【完結】魔王、奴隷、聖女。それが私の経歴です。〜追放されし奴隷魔王は聖女となり、勇者を育て復讐する〜

アキ・スマイリー

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魔王から奴隷へ。

第11話 魔王の威光。

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「アリエッタが、魔王だって......」

 私の真横に立っていたネリスは、私に向き直りながらひざまずき、驚きを隠さずにそう言った。

「気にしないで。後で説明するから。楽にしてていいよ」

 私はネリスにそう言って彼を立ち上がらせた後、ミルダ、フォリーに微笑んで立ち上がらせる。それから正面に向き直り、ローク達を睨む。

「久しぶりだな、ロークよ。私の顔と声、よく覚えていたな。数える程しか会ったことはないと思うが」

「はっ! 偉大なる魔王ファリエッダ様のご尊顔と美声は、忘れる事など出来る筈もなく......! ですが最近視力が低下しておりまして、すぐに気付く事ができませんでした! どうか、処刑だけはお許しを!」

 全身を震わせ、額に脂汗を滲ませるローク。パンデリンはと言えば、床に額を擦り付けている。

 私は少し考えた。今のロークの受け答え。私を「元魔王」ではなく「魔王」と言った。彼は魔王城にも頻繁に出入りしている筈だ。つまりファリアンヌが正式に魔王となっていれば、私を魔王と呼ぶわけは無い。

 おそらく状況はこうだ。今、ファリアンヌは私の振りをしている。つまり、魔王ファリエッダと名乗っている筈だ。私を追放した事実も、おそらく隠している。パンデリンは私の顔を見ても、魔王だとは気づかなかった。ファリアンヌは私を知らない人物の元へ、私を追放したのだ。

 今回の騒動でロークが監獄を訪れた事は、ファリアンヌにとって予定外の事だったに違いない。

 双子だった私とファリアンヌは、どちらかが魔王、そしてもう片方が「魔女」兼「影武者」となる運命だった。結果ファリアンヌは私の影武者となり、幼い頃から仮面を着けて過ごした。一部の限られた者しか、彼女の素顔を知らない。私になりすます事など容易いだろう。

 ならばこの状況を利用しない手はない。思わぬ幸運が訪れてくれた。全てはパンデリンの思い付きが発端だ。そう言う意味では、彼に感謝しなくてはならないかも知れない。

「貴様を許そう、ローク。今の私は機嫌が良いのでな」

「ははー! ありがたき幸せ! 寛大なお心に感謝致します!」

 ロークは神を崇めるように、ひざまずいたまま何度もお辞儀した。

「ところで、貴様に紹介したい者がいる。ネリス、こっちに来て」

「あ、ああ」

 ネリスは戸惑いながらも、私の側に寄る。私は彼の腰を抱き、胸に顔を預けた。

「このネリスはな、私の新しい婚約者だ。実は私は、反逆者によってこの監獄へと追放されてしまったのだ。だが、彼のお陰で私は救われた。ネリスが私を、支えてくれたのだ」

「反逆者、ですと!?」

「えっ、アリエッタ、婚約って!?」

 ロークとネリスが同時に叫ぶ。私は一旦ロークを無視し、ネリスをじっと見つめた。

「結婚しよう、ネリス。それとも私じゃ、嫌かな」

「とっ、とんでもない! 嬉しいよ! 結婚しよう、アリエッタ!」

 私とネリスは見つめ合い、そしてキスをする。私とネリスがキスを楽しんでいる間、しばらく全員の動きが固まっていた。

「あのさ、アリエッタ、そろそろ続きの説明をしないと。ほら、さっきの反逆者って所。僕も気になるし」

 何度もキスを求める私を制し、少し困ったようにネリスが笑う。

「あっ、そうだった。えっと、コホン」

 私は咳払いをして、ローク達に向き直る。

「反逆者は五名。私の双子の妹ファリアンヌと、魔勇者ガルフェイン。そして元老院の三名。この者達は結託して私を罠に嵌めた。陥れて奴隷に堕とし、ここへ追放した犯罪者だ。ガルフェインとは既に婚約は解消している。ファリアンヌは私と同じ顔であるのを良い事に、現在私になりすましている。私はこの者達を討伐せねばならん。ロークよ、今すぐ私とネリスをここから出せ」

「はっ、お任せを! 陛下、それでは城に戻られるのでございますか?」

「いや。今戻っても私の勝ち目は薄い。ファリアンヌは私を偽物として、魔王軍総出で捕らえようとするだろう。ロークよ、もしも貴様が私の側についたとしても、戦いは避けられん。おそらく犠牲者も出るだろう。それは私の本意ではない。よって私は、リーファスに向かうつもりだ」

「何と! リーファス聖王国に!? 敵国に向かうと言うのですか!?」

 驚くロークに向かって、私は諭すように人差し指を立てる。

「今の私には、更なる力が必要だ。リーファスで聖女となり、ネリスを勇者とする。その上でファリアンヌとガルフェインを討伐。私は再び魔王の座に着き、ネリスは魔勇者となる。そう言う筋書きだ」

「なるほど......! さすがでございます魔王様! ところでこの男は、どう致しますか? この監獄において、どうやら陛下にご無礼を働いたようですが......処刑致しますか?」

 ロークはパンデリンの頭をガシッと踏みつける。

「ひぃぃっ! お許しを!」

 泣き叫ぶパンデリン。いい気味だが、少し哀れでもある。

「ふふっ。まぁ、なにも殺す事はあるまい。今日まで私が生きて来られたのは、この男のおかげでもある。多少のセクハラや傲慢な態度には目を瞑るさ。この男、パンデリンは看守長から下級奴隷へ降格処分とする。仕事は処刑場の掃除と処刑人の世話だ」

「はっ! かしこまりました! 良かったなパンデリン。命拾いしたぞ。陛下の寛大なお心に感謝するんだな」

「は、はいい! ありがとうございます、ファリエッダ魔王陛下!」

 パンデリンは涙と涎と鼻水を垂らしながら、何度も床に頭を擦り付け、感謝の言葉を述べたのだった。
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