お嬢様、流刑地に送られ婚約も破棄。でも最強になったら、ザマぁとかどうでも良くなってた

好きな言葉はタナボタ

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第1部

第41話 「共用女」

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マリカは人通りの少ない場所までエライナを引っ張っていき話を聞き出した。 なんでも、マリカが顔役に連れていかれた後でエライナは、ボッシュと呼ばれる男がボスを務める派閥に組み込まれたのだという。

「派閥?」

マリカの疑問にエライナが答える。

「私もよく知らないけれど、この流刑地はいくつかの派閥に分かれてて、それぞれにボスがいるらしいの」

そうして派閥に組み込まれたエライナは、派閥の共用女として扱われることになったらしい。

「共用女って?」

聞き馴染なじみのない言葉である。

「共用女とはね...」

エライナは重い口調で共用女についてマリカに説明した。 共用女とは、派閥内の男の求めに応じて性交の相手を務める女性のことなのだという。 相手が誰であろうと拒否は認められない。

派閥内の女性にはランクがある。 最もランクが高いのはボスの女で、その次が派閥の幹部の女といった具合だ。 共用女はそのランクの中で最底辺に位置する。 自分を独占しようと戦う男が現れなければ共用女にされてしまうのだ。

エライナは顔立ちは整っているものの50代と高齢であるため、彼女を独占しようと名乗り出る男がいなかった。 共用女にされたエライナは、性交を求めてきた男に抵抗して顔を殴られたわけである。

エライナの話を聞いてマリカは真っ青になった。 今は亡き顔役がマリカに提示した4つの選択肢の1つ「流刑地の男全員の共有物になる」とは共用女のことではなかったのか? 顔役の話を疑っていたわけではないが、実際に体験したエライナの話には生々しい迫力があった。 マリカは顔役やジュニアの女にされることに戦々恐々せんせんきょうきょうとしていたが、共用女など生き地獄だ。

それにしても、とマリカは改めて思う。

(やっぱり流刑って不公平。 顔役や派閥のボスのように強い男には刑罰として機能してない一方で、エライナさんような弱者にとっては刑罰として重すぎる。 私なんて、そもそも流刑になったのが何かの間違いだし)

こんな話を聞かされては、エライナをさっきのグループのもとへ返すわけにはいかない。 マリカはエライナを自分の家に連れて帰ることにした。

                   ◇❖◇

マリカたちは配給の行列に並び直し、エライナの食料を受け取って帰路にいた。 エライナはミツキをいたく気に入った様子で、熱心に話しかけている。 2人の声を聞きながらマリカは思い悩む。

(エライナさんを保護したのはいいけど、自分の食べ物すら満足に確保できてないのよね私... 流刑地の他の人たちはどうしてるんだろう?)

1日に干し肉1枚・小さな芋2本・ニンジン1本では、マリカ1人ぶんにしても到底たりない。 流刑地の住民は配給の他に何らかの方法で食料を入手しているに違いないのだ。

家に戻ったマリカたちは簡素な夕食を済ませると、すぐに就寝した。 2人ぶんにも満たない食料を3人で分け合ったので腹は空いていたが、3人は三者三様の理由で疲れていたので眠りはすぐに訪れた。
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