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第30話 思い出話。
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「はぁぁー♡ リオン様♡ 可愛い♡ リオン様だいしゅき、しゅきしゅきぃ♡」
クリザヘルは僕が魔王リオンだと分かってから、全然離してくれない。ずっとスリスリしてくる。
「もー、わかったってばクリザヘル。僕を好きでいてくれるのは嬉しい。でもいつまでもこんな事してられないでしょ? ゴブリンに捕まった人達を、早く村に返してあげなきゃ」
「はい、もちろんです♡ 私はどんな時もリオン様のお役に立って見せますわ。ベルゲニウス様のように瞬間移動する魔法は使えませんが、この城にはゴブリンロード専用の気球がございます。それを使って行きましょう」
「へぇ、そんなのがあるんだ! じゃあお願い!」
「はい♡ かしこまりました! では準備して参りますので、ここで少しお待ち下さいませ!」
クリザヘルはそう言って、元気に走っていった。
「やれやれ、やっと解放された」
クリザヘルから解放された僕は、廊下の壁によりかかって座り込む。
「こっちの体は疲れてないんだけど、精神的に疲れたよ。少し休もう、ジョアン」
僕がそう提案すると、ジョアンも僕の横に座った。
「そうだな。俺も少し疲れた」
そう言って、彼は優しく微笑んだ。その微笑みを見て、僕の心は癒された。
「ねぇ、ジョアンは前世の記憶を取り戻したんだよね? 教えて、僕たちの前世の事。僕は、まだほとんど思い出せてないんだ」
「ああ、それがな」
ジョアンはそこまで言って、ふぅ、とため息をつく。
「俺の記憶も中途半端なんだ。あやふやな所が結構ある。だから、前世の話はまだやめておこう。お互いがしっかり思い出したら、その時に話そう」
そう言って薄く笑うジョアン。
「そっか、そうだね。じゃあ教えて。ジョアンが傭兵だった頃の話とか、冒険者になってからの話とか」
「ああ、それなら話せる。じゃあリオン、引き換えにお前の冒険も教えてくれないか? サルート村の出身と聞いていたが、その辺の話もな。どうして冒険者になったのか、とか」
「うん、もちろん。本当は僕、サルート村の出身じゃないんだ......」
そうして、僕とジョアンはお互いの過去を話しあった。
ジョアンは元々僕の出身地であるグリオルド帝国の傭兵だった事を話してくれた。そして僕が帝国の第九皇子だった事を聞いて、大層驚いた。
「そんな事があったのか......生まれと親は選べないからな。やっぱり帝国は悪だ。いつか、滅ぼしてやろう」
「うん。そうだね。そしてこれは単なる勘なんだけど、帝国の裏には勇者サタナキアスがいるような気がする。もしそうなら、僕達の倒すべき相手は決まった」
「奇遇だな。俺も全く同じ意見だ。証拠はまだないが、何故か確信がある。前世の記憶をもっと取り戻せたら、何か手がかりが掴めるかも知れないがな」
「うん。そうだね。だけど今は力も情報も足りない。僕の元々の目的であるベルゲニウス信者を増やす旅をしながら情報を集め、力をつけて行こう」
「ああ、それが良さそうだ」
僕たちの話がまとまった所で、丁度良くクリザヘルが戻って来た。
「リオン様、ジョアン様。気球の準備が整いましたわ。早速サルート村へ参りましょう。ゴブリンに捕まっていた女性達は、すでに気球に乗り込んでいただきました」
深々と頭を下げるクリザヘル。中々に手際がいい。さすが賢者。
「オッケー。ありがとうクリザヘル。さぁ、行こうジョアン」
「ああ!」
僕は先に立ち上がってジョアンの手を掴んだ。彼はニヤリと笑って立ち上がり、僕の肩に腕をまわした。
「行こうぜ、相棒!」
クリザヘルは僕が魔王リオンだと分かってから、全然離してくれない。ずっとスリスリしてくる。
「もー、わかったってばクリザヘル。僕を好きでいてくれるのは嬉しい。でもいつまでもこんな事してられないでしょ? ゴブリンに捕まった人達を、早く村に返してあげなきゃ」
「はい、もちろんです♡ 私はどんな時もリオン様のお役に立って見せますわ。ベルゲニウス様のように瞬間移動する魔法は使えませんが、この城にはゴブリンロード専用の気球がございます。それを使って行きましょう」
「へぇ、そんなのがあるんだ! じゃあお願い!」
「はい♡ かしこまりました! では準備して参りますので、ここで少しお待ち下さいませ!」
クリザヘルはそう言って、元気に走っていった。
「やれやれ、やっと解放された」
クリザヘルから解放された僕は、廊下の壁によりかかって座り込む。
「こっちの体は疲れてないんだけど、精神的に疲れたよ。少し休もう、ジョアン」
僕がそう提案すると、ジョアンも僕の横に座った。
「そうだな。俺も少し疲れた」
そう言って、彼は優しく微笑んだ。その微笑みを見て、僕の心は癒された。
「ねぇ、ジョアンは前世の記憶を取り戻したんだよね? 教えて、僕たちの前世の事。僕は、まだほとんど思い出せてないんだ」
「ああ、それがな」
ジョアンはそこまで言って、ふぅ、とため息をつく。
「俺の記憶も中途半端なんだ。あやふやな所が結構ある。だから、前世の話はまだやめておこう。お互いがしっかり思い出したら、その時に話そう」
そう言って薄く笑うジョアン。
「そっか、そうだね。じゃあ教えて。ジョアンが傭兵だった頃の話とか、冒険者になってからの話とか」
「ああ、それなら話せる。じゃあリオン、引き換えにお前の冒険も教えてくれないか? サルート村の出身と聞いていたが、その辺の話もな。どうして冒険者になったのか、とか」
「うん、もちろん。本当は僕、サルート村の出身じゃないんだ......」
そうして、僕とジョアンはお互いの過去を話しあった。
ジョアンは元々僕の出身地であるグリオルド帝国の傭兵だった事を話してくれた。そして僕が帝国の第九皇子だった事を聞いて、大層驚いた。
「そんな事があったのか......生まれと親は選べないからな。やっぱり帝国は悪だ。いつか、滅ぼしてやろう」
「うん。そうだね。そしてこれは単なる勘なんだけど、帝国の裏には勇者サタナキアスがいるような気がする。もしそうなら、僕達の倒すべき相手は決まった」
「奇遇だな。俺も全く同じ意見だ。証拠はまだないが、何故か確信がある。前世の記憶をもっと取り戻せたら、何か手がかりが掴めるかも知れないがな」
「うん。そうだね。だけど今は力も情報も足りない。僕の元々の目的であるベルゲニウス信者を増やす旅をしながら情報を集め、力をつけて行こう」
「ああ、それが良さそうだ」
僕たちの話がまとまった所で、丁度良くクリザヘルが戻って来た。
「リオン様、ジョアン様。気球の準備が整いましたわ。早速サルート村へ参りましょう。ゴブリンに捕まっていた女性達は、すでに気球に乗り込んでいただきました」
深々と頭を下げるクリザヘル。中々に手際がいい。さすが賢者。
「オッケー。ありがとうクリザヘル。さぁ、行こうジョアン」
「ああ!」
僕は先に立ち上がってジョアンの手を掴んだ。彼はニヤリと笑って立ち上がり、僕の肩に腕をまわした。
「行こうぜ、相棒!」
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