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第28話 魔王襲来。
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「ノーマン! リカーナ!」
私は思わず叫んだ。するとリカーナがハッとした顔でこちらを見る。元々色白な彼女の顔が、さらに蒼白になっているようだった。
「おねぇちゃん! 来ちゃダメ!」
リカーナがそう叫び返した時には、私と勇気は駆け出していた。もう少しで彼らに手が届く。その寸前、私達の体は金縛りにでもあったように、動かなくなった。
そして私と勇気以外の全てのものがその場から消え、周囲は真っ暗になる。これは......結界、か?
「探したぞ、ユークリウッド。我が愛しき勇者よ」
正面の闇から姿を表したのは、褐色の肌に銀色の髪をした、美しい女。
「あんた、誰だ」
勇気は怒気のこもった声でそう返す。私は相変わらず動けない。
「おお、前世の記憶を失ったか。我が名はマオ・ラーナキア。魔界を統べるラーナキア王国の王」
魔界の王!? つまり魔王って事?
「記憶を失うリスクはあった。あの時大爆発を起こした我の魔術。あれは転生の秘儀の応用でな。我らの肉体は消滅し、この地球へと転生した。ホムラとイグニスも巻き込んでしまったが、問題はない。我とそなたの愛の障害にはなるまい」
愛? 何を言っているの、この女。勇者は魔王を討伐に行ったのよ。愛などある訳が無い。
「俺が勇者かも知れないってのは。薄々感じてた。時々夢を見るんでね。だけどその夢に出てくるのはお前じゃない。可愛い猫耳の女の子だ。その子もきっと転生している。感じるんだ。その子こそ、俺の運命の人だ」
魔王マオの眉間に、ピシッと縦じわが刻まれる。猫耳の女の子って、私じゃん! ミーナじゃん! 覚えてくれてるんだ! 嬉しい♡
「そのような者など関係ない。そなたの愛は、これから我のものとなるのだ。我が愛は前世より変わらぬ。我の討伐にやってきたそなたを、殺さずに我の元まで辿り着かせたのも、全てこの時の為。魔王と勇者が愛し合う事など、誰も許さぬからな。邪魔をされたくなかった。さぁ、思う存分愛し合おうぞ」
マオは勇気の頰に手を触れ、彼を片手で抱きしめた。
「離せ! みなちゃん! くっ、ううっ!」
叫ぶ勇気の唇を、マオの唇が塞ぐ。次の瞬間、二人の姿は掻き消えた。私の周りにあった音と景色が戻ってくる。
私の左手には、勇気の手の温もりが残っていた。だがもう、私達の手は繋がれていない。
私はがくりと膝をついた。喪失感で涙が溢れる。
「お姉ちゃん、勇気さんは......連れ去られてしまったんだね。魔王に」
リカーナはノーマンを抱きしめたまま、そう言った。きっとこれは罠だったのだろう。どういう経緯かはわからないが、ノーマンとリカーナが、私と勇気に通じている事をマオは知ったのだ。そしておびき寄せた。
救急隊が駆けつけた。そこへワイルド・アヴェンジャーズも駆けつける。きっとリカーナが電話してくれたんだろう。勇気を連れ去られて放心状態だった私も、ようやく我に返る。
「よく来たわ! ケイト、リカーナと一緒にノーマンに付き添ってあげて! 病院に着くまで癒しの術をかけ続けて欲しいの!」
「わかりました!」
ノーマンが救急車に担ぎ込まれ、神術士のケイトと、リカーナがそれに付き添う。
走り去っていく救急車を見送り、私は残った四人のマッチョに向き直った。
「みんな、来てくれてありがとう。ここまではどうやって来たの?」
「タクシー二台で来ました!」
「コーネリア、転移の魔術は使えないの?」
「えっと、魔術師は攻撃に特化した術を使うので......援術士なら転移の術を使えるはずですが......僕らのパーティには居ません」
魔術師のコーネリアが、申し訳なさそうにうなだれた。
「そっか......まぁ使えたとしても、今の私には勇気の気配をたどる方法はないわね。みーたんと合体しなきゃ。一度タクシーでマンションに帰るわ」
「その必要はねぇぜ、姐さん」
コーネリアの後ろにいたリーダーのカイエンが、みーたんを抱っこしている。
「みーたん!」
みやぁーと可愛く鳴くみーたん。私はカイエンからみーたんを受け取り、ぎゅーっと抱きしめる。
(にゃんこ合体するんだよね? 美奈子)
(もちろん!)
「にゃんこ合体!」
私は高らかに叫び、猫耳と見事なプロポーションを持った令嬢「ミーナ・キャティ」へと変身する。
ワイルド・アベンジャーズのマッチョたちがピューッと口笛を吹く。
「うん、聞こえる。これは勇気の心音。位置も正確にわかるわ。今、マオと勇気は練馬区にある『としまえん』の地下。最近オープンしたばかりの巨大ダンジョンを占拠したみたい。そこの最深部に、彼女たちはいる」
私の言葉に、ワイルド・アベンジャーは頷く。
「お供します、姐さん!」
武術士のキースが、鼻息を荒くして意気込んでいる。彼を含む四人のマッチョは、全員目を輝かせていた。自分たちの活躍の場が出来て、嬉しいのだろう。
「いえ、あなた達は病院に行って、ノーマン、リカーナ、ケイトと合流して。七人でダンジョンに潜って欲しい。私はギルドに行って、ホムラを探してみる。ホムラとあなた達がマオの注意を引いているうちに、別ルートで潜入する予定よ」
「なるほど! 了解しました! ご武運を!」
弓術士のクレイドルが、爽やかに微笑む。
「あなた達もね!」
私は四人のマッチョと拳を合わせ、池袋のビル郡へと跳躍した。
私は思わず叫んだ。するとリカーナがハッとした顔でこちらを見る。元々色白な彼女の顔が、さらに蒼白になっているようだった。
「おねぇちゃん! 来ちゃダメ!」
リカーナがそう叫び返した時には、私と勇気は駆け出していた。もう少しで彼らに手が届く。その寸前、私達の体は金縛りにでもあったように、動かなくなった。
そして私と勇気以外の全てのものがその場から消え、周囲は真っ暗になる。これは......結界、か?
