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第1部
第42話 「狩猟採集①」
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翌日、マリカたちは森に来ていた。 食料を調達するためだ。 マリカとエライナは籠を背負い、ミツキは小さなスコップを手に持ち鞘に入った短刀を腰から下げている。
こうした装備は、取ってきた食料の一部を分け与えるという約束で隣人から借り受けた。 交渉したのはエライナだ。 隣人はエライナの卓越した交渉スキルに抗すること能わず、必要な道具すべてを快く貸してくれた。
隣人によると、流刑地には農場や養鶏場があるが、こうした施設は派閥ごとに管理されているため派閥に属さないマリカたちには利用できない。 マリカたちは狩猟採集で食料を入手するしかなかった。
◇❖◇
マリカとエライナが背負う籠は既にほぼ一杯である。 とっておきの採集スポットを隣人が教えてくれたからだ。
「私たちが採ってくる食べ物が多いほど、あなた様にお渡しできる食べ物も多くなりますのよ?」
そんなエライナの殺し文句の前に、隣人はひとたまりもなく貴重な情報をマリカたちに明け渡してしまった。 昨日マリカが同じ隣人に食料の調達について尋ねたときには、配給食のことしか教えてくれなかったというのに。
籠の中身は山芋・タケノコ・果実・山菜など多岐に渡る。 ミツキが野生の食べ物に詳しいから、何を採るか分からず困ることはなかった。 ただ、マリカはミツキが採ってくるキノコには不信の眼差しを向けた。 彼女はミツキが毒キノコで痺れたために顔役たちに捕まったのを忘れていなかったのだ。
マリカがミツキに訴える。
「お肉が欲しいところね」
今日ここまでマリカたちは動物性の食料には恵まれていない。
「でもヘビとかネズミは嫌なんだろ?」
ヘビやネズミには既に出くわしていてミツキが獲ろうとしたのだが、マリカが拒否反応を示した。
「もっとちゃんとしたお肉がいい」
「ちゃんとした肉って?」
ミツキにとってはヘビもネズミも、トカゲだってちゃんとした肉である。
「猪とか鹿とか?」
牛や豚や鶏が森にいないことぐらいはマリカだって知っている。
「鹿でもいればいいけど... あっ!」
「どうしたの?」
「鹿よりいいのがいた。 ちょっとここで待ってて」
言うが早いかミツキはまぶしい輝きに包まれ、その場から消え失せてしまった。
◇❖◇
戻ってきたミツキは、両手に1羽ずつカモのような鳥を持っている。
「あと4羽しとめたんだ」
ミツキの後を付いて行くと、彼が手に持つのと同種の鳥がもう4羽地面に転がっていた。
「見たことない鳥ね」
「すごく旨いんだよ、この鳥」
「6羽も食べきれないわ。 殺し過ぎじゃないの?」
「残ったら俺がぜんぶ食うよ」
そんなに美味しいのだろうか? しかし6羽も持って帰るのが大変だ。 マリカとエライナは食料がどっさり詰まった籠を背負っていて、その重さも負担になりつつある。
「6羽も持って帰れるかしら?」
「1人が2羽ずつ持てばいい。 旨いのは保証するからさ」
ミツキは重い籠を背負っていないので気楽なものである。
こうした装備は、取ってきた食料の一部を分け与えるという約束で隣人から借り受けた。 交渉したのはエライナだ。 隣人はエライナの卓越した交渉スキルに抗すること能わず、必要な道具すべてを快く貸してくれた。
隣人によると、流刑地には農場や養鶏場があるが、こうした施設は派閥ごとに管理されているため派閥に属さないマリカたちには利用できない。 マリカたちは狩猟採集で食料を入手するしかなかった。
◇❖◇
マリカとエライナが背負う籠は既にほぼ一杯である。 とっておきの採集スポットを隣人が教えてくれたからだ。
「私たちが採ってくる食べ物が多いほど、あなた様にお渡しできる食べ物も多くなりますのよ?」
そんなエライナの殺し文句の前に、隣人はひとたまりもなく貴重な情報をマリカたちに明け渡してしまった。 昨日マリカが同じ隣人に食料の調達について尋ねたときには、配給食のことしか教えてくれなかったというのに。
籠の中身は山芋・タケノコ・果実・山菜など多岐に渡る。 ミツキが野生の食べ物に詳しいから、何を採るか分からず困ることはなかった。 ただ、マリカはミツキが採ってくるキノコには不信の眼差しを向けた。 彼女はミツキが毒キノコで痺れたために顔役たちに捕まったのを忘れていなかったのだ。
マリカがミツキに訴える。
「お肉が欲しいところね」
今日ここまでマリカたちは動物性の食料には恵まれていない。
「でもヘビとかネズミは嫌なんだろ?」
ヘビやネズミには既に出くわしていてミツキが獲ろうとしたのだが、マリカが拒否反応を示した。
「もっとちゃんとしたお肉がいい」
「ちゃんとした肉って?」
ミツキにとってはヘビもネズミも、トカゲだってちゃんとした肉である。
「猪とか鹿とか?」
牛や豚や鶏が森にいないことぐらいはマリカだって知っている。
「鹿でもいればいいけど... あっ!」
「どうしたの?」
「鹿よりいいのがいた。 ちょっとここで待ってて」
言うが早いかミツキはまぶしい輝きに包まれ、その場から消え失せてしまった。
◇❖◇
戻ってきたミツキは、両手に1羽ずつカモのような鳥を持っている。
「あと4羽しとめたんだ」
ミツキの後を付いて行くと、彼が手に持つのと同種の鳥がもう4羽地面に転がっていた。
「見たことない鳥ね」
「すごく旨いんだよ、この鳥」
「6羽も食べきれないわ。 殺し過ぎじゃないの?」
「残ったら俺がぜんぶ食うよ」
そんなに美味しいのだろうか? しかし6羽も持って帰るのが大変だ。 マリカとエライナは食料がどっさり詰まった籠を背負っていて、その重さも負担になりつつある。
「6羽も持って帰れるかしら?」
「1人が2羽ずつ持てばいい。 旨いのは保証するからさ」
ミツキは重い籠を背負っていないので気楽なものである。
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