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第8話 訪れしモノ。
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「あの人ったら、遅いわね。目が見えるようになって、かえって地形とか分からなくなっちゃったのかしら」
そう言えば亜水が帰ってきてない。確かに遅いかも......。葉月さんと二人で回った時は、もう少し早く戻って来ていた筈だ。
「私、ちょっと外を見てきます」
「うむ。まだ物ノ怪が出る時間ではないが、気をつけてな」
「はぁい」
葉月さんは笑顔で家を出て行った。何か......わからないけど、胸騒ぎする。杞憂であってくれればいいけど......。
全員の食事が終わり、何度か焚き木を足した。葉月さんも亜水も、まだ帰って来ない。
「お父さんとお母さん、遅いね」
日凛が心配そうな顔で、俺の隣にやってきて座った。
「そうじゃの......じゃがきっと今に帰ってくる。大丈夫じゃ」
俺は日凛を元気付けようと、頭を撫でてやる。
「俺、ちょっと外の様子を見てきます」
木蓮がそう言って立ち上がる。
「待て木蓮。式神に行かせれば良かろう。お主まで戻ってこなくなったら、わしはどうすれば良いのじゃ」
俺はなんだか泣きそうだった。怖い。もしもみんないなくなってしまったら......また、俺はひとりぼっちだ。
「式神は確かに便利ですが、他の村人を驚かせてしまうかもしれませんし。きっと亜水さんが道に迷って、葉月さんがそれを探してるんだと思います。ちょっとその辺の家で聞き込みしてきますよ」
木蓮は優しい声でそう言うと、颯爽と家を出て行く。
「僕も行く!」
日凛も小走りで木蓮に続く。
二人が出て行き、家には俺と累火だけになってしまった。
うう......怖い。そして、寂しい......。
「私たちだけになっちゃいましたね」
累火も寂しそうだ。
「そうじゃのう。まぁ、気長に待つとしよう。まだ丑の刻まではだいぶ時間があるしのう」
俺は累火の身の上話を聞きながら時間を潰した。だがやがて話す事もなくなり、どうしても皆が帰って来ない事へと話題が移る。
「みんな、どうしちゃったんでしょう。いくらなんでも遅すぎませんか?」
累火の言う事はもっともだ。やはり木蓮を行かせるべきじゃなかった。式神を使えば、安全に捜索出来たのに......。
「待つしかあるまい。そのうち......」
俺が言いかけたその時、激しい轟音が家中に鳴り響いた。
「なんじゃ!?」
壁に何かを打ち付けるような音。それも生半可な打ち付け方じゃない。家がガタガタと揺れる。このままじゃ、家が壊れちまう!
「グハハハ! 食いもん食いもん! 腹がへったぞぉぉ! この村は食い放題だぁ! グハハハ!」
突然の下品な声に、鳥肌が立つ。まさか......。まさか!
「ほぉうら出てこい! 出てくれば家を壊さんでやるぞぉ! 一人出てくれば他の家族は見逃してやる!早くでてこぉい!」
また轟音。こいつの言っている事は嘘だ。俺のこの体......御神体が以前から張っていた結界の効果で、物ノ怪は家に入れない。だから壊すと脅して、出てきた村人を食おうとしてるんだ!
「銀杏様、これは物ノ怪ですか!? まだ丑の刻じゃないのに!」
「そのようじゃ! 理由はわからんが、もう出てきてしまったらしい!」
「そんな......!」
累火はガタガタと体を震わせる。無理もない。俺たちだけでは、物ノ怪に対抗する術(すべ)がない!
「私、物ノ怪を引きつける囮になります! 銀杏様はその間に、逃げてください!」
「待て、累火!」
累火は俺の制止も聞かず、引き戸をバンと開ける。
そこには毛むくじゃらの、血のように真っ赤な目をした、巨大な狸の物ノ怪が立っていた。
「きゃあああ!」
「グハハハ! みーつけたぁぁ!」
狸の物ノ怪は目と同じく真っ赤な舌を出し、にまぁっと笑った。
うむ。とりあえず一言言わせてくれ。こんな状況で言うのもなんだが......こいつ金玉めっちゃでけぇぇぇ!!!
