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第15話 三光神。
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ジョアンと冒険者達の言い争いが激化して行く。するとおもむろに、今まで静観していたファルマが口を開いた。
「皆さん静粛に!」
鼓膜がビリビリと震えるような、強く厳しい声だった。ファルマのこんな声を、僕は初めて聞いた。
「皆さんの主張は、それぞれに正しさもある事でしょう。ですが、忘れてはいけません。ベルゲニウスの使徒リオンは、間違いなく正義。邪悪なゴブリンから、我々やランカスト村の人々を救った。そして今、サルート村の人々をも救おうとしている。それは紛れもない、事実なのです」
威厳のあるファルマの声に、静まりかえる周囲。
「そしてベルゲニウスは、今でこそ邪神と言われていますが、先程リオンが言ったように元々は聖なる導きの神。勇気の神マリーガンと、秩序の神アドファニカの盟友です。この三神は三光神と呼ばれ、同時に信仰の対象としても構わないのです」
三度ざわめく冒険者達。ファルマは続ける。
「リオン。あなたは私と共に、傷ついた者たちを神聖魔法で癒した。邪神に癒しの魔法は使えません。つまり、あなたが使徒となった事でベルゲニウスは邪神では無くなった。再び三光神の一員に戻った。そう捉える事が出来ますが、如何でしょうか」
ファルマの問いに、僕は少し戸惑った。
(そうなの? ベル)
(ああ、おそらくそうなのだろう。俺自身が邪神として崇められる事に嫌気がさしていたし、リオンを助けたいと思った。その流れでリオンを使徒とした事で、邪神から【聖なる導きの神】へと戻りつつあるのかも知れん。まだ完璧ではないだろうが、三光神の一員に戻ったと言えなくもない)
(なんか釈然としないなぁ)
自身なさそうなベルだったが、とりあえずファルマの言った通りで合っているみたいだ。
「その通りだよファルマ。もうベルゲニウスは邪神なんかじゃない。どうかみんな、僕に力を貸して! ベルゲニウスを信じて!」
「そうですよ皆さん! 私は信じます! マリーガンとベルゲニウス。どちらも偉大な神だ!」
僕のお願いを後押しする様に、ファルマも畳み掛ける。
「よぉし! それじゃあベルゲニウスを信仰すると誓う者は手を上げろ!」
ジョアンが叫ぶと、僕とカート以外の全ての人が「手」を上げてくれた。ちなみにカートは両腕を縛られている為、なんと「足」を上げて賛成の意を示している。
「疑ったりしてごめんよリオンちゃん! これからは、どんな時も信じるぜ!」
「俺は最初っから信じてたぜ! リオンちゃんが邪神の使徒な訳ねぇもんなぁ!」
「ファファファ! 調子のいい奴らだな! リオン殿! ワガハイはコイツらとは違う! いつでもそなたの味方だぞ!」
笑うセロガストンに釣られて、冒険者達に笑いの渦が巻き起こる。
「ありがとうみんな!」
僕は頭を下げて御礼を言う。
(ベル、どうかな? 少しは魔力戻ってきた?)
(ああ、まぁな。どうやら【空間旅行】は使えるようになった。サルート村に飛べるぞ」
(よし。それじゃあ早速行こう!)
(おう!)
「皆さんの信仰心お陰で、ベルゲニウス様のお力が戻りました! 僕は【空間旅行】の神聖魔法でサルート村へ行き、ゴブリンを退治して来ます! 皆さんは、ランカスト村へ戻って下さい!」
(ベル、お願い)
(ああ。少し待て)
ペンダントについたベルの目が輝き、光を放ち始める。
「ちょっと待ったぁー!」
そう言って僕の肩を正面から抱きしめるジョアン。
「俺も連れて行ってくれ!」
そう叫んだ。
「ごめん。連れて行けない」
僕はジョアンの願いを一蹴した。
「どうしてだ! 俺は確かに君程強くはない。だがBランクだ! ランカスト村では最強だった! 必ず役に立って見せる! だからお願いだ! 俺も連れていっ......」
「ダメ! サルート村へ向かったゴブリンはおそらく百匹を超える! 死んで欲しくないから敢えて言うけど、君じゃ命がいくつあっても足りないよ! 村に戻って!」
「嫌だ! 君と離れたくないんだ! 連れて行ってくれ!」
「ええ......!?」
(どうしようベル。ジョアン、全然諦めてくれない。もうあまり時間がないのに)
(仕方ない。ではジョアンも連れて行こう。その活躍次第では、第二の使徒にしてやってもいい。その場合は、ゴブリンの王国にも一緒に行くことになるだろう)
(わかった!)
「オッケージョアン。一緒に行こう。ただし、自分の身は自分で守る事。ボクは多分、敵と戦うので精一杯だから」
「わかった! 任せてくれ!」
差し出されたジョアンの手を、僕は強く握った。
(では行くぞ!)
(うん!)
