【完結】婚約破棄された猫耳令嬢、転生してOLになる。〜特技は暗殺です〜

アキ・スマイリー

文字の大きさ
15 / 35

第15話 尻軽女に復讐開始。(残酷描写あり。お気をつけ下さい)

しおりを挟む
「何!?  あんた誰!?」

 トイレに飛び込んで来た色城恭子は、顔面蒼白になってお尻を抑えている。私は笑いを堪えるのに必死だった。トイレ内は結構広く、彼女と私の間には一メートルくらいの間隔がある。

 ぷぅぅー。

 またも色城の尻から、おならが漏れる。彼女は全く気づいていないが、ホムラの「ヘルフレイム・ボンバー」を食らって倒れた彼女に、すかさず吹き矢を命中させていた私。

 矢には毒が塗ってあった。ノーマン戦でもおなじみの、魔力が込められた毒。レアスキル「ウロボロス」で作った毒だ。

 今回の毒は「放屁毒」。おならが止まらなくなると言う、恐ろしい毒である。

「あはは! ぷぅー、だって! ウケるー!」

 笑いをこらえきれず、お腹を抱えて爆笑する私。色城は、顔を真っ赤にして震えている。

「もしかしてこれ、あんたの仕業!? もしそうならタダじゃおかないわよ!」

「へぇ。 どうタダじゃおかないのかな? やってみてよ」

 私はあえて、相手を挑発して反応を見た。

「くっ! 舐めるんじゃないわよ! 私はこれまで、一度たりとも敗北した事がない。男の冒険者は「魅了」で骨抜きに。女の冒険者は、男の冒険者たちを操って襲わせる。今は手駒が無いけど、問題ないわ。私はね、近距離の戦闘でも負けた事はないのよ。あんたみたいなメス猫一匹、瞬殺よ!」

 色城は魔力を腕に宿らせ、胸の前に円を描くように腕を動かした。

「ふふっ。そうでしょうね。 あのホムラの一撃を食らって生きているんだもの。大したもんよね」

 私は素直に感心していた。

「それにあなたの実力なら、あの攻撃は避けられたはず。勇気がかばってくれたから、驚いて避ける事が出来なかった。そうじゃない?」

「そ、それは......」

 色城は目を泳がせた。図星だ。

「もしかして初恋? サキュバスって男を取っ替え引っ換えなんだってね。そんな中で初めて本当に好きになっちゃった訳だ。まるで恋愛小説ね」

 色城は顔を赤くし、うつむいた。こんな尻軽女の心を鷲掴みにするなんて、勇気も罪な男だね。

「そんな初恋の男に、思いっきり聞かれちゃったね♡  おならの音! 私なら恥ずかしくって死んじゃうなぁー」

 私がそう言うと、色城は涙目になって、こちらをキッと睨んだ。

「貴様! 殺す!」

 色城はシリアスな顔だが、ブッとおならが出てしまい、台無しになる。

 だがもはや、それは抑止力にはならなかった。色城は魔力を一気に高め、両手で作った輪から、魔力の球を作り出した。

「ナイトメア・オーブ!」

 あとはその魔力球を、射出するだけだ。彼女は腕を動かし、射出の動作を試みる。だが。

「う、動かない!」

 色城の額から、玉のような汗が流れ落ちる。渾身の力を込めて、腕を動かしているようだ。だけど無駄無駄!

「魔力を込めた糸をね、あなたの全身に巻きつけたの。今は動きを封じるだけだけど、魔力を調整する事で糸の鋭さは変化する。あなたの体をバラバラに刻む事だって出来るの。嘘だと思うなら試してみる?」

「くっ! おのれぇぇー!」

 色城は悔しそうに顔を歪め、ギリギリと歯ぎしりした。せっかく集めた魔力も霧散し、魔力球は消失してしまったようだ。

「うふふ。私は暗殺士。ターゲットに姿を見せたのなら、暗殺はほぼ完了している。あなたは蜘蛛の巣に囚われた蝶と一緒よ。下手な真似はしない方が身の為ね。さて、まずは簡単な質問をするわ」

「な、何よ......」

「この名前を覚えているかしら。助川好平。三十代のエリートサラリーマンよ」

「さ、さぁ......覚えてないわ、そんな人、うぎゃあああっ!」

 色城の右手の小指が切断され、宙を舞う。おびただしい量の血液が、ボタボタと流れ落ちる。

「答えは慎重にね、色城さん。あなたにとってはお遊びなのかも知れないけど、それで人生を狂わされた人は沢山いるの。一生懸命思い出して。じゃないとまた、うっかり切断しちゃうかも」

「はぁ、はぁ、思い出します、思い出しますから! あ、え、えーっと、確か『HN広告社』営業課の人で、婚約者がいると言ってた人ね」

「うん、あってる。その人は婚約者の事をなんて言ってた? 愛してると言っていた?」

 色城は呼吸を荒くし、涙を流しながら目を動かしている。思い出しているのだろう。私の元婚約者「助川好平」。彼女にとっては、食べ飽きた食事と変わりない。なんの感情も動かず、思い入れも無い。

「えっと、あんな女、もうどうでもいいって。恭子ちゃんの方が何倍も素敵だって、そう言って、ぎゃあああーっ!」

 色城のもう一方の小指が飛ぶ。血しぶきが、トイレの個室に飛び散って絵画のようになる。

「ちゃんと答えたのにぃー!」

「ああ、そうね。ありがとう。言い忘れてたけど私、残酷なの。だけど優しい暗殺士なんて聞いた事ないでしょ?  だから普通ね。もちろん、なんの罪もない人に対してこんな事はしない。だけどあんたは別。邪悪なモンスター。あまたの男を食い物にし、その恋人達を絶望の淵に追いやった。その罪は、死んでも償えない」

 小指の次は、爪だ。薬指の生爪を、糸で一枚剥ぎ取った。

「ぎゃあああああーっ! 痛い! やめてぇー!」

「やめて欲しい? なら、これから私が言う事をよく聞いて実行するの。そうすれば、許してあげる」

「わかりました! やります! やりますから!」

 私は彼女への罰として、寝とった男たちに対し、メールの一斉送信を行わせる事にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...