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魔王討伐と臆病な勇者編。

第49話 ゆっくり剣を振ってみます。

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「ふん! ならば僕から盗んだ石版の文字を読んでみろ! 本物の勇者ならば出来るだろう!」

「おっ、それもそうだな。冴えてるぜ、セレスティン」

「流石ですわ、勇者様」

「やはり勇者ともなると一味違うな」

 仲間は関心したように、セレスティンを見つめる。

「ああ、いいだろう。僕が本物だと証明する。フェイ、この偽物から奪還した石版をくれ」

「はい、これです」

 フェイは腰についたポーチから手のひらサイズの丸い石版を取り出し、黒髪の青年に渡した。すると石版の文字が、光輝く。

 青年は、その文字を朗々と読み上げた。呆気に取られる勇者一行。

「ほら、読んだぞ。次はお前の番だ」

 黒髪の青年はそう言って、石版を投げて寄越した。セレスティンはキャッチしたが、石版の文字は光らない。わかっていた事だった。

 だが相手が偽物なら、自分に順番が回る前に殺すつもりだった。しかし、そうはならなかった。順番が回って来てしまった。

「おまえ、セレスティンじゃないのか......?」

「魔王の手先! 私達を騙したのですね!」

「ええい、無礼千万! よりによって勇者になりすますとは!」

 仲間達がセレスティンから離れる。

「これでわかってもらえたかな? ちなみにもう、四天王も魔王も倒して来た。これが証拠だ」

 黒髪の青年は背中に背負っていた荷物袋を下ろし、それを広げて仲間達に見せた。中には四天王と魔王の生首が入っていた。

「確かに、この顔は四天王だぜ......」

「とするとこれは魔王ですね。魔王ってこんな......おえええぇッ!」

「グッ、吾輩も吐きそうである。だが、確かに確認した。これで世界に平和が訪れるのだな。さすがは勇者殿であるな」

 仲間達が青年を褒め称える。これでセレスティンの立場は完全に無くなった。

 戦うか? いや、相手はあの強力な四天王だけならず、魔王まで倒した相手。本物の勇者ではないにしても、相当な強さだ。勝ち目はない。

 ならば、逃げるのみ。

「おいおい、逃すと思うか、偽勇者」

 こちらの逃げる意思を察したように、本物の勇者セレスティンが笑う。

「ここはフェイ、君に任せるよ」

「殺していいんですよね? 任せて下さい! ハァァァッ!」

 フェイは拳に光を集める。

「おいフェイ! それは多分ヤバイ! この建物が崩壊する! 力を弱めろ! 軽くでいいんだ、軽くで! 自分の力を自覚しろ! もういい、やっぱり僕がやる」

「ええー、せっかくストレス解消出来ると思ったのに」

 フェイは残念そうに肩を落とす。セレスティンはその肩をポンポンと叩き、偽セレスティンの前にやって来た。

「なるべくゆっくり斬るから。そうすれば、みんなにも見えるだろう。斬ったのを、みんなにも認識してもらわなきゃならないからね。だからごめん、かなり痛いと思う」

 セレスティンは謝りながら、剣を抜く。

 彼が何故謝っているのかは、偽セレスティンにはわからなかった。だが、彼は安堵に包まれていた。

 魔王討伐の重責から、ようやく解放される。そう思うと、心が安らいだ。

「せやッ!」

 勇者セレスティンが剣を一閃する。彼はゆっくり斬ると言っていたが、充分速い。

 だから、そんなに痛くなかった。偽セレスティンの意識は、そこで途絶えた。



 



 







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