【完結】のじゃロリ狐娘に転生した俺。守り神として村人を英雄覚醒させ、邪悪な帝にざまぁします。

アキ・スマイリー

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第21話 白金の覚悟。

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「凍結! 火炎! 斬撃!」

 白金は息もつかせぬ程の速度で、術と打撃の合わせ技を放つ。だが緑爪は番傘を用い、いともたやすく攻撃をさばいていく。

「俺が、勝ったら! この村に手出しはしねぇって、そう約束しやがれ!」

「うふふ、いいわよ銀牙。あなたが私に勝てたらね。まぁ、万が一にもないでしょうけれど」

 息を荒げ、必死に連撃を繰り出す白金。それに対し、緑爪は息一つ乱れていない。防御に使っていた番傘を突き出し、白金を弾き飛ばす。

 空中で体制を立て直し、着地する白金。だが彼は、生まれて二度目の恐怖を感じていた。

 一度目は、紅蓮に出会った時。物腰は柔らかかったが、滲み出る威圧感は尋常ではなかった。

 そして今。緑爪との実力差を、感じずにはいられなかった。普段は力を隠していたのかも知れない。自分と同じか、少し上くらいだと思っていたのに......。

 覚醒したこの村の連中でさえ、白金は一瞬で気絶させる事が出来た。銀杏に関しては、覚醒状態であれば自分と同じくらいの強さだろう。

 つまり、自分がもしここで負けてしまったら......誰もこの女には勝てない。

「負ける訳には、いかねぇ!」

 白金は死にものぐるいで緑爪に攻撃し続けた。だが全ての攻撃が、虚しく受け流されていく。

「クス。そろそろ気が済んだかしら? それじゃあ私も、攻撃するわね」

 緑爪はそう言って、煙管を懐にしまった。

破壊爪はかいそう!」

 緑爪の左手の爪が瞬時に鋭く伸び、白金の喉から腹にかけて、縦に五つの穴を空ける。

「ぐ......はっ......」

 白金には、爪が伸びる瞬間が一切見えなかった。気がついた時には、もう貫かれていた。膝から崩れ落ちるように倒れる。体が動かない。呼吸も浅くゆっくりになっていく。

「はい、お仕舞いね。それじゃあ、村に入らせてもらうわよ」

 緑爪は懐から煙管を取り出し、火をつけた。そして鼻歌を歌いながら、村へと足を踏み入れる。

「いか......せねぇ!」

 だがその腰に、白金がしがみつく。

「あらあら、まだ遊び足りないかしら? この死に損ない」

 緑爪は苛立たしげに、番傘で白金の顔を打ち付ける。

「銀杏には、指一本、触れさせねぇぞ!ぜってぇ、いかせ、ねぇ!」

「ちっ、しぶといわねぇ。もう諦めなさいな。私には勝てないって、わかったでしょう。本当にみっともないわ。あなたの首も、もういらない。さよならよ、銀牙。破壊爪!」

 もう一度、緑爪は白金の体を爪で貫いた。

「ったく、着物が汚れちゃったじゃないの。汚いわねぇ」

 懐から手ぬぐいを出して血をぬぐいながら、歩き出す緑爪。

「俺の名前、は......銀牙じゃねぇ。白金だ......銀杏が、つけてくれた、名前が......あるんだ」

 なおも緑爪の足を掴む白金。

「ふぅ、まるで死人返りね。頭を潰せば、大人しくなるかしら。最初からそうすれば良かったわ」

 緑爪はそう言って白金の頭に足を乗せ、体重をかけ始める。

「ああ、でもやっぱり下駄が汚れるからやめようかしら......でもまたしがみつかれたら嫌だしねぇ」

 ぐぐぐ、と白金の頭蓋が軋む。

「待て!」

 若い男の声が聞こえ、緑爪はそちらを見る。そこには村人らしき集団が集まっていた。

「あら、いい男ね。狐に乗っているのは何故かしら? 子供が二人に、目の見えないおじさまが一人。火傷の醜い女が一人......色気のない小娘が一人と、それから......ああ、あなたが銀杏ね。銀牙が言っていたわ。あなたには指一本触れさせないってね」

「白金様から足をどけろ! 緑爪!」

 子供が一人、緑爪に飛びかかる。ドラザエモンだ。

「あら、もしかしてドラちゃん? あなたも生きてたのねぇ」

 緑爪は白金の頭に乗せていた足を掲げ、ドラザエモンを蹴り飛ばす。

 その隙をつき、木蓮の式神が数匹、白金を取り囲む。そして器用に背中に乗せ、銀杏の元へと運んだ。

 白金はすでに、虫の息だった。累火が必死に祈祷する。

「白金! しっかりするのじゃ!」

 白金に抱きつき、泣き叫ぶ銀杏。声も震えている。

「銀杏、逃げろ......あの女の強さは異常だ。俺はどうなってもいい。だけど、お前にだけは、死んで欲しくねぇ」

 薄く目を開け、銀杏の手を握る白金。

「諦めるなんて、お主らしくないぞよ白金。わしは諦めぬ。逃げずに戦う。全員が生きて、あの女を撃退してみせる。だから死ぬな。死んだら許さぬぞ」

「だよな。諦めるなんて、らしくなかったぜ。俺も今、起きるから......」

「白金!」

 目を閉じ、力を失ったように動かなくなる白金。

「累火、覚醒はまだ出来ぬのか!」

 睡眠により覚醒が解けた累火は、耳が聞こえない。銀杏の唇の動きを読み取り、ぶんぶんと首を振る。累火は泣きながら必死に祈祷していたが、覚醒していない為、本来の力を発揮できずにいた。

「うふふ、滑稽ねぇ。せっかく銀牙が命がけで守ってくれたのに、どうして逃げなかったのかしら。もしかして遊んで欲しいの?仕方ないわねぇ」

 煙管を咥え、煙をくゆらせる緑爪。ペロリと唇を舐め、目を細める。

「亜水、日凛!ドラザエモン! 前衛を頼む! 木蓮と葉月は後衛じゃ!遠距離攻撃で奴を狙え!」

 銀杏の号令で、全員が配置に着く。

「緑爪とやら、目にもの見せてくれるぞ! 」

 銀杏は白金の体を抱きしめたまま、緑爪をじっと睨みつけた。
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