42 / 123
第1部
第41話 「共用女」
しおりを挟む
マリカは人通りの少ない場所までエライナを引っ張っていき話を聞き出した。 なんでも、マリカが顔役に連れていかれた後でエライナは、ボッシュと呼ばれる男がボスを務める派閥に組み込まれたのだという。
「派閥?」
マリカの疑問にエライナが答える。
「私もよく知らないけれど、この流刑地はいくつかの派閥に分かれてて、それぞれにボスがいるらしいの」
そうして派閥に組み込まれたエライナは、派閥の共用女として扱われることになったらしい。
「共用女って?」
聞き馴染みのない言葉である。
「共用女とはね...」
エライナは重い口調で共用女についてマリカに説明した。 共用女とは、派閥内の男の求めに応じて性交の相手を務める女性のことなのだという。 相手が誰であろうと拒否は認められない。
派閥内の女性にはランクがある。 最もランクが高いのはボスの女で、その次が派閥の幹部の女といった具合だ。 共用女はそのランクの中で最底辺に位置する。 自分を独占しようと戦う男が現れなければ共用女にされてしまうのだ。
エライナは顔立ちは整っているものの50代と高齢であるため、彼女を独占しようと名乗り出る男がいなかった。 共用女にされたエライナは、性交を求めてきた男に抵抗して顔を殴られたわけである。
エライナの話を聞いてマリカは真っ青になった。 今は亡き顔役がマリカに提示した4つの選択肢の1つ「流刑地の男全員の共有物になる」とは共用女のことではなかったのか? 顔役の話を疑っていたわけではないが、実際に体験したエライナの話には生々しい迫力があった。 マリカは顔役やジュニアの女にされることに戦々恐々としていたが、共用女など生き地獄だ。
それにしても、とマリカは改めて思う。
(やっぱり流刑って不公平。 顔役や派閥のボスのように強い男には刑罰として機能してない一方で、エライナさんような弱者にとっては刑罰として重すぎる。 私なんて、そもそも流刑になったのが何かの間違いだし)
こんな話を聞かされては、エライナをさっきのグループのもとへ返すわけにはいかない。 マリカはエライナを自分の家に連れて帰ることにした。
◇❖◇
マリカたちは配給の行列に並び直し、エライナの食料を受け取って帰路に就いた。 エライナはミツキをいたく気に入った様子で、熱心に話しかけている。 2人の声を聞きながらマリカは思い悩む。
(エライナさんを保護したのはいいけど、自分の食べ物すら満足に確保できてないのよね私... 流刑地の他の人たちはどうしてるんだろう?)
1日に干し肉1枚・小さな芋2本・ニンジン1本では、マリカ1人ぶんにしても到底たりない。 流刑地の住民は配給の他に何らかの方法で食料を入手しているに違いないのだ。
家に戻ったマリカたちは簡素な夕食を済ませると、すぐに就寝した。 2人ぶんにも満たない食料を3人で分け合ったので腹は空いていたが、3人は三者三様の理由で疲れていたので眠りはすぐに訪れた。
「派閥?」
マリカの疑問にエライナが答える。
「私もよく知らないけれど、この流刑地はいくつかの派閥に分かれてて、それぞれにボスがいるらしいの」
そうして派閥に組み込まれたエライナは、派閥の共用女として扱われることになったらしい。
「共用女って?」
聞き馴染みのない言葉である。
「共用女とはね...」
エライナは重い口調で共用女についてマリカに説明した。 共用女とは、派閥内の男の求めに応じて性交の相手を務める女性のことなのだという。 相手が誰であろうと拒否は認められない。
派閥内の女性にはランクがある。 最もランクが高いのはボスの女で、その次が派閥の幹部の女といった具合だ。 共用女はそのランクの中で最底辺に位置する。 自分を独占しようと戦う男が現れなければ共用女にされてしまうのだ。
エライナは顔立ちは整っているものの50代と高齢であるため、彼女を独占しようと名乗り出る男がいなかった。 共用女にされたエライナは、性交を求めてきた男に抵抗して顔を殴られたわけである。
エライナの話を聞いてマリカは真っ青になった。 今は亡き顔役がマリカに提示した4つの選択肢の1つ「流刑地の男全員の共有物になる」とは共用女のことではなかったのか? 顔役の話を疑っていたわけではないが、実際に体験したエライナの話には生々しい迫力があった。 マリカは顔役やジュニアの女にされることに戦々恐々としていたが、共用女など生き地獄だ。
それにしても、とマリカは改めて思う。
(やっぱり流刑って不公平。 顔役や派閥のボスのように強い男には刑罰として機能してない一方で、エライナさんような弱者にとっては刑罰として重すぎる。 私なんて、そもそも流刑になったのが何かの間違いだし)
こんな話を聞かされては、エライナをさっきのグループのもとへ返すわけにはいかない。 マリカはエライナを自分の家に連れて帰ることにした。
◇❖◇
マリカたちは配給の行列に並び直し、エライナの食料を受け取って帰路に就いた。 エライナはミツキをいたく気に入った様子で、熱心に話しかけている。 2人の声を聞きながらマリカは思い悩む。
(エライナさんを保護したのはいいけど、自分の食べ物すら満足に確保できてないのよね私... 流刑地の他の人たちはどうしてるんだろう?)
1日に干し肉1枚・小さな芋2本・ニンジン1本では、マリカ1人ぶんにしても到底たりない。 流刑地の住民は配給の他に何らかの方法で食料を入手しているに違いないのだ。
家に戻ったマリカたちは簡素な夕食を済ませると、すぐに就寝した。 2人ぶんにも満たない食料を3人で分け合ったので腹は空いていたが、3人は三者三様の理由で疲れていたので眠りはすぐに訪れた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる