I'll

ままはる

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第九章

ラーメン屋にて

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「結局、オレとラグエルってどーなったんだ?」

「……」

 アレクシスとの謁見を終えた後、その足でラリィはゼンと昼食を摂りにラーメン屋へと入った。
 先週からフォトは学校へ通い始めた。学校では給食が出るので、ゼンは妹の昼食を心配する必要が無くなったのだ。
 ちなみにリズとウィルはラーメンの気分ではないからと、2人で寮の食堂へ行った。

「つまり……様子見、だな」

「オレがヤク中だから?」

「……もう手は出していないのだろう?」

「逮捕されてからは1回も。でもこーゆーのって、経歴とかが大事ってことだろ?」

 確かにアレクシスは、ラリィに前科があることに難色を示していた。ラリィはその経歴だけを聞くのと、実際に会って会話をした場合のギャップが大きい。もしもラリィを守護剣士として扱った場合、経歴だけが独り歩きすることだろう。

「ラグエルも、まだ完全には信用出来ない」

「何も考えてねーぞ、あいつ。ただの脳筋だし」

「……たった数ヶ月で、判断はできない。国宝にするなら、慎重に決めるべきだろう。……シュイたちも、恐らく守護剣として扱われるまでに、それなりの時間があったはずだ」

 届いたラーメンを啜るゼン。
「お前も、ラグエルも、問題を起こさず王の信頼を得られるまで……現状維持、だな」

「なんかややこしいな。別にオレ、守護剣士じゃなくていいんだけど。ーーここ、味噌ラーメンも美味いな」

「……塩も、美味い」

 暫しズルズルと、並んで麺を啜るふたり。

「フォト、学校どんな感じ?」

「楽しい、らしい」

「学校で友達出来たら、もうオレとも遊んでくれなくなるかな? 遊んでくれるうちに、今度一緒に猫カフェ行こって言っといて」

「気が向いたら、伝えておく」

「気が向いたらかよ」

「……そう言えば、やたらとお前の指の心配をしていたが……?」

「あー、手品……じゃないけど、親指が外れたように見せるアレな。この間フォトにやって見せたんだけど、本気で信じてくれて可愛かったぞ」

「すごく、痛そうだったと……引いていた」

「オレの演技力も捨てたもんじゃねーな」

 そんな他愛の無い会話を繰り返す。
 ラリィはゼンと話すのが楽しくて堪らない。
感情の抑揚もなく、無表情。そんなゼンが時折見せるようになった表情の変化を見つけると、なんだか無性に嬉しくなるのだ。

「……お前は、大丈夫なのか?」

「何が?」

「弥月」

「どーかな。そろそろ何か仕掛けてきそうだよな」

 スープを飲み干し、次は餃子を口に放り込むラリィ。

「うまっ。午後から仕事じゃなかったらビール頼むのに……!」

「……弥月は俺たちには敵意がない。だから怖くはない、か?」

「んー……いやぁ。多分だけど、オレ、死ぬんじゃないかと思ってる」

 ゼンは手を止めた。どういう意味かと尋ねるような目をラリィに向ける。

「ウィルの目の前で、オレを殺そうとするんじゃないかなって。あいつ、ウィルを虐めるのが楽しいらしいし、最終的にはオレたち全員殺すつもりかも」

「有り得なくはない……な」

「だから怖くないことは無いんだけど、ウィルと約束もしたし、簡単に死ぬつもりはねーよ」

「……ソレは、そう言う事か」

 ゼンは目線で、ラリィが帯剣している短剣を指した。魔物の討伐中でもないのに、ラリィが帯剣しているのは珍しい。グリーンヒルに帰ってきてから、休みの日でもこの剣をぶら下げている姿をよく見かけていた。

「まぁ……何があるかわかんねーからな。――おっちゃーん! 餃子1人前追加で!」

 カウンターの奥に声を張り上げながら、ラリィは短剣をゼンに渡した。
 受け取ったゼンは、不思議そうな顔をする。

「これ……?」

「もしもオレが思った通りに死んだらさ、後のことを頼みたいんだ」

「……馬鹿なことを……」

「オレも馬鹿なことだと思うけど、万が一って事もあるし。ウィルを悲しませる……いや、約束を破ったって怒るかもしれねーなぁ。でも、その時はウィルのこともよろしくな」

「……」

「こんな事、ゼンにしか頼めねぇんだよ。あ、セイルやリズには内緒な」

 ゼンは呆れた顔で短剣をラリィに返す。

「……死ぬなよ」

「オレだってまだ死にたくねーよ」
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