そう言えば亜水が帰ってきてない。確かに遅いかも......。葉月さんと二人で回った時は、もう少し早く戻って来ていた筈だ。
「私、ちょっと外を見てきます」
「うむ。まだ物ノ怪が出る時間ではないが、気をつけてな」
「はぁい」
葉月さんは笑顔で家を出て行った。何か......わからないけど、胸騒ぎする。杞憂であってくれればいいけど......。
全員の食事が終わり、何度か焚き木を足した。葉月さんも亜水も、まだ帰って来ない。
「お父さんとお母さん、遅いね」
日凛が心配そうな顔で、俺の隣にやってきて座った。
「そうじゃの......じゃがきっと今に帰ってくる。大丈夫じゃ」
俺は日凛を元気付けようと、頭を撫でてやる。
「俺、ちょっと外の様子を見てきます」
木蓮がそう言って立ち上がる。
「待て木蓮。式神に行かせれば良かろう。お主まで戻ってこなくなったら、わしはどうすれば良いのじゃ」
俺はなんだか泣きそうだった。怖い。もしもみんないなくなってしまったら......また、俺はひとりぼっちだ。
「式神は確かに便利ですが、他の村人を驚かせてしまうかもしれませんし。きっと亜水さんが道に迷って、葉月さんがそれを探してるんだと思います。ちょっとその辺の家で聞き込みしてきますよ」
木蓮は優しい声でそう言うと、颯爽と家を出て行く。
「僕も行く!」
日凛も小走りで木蓮に続く。
二人が出て行き、家には俺と累火だけになってしまった。
うう......怖い。そして、寂しい......。
「私たちだけになっちゃいましたね」
累火も寂しそうだ。
「そうじゃのう。まぁ、気長に待つとしよう。まだ丑の刻まではだいぶ時間があるしのう」
俺は累火の身の上話を聞きながら時間を潰した。だがやがて話す事もなくなり、どうしても皆が帰って来ない事へと話題が移る。
「みんな、どうしちゃったんでしょう。いくらなんでも遅すぎませんか?」
累火の言う事はもっともだ。やはり木蓮を行かせるべきじゃなかった。式神を使えば、安全に捜索出来たのに......。
「待つしかあるまい。そのうち......」
俺が言いかけたその時、激しい轟音が家中に鳴り響いた。
「なんじゃ!?」
壁に何かを打ち付けるような音。それも生半可な打ち付け方じゃない。家がガタガタと揺れる。このままじゃ、家が壊れちまう!
「グハハハ! 食いもん食いもん! 腹がへったぞぉぉ! この村は食い放題だぁ! グハハハ!」
突然の下品な声に、鳥肌が立つ。まさか......。まさか!
「ほぉうら出てこい! 出てくれば家を壊さんでやるぞぉ! 一人出てくれば他の家族は見逃してやる!早くでてこぉい!」
また轟音。こいつの言っている事は嘘だ。俺のこの体......御神体が以前から張っていた結界の効果で、物ノ怪は家に入れない。だから壊すと脅して、出てきた村人を食おうとしてるんだ!
「銀杏様、これは物ノ怪ですか!? まだ丑の刻じゃないのに!」
「そのようじゃ! 理由はわからんが、もう出てきてしまったらしい!」
「そんな......!」
累火はガタガタと体を震わせる。無理もない。俺たちだけでは、物ノ怪に対抗する術(すべ)がない!
「私、物ノ怪を引きつける囮になります! 銀杏様はその間に、逃げてください!」
「待て、累火!」
累火は俺の制止も聞かず、引き戸をバンと開ける。
そこには毛むくじゃらの、血のように真っ赤な目をした、巨大な狸の物ノ怪が立っていた。
「きゃあああ!」
「グハハハ! みーつけたぁぁ!」
狸の物ノ怪は目と同じく真っ赤な舌を出し、にまぁっと笑った。
うむ。とりあえず一言言わせてくれ。こんな状況で言うのもなんだが......こいつ金玉めっちゃでけぇぇぇ!!!
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