうだ。寝れなかったのかな? 紅葉君が寝坊だから、もしかして夜更かしに付き合っていたとか。
紅葉君に睨まれながらお昼を一緒に食べるのも、最近じゃ定番となってきたからなぁ。いないといないで不思議と物足りなさがある。
警戒心の強い野良猫のようなあの姿は、見ていて癒される何かがある。
席の周りでは、仲良しのグループがわたしたちと同じように集まってお喋りをして楽しそうに笑い声をあげている。椅子を引いた時に床と擦れる音や、ふざけたように友達の背中を軽く叩く音。
それらが子守唄代わりになっているのか、いつも眠そうなたれ目が更にとろんとしている木葉ちゃんが、ウインナーを口に運ぶ。動く小さな口を眺めながら、口を開く。
「木葉ちゃん、睡眠不足? 眠そうだね」
「え」
「え?」
周囲の声にかき消されない程度の音量で綺麗に重なった声に、パックのお惣菜に伸ばしかけた箸の動きを止める。
弁当箱をつついていた箸も止まっていて、見上げて顔を伺う。びっくりした顔をしている木葉ちゃんと凛を見て、首を傾げる。
何か変なこと、言ったかな。
箸を立てかけるように斜めに置いて、椅子の上で身動ぎをする。両手で揉むようにロールパンを袋から押し出してかじりつく。
口を動かしながら袋を片手に持ち、牛乳パックを持ち上げて差したストローに口を近付け、吸い上げる。
口の中でバター風味のロールパンと、牛乳の味が混ざって、小学校の頃の給食を思い出した。給食では定番の組み合わせだけど、そこにパックの煮物が混ざっているのでちょっとおかしい。
胃の中に入れる分には何でもいいんだけど、折角友達と食べるんだし弁当とか作ろうかな……。自分の料理に自信はなけど、頑張ればなんとかなるだろう、多分。
凛みたいな色とりどりの鮮やかで健康的な弁当は目指せなくとも、主婦の味方冷凍食品をフル活用すれば、それなりのものが出来上がると思う。
家の近くのスーパーは大きいから、冷凍食品も品ぞろい豊富。帰りにいくつか買って、明日から挑戦してみよう。
「よくわかったねぇ、六花ちゃん。実は紅葉に付き合わされて朝からすっごい眠いの~」
「木葉が眠いことに気づく人、初めて見た」
「そんな馬鹿な」
困ったように肩を揺らして笑う木葉ちゃんの言葉に頷きながら、凛の呟きに思わず突っ込んでしまう。
いくら元が眠そうなたれ目をしているとはいえ、明らかに眠そうなら気付くでしょう。現に、凛だって気付いていたわけだし。
疑うような目で見ると、木葉ちゃんが小さな口を開けて欠伸をしながら、むにゃむにゃと答えた。
「私いつも眠そうに見えるみたいでね~、本当に眠い時に気付く人、あまりいないの」
「え、そうなの?」
「うん。だからびっくりしちゃった~。六花ちゃんって人のこと、よく見てるよねぇ」
美味しそうな焦げ目のついた卵焼きを箸で一口サイズに切りながら、うんうんと凛が頷く。
ふぁあ、と可愛らしい声をもらしながら欠伸をして目じりに溜まった涙を指先で拭う木葉ちゃんの言葉に、ドキリとする。
見えている人が本当に人なのか、それとも化けたあやかしなのか判別がつかないから、無意識に警戒して観察する癖がついていたみたいだ。
よく見てる、と言われたら確かにその通りである。
よく見ないと、危ないからね。間違えたら、この間の神社のようなことをやってしまう。周りの人から変に思われないよう、あやかしと遭遇しても平常心を保てるように生きてきた。
神社での一件があってから、更に警戒するようになった。特に離れたところから声をかけられた時は、不用意に近付くことをやめた。
目が悪くて遠目だとわからない、と誤魔化せば相手は納得してくれる。
いつの間にか、わたしも息をするように嘘をつくようになった。相手が友達であっても、大切な人であっても。
これからもそうやって生きていく。そうやって生きていくしかない。
犬飼さんも、こんな気持ちになったりとかしたのかな。なんて考えて、朝までお説教コースだったあの日を思い出してげんなりする。
解決したからよかったけど、あの日以来わたしはそーちゃんと会っていない。
連絡する頻度も減っている。そーちゃんから来ることも減って、あの日の話が夢だったらよかったのにと何度思ったか。
「あ、そういえば」
眉を下げて、申し訳なさそうに手を合わせて木葉ちゃんがわたしに頭を下げる。
「紅葉から伝言。放課後学校近くの公園で待ってる、って。本当にごめんね~、私も何回か話してみたんだけど、聞いてくれなくて……」
「紅葉が!? あいつ……もう! 六花、行かなくていいから。代わりにうちが行く」
「え、いいよ。わたしも話したいなって思ってたし、丁度いい」
そこまで言って、学校の近くに公園なんてあったっけ? と考える。
凛は怒ってわたしについてくる気満々だし、木葉ちゃんはひたすら謝ってくるので2人を宥めながら、公園の場所を思い出そうと学校近くを携帯のマップで開く。
拡大して、ようやく見つけた公園は学校の裏手にあるみたい。しかも、かなり小さい。
授業が終わったら、帰り支度を済まして向かえばいいかな。とりあえずそれまでに凛の怒りを抑えておかないと。ついてこられても、話しづらいし。
紅葉君がどうしてあんなにわたしを警戒するのか、知りたい。だから、直接話をした方がいいんだと思う。
紅葉君は凛を心配している。それが伝わってくるから、怒りは湧いてこない。
昼休みの間に凛を何とか説得することに成功したので、授業を終えて課題や筆箱を鞄に突っ込み杖を片手に急ぎ足で公園へ向かう。
教室から出る際に凛と木葉ちゃんに心配そうに見られたけど、大丈夫だよと笑って伝える。
公園は、学校から出て歩いて3分ぐらいの場所にあった。いざ着いてみると、本当に小さい。その割に大木があって、枝があちこちに伸びているので更に小さく感じる。
公園といっても遊具らしきものは存在せず、ベンチが端の方にポツンと置いてあるだけ。
……これ、公園っていうの? 首を傾げながらも、寝坊したあとそのまま学校にこなかった紅葉君がベンチのそばに立っているのが見えたから、薄暗い公園に足を踏み入れる。
大木から伸びた枝に葉はついておらず、枯れた落ち葉が絨毯のように広がっている。落ち葉を踏みしめながらベンチに近付くと、紅葉君が鋭い視線を向けてくる。
「木葉ちゃんから伝言受けたんだけど、何で紅葉君はわたしを警戒してるの? 嫌っているわけじゃないよね、凛を心配しているんでしょ?」
「……おれと木葉は、凛が中学の時に知り合った。今の姿からは絶対想像つかねぇと思うぞ。凛の髪の毛金色だったからな。ピアスも開いてたし、何なら酒とタバコにも手を出してた。グレてたんだよ」
グレた、というにはだいぶ激しい気もするけど、わたしの感覚はズレているっぽいからグレているの範囲に収まるんだろう……多分。
確かに今の凛からは想像もつかない。髪の毛金色で、ピアス開けてタバコふかしてお酒飲んでるとかね。
うーん、荒れた中学生だったんだなぁ。その時の凛と知り合ったってことは、紅葉君と木葉ちゃんもグレていたのかな。不良のたまり場的なところで……みたいな?