「出発!」
僕の掛け声と同時に、ベルの【空間旅行】が発動。瞬く間に、周囲の景色が変わって行った。
「皆さん静粛に!」
鼓膜がビリビリと震えるような、強く厳しい声だった。ファルマのこんな声を、僕は初めて聞いた。
「皆さんの主張は、それぞれに正しさもある事でしょう。ですが、忘れてはいけません。ベルゲニウスの使徒リオンは、間違いなく正義。邪悪なゴブリンから、我々やランカスト村の人々を救った。そして今、サルート村の人々をも救おうとしている。それは紛れもない、事実なのです」
威厳のあるファルマの声に、静まりかえる周囲。
「そしてベルゲニウスは、今でこそ邪神と言われていますが、先程リオンが言ったように元々は聖なる導きの神。勇気の神マリーガンと、秩序の神アドファニカの盟友です。この三神は三光神と呼ばれ、同時に信仰の対象としても構わないのです」
三度ざわめく冒険者達。ファルマは続ける。
「リオン。あなたは私と共に、傷ついた者たちを神聖魔法で癒した。邪神に癒しの魔法は使えません。つまり、あなたが使徒となった事でベルゲニウスは邪神では無くなった。再び三光神の一員に戻った。そう捉える事が出来ますが、如何でしょうか」
ファルマの問いに、僕は少し戸惑った。
(そうなの? ベル)
(ああ、おそらくそうなのだろう。俺自身が邪神として崇められる事に嫌気がさしていたし、リオンを助けたいと思った。その流れでリオンを使徒とした事で、邪神から【聖なる導きの神】へと戻りつつあるのかも知れん。まだ完璧ではないだろうが、三光神の一員に戻ったと言えなくもない)
(なんか釈然としないなぁ)
自身なさそうなベルだったが、とりあえずファルマの言った通りで合っているみたいだ。
「その通りだよファルマ。もうベルゲニウスは邪神なんかじゃない。どうかみんな、僕に力を貸して! ベルゲニウスを信じて!」
「そうですよ皆さん! 私は信じます! マリーガンとベルゲニウス。どちらも偉大な神だ!」
僕のお願いを後押しする様に、ファルマも畳み掛ける。
「よぉし! それじゃあベルゲニウスを信仰すると誓う者は手を上げろ!」
ジョアンが叫ぶと、僕とカート以外の全ての人が「手」を上げてくれた。ちなみにカートは両腕を縛られている為、なんと「足」を上げて賛成の意を示している。
「疑ったりしてごめんよリオンちゃん! これからは、どんな時も信じるぜ!」
「俺は最初っから信じてたぜ! リオンちゃんが邪神の使徒な訳ねぇもんなぁ!」
「ファファファ! 調子のいい奴らだな! リオン殿! ワガハイはコイツらとは違う! いつでもそなたの味方だぞ!」
笑うセロガストンに釣られて、冒険者達に笑いの渦が巻き起こる。
「ありがとうみんな!」
僕は頭を下げて御礼を言う。
(ベル、どうかな? 少しは魔力戻ってきた?)
(ああ、まぁな。どうやら【空間旅行】は使えるようになった。サルート村に飛べるぞ」
(よし。それじゃあ早速行こう!)
(おう!)
「皆さんの信仰心お陰で、ベルゲニウス様のお力が戻りました! 僕は【空間旅行】の神聖魔法でサルート村へ行き、ゴブリンを退治して来ます! 皆さんは、ランカスト村へ戻って下さい!」
(ベル、お願い)
(ああ。少し待て)
ペンダントについたベルの目が輝き、光を放ち始める。
「ちょっと待ったぁー!」
そう言って僕の肩を正面から抱きしめるジョアン。
「俺も連れて行ってくれ!」
そう叫んだ。
「ごめん。連れて行けない」
僕はジョアンの願いを一蹴した。
「どうしてだ! 俺は確かに君程強くはない。だがBランクだ! ランカスト村では最強だった! 必ず役に立って見せる! だからお願いだ! 俺も連れていっ......」
「ダメ! サルート村へ向かったゴブリンはおそらく百匹を超える! 死んで欲しくないから敢えて言うけど、君じゃ命がいくつあっても足りないよ! 村に戻って!」
「嫌だ! 君と離れたくないんだ! 連れて行ってくれ!」
「ええ......!?」
(どうしようベル。ジョアン、全然諦めてくれない。もうあまり時間がないのに)
(仕方ない。ではジョアンも連れて行こう。その活躍次第では、第二の使徒にしてやってもいい。その場合は、ゴブリンの王国にも一緒に行くことになるだろう)
(わかった!)
「オッケージョアン。一緒に行こう。ただし、自分の身は自分で守る事。ボクは多分、敵と戦うので精一杯だから」
「わかった! 任せてくれ!」
差し出されたジョアンの手を、僕は強く握った。
(では行くぞ!)
(うん!)
「出発!」
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