【完結】生贄にされた第九皇子、邪神に見込まれて最強の使徒になる。

アキ・スマイリー

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第18話 毒。

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「終わった......」

 僕は全てのゴブリンを殲滅し、深く深呼吸した。村の入り口には、ジョアンが立って微笑んでいる。

「やったよ、ジョアン!」

 僕は嬉しくなって、剣を投げ捨てて走った。ジョアンは両手を広げて、僕を待っている。

「やったな、リオン」

「うん!」

 僕はジョアンの胸に飛び込んだ。だが、ジョアンは僕を抱きしめてはくれなかった。

 彼は力無く、その場に崩れ落ちた。

「ジョアン!」

 僕は微笑んだままのジョアンを抱きかかえる。彼の体には、無数の切り傷が刻まれていた。だが、おそらく致命傷には至っていない筈だ。魔法で治療出来る。

「きっと疲れたんだ。村で休ませてもらおう。傷は今、魔法で治療するからね!」

 そう言って励ます。だがジョアンは力無く笑い、僕の髪を撫でた。

「俺はもうダメだ。ゴブリンの持つ武器には、毒が塗ってある場合がある。俺が斬られたのは、それだったみたいだ。ふふっ、散々食い下がって連れて来てもらったのに、このザマだ。君の言う通り、大人しく待っているべきだったのかもな......」

「そんな事ない! ジョアンが来てくれて、僕はすごく助かったよ! ゴブリンを一歩も村へ入れなかったじゃないか! だから僕は、安心してゴブリン達を倒せたんだ! 毒だって、きっと魔法で治せる! そうだよね、ベル!」

 僕は念話に切り替えるのも忘れて、ベルの名前を呼んだ。

(残念だが、俺は解毒の魔法は使えない。法の神アドファニカなら使えた筈だが)

「わかった! ジョアン、必ず治してあげるから、頑張って!」

 僕は気絶した様子のジョアンを抱き上げ、村の奥へと走った。ジョアンの話しでは、奥の集会所にみんな避難している筈だ。

「あった!」

 一番大きな建物。周囲に冒険者や騎士が警護の為に立っている。

「む? 君はこの村の者じゃないな。何者だ?」

 騎士の一人がそう応対した。返り血で染まった僕を見て、彼らは警戒の色を示す。

「ボクはランカスト村の冒険者です! ゴブリン退治の為に、ここへやって来ました! 仲間が毒に犯されていて危険な状態なんです! アドファニカ様の神官の方は、ここにいらっしゃいますか!?」

 必死だった。早口でそう捲し立てると、僕の応対をしていた騎士に別の騎士が進言する。

「隊長、彼女の抱いている男性は、村人に危険を知らせに来た冒険者の方です。我らをここへ避難させた......」

「む? おお、確かにそうだな。そうか、君が彼の言っていた凄腕の女戦士か。だが生憎、この村にアドファニカの神官はいない。いるのはマリーガンの神官だ」

 僕は鈍器で頭を殴られたような衝撃を受ける。だが、まだ諦めるつもりはなかった。

「では、お医者様はいらっしゃいますか!?」

「ああ、それならいるぞ。役場の近くに診療所があるから、そこでなら簡単な治療が出来る筈だ。ところでゴブリンはどうした? もう倒したのか? それとも君は逃げて来たのか?」

 隊長と呼ばれた騎士の高圧的な態度に、僕は怒りを覚えた。

「ゴブリンは一匹残らず殺しましたよ! あなた達を守る為にね! それに彼は......! ジョアンは命懸けで、ゴブリンがこの村に入るのを食い止めたんです! ですが、毒で死にそうなんです! 早くお医者様を呼んで下さい!」

 怒りが悲しみに代わり、僕は涙と嗚咽を堪える事が出来なかった。誰かを大切に思う気持ちを、初めて知った気がした。

「隊長、僕が呼んで来ます!」

 ムッとする隊長に代わって、部下らしき騎士が集会所の中へと入って行った。

 少しして、先程の騎士と一組の男女がやって来た。女性が僕とジョアンを見て、悲痛な面持ちで口を開く。

「初めまして、私は村長のマティアスです。ご案内しますので、一緒に診療所へ参りましょう。こちらが医師のバゼル。解毒出来るかはわかりませんが、彼に尽力してもらいます。この村を救って下さった方々が、苦しんでいらっしゃるのですから」

「ありがとうございます......! よろしくお願いします」

 僕はジョアンを抱いたまま、その女性とバゼル医師に頭を下げる。

「では、参りましょう」

「はい!」

 マティアさんとバゼル医師は、診療所に向かって走り出した。僕もその後に続いて走る。

 ジョアン、どうか、どうか死なないで......!



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