「そうなんだ」
「凛の周りには敵しかいなかった。凛の見た目がいいから、教師からの評価がいいから、そんなくだらねぇ理由でクラスの女子は凛に突っかかって、いじめられた結果不良誕生ってわけ」
「ふぅん」
「冷たい反応だな。お前、やっぱりーー」
「うん。それで? 話続けて」
言葉を遮られたことが気に食わなかったのか、わたしの相槌が気に触ったのかわからないけど、胸ぐらを掴まれた。その目は、怒りに満ちている。
小柄とはいえ、高校男子の力だ、苦しいっちゃ苦しい。それにオーダーメイドの大切な制服が破れしまいそうなので、さっさと離してほしい。
「離してくれる? 話をするために呼んだんじゃないの?」
「うるせぇ! お前も凛を騙す気なんだろ! 友達の顔して近付いて、凛が心を許したら捨てるんだ。あいつらと同じように……っ」
何を言ってるのかさっぱりである。紅葉君はすっかりお怒りモードで、制服を掴む手に力を込める。
シワになるかな、その前に破れるかも。足が浮きそうになりながらも、あやかしに首掴まれて宙ぶらりんになった時よりはまだマシだなぁと考えてしまうあたり、やっぱりわたしはズレているのかもしれない。
「苦しい、けど……わたしの、声聞こえ、てる?」
「凛から離れろ。傷付けるな。凛はおれと木葉が守るんだ」
ーーえ?
怒りに我を忘れたのか、紅葉君の頭に三角の耳が2つ。すっかり辺りが暗くなった中で、銀色の狼に姿を変えていく紅葉君の姿はとても目立つ。溢れ出る妖気に、空気が震える。
おいおい、これ犬飼さんとか雨城さんとかに見つかったら一発でアウトでしょ。数日前に犬飼さんから式神が飛んできたことを考えて、宥めた方がいいだろう。
しかし、まぁ。高校生になって初めてできた友達があやかしだったとは……結構、いやかなりショック。紅葉君があやかしってことは、木葉ちゃんもそうなんだろう。全然わからなかった。
……ああ、本当に。嫌になっちゃうなぁ。
狼に姿を変えた紅葉君の力が更に強くなり、きゅっと首が締まって苦しい。そのまま掴まれていたら変化が解けた時に折れてたかな。危なかった。
「何してるの」
全身に寒気が走る。空気が凍ったような、声。
紅葉君は寝坊して遅刻なんだとか。だからって、昼までこないのはもうサボりといってもいいのでは……と思ったのは心の中だけに留めておく。
弁当箱を広げた2人に対し、わたしはいつも通りパンとお惣菜の組み合わせ。この煮物、美味しいな。冷たいけど。
朝挨拶をした時からずっと思っていたのだけど、木葉ちゃんが眠そうだ。寝れなかったのかな? 紅葉君が寝坊だから、もしかして夜更かしに付き合っていたとか。
紅葉君に睨まれながらお昼を一緒に食べるのも、最近じゃ定番となってきたからなぁ。いないといないで不思議と物足りなさがある。
警戒心の強い野良猫のようなあの姿は、見ていて癒される何かがある。
席の周りでは、仲良しのグループがわたしたちと同じように集まってお喋りをして楽しそうに笑い声をあげている。椅子を引いた時に床と擦れる音や、ふざけたように友達の背中を軽く叩く音。
それらが子守唄代わりになっているのか、いつも眠そうなたれ目が更にとろんとしている木葉ちゃんが、ウインナーを口に運ぶ。動く小さな口を眺めながら、口を開く。
「木葉ちゃん、睡眠不足? 眠そうだね」
「え」
「え?」
周囲の声にかき消されない程度の音量で綺麗に重なった声に、パックのお惣菜に伸ばしかけた箸の動きを止める。
弁当箱をつついていた箸も止まっていて、見上げて顔を伺う。びっくりした顔をしている木葉ちゃんと凛を見て、首を傾げる。
何か変なこと、言ったかな。
箸を立てかけるように斜めに置いて、椅子の上で身動ぎをする。両手で揉むようにロールパンを袋から押し出してかじりつく。
口を動かしながら袋を片手に持ち、牛乳パックを持ち上げて差したストローに口を近付け、吸い上げる。