「探したぞ、ユークリウッド。我が愛しき勇者よ」
正面の闇から姿を表したのは、褐色の肌に銀色の髪をした、美しい女。
「あんた、誰だ」
勇気は怒気のこもった声でそう返す。私は相変わらず動けない。
「おお、前世の記憶を失ったか。我が名はマオ・ラーナキア。魔界を統べるラーナキア王国の王」
魔界の王!? つまり魔王って事?
「記憶を失うリスクはあった。あの時大爆発を起こした我の魔術。あれは転生の秘儀の応用でな。我らの肉体は消滅し、この地球へと転生した。ホムラとイグニスも巻き込んでしまったが、問題はない。我とそなたの愛の障害にはなるまい」
愛? 何を言っているの、この女。勇者は魔王を討伐に行ったのよ。愛などある訳が無い。
「俺が勇者かも知れないってのは。薄々感じてた。時々夢を見るんでね。だけどその夢に出てくるのはお前じゃない。可愛い猫耳の女の子だ。その子もきっと転生している。感じるんだ。その子こそ、俺の運命の人だ」
魔王マオの眉間に、ピシッと縦じわが刻まれる。猫耳の女の子って、私じゃん! ミーナじゃん! 覚えてくれてるんだ! 嬉しい♡
「そのような者など関係ない。そなたの愛は、これから我のものとなるのだ。我が愛は前世より変わらぬ。我の討伐にやってきたそなたを、殺さずに我の元まで辿り着かせたのも、全てこの時の為。魔王と勇者が愛し合う事など、誰も許さぬからな。邪魔をされたくなかった。さぁ、思う存分愛し合おうぞ」
マオは勇気の頰に手を触れ、彼を片手で抱きしめた。
「離せ! みなちゃん! くっ、ううっ!」
叫ぶ勇気の唇を、マオの唇が塞ぐ。次の瞬間、二人の姿は掻き消えた。私の周りにあった音と景色が戻ってくる。
私の左手には、勇気の手の温もりが残っていた。だがもう、私達の手は繋がれていない。
私はがくりと膝をついた。喪失感で涙が溢れる。
「お姉ちゃん、勇気さんは......連れ去られてしまったんだね。魔王に」
リカーナはノーマンを抱きしめたまま、そう言った。きっとこれは罠だったのだろう。どういう経緯かはわからないが、ノーマンとリカーナが、私と勇気に通じている事をマオは知ったのだ。そしておびき寄せた。
救急隊が駆けつけた。そこへワイルド・アヴェンジャーズも駆けつける。きっとリカーナが電話してくれたんだろう。勇気を連れ去られて放心状態だった私も、ようやく我に返る。
「よく来たわ! ケイト、リカーナと一緒にノーマンに付き添ってあげて! 病院に着くまで癒しの術をかけ続けて欲しいの!」
「わかりました!」
ノーマンが救急車に担ぎ込まれ、神術士のケイトと、リカーナがそれに付き添う。
走り去っていく救急車を見送り、私は残った四人のマッチョに向き直った。
「みんな、来てくれてありがとう。ここまではどうやって来たの?」
「タクシー二台で来ました!」
「コーネリア、転移の魔術は使えないの?」
「えっと、魔術師は攻撃に特化した術を使うので......援術士なら転移の術を使えるはずですが......僕らのパーティには居ません」
魔術師のコーネリアが、申し訳なさそうにうなだれた。
「そっか......まぁ使えたとしても、今の私には勇気の気配をたどる方法はないわね。みーたんと合体しなきゃ。一度タクシーでマンションに帰るわ」
「その必要はねぇぜ、姐さん」
コーネリアの後ろにいたリーダーのカイエンが、みーたんを抱っこしている。
「みーたん!」
みやぁーと可愛く鳴くみーたん。私はカイエンからみーたんを受け取り、ぎゅーっと抱きしめる。
(にゃんこ合体するんだよね? 美奈子)
(もちろん!)
「にゃんこ合体!」
私は高らかに叫び、猫耳と見事なプロポーションを持った令嬢「ミーナ・キャティ」へと変身する。
ワイルド・アベンジャーズのマッチョたちがピューッと口笛を吹く。
「うん、聞こえる。これは勇気の心音。位置も正確にわかるわ。今、マオと勇気は練馬区にある『としまえん』の地下。最近オープンしたばかりの巨大ダンジョンを占拠したみたい。そこの最深部に、彼女たちはいる」
私の言葉に、ワイルド・アベンジャーは頷く。
「お供します、姐さん!」
武術士のキースが、鼻息を荒くして意気込んでいる。彼を含む四人のマッチョは、全員目を輝かせていた。自分たちの活躍の場が出来て、嬉しいのだろう。
「いえ、あなた達は病院に行って、ノーマン、リカーナ、ケイトと合流して。七人でダンジョンに潜って欲しい。私はギルドに行って、ホムラを探してみる。ホムラとあなた達がマオの注意を引いているうちに、別ルートで潜入する予定よ」
「なるほど! 了解しました! ご武運を!」
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