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第1部
第8話 「無法地帯」
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翌日。 さびれた道を進み続けて正午が近づくころ、50代女性の流罪人がつぶやいた。
「見えてきたわね」
何のことかとマリカは思ったが、女性の視線をたどって理解した。 遠くに集落らしきものが見える。 いよいよ流刑地が見えるところまで来てしまった。 あと30分ほどで到着だろう。 マリカが傲慢男に強姦されるときが迫っている。
(どうしよう、どうしよう? なんとかならないの?)
マリカは焦ることしかできなかった。 男がマリカを強姦する予定でいるのが分かっているのに対策がない。 襲い掛かられたとき撃退できないのは言うに及ばず、襲われる前に逃げるのも難しい。 傲慢男はマリカより遥かに大柄で足も長いからだ。 きのう番人に太腿を槍で突かれた傷も大したことがなかったようだし。
(私がまた男に乱暴されるのは逃れようのない運命だってこと? 私は男に乱暴され続ける星の下に生まれてきたの? こんなものが私が朔に生まれた意味なの?)
マリカが傲慢男に視線を忍ばせると男もマリカのほうを見ていた。 男は底光りのする目で、マリカの顔と体に無遠慮な視線を這わせている。 流刑地に到着したときのことを想像しているに違いない。
(なんとかならないの?)
マリカは男の魔の手から免れる手立てを必死に模索する。
(昨日みたいに番人が助けてくれないかしら?)
しかし、昨日の強姦宣言に対する番人の反応を思えば望みは薄い。 流刑地での流罪人同士の揉め事に番人が関わるのが法律で禁止されているのかもしれない。 色仕掛けで番人をたらしこんで味方に付けるのもひとつの手だが、お嬢さま育ちのマリカにそんな芸当は不可能。 彼女にできるのは、ただ他人の善意に期待することだけだ。
(そうだ。 あの人は...)
マリカは女性流罪人に頼れないかと考えた。
(流刑地に送られるというのに、あの人は不思議といつも落ち着いてる。 あの人なら男をなだめてくれるかも)
しかし、すぐに思い直す。
(ダメね。 昨日わたしが押し倒されたときも、あの人は見てるだけだった)
ジロジロとマリカを眺めていた傲慢男が声を掛けてきた。
「おい女、覚悟はいいか?」
「覚悟?」
そう答えるマリカの声はか細い。 緊張のためである。
「強姦される覚悟だ。 流刑地に着いたら、しこたま犯してやるからな。 お、お嬢さまを犯し抜いてやる」
傲慢男はマリカがお嬢さまであることに異様に興奮するようだった。 「強姦」や「犯す」といった言葉をマリカにぶつけるたびに男の息が荒くなり、劣情に歪む男の顔が赤みを増す。 もはや彼の顔は真っ赤っか。 人の顔がここまで赤くなれるとは。
「もうすぐだ。 犯してやるぞ。 お、お嬢さまを、上流階級の娘を何度も強姦して屈服させてやる」
そうして男はマリカに向かって、自分がいかにマリカを凌辱するかを事細かに語りだした。 番人たちも50代女性も男を咎めようとしない。 強姦宣言にしてもそうだが、まっとうな社会ではあり得ない事態である。 マリカはもはや無法地帯に片足を突っ込んでいるのだ。
「見えてきたわね」
何のことかとマリカは思ったが、女性の視線をたどって理解した。 遠くに集落らしきものが見える。 いよいよ流刑地が見えるところまで来てしまった。 あと30分ほどで到着だろう。 マリカが傲慢男に強姦されるときが迫っている。
(どうしよう、どうしよう? なんとかならないの?)
マリカは焦ることしかできなかった。 男がマリカを強姦する予定でいるのが分かっているのに対策がない。 襲い掛かられたとき撃退できないのは言うに及ばず、襲われる前に逃げるのも難しい。 傲慢男はマリカより遥かに大柄で足も長いからだ。 きのう番人に太腿を槍で突かれた傷も大したことがなかったようだし。
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マリカが傲慢男に視線を忍ばせると男もマリカのほうを見ていた。 男は底光りのする目で、マリカの顔と体に無遠慮な視線を這わせている。 流刑地に到着したときのことを想像しているに違いない。
(なんとかならないの?)
マリカは男の魔の手から免れる手立てを必死に模索する。
(昨日みたいに番人が助けてくれないかしら?)
しかし、昨日の強姦宣言に対する番人の反応を思えば望みは薄い。 流刑地での流罪人同士の揉め事に番人が関わるのが法律で禁止されているのかもしれない。 色仕掛けで番人をたらしこんで味方に付けるのもひとつの手だが、お嬢さま育ちのマリカにそんな芸当は不可能。 彼女にできるのは、ただ他人の善意に期待することだけだ。
(そうだ。 あの人は...)
マリカは女性流罪人に頼れないかと考えた。
(流刑地に送られるというのに、あの人は不思議といつも落ち着いてる。 あの人なら男をなだめてくれるかも)
しかし、すぐに思い直す。
(ダメね。 昨日わたしが押し倒されたときも、あの人は見てるだけだった)
ジロジロとマリカを眺めていた傲慢男が声を掛けてきた。
「おい女、覚悟はいいか?」
「覚悟?」
そう答えるマリカの声はか細い。 緊張のためである。
「強姦される覚悟だ。 流刑地に着いたら、しこたま犯してやるからな。 お、お嬢さまを犯し抜いてやる」
傲慢男はマリカがお嬢さまであることに異様に興奮するようだった。 「強姦」や「犯す」といった言葉をマリカにぶつけるたびに男の息が荒くなり、劣情に歪む男の顔が赤みを増す。 もはや彼の顔は真っ赤っか。 人の顔がここまで赤くなれるとは。
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