クイックリングちゃんドロップキック!

好きな言葉はタナボタ

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第6章

第71話 コンテスト申し込み④

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敗北感に項垂うなだれるトオマス。

(勝負の内容を一方的に変更したあげく負けるとは...)

落ち込むトオマスの顔を見上げて、アリスは尋ねる。

「これで今日からアタシはアンタの御主人さま?」

「いや、ナイトリングは自分に勝った人に仕えるわけでは... 」

否定しつつも、トオマスがアリスを見る目は輝いている。 満更でもないのだ。 強い上に愛らしく、性格もそう悪くなさそう。 アリスはトオマスの主君となる資格を十分に満たしていた。 アリスが強く要請すれば、トオマスはアリスに忠誠を誓うに違いない。

クルチアの背筋を冷たいものが這い上がる。 ゾワリ

(まさか二股? そんなの嫌)

二股どころではなく、トオマスがクルチアをててアリスのみを主君とする恐れすらある。

しかしアリスは、あっさり提案を引っ込めた。

「あっそ。 じゃあいいや」あんた思ってたより弱いし。「ちょっと訊いてみただけ」

提案ですらなく尋ねただけだった。

クルチアは、密かに胸を撫で下ろし、そっと安堵の息を吐いた。 ホッ、よかった。

           ◇◆◇

トオマスは気になって仕方がない質問をアリスにぶつける。

「失礼を承知で尋ねるが、君の体重は何キロだ?」 100キロどころではあるまい?

アリスは回答を拒否。

「なんなの出し抜けに。 女の子の体重を訊くなんて失礼だよ?」あたしのこと好きなの?

傍らでクルチアがウンウンと頷く。 女の子に体重を訊くなんて無礼すぎる。

しかしトオマスは失礼を百も承知。

「頼む、気になってたまらないんだ」

アリスは照れた。

「えー?」そんなにアタシが好きなの?

そして回答する方向に舵を切った。

「だいたい44キロぐらいかも エヘッ」

アリスが提示した数字はクルチアにショックを与えた。

(うそ、私より15キロも軽いの?)

だが同時にクルチアは、アリスの視線が右上に移動したのを見逃さなかった。 人は嘘をつくとき、視線が右上に動くという。

「ねえアリスちゃん、44キロって本当? お願い、正直に言ってちょうだい」あなたの身長で体重が44キロだなんてあり得ないと思うの。 50キロはあるでしょう? あなたモデルさんじゃないでしょう?

ひたむきに真実を追求するクルチアをミツキは不思議そうに眺める。 ねえクルチア、何でそんなに必死なの?

しかしトオマスは、クルチアと息ピッタリにアリスを問い詰める。

「うむ。 僕が感じた重さは44キロどころではない。 本当はいったい何キロだ?」 200キロか? それとも300キロ?

アリスは "僕が感じた重さ" で勘違いに気付いた。

(あれ? さっきの引っ張り合いの話だったの? アタシに気があるわけじゃなかった。 トキめいて損した)

落胆しつつも、アリスはトオマスに望む情報を与える。

「んーとね、〈気〉の技を使ったの」

「というと?」

「〈気〉で体重を増やせるの。 知らない?」

「〈気〉でそんなことが...」本選出場者なら〈気〉を使えて当然、か。「いや、とても良い経験になった。 ありがとうタカラズカさん」

満足顔のトオマス。 しかしクルチアは満足していない。

「ちなみに〈気〉を使わない場合のホントの体重は?」

「うっさい」

アリスに怒られた。

           ◇◆◇

怒られたクルチアがシュンとしていたのは束の間。 数十秒後には性懲りもなくアリスに話しかける。

「ところでアリスちゃん、1つ納得いかないことが」

「なに?」

「〈気〉で体重を増やして一体なんの得があるの?」 体重なんて軽いほどいいよね?

クルチアの無知に、アリスは軽く目を見張った。

「なんの得って... 体重が重いほうが有利でしょ? 戦闘の場合の話だけど」

「そうかしら」

アリスは呆れ顔。

「イナギリ、アンタさあ、あんまし戦ったとき無いでしょ」

「そりゃあ、アリスちゃんに比べれば...」

「体重が重いと攻撃に威力が出るし、攻撃を受けたとき吹き飛ばされない。 大きな武器を振り回すにも体重が必要だし。 体重は大事だよ。 戦闘スタイルにもよるけど」

アリスはわりと丁寧に説明した。 彼女は、格下と認めた相手には気分しだいで親切だ。
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