I'll

ままはる

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第九章

やっぱり付き合ってる?

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⭐︎

「もうぶん殴った方が早くないですか?」

 剣士隊の訓練場にある談話室。
 そこで不穏な発言をしたのは、ウィルだった。
 ウィルと向かい合っているのは、リズとセイル。2人は腕を組んで身を寄せ合っている。
  セイルはうんざりした顔で、リズに言う。

「せめてセクハラで訴えたらどうだ」

「無駄に権力持ってるから、訴えても勝てる気がしないのよね」

 セイルのリズの背後、少し離れた場所にはブラッドフォードがいた。

 リムの村から、第3部隊1班が1人も欠けることなく帰ってきたことが面白くない。それどころか守護剣が増えて、それをラリィが所持していることも気に入らない。せめて遠征中にこの2人が破局していれば良かったのだが、相変わらずイチャイチャしていて許せない――そんな色んな負の感情をごちゃ混ぜにして、とんでもない目でリズを睨んでいるのだ。

「ここまで来ると狂気を感じますよね。そのうち、リズ先輩を巻き込んで心中したりして」
「やめてよ……」
「ちょっとセイル先輩。リズ先輩の頭に手を置いてみてください」
「?」

 ウィルに言われるがままセイルがリズの頭に触れた瞬間、ブラッドフォードから痛いくらいの殺気が迸ってきた。

「わぁ。殺気って目に見えるものなんですね」
「おい。遊ぶな」
「先輩だってチューしたじゃないですか」
「フリをしただけだ……」
「あの人の神経を逆撫でするだけなら、この作戦は中止ね」

 そう言ってリズがセイルから離れようとした時、背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。

「やっぱりあの2人、付き合ってるよなぁ? どう思う?」

 ラリィの声だ。
 しかもあろうことか、ブラッドフォード本人に話しかけている。

「……は?」

「ほら、リズとセイル。あんなにくっついて見せつけてさぁ。でもまぁ、美男美女だしお似合いっちゃあお似合いか」

「……お前は、私に話しかけているのか?」

「こんなに目ぇ見て話してんのに、違ったら怖くねぇ?」

「馴れ馴れしい……」

「そう? ぶたいちょ……あ、オレの部隊のぶたいちょは、無理に敬語で話さなくていいって言ってくれるんだけど」

 それはラリィが敬語を話そうとすると無茶苦茶になるからなのだが。

「あ。ほらほら、見て! 2人で見つめ合って……ヤだねー。リズってば幸せそうな顔しちゃって!」

 ブラッドフォードには引き攣っているように見えるのだが、あれが彼女の幸せそうな顔なのだろうか。

「あいつら、仕事中は全然そんな素振り見せねーの。でも仕事が終わるとそりゃあイチャイチャしてさぁ。もう結婚の話も出てるみたい。まぁ、好きな人と一緒にいられるってのは、幸せだよなぁ。ぶたいちょもそう思うだろ?」
「……」

 ブラッドフォードは、表面上はそんな話題に興味は無いといった顔でラリィを無視し、踵を返した。
 そのまま去ろうとした背中に、ラリィは言う。

「そういや、グレイスは元気?」

 ブラッドフォードの動きがピタリと止まる。ゆっくりと振り返り、ラリィの目を見る。

「……何だと?」
「グレイスはあんまり父ちゃんには似てないよなぁ? ロイドは父ちゃん似だけど」
「何故お前如きが、私の娘と息子を知っている?」
「友達だからだけど?」
「は?」

 ラリィはニコニコと笑顔を浮かべる。

「オレの友達の友達の友達の紹介で、一緒に遊んだことあんの。2人とも良い子だな」
「そんな馬鹿な……」

 頭を抱えるブラッドフォードをよそに、ラリィは笑顔で続けた。

「オレ、口軽いから職場での父ちゃんの話、結構しちゃうんだよな」
「……何を」
「おっかないけど仕事がデキてソンケーできる人だ、とか。素振りの練習を見たけど、風を斬る音がすごかったとか。食堂ではいっつも辛いもの食ってるとか」
「……」

「見たまんま喋っちゃうと思うから、いつまでもソンケーできる上司でいてクダサイネ」

 ブラッドフォードは顔を真っ赤にして、逃げるように談話室から出て行った。
 ブラッドフォードの足音が完全に離れてから、リズたちはラリィの側へと移動する。

「誰と誰が結婚するのよ」
「あれ? 聞こえてた?」

 ジト目で突っ込むリズに、ラリィは笑う。

「ラリィ先輩、本当にあのおっさんの子供と友達なんですか?」
「ホントだってば。子供たちは、父ちゃんの女癖の悪さは知ってるみたいだったけどな。ところで……それ、まだ続けんの?」

 ラリィは、セイルとリズの絡み合った腕を指差す。リズは慌ててセイルから離れた。

「リズも水臭いよなぁ。付き合ってるフリするくらい困ってるなら、早く言えば良かったのに。オレのことまで騙してさぁ!」
「ここまでしつこいと思わなかったし……それにあんたが勝手に騙されていただけじゃない」

 創世祭まで、本気でラリィはリズとセイルは付き合っていると信じていたのだ。

「でもこーゆーのって、嘘からホントになるパターンもあったり……?」
「ない」

 バッサリと否定するセイル。

「こんな拗らせ女、誰が好き好んで付き合いたいと思う?」
「別に拗らせてなんかないし……」
「それにしても、今のは効いたかもですね。さすがに自分の子供には知られたくないだろうし、これで暫くはあのエロジジイも大人しくなるんじゃないですか?」

 リズは気まずそうにラリィをチラリと見る。

「……あ、あり…………ぅ」
「ん? 何?」
「っ! だから! あり――」

 リズが言いかけた時、談話室の一角に集まっていた隊士のうちの1人が、ラリィの所へとやって来た。
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