口の中でバター風味のロールパンと、牛乳の味が混ざって、小学校の頃の給食を思い出した。給食では定番の組み合わせだけど、そこにパックの煮物が混ざっているのでちょっとおかしい。
胃の中に入れる分には何でもいいんだけど、折角友達と食べるんだし弁当とか作ろうかな……。自分の料理に自信はなけど、頑張ればなんとかなるだろう、多分。
凛みたいな色とりどりの鮮やかで健康的な弁当は目指せなくとも、主婦の味方冷凍食品をフル活用すれば、それなりのものが出来上がると思う。
家の近くのスーパーは大きいから、冷凍食品も品ぞろい豊富。帰りにいくつか買って、明日から挑戦してみよう。
「よくわかったねぇ、六花ちゃん。実は紅葉に付き合わされて朝からすっごい眠いの~」
「木葉が眠いことに気づく人、初めて見た」
「そんな馬鹿な」
困ったように肩を揺らして笑う木葉ちゃんの言葉に頷きながら、凛の呟きに思わず突っ込んでしまう。
いくら元が眠そうなたれ目をしているとはいえ、明らかに眠そうなら気付くでしょう。現に、凛だって気付いていたわけだし。
疑うような目で見ると、木葉ちゃんが小さな口を開けて欠伸をしながら、むにゃむにゃと答えた。
「私いつも眠そうに見えるみたいでね~、本当に眠い時に気付く人、あまりいないの」
「え、そうなの?」
「うん。だからびっくりしちゃった~。六花ちゃんって人のこと、よく見てるよねぇ」
美味しそうな焦げ目のついた卵焼きを箸で一口サイズに切りながら、うんうんと凛が頷く。
ふぁあ、と可愛らしい声をもらしながら欠伸をして目じりに溜まった涙を指先で拭う木葉ちゃんの言葉に、ドキリとする。
見えている人が本当に人なのか、それとも化けたあやかしなのか判別がつかないから、無意識に警戒して観察する癖がついていたみたいだ。
よく見てる、と言われたら確かにその通りである。
よく見ないと、危ないからね。間違えたら、この間の神社のようなことをやってしまう。周りの人から変に思われないよう、あやかしと遭遇しても平常心を保てるように生きてきた。
神社での一件があってから、更に警戒するようになった。特に離れたところから声をかけられた時は、不用意に近付くことをやめた。
目が悪くて遠目だとわからない、と誤魔化せば相手は納得してくれる。
いつの間にか、わたしも息をするように嘘をつくようになった。相手が友達であっても、大切な人であっても。
これからもそうやって生きていく。そうやって生きていくしかない。
犬飼さんも、こんな気持ちになったりとかしたのかな。なんて考えて、朝までお説教コースだったあの日を思い出してげんなりする。
解決したからよかったけど、あの日以来わたしはそーちゃんと会っていない。
連絡する頻度も減っている。そーちゃんから来ることも減って、あの日の話が夢だったらよかったのにと何度思ったか。
「あ、そういえば」
眉を下げて、申し訳なさそうに手を合わせて木葉ちゃんがわたしに頭を下げる。
「紅葉から伝言。放課後学校近くの公園で待ってる、って。本当にごめんね~、私も何回か話してみたんだけど、聞いてくれなくて……」
「紅葉が!? あいつ……もう! 六花、行かなくていいから。代わりにうちが行く」
「え、いいよ。わたしも話したいなって思ってたし、丁度いい」
そこまで言って、学校の近くに公園なんてあったっけ? と考える。
凛は怒ってわたしについてくる気満々だし、木葉ちゃんはひたすら謝ってくるので2人を宥めながら、公園の場所を思い出そうと学校近くを携帯のマップで開く。
拡大して、ようやく見つけた公園は学校の裏手にあるみたい。しかも、かなり小さい。
授業が終わったら、帰り支度を済まして向かえばいいかな。とりあえずそれまでに凛の怒りを抑えておかないと。ついてこられても、話しづらいし。
紅葉君がどうしてあんなにわたしを警戒するのか、知りたい。だから、直接話をした方がいいんだと思う。
紅葉君は凛を心配している。それが伝わってくるから、怒りは湧いてこない。
昼休みの間に凛を何とか説得することに成功したので、授業を終えて課題や筆箱を鞄に突っ込み杖を片手に急ぎ足で公園へ向かう。
教室から出る際に凛と木葉ちゃんに心配そうに見られたけど、大丈夫だよと笑って伝える。
公園は、学校から出て歩いて3分ぐらいの場所にあった。いざ着いてみると、本当に小さい。その割に大木があって、枝があちこちに伸びているので更に小さく感じる。
公園といっても遊具らしきものは存在せず、ベンチが端の方にポツンと置いてあるだけ。
……これ、公園っていうの? 首を傾げながらも、寝坊したあとそのまま学校にこなかった紅葉君がベンチのそばに立っているのが見えたから、薄暗い公園に足を踏み入れる。
大木から伸びた枝に葉はついておらず、枯れた落ち葉が絨毯のように広がっている。落ち葉を踏みしめながらベンチに近付くと、紅葉君が鋭い視線を向けてくる。
「木葉ちゃんから伝言受けたんだけど、何で紅葉君はわたしを警戒してるの? 嫌っているわけじゃないよね、凛を心配しているんでしょ?」
「……おれと木葉は、凛が中学の時に知り合った。今の姿からは絶対想像つかねぇと思うぞ。凛の髪の毛金色だったからな。ピアスも開いてたし、何なら酒とタバコにも手を出してた。グレてたんだよ」
グレた、というにはだいぶ激しい気もするけど、わたしの感覚はズレているっぽいからグレているの範囲に収まるんだろう……多分。
確かに今の凛からは想像もつかない。髪の毛金色で、ピアス開けてタバコふかしてお酒飲んでるとかね。
うーん、荒れた中学生だったんだなぁ。その時の凛と知り合ったってことは、紅葉君と木葉ちゃんもグレていたのかな。不良のたまり場的なところで……みたいな?
「そうなんだ」
「凛の周りには敵しかいなかった。凛の見た目がいいから、教師からの評価がいいから、そんなくだらねぇ理由でクラスの女子は凛に突っかかって、いじめられた結果不良誕生ってわけ」
「ふぅん」
「冷たい反応だな。お前、やっぱりーー」
「うん。それで? 話続けて」
言葉を遮られたことが気に食わなかったのか、わたしの相槌が気に触ったのかわからないけど、胸ぐらを掴まれた。その目は、怒りに満ちている。
小柄とはいえ、高校男子の力だ、苦しいっちゃ苦しい。それにオーダーメイドの大切な制服が破れしまいそうなので、さっさと離してほしい。
「離してくれる? 話をするために呼んだんじゃないの?」
「うるせぇ! お前も凛を騙す気なんだろ! 友達の顔して近付いて、凛が心を許したら捨てるんだ。あいつらと同じように……っ」
何を言ってるのかさっぱりである。紅葉君はすっかりお怒りモードで、制服を掴む手に力を込める。
シワになるかな、その前に破れるかも。足が浮きそうになりながらも、あやかしに首掴まれて宙ぶらりんになった時よりはまだマシだなぁと考えてしまうあたり、やっぱりわたしはズレているのかもしれない。
「苦しい、けど……わたしの、声聞こえ、てる?」
「凛から離れろ。傷付けるな。凛はおれと木葉が守るんだ」
ーーえ?
怒りに我を忘れたのか、紅葉君の頭に三角の耳が2つ。すっかり辺りが暗くなった中で、銀色の狼に姿を変えていく紅葉君の姿はとても目立つ。溢れ出る妖気に、空気が震える。
おいおい、これ犬飼さんとか雨城さんとかに見つかったら一発でアウトでしょ。数日前に犬飼さんから式神が飛んできたことを考えて、宥めた方がいいだろう。
しかし、まぁ。高校生になって初めてできた友達があやかしだったとは……結構、いやかなりショック。紅葉君があやかしってことは、木葉ちゃんもそうなんだろう。全然わからなかった。
……ああ、本当に。嫌になっちゃうなぁ。
狼に姿を変えた紅葉君の力が更に強くなり、きゅっと首が締まって苦しい。そのまま掴まれていたら変化が解けた時に折れてたかな。危なかった。
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