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第1話 猫耳令嬢、勇者王子に婚約破棄される。
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「ミーナ・キャティ! 君との婚約を破棄する!」
宿屋から出発する朝。婚約者ユークリウッド・スカイフォールから、突然告げられた言葉がそれだった。
「なぜですか! 理由を教えてください勇者様!」
私はすがりついた。彼を愛していた。離れたくなかった。
ユークリウッドはこの国、スカイフォール王国の第三王子。公爵家である私の家と、スカイフォール王家は長年の交流があった。
幼馴染の私たち。お互い意識しあっていた。淡い恋心。
私は三歳頃まで、教会で育った。火災で両親を失うも、奇跡的に生き延びた猫耳族の孤児だった。猫耳族は、猫の耳と優れた身体能力以外は、普通の人間と変わらない種族だ。
私を引き取ったのは、キャティ公爵夫妻。子供が中々出来ない夫妻にとっては、亜人の女の子でも欲しかったのだろう。
公爵令嬢として、何不自由なく育った私。王子であるユークリウッドとも、幾度となく遊んだ。
だが私の幸せも、妹が産まれるまでの事。
妹のマーガレットが産まれてからというもの、両親の愛情は全てマーガレットに注がれた。私の食事や着るものはどんどん質が落ちていき、部屋さえも妹に取られた。
私の味方は執事のクリストファーだけ。彼がいなかったら、私はとっくに自殺していただろう。
「ミーナお姉様が、意地悪するの。私の髪に火を付けようとしたわ」
妹の嘘で無実の罪を着せられた私。牢屋に入れられ、囚人のような扱いを受けた。
(私、きっとこのまま死ぬんだわ)
そう思った。だがある日、私は牢から出された。だが令嬢としてではなく、マーガレットの護衛として。
猫耳族特有の優れた身体能力。諜報や暗殺向きのその能力を見込まれ、近衛隊長が私を抜擢したのだと言う。彼はクリストファーの友人だった。
厳しい戦闘訓練を数年受けた後、私は再び公爵邸に部屋を与えられた。そしてドレスを着て、マーガレットの側にいる事を許された。彼女は私を、姉ではなく奴隷のように扱った。
そんなある日の事。ユークリウッドが公爵邸にやってきた。父君であるスカイフォール国王と一緒だ。ユークリウッドの婚約者を決める為、親しい貴族の家を来訪し、娘たちと見合いをしているのだと言う。
両親は嬉々として、妹のマーガレットをユークリウッドに引き合わせた。私も護衛として、彼女の側に居た。
数年ぶりに会うユークリウッドは、優しい微笑みをたたえた、逞しく立派な青年へと成長していた。私は思わず、彼に見惚れた。
「父上、決めました。私はキャティ公爵家のご令嬢と婚約致します」
ユークリウッドの言葉に、マーガレットも両親も涙を浮かべて喜んだ。
だがユークリウッドが選んだのは、私だった。私はユークリウッドと一言も言葉を交わしていない。だが時折、こちらを見つめているのには気づいていた。
あの時のマーガレットと両親の顔は傑作だった。私は心の中で「ざまぁ」と思ったものだ。
彼と婚約した後、その戦闘技術を見込まれて、私は彼と冒険の旅に出た。幾度となく、共に死線を乗り越えて来た。私達の絆は揺るがない。そう思っていた。
宿屋から出発する朝。婚約者ユークリウッド・スカイフォールから、突然告げられた言葉がそれだった。
「なぜですか! 理由を教えてください勇者様!」
私はすがりついた。彼を愛していた。離れたくなかった。
ユークリウッドはこの国、スカイフォール王国の第三王子。公爵家である私の家と、スカイフォール王家は長年の交流があった。
幼馴染の私たち。お互い意識しあっていた。淡い恋心。
私は三歳頃まで、教会で育った。火災で両親を失うも、奇跡的に生き延びた猫耳族の孤児だった。猫耳族は、猫の耳と優れた身体能力以外は、普通の人間と変わらない種族だ。
私を引き取ったのは、キャティ公爵夫妻。子供が中々出来ない夫妻にとっては、亜人の女の子でも欲しかったのだろう。
公爵令嬢として、何不自由なく育った私。王子であるユークリウッドとも、幾度となく遊んだ。
だが私の幸せも、妹が産まれるまでの事。
妹のマーガレットが産まれてからというもの、両親の愛情は全てマーガレットに注がれた。私の食事や着るものはどんどん質が落ちていき、部屋さえも妹に取られた。
私の味方は執事のクリストファーだけ。彼がいなかったら、私はとっくに自殺していただろう。
「ミーナお姉様が、意地悪するの。私の髪に火を付けようとしたわ」
妹の嘘で無実の罪を着せられた私。牢屋に入れられ、囚人のような扱いを受けた。
(私、きっとこのまま死ぬんだわ)
そう思った。だがある日、私は牢から出された。だが令嬢としてではなく、マーガレットの護衛として。
猫耳族特有の優れた身体能力。諜報や暗殺向きのその能力を見込まれ、近衛隊長が私を抜擢したのだと言う。彼はクリストファーの友人だった。
厳しい戦闘訓練を数年受けた後、私は再び公爵邸に部屋を与えられた。そしてドレスを着て、マーガレットの側にいる事を許された。彼女は私を、姉ではなく奴隷のように扱った。
そんなある日の事。ユークリウッドが公爵邸にやってきた。父君であるスカイフォール国王と一緒だ。ユークリウッドの婚約者を決める為、親しい貴族の家を来訪し、娘たちと見合いをしているのだと言う。
両親は嬉々として、妹のマーガレットをユークリウッドに引き合わせた。私も護衛として、彼女の側に居た。
数年ぶりに会うユークリウッドは、優しい微笑みをたたえた、逞しく立派な青年へと成長していた。私は思わず、彼に見惚れた。
「父上、決めました。私はキャティ公爵家のご令嬢と婚約致します」
ユークリウッドの言葉に、マーガレットも両親も涙を浮かべて喜んだ。
だがユークリウッドが選んだのは、私だった。私はユークリウッドと一言も言葉を交わしていない。だが時折、こちらを見つめているのには気づいていた。
あの時のマーガレットと両親の顔は傑作だった。私は心の中で「ざまぁ」と思ったものだ。
彼と婚約した後、その戦闘技術を見込まれて、私は彼と冒険の旅に出た。幾度となく、共に死線を乗り越えて来た。私達の絆は揺るがない。そう思っていた。
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