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ままはる

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第五章

ハルトブルグ

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目を離すと魔法を試し、やはり発動できなくて体調を崩すゼンを代わる代わる見張りながら、一向はハルトブルグに到着した。

ハルトブルグは別名花の都と呼ばれ、街のいたるところで花が咲き、飾られ、花屋には珍しい品種の花々が売られている。

ゼンは街を歩きながら、こんなにも彩り鮮やかな街だったのかと内心で感心した。
懐かしさは感じない。思えば学校にもあまり通えず、ほとんどを家の敷地内で過ごしていたからだ。

「私は宿の手配をしてくるけど、みんなはどうする?」

「俺は教会に行って、遺骨が届いているか確認してくる」

リズの問いに、住所が書かれたメモを見ながらセイルが答える。
ゼンの両親の遺体は、ゼンの容疑が晴れた後に警察から焼き場に運び、荼毘に付した。持ち運ぶのは気乗りしなかったので、グリーンヒルの葬儀屋からハルトブルグの教会に運んでもらっている。

「じゃあオレたちは、家に行く?」

「……気が進まないな……」

「場所さえ教えてくれたら、オレとウィルで行って様子見てくるけど?」

憂鬱そうなゼンに気を遣うラリィ。しかしゼンは軽く首を振った。

「滞在中に……出来るだけ片付けてしまいたい。が、こっちは無理に来なくても……」

と、フォトを目線で示す。

「わ、私もお片付け、手伝う」

「ゼンもフォトも、無理しないでね。私も宿の手配が終わったら、そっちに合流するわ。それからゼンは、時間を見つけて魔法士協会に行ってね。絶っ対に魔法を試そうとしないで」

大きな街には大体、魔法士同士が情報交換出来る、魔法士協会という組合がある。そこで、魔法が使えなくなった原因を相談することが出来るだろう。

「……わかった」

ーー警察署で聞いた実家の住所を頼りに、慣れない街の住宅地を歩く四人。
フォトの目はほとんど見えていないので頼りにならず、ゼンも聞き覚えのない地名に最初は手こずっていたが、次第に朧げな記憶と一致する景色が見えて来た。

「……不思議な気分だな」

二度と歩く事がないと思っていた道を、あの頃想像もしていなかった自分が、こうして歩いている。

「大丈夫か?」

フォトの手を引きながら、ラリィがゼンの顔を覗き込む。

「そんなに、心配か……?」

「そりゃ、友達だからな」

「……俺は、お前の友達、だったのか……?」

「え、違うの!?」

「同僚だと……」

「なんか他人行儀だし、友達で良くね?」

「いい……のか?」

そう言えばラリィは初めて会った時から、同僚とか後輩とかそういう次元を超えて、馴れ馴れしかったな、と思う。

「そういやゼン先輩とセイル先輩って、何年目なんですか? 二人は同期なんですよね?」

「……今年で五年目、か?」

「五年目なのに、寮は出ないんですか?」

寮に入っていなければいけないのは、三年までである。あとは任意だが、相部屋なのでほとんどの隊士は四年目になると寮を出て行く。

「安いし……訓練場に近いし、わざわざ別に家を借りる必要性がないからな……」

「まぁ、確かに」

ルームメイトも家族同然のセイルなので、気を遣うこともない。

「……」

やがてゼンは、一軒の家の前で足を止めた。
確かに見覚えがある、赤い屋根のこぢんまりとした家。

「ここですか?」

「ああ……」

フォトがラリィから手を放し、手探りで家の門を開けた。しかしそのまま玄関には向かわず、壁伝いに庭の方へと歩いて行く。その後を、ゼンたちも付いて行った。

「あ……」

庭の景色を見て、ゼンの記憶が鮮明に蘇った。
片隅に置いてある、古くて小さな物置小屋。あそこに、よく閉じ込められていた。
フォトの足もまた、その物置小屋に向かっている。

「フォト? そっちじゃなくて、家の中に入らねーか?」

「私はそっちのお家に入っちゃダメなの。私のお家は、こっち」

と、指を差したのは物置小屋。
二メートル四方の小屋を開くと悪臭が漂い、薄汚れた毛布が数枚置いてあるだけだった。

「マジか……」

「フォト、もうそっちには行かなくていいんだ」

立ち尽くすウィルと、堪らずフォトを抱き締めるラリィ。

「あ……そっか」

「ゼン。早く終わらせて、グリーンヒルに帰ろうぜ! オレでさえ、こんな所に長くいたくねーよ」

「そう……だな」

玄関に戻りながら、一度だけ振り返って物置小屋を見た。
当時は怖くて堪らなかったこの小屋に、ライトが迎えに来てくれた。フォトにも救いの手を差し伸べてやりたいと思うが、果たして自分にそんなことが出来るのだろうか